日本畜産学会報
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82 巻, 1 号
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一般論文
  • 馬場 俊見, 清水 知佳, 橋本 優子, 増田 豊, 鈴木 三義
    2011 年 82 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    北海道のホルスタイン初産個体の産乳形質に関して,飼養形態間および種雄牛の国籍間における遺伝と環境の交互作用を調査した.表型値に対する父牛の予測伝達能力の回帰係数を推定し,スケーリング効果の有無を調べた.さらに,飼養形態のみにおいて,各飼養形態の同一形質を別形質とみなし,アニマルモデルにより遺伝相関を推定した.飼養形態は放牧,舎飼いならびに不明の3クラス,種雄牛の国籍は日本,アメリカ,カナダおよびその他の4クラスに分類した.顕著なスケーリング効果が,放牧で確認された.種雄牛の国籍に関する回帰係数は,アメリカおよびその他で1を超え,カナダでは乳タンパク質量以外で有意に1を下回った.日本では,0.92~0.95であった.飼養形態間の遺伝相関は各組み合わせで0.98~0.99であった.放牧でスケーリング効果があったが,遺伝相関の結果は,飼養形態の違いを考慮する必要がないことを示唆した.
  • 小西 一之, 米内 美晴, 大藪 武史, 松田 秀雄, 今井 敬
    2011 年 82 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    過剰排卵処理の反応性に対する体細胞クローン牛の斉一性と正常性を検証するため,同一ドナー細胞由来の黒毛和種体細胞クローン未経産牛5頭と人工授精由来の対照牛7頭にFSHとPGF2α類縁体(PG)を用いて過剰排卵処理(SOT)を行い,発情と排卵の状況,卵巣反応と胚回収成績を調べた.また,卵巣中の卵胞数と血中ステロイドホルモン値をSOT前の発情からSOT時の発情後4日目あるいは胚回収日まで毎日測定した.体細胞提供牛(ドナー牛)のSOTによる胚回収成績も調べた.体細胞クローン牛,ドナー牛とも正常胚率は高かった.対照牛群に比べ体細胞クローン牛群では,卵巣の小卵胞(径が5mm以下)数の推移,PG投与から発情開始あるいは排卵開始までの間隔,発情の長さ,排卵の状況および胚回収成績(正常胚率)のばらつきが有意に小さく斉一性がみられた.いずれの項目においても体細胞クローン牛の結果に異常はみられなかった.
  • 小西 一之, 米内 美晴, 金山 佳奈子, 別府 哲郎, 今井 敬
    2011 年 82 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    同一ドナー細胞由来のホルスタイン種体細胞クローン牛6頭の生理機能における正常性と牛群の斉一性を検証するため, 初産次泌乳期間の血液生化学成分9項目(アルブミン(ALB), 尿素窒素(BUN),グルコース(GLU),総コレステロール(TCHO),遊離脂肪酸(FFA),β-ヒドロキシ酪酸,GOT, γ-GTP, カルシウム(Ca))の濃度とその推移を調べた.対照牛群として,人工授精で生産されたホルスタイン種5頭を用いた.血液の採材日毎に比較すると,ALB, TCHO, GOT, γ-GTPは泌乳期間のほとんどあるいは一部の連続する採材日で,対照牛群に比べ体細胞クローン牛群において濃度のばらつきが小さかった.また,分娩後1-35日,42-91日,118-284日に分けて比較すると,FFAとCaを除く7成分の濃度の推移は,対照牛群に比べ体細胞クローン牛群に斉一性がみられた.さらに,体細胞クローン牛群における9成分の泌乳期間中の濃度とその推移には異常を認めなかった.
  • 中村 正斗, 中島 恵一, 高橋 雄治
    2011 年 82 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種乳牛の乾乳期30日への短縮が,次の泌乳前期の乳量・乳成分,TDN充足率,血液成分,疾病発生および繁殖性に及ぼす影響を明らかにするため,分娩前2ヵ月から分娩後3ヵ月まで飼養試験を行った.短縮区は泌乳後期牛14頭を用い,グラスサイレージ(GS)主体給与で搾乳日数を延長,分娩予定の30日前に乾乳し,乾乳後は分娩まで乾草,GS,配合飼料を給与した.対照区は平均乾乳期間110日の乾乳牛14頭を用い,分娩前1ヵ月までは乾草のみ,それ以後は短縮区と同じ飼料構成で給与した.分娩後は両区ともGSと配合飼料を混合して不断給餌した.その結果,乾乳期30日への短縮は,泌乳前期の乳量が抑えられ(P < 0.05),乳タンパク質率が増加し(P < 0.05),体重減少やボディコンディションスコアの低下が小さく(P < 0.05),血液成分では血糖値が上昇傾向(P < 0.10),遊離脂肪酸濃度が低下(P < 0.05)を示し,泌乳前期の栄養状態の改善が推察された.また短縮区は対照区に比べ泌乳前期のTDN充足率が上昇する傾向(P < 0.10)を示した.繁殖性と疾病発生に及ぼす乾乳期短縮の悪い影響は認められなかったが,短縮区の在胎日数が短かった(P < 0.05).
