大腸癌初回手術例1,271のうち本邦基準によるHNPCCは43例,3.4%であった.A群4例,0.3%,B群39例,3.1%,男30例,女13例(2.3:1)であった.50歳未満の若年発症12例,27.9%,右側大腸癌18例,41.9%,大腸多発癌13例,30.2%,他臓器重複癌17例,39.5%(うち胃癌重複10例,23.3%)であった,HNPCC以外の1,228例を対照として比較するとすべて有意に高頻度であった.初回手術時に本症と診断できたものは36例,2,8%で,術後の経過中に診断されたものも7例,0.6%あり本症の頻度については術後の追跡調査による症例の累積が必要であった.本症における大腸多発癌をみると,同時性では第1癌,第2癌とも遠位側に多く発生し,進行癌と早期癌の組合せが多く認められた.異時性では両側に発生する傾向が認められた,多発癌の分布と病理的組合せについては本症と対照の間に差は認められなかった.他臓器重複癌,とくに第2癌として発生した胃癌は予後に関連する因子となるので定期的検査によって早期発見,治療に努あるべきと考えられた.
抄録全体を表示