日本畜産学会報
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68 巻, 6 号
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  • 渡邊 令子, 飯塚 貴之, 粉川 清生, 山本 朱美, 石橋 晃
    1997 年 68 巻 6 号 p. 529-536
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    産卵鶏におけるトレオニン(Thr)代謝の様相を明らかにするために,組織中の遊離アミノ酸(AA)濃度とThr代謝酵素活性に及ぼす飼料中Thr含量の影響について検討した.38週齢の産卵鶏に飼料中Thr濃度が,0.32~0.67%までの5種類の試験飼料を28日間給与した.その後,肝臓,腎臓および十二指腸ホモジネートの3種のAA, Thr,セリン(Ser),グリシン(Gly)濃度と,ThrとSerの分解およびGly生成酵素活性を測定した.飼料中Thrが0.32~0.42%のとき,3組織中Thr濃度は一定で,その後飼料中Thr濃度が高くなるに従って直線的に増加した.両直線の交点のThr濃度は0.46%であり,この値は産卵率や血漿Thr濃度から求められたThr要求量と一致した.組織中Ser濃度は,飼料中Thr濃度が要求量より低い水準では比較的一定であり,飼料中Thr濃度が高くなるに従って減少した.組織中Gly濃度は,飼料中Thr濃度に影響されなかった.しかし,同-AAでも組織間で顕著な濃度差がみられた.次に,Thr代謝酵素活性に関しては,肝臓ではThrとSerの分解,Glyの生成いずれも飼料中Thr濃度の影響は明らかではなかった.腎臓では,ThrからGly生成の活性が飼料中Thr濃度の増加に伴って増加した.十二指腸では,GlyからSerへの系に関与する酵素活性を除いて,すべての酵素活性が飼料中Thr濃度の増加に伴って増加し,かっすべての酵素活性が他臓器に比し,2ないし3倍高かった.これらの結果から,SerからGlyへの変換が増加することは,飼料中Thr濃度が要求量水準より高くなったとき,組織中Ser濃度が減少する理由の-因であることが示唆された.
  • 高橋 和昭, 秋葉 征夫, 松田 敦郎
    1997 年 68 巻 6 号 p. 537-544
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    異なる衛生状態または免疫刺激条件下のブロイラーにおける免疫応答に対する生菌剤(Bacillus CIP 5832)給与の影響を検討した.免疫ストレス源として,汚い環境ときれいな環境を設定した.汚い環境は,清浄でないケージおよび水飲み,堆積した糞,埃などに継続的に暴露するにとにより作成した.初生の雄ブロイラーをこれらの環境で23日齢まで飼育し,試験終了16時間前に大腸菌のリポ多糖(LPS)を腹腔に500μg投与した.また,0または50mg/kg (5×108cfn/kg)のBacillus cereus CIP 5832 (B.cereus)を試験期間中給与した.結果として,汚い環境で飼育したブロイラーの増体量と飼料摂取量は低下した.B. cereus給与は汚い飼育環境で低下した飼料効率を改善したが,増体量と飼料摂取量に対する作用は観察されなかった.汚い環境で飼育したブロイラーの脾臓リンパ球増殖反応はきれいな環境のブロイラーと比較して低下した.B. cereus給与は低下した脾臓リンパ球増殖反応を回復させた.汚い飼育環境でのブロイラーの血漿インターロイキン(IL)-1活性はきれいな飼育環境に比較して高い傾向にあり,LPSを投与されたブロイラーでは,汚い飼育環境での血漿IL-1活性の増加は有意であった.また,B. cereus給与はLPSを投与されたブロイラーで,増加した血漿IL-1活性を有意に低下させた.にれらの結果は,飼育衛生状態がブロイラーの免疫応答に影響を及ぼすこと,LPS投与はこの影響を増幅すること,B. cereus給与は免疫刺激による免疫応答を改善することを示唆している.
  • ダナパティ ネウバネ, 石下 真人, 吉田 育子, 鮫島 邦彦
    1997 年 68 巻 6 号 p. 545-554
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウシαーラクトアルブミンの機能特性は,その分子構造とその構造変化に関連している.α-ラクトアルブミンの機械的撹拌や高温度処理,pHにに対する構造変化を円二色性測定,示差熱走査熱量測定,蛍光強度,紫外部吸収および電気伝導度の変化によって調査した.pH5以下および10以上でα-ヘリックス量は,明らかに減少した.pH2,6.7,12における変性の吸熱エンタルピーは,それぞれ91.5,111.6,100.3J/gであった.60°Cから100°Cでα-ラクトアルブミンを加熱すると紫外部吸収と電気伝導度は増加したが,蛍光強度は減少した.また,機械的撹拌は,α-クトアルブミンのα-ヘリックス量を減少させた.α-ラクトアルブミンは,強酸や強アルカリ,高温,撹拌によって構造変化を起こした.
