産卵鶏におけるトレオニン(Thr)代謝の様相を明らかにするために,組織中の遊離アミノ酸(AA)濃度とThr代謝酵素活性に及ぼす飼料中Thr含量の影響について検討した.38週齢の産卵鶏に飼料中Thr濃度が,0.32~0.67%までの5種類の試験飼料を28日間給与した.その後,肝臓,腎臓および十二指腸ホモジネートの3種のAA, Thr,セリン(Ser),グリシン(Gly)濃度と,ThrとSerの分解およびGly生成酵素活性を測定した.飼料中Thrが0.32~0.42%のとき,3組織中Thr濃度は一定で,その後飼料中Thr濃度が高くなるに従って直線的に増加した.両直線の交点のThr濃度は0.46%であり,この値は産卵率や血漿Thr濃度から求められたThr要求量と一致した.組織中Ser濃度は,飼料中Thr濃度が要求量より低い水準では比較的一定であり,飼料中Thr濃度が高くなるに従って減少した.組織中Gly濃度は,飼料中Thr濃度に影響されなかった.しかし,同-AAでも組織間で顕著な濃度差がみられた.次に,Thr代謝酵素活性に関しては,肝臓ではThrとSerの分解,Glyの生成いずれも飼料中Thr濃度の影響は明らかではなかった.腎臓では,ThrからGly生成の活性が飼料中Thr濃度の増加に伴って増加した.十二指腸では,GlyからSerへの系に関与する酵素活性を除いて,すべての酵素活性が飼料中Thr濃度の増加に伴って増加し,かっすべての酵素活性が他臓器に比し,2ないし3倍高かった.これらの結果から,SerからGlyへの変換が増加することは,飼料中Thr濃度が要求量水準より高くなったとき,組織中Ser濃度が減少する理由の-因であることが示唆された.
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