  • 阿部 友香, トスカーアレン 賢太, 樋口 豪紀, 永幡 肇
    2011 年 82 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    搾乳過程および分房乳の体細胞数が泌乳牛の生乳の衛生学的および理化学的性状に及ぼす影響を検討する目的で,前搾り乳中の体細胞数10万/mL未満,10~30万/mL, 50~400万/mLおよび1000万/mL以上の分房乳について,体細胞数,総菌数,乳成分,N-アセチル-β-グルコサミニダーゼ(NAGase),乳酸脱水素酵素(LDH)活性および乳タンパク分析を実施した.体細胞数10万/mL未満,10~30万/mLおよび50~400万/mLの分房乳において搾乳過程に伴い体細胞数に有意な(P < 0.05)増加が認められた.乳脂肪率も体細胞数と同様の推移を示し体細胞数10万/mL未満および10~30万/mLの2群で有意な(P < 0.05)増加を認めた.カゼイン濃度は搾乳過程において漸減し,体細胞数10~400万/mLおよび1000万/mL以上の分房乳で減少した.NAGaseおよびLDH活性は後搾り乳で増高した.搾乳過程および体細胞数により生乳の衛生学的ならびに理化学的性状の変化が確認され高体細胞乳でその変化は増大することから供試乳の採取ならびにその取扱いに留意が必要である.
  • 李 潤雨, 狩野 秀之, 山本 直之, 杉本 安寛, 西脇 亜也
    2011 年 82 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    韓国における牛肉の消費者意向および購買行動をもとに,牛肉の消費者ニーズを明らかにし,韓国産牛肉の消費拡大のための課題を検討する.分析では,アンケート調査に基づき,消費者属性ごとの,牛肉の消費者意向および購買行動の差異の有無をカイ2乗検定によって検証する.さらに,数量化理論III類により,韓国産牛肉の消費拡大のための課題を明らかにする.その結果,次の点が明らかとなった.まず,属性による有意な差が以下に関して見られる.それは,(1)牛肉への関心の高さに対する性別による差,(2)精肉店(専門店)の利用意向の高さに対する同居人数による差,(3)購買における優先事項に対する職業による差,(4)国産牛肉そのものへの不信感の強さに対する性別・年齢・職業による差である.次に,国産牛肉の消費拡大のための課題として,(1)小売価格の引き下げ,(2)味の向上,(3)偽りのない産地表示と衛生に対する安全性の向上,(4)包装の工夫があげられる.
技術報告
  • 大橋 勝太郎, 根岸 晴夫
    2011 年 82 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    乳業で汎用される乳酸菌を豚肉に接種して発酵させた非加熱乾燥食肉製品の新規加工技術を開発するために,豚肉中の大腸菌群に及ぼす乳酸菌接種の影響を調べた.製品は薄切り肉を乳酸菌カルチャーに浸漬して2~24時間培養後,調味液に一夜浸け,水分活性が0.87未満に達するまで20℃で乾燥させた.市販ヨーグルト5種類に豚肉を浸漬して,37, 43℃で2~24時間培養した場合には,何れの製品からも大腸菌群は検出されなかった.さらに,Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusStreptococcus thermophilus混合カルチャーに同様に豚肉を浸漬し,10~43℃で2~8時間培養処理した場合にも,大腸菌群は検出されずに106~107 cfu/gレベルの乳酸菌が生残した.また105 cfu/gレベルのE. coli汚染肉を5, 25℃,及び43℃で培養した場合には,供試乳酸菌の至適温度43℃で8時間培養した場合のみ,pHは7時間後にpH 4.2付近に達し,製品から完全にE. coliは検出されなくなった.以上から乳酸菌接種によって豚肉中の大腸菌群および大腸菌の生育抑制効果が示唆され,特に乳酸菌の至適温度で培養したときにその効果が高まることが明らかになった.
  • 深澤 充, 堤 道生, 恵本 茂樹, 新出 昭吾, 熊谷 周一郎, 高橋 佳孝
    2011 年 82 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2011/02/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    小規模放牧を実施している農家を対象に脱柵の実態についてアンケート調査を行い,脱柵を防止するポイントを抽出した.山口,鳥取,広島県の3県で調査を行い回答を得た106件のうち,「電気牧柵を用いて」「黒毛和種繁殖雌牛」の放牧を行っている83件の回答について分析を行った.脱柵された経験は39件(47%)で「ある」と回答が得られた.原因については,「過放牧」を挙げる回答が最も多かった(17件).特に放牧後期に脱柵した場合での回答が多く,草が少なくなる時期に退転牧の判断を的確に行うことや補助飼料の活用などが必要であると考えられた.次いで回答の多かったバッテリーなどの機材の不調(13件)は,放牧前期,中期に多く見られ,放牧前の機材の確認や定期的なバッテリーの点検・交換が必要である.電圧点検などの頻度と脱柵の有無との関係について調査したところ,点検の頻度を上げることが脱柵防止に有効であることが確認された.
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