  • 細田 正孝, 橋本 英夫, 何 方, 山崎 和幸, 細野 明義
    1997 年 68 巻 6 号 p. 555-562
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    アフラトキシン類は最も強い発癌物質で,食品に関連する変異原の中で強力な変異原物質である.本研究では指標菌としてSalmonella typhimurium TA 100株を使用してアフラトキシンB1, B2, G1の変異原性に対するLactobacillus 5菌株の培養乳の抑制作用をin vitroで調査した.各培養乳は無脂乳固形分10%,酵母エキス0.3%含有滅菌乳にこれらの菌を0.1%(vol/vol)添加し,37°C24時間培養して調製した.Lactobacillus sp. LA-2株の培養乳はS-9ミックス添加分析条件下で全供試アフラトキシンの変異原性に対して,最も高い58.6~77.4%の抑制効果を示した.更にLactobacillus sp. LA-2株による培養乳の抗変異原性において異なったpH(4~9),変異原添加量(アフラトキシンB1:0~100μg/ml, B2:0~10mg/ml, G1:0~1000μg/ml)および培養時間(0~48h)の影響を試験した結果,本培養乳はアフラトキシンB1, B2, G1に対してpH7および添加量がそれぞれ1.0,100,10μg/mlで最も高い抑制効果を示した.また,LA-2株で24時間培養した培養乳は,全供試アフラトキシンの変異原性に対して最も高い抑制効果を示した.
  • 古賀 新, 松本 和典, 青山 真人, 岡村 裕昭, 山岸 規昭, 金井 幸雄, 板橋 久雄
    1997 年 68 巻 6 号 p. 563-567
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    To evaluate the anoretic effect of Cholecystokinin (CCK) in goats, CCK (sulfated CCK -8) was administered into the third ventricle of the brain either by a bolus injection or continuous infusion in five castrated male goats which were deprived feed for 22 hours. The injection doses of CCK were 400, 1, 600 and 3, 200pmol, and the infusion rates were 50, 200 and 400 pmol/h, respectively. The injections were given just before feeding, whereas the continuous infusions, which lasted for 1 hour, were started 30 minutes before feeding. The injection of CCK resulted in a temporal but drastic decrease in feed intake in the initial 15 min of feeding and led to a decrease in the cumulative feed intake over 2 hours, the extent depending upon the dose. When CCK was administered by continuous infusion, the anoretic effect was more pronounced. Feeding behavior was almost completely suppressed during the infusion period and the decrease in cumulative feed intake was not only dose dependent but also much larger than for a bolus injections. From these results it was concluded that CCK administration into the third ventricle exerts an anoretic effect in conscious goats, dose dependently with much lower doses for continuous infusion causing an effect compared with the bolus injection.
  • 久米 新一, トハルマット トト
    1997 年 68 巻 6 号 p. 568-571
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Data from 59 Holstein single calves born from primiparous cows were collected to clarify the effect of age at first calving of dams and calf sex on blood components of calves at 1 day of age. Blood hematocrit and hemoglobin as well as plasma Mg and Zn were higher in female calves than in male calves. Blood hematocrit, hemoglobin and plasma minerals of calves at 1 day of age were not affected by age at first calving. A positive correlation between gestation length of dams and body weight of calves, and negative correlations between gestation length of dams and plasma Zn of calves and between body weight and plasma Zn of calves were observed.
  • 西出 武弘, 栗原 光規, 寺田 文典, 柴田 正貴
    1997 年 68 巻 6 号 p. 572-578
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    最近急激に増加しつつある黒毛和種の受精卵を移植した単胎および双胎妊娠のホルスタイン種乳牛の,妊娠末期における代謝エネルギー(ME)要求量について検討した.試験には,黒毛和種胎子を妊娠したホルスタイン種の単胎牛を12頭および双胎牛を6頭用い,妊娠末期に飼養試験およびエネルギー代謝試験を実施して,養分要求量について検討した.妊娠期間は単胎牛の方が長く,子牛1頭当りの分娩時体重は単胎の方が大きかった.双胎牛では,妊娠210日以降に飼料摂取量が減少したため,エネルギー摂取量が減少し,その結果分娩後の母牛の体重は試験開始時の体重よりも減少した.双胎牛の熱発生量は,分娩直前に大きく増加したため,エネルギーの蓄積量は大きく負となった.胎子のエネルギー利用効率は,単胎牛で11.6%,双胎牛で13.1となり,大きな違いはみられなかった.これらの結果から,黒毛和種の胎子を妊娠したホルスタイン種乳牛の分娩前60日間の妊娠に要するME量は単胎牛で265Mcal,双胎牛で450Mcalであり,分娩前60日間のME増給量は,単胎牛で1日あたり4.4 Mcal,双胎牛で7.5Mcalとなった.
  • 若松 純一, 長尾 哲二, 沼田 正寛, 中村 豊郎, 藤巻 正生
    1997 年 68 巻 6 号 p. 579-586
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    食肉,特に牛肉は活力•精力の増強のイメージが強いため,疲労の低減や疲労回復といった特有の生体調節機能を有すると期待される.今回我々は,マウスを用いた運動負荷実験において,牛肉が疲労を低減するかどうかについて調査した.いずれの群においても実験期間中の体重の推移に違いはみられなかった.また,飼料摂取量においても,群間で有意差はみられなかった.さらに,一般状態に異常が認められなかったことから,牛肉,牛脂の長期連続摂取は成熟マウスの生育に悪影響を及ぼさないことがわかった.牛肉+牛脂群において,カゼイン+植物油群と比較し,遊泳時間に有意な延長がみられた(p<0.05).カゼイン+牛脂群の遊泳時間にも延長がみられたが,カゼイン+植物油群との有意差は確認されなかった.牛肉+牛脂群およびカゼイン+牛脂群は,懸垂持続試験において強制泳3分後の懸垂持続時間に有意な延長がみられた(p<0.05).強制遊泳30分後では,牛肉+牛脂群のみがカゼイン+植物油群と比較して懸垂持続時間に有意な延長がみられた(p<0.05).これらの結果から,牛肉,特に赤肉部分に抗疲労効果があることが示唆された.カゼインを供試したマウスの血漿中のグルコースおよび乳酸含量は,運動負荷前と比較して大幅に低下したが(p<0.05),牛肉+牛脂を供試したマウスでは負荷前と比べ,血糖はほぼ同等,乳酸については若干の増加がみられた.牛肉+牛脂群におけるこれらの血液成分の変化は,カゼイン+植物油群と比較して小さいものとなった.
  • 前田 英勝, 沼田 幸代, 豊田 敦
    1997 年 68 巻 6 号 p. 587-595
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    羽毛や廃毛はケラチンで構成されており,貴重なタンパク資源である.他方,近年,鰯の不漁や大豆の価格高騰により飼料や有機質肥料製造のためのタンパク質原料の調達が困難な状況にある.そこで,羽毛や廃毛の有効利用技術としてより簡便で大量処理が可能な溶解方法の開発が望まれている.研究の結果,羽毛と羊毛を常温常圧下アルカリで処理するのみで可溶化できることを見いだした.羽毛の場合30°Cで20時間,3%および5%水酸化ナトリウムで処理したとき,可溶化率はそれぞれ43.5%,91.9%であった.5%水酸化カリウムでは54.9%であった.羊毛の場合30°Cで20時間,3%および5%水酸化ナトリウムで処理したとき,可溶化率はそれぞれ81.6%,95.6%であった.5%水酸化カリウムでは85.1%であった,羽毛や羊毛を5%水酸化ナトリウムで可溶化した液には1%前後のL-セリン,0.5%前後のグリシン,それに微量の未知のアミノ酸誘導体が含まれていた.両可溶化液に90%濃度になるようにエタノールを加え,沈澱画分と上清画分に分画した.羽毛の場合同じ量の溶解成分が沈澱画分と上清画分に分配されていた.羊毛の場合溶解成分の77%が沈澱画分,23%が上清画分にそれぞれ分配されていた.これらの結果から羽毛や羊毛はアルカリ分解によって大きく崩壊していることが分かる.両画分の塩酸加水分解物に存在するアミノ酸の大部分はL-グルタミン酸等,一般的なアミノ酸が占めていたが,それ以外にはL-システイン酸,ランチオニン,2種類の極微量の未知のアミノ酸誘導体が検出された.必須アミノ酸の含量は少なかった.薄層クロマトグラフィの結果ではアミノ酸以外の物質に由来するスポットは認められなかった.これらの可溶化物を各種の酵素を用いて分解した結果,32-33%のアミノ酸が得られ,L-バリンやL-ロイシン等疎水性のアミノ酸が多く認められた.羽毛および羊毛をアルカリで可溶化後リン酸で中和し,有機質肥料としての用途が考えられる.
  • 角田 幸雄, 加藤 容子
    1997 年 68 巻 6 号 p. 596-602
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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