日本大腸肛門病学会雑誌
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50 巻, 6 号
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  • 嘉数 朝政, 松本 誉之, 原 順一, 渡辺 芳久, 中村 志郎, 岡部 弘, 押谷 伸英, 北野 厚生, 小林 絢三, 金城 福則, 斎藤 ...
    1997 年 50 巻 6 号 p. 383-391
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    クローン病の実験モデルである2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)大腸炎を作成し,塩酸Azelastine(AZ)を投与して病変粘膜局所における免疫担当細胞の動態を免疫組織化学的に検討した.TNBS大腸炎群の潰瘍形成部ではICAM-1,Mac-1陽性の単核球の強い浸潤があり,隣接した粘膜固有層にはICAM-1陽性の血管内皮細胞とLFA-1,Mac-1陽性の単核球の増加がみられた.AZ投与群では,潰瘍形成を示したのは5例中1例のみであった.肉眼的に炎症のない粘膜においては,TNBS大腸炎群に比べICAM-1の発現とLFA-1,Mac-1陽性細胞は軽度に認められるのみであった.IgG,IgE含有細胞および好酸球数も有意に低下していた(p<0.05).AZはこれら接着分子の発現の抑制やIgG,IgE産生の抑制を介し病変の軽減をもたらすことが示唆された.
  • 81mKrを用いた検討
    亀山 雅男, 中森 正二, 今岡 真義, 古河 洋, 長谷川 義尚, 岩永 剛
    1997 年 50 巻 6 号 p. 392-398
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移巣切除時に,残肝再発予防を目的として肝動脈内挿管した4例に対し,81mKrを緩徐に肝動注し,γカメラで各体位(仰臥位・立位・右側臥位・左側臥位)3分間ずつ測定した.さらに,右葉上区,右葉下区,左葉の3カ所に関心領域(ROI)を設定した.その結果,肝持続動注時の薬剤分布が,体位によって変化することが判明した.また,肝の厚みをファントム実験で得られた減衰曲線にて補正し,各ROIの単位体積当たりのRIカウント数を比較した.その結果,薬剤が肝内に最も均等に分布するいわゆる至適体位は,右側臥位2例,左側臥位1例,立位1例であった.以上,患者への侵襲もなく簡便な81mKrを用いた至適体位決定法は,持続動注の治療効果を高めるうえで有用と考えられた.
  • 丸山 亮, 木附 久雄, 武地 幹夫, 岩川 和秀, 片平 俊彦, 野崎 良一, 高木 幸一, 高野 正博, 内田 雄三
    1997 年 50 巻 6 号 p. 399-404
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸内視鏡検査後に発症した虚血性大腸炎10症例の臨床的解析をとおして,本症を大腸内視鏡検査にともなう重要な偶発症と位置づけた.発生頻度は0.03%で,平均年齢は62.1歳(43~74),男女比は3:2であった.基礎疾患を有する症例は4例(40%)で,腹部手術の既往は6例(60%)に存在した.発症時の症状は,下血または腹痛であり,9例(90%)は24時間以内に発症していた.緊急内視鏡検査では,S状結腸を中心に全周性あるいは偏在性に浮腫,発赤,びらん,粘膜下出血の所見を認めた.全例ともtransient typeであり保存的治療のみで症状は改善しており,平均入院期間は12.7日であった.本病態発症の原因としては下剤処置および内視鏡操作による腸管内圧上昇と過伸展がもっとも重要と考えられ,これに基礎疾患による血管系因子が影響を及ぼしたものと思われる.大腸内視鏡検査にあたっては,偶発症としての本症の可能性を常に念頭におき,検査後早期の突然の下血,腹痛に際しては,早急に内視鏡検査を施行し,その病態の把握・治療に努める必要がある.
  • 川崎 雅俊
    1997 年 50 巻 6 号 p. 405-414
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    慢性機能的便秘患者を対象に腸内圧,臨床症状およびdefecographyを検討した.腸内圧曲線から運動係数(MI)を求め,クラスター分析に基づいて高MI群,中間群,低MI群の3型に分類し得た.3群の便秘に伴う腹部症状および便性状から高MI群は痙攣性便秘,低MI群は弛緩性便秘に相当し,中間群は痙攣性便秘に類似すると推察した.defecographyでは,低MI群の安静状態の直腸肛門角(ARA)は健常対象より鈍角であった.defecographyから,低MI群は排便機能の異常を伴う患者が多いと推察した.
  • 豊島 宏, 遠藤 健, 酒井 敬介, 永岡 栄, 笠原 大城
    1997 年 50 巻 6 号 p. 415-422
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌初回手術例1,271のうち本邦基準によるHNPCCは43例,3.4%であった.A群4例,0.3%,B群39例,3.1%,男30例,女13例(2.3:1)であった.50歳未満の若年発症12例,27.9%,右側大腸癌18例,41.9%,大腸多発癌13例,30.2%,他臓器重複癌17例,39.5%(うち胃癌重複10例,23.3%)であった,HNPCC以外の1,228例を対照として比較するとすべて有意に高頻度であった.初回手術時に本症と診断できたものは36例,2,8%で,術後の経過中に診断されたものも7例,0.6%あり本症の頻度については術後の追跡調査による症例の累積が必要であった.本症における大腸多発癌をみると,同時性では第1癌,第2癌とも遠位側に多く発生し,進行癌と早期癌の組合せが多く認められた.異時性では両側に発生する傾向が認められた,多発癌の分布と病理的組合せについては本症と対照の間に差は認められなかった.他臓器重複癌,とくに第2癌として発生した胃癌は予後に関連する因子となるので定期的検査によって早期発見,治療に努あるべきと考えられた.
  • 大塚 正彦, 穴沢 貞夫, 進藤 勝久, 安富 正幸, 大村 裕子, 沼田 悟, 久保 善規, 西出 薫, 吉川 隆造
    1997 年 50 巻 6 号 p. 423-428
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    皮膚保護剤長期使用者27例を対象に,皮膚保護剤貼付部の組織学的変化を検討し,組織学的変化と肉眼形態,機能変化とを比較検討した.肉眼所見は色素沈着12例,色素脱失2例,発赤2例,変化なしが11例であった.皮膚血流量,角質水分量,経皮水分喪失量は貼付部で健常部より多い傾向にあった.組織学的検討では,角層剥離は1例を除く全例に認め,表皮の厚さは19例で健常部より厚く,残りの8例で差がなかった.メラニンの量は増加10例,変化なし10例,減少が7例であり肉眼所見とは必ずしも一致はしなかった.炎症細胞浸潤は中~高度5例,軽度11例,なしが11例であった.また好酸球を6例に認め,このうち4例が粘着性装具単独使用者であり,アレルギー反応との関連が示唆された.皮膚保護剤長期使用者においては,組織学的変化は角層の剥離,表皮の肥厚,炎症細胞浸潤が主たる所見であった.
  • 藤光 康信, 小柳 泰久
    1997 年 50 巻 6 号 p. 429-439
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    分離腺管によるラット大腸陰窩の三次元形態学的解析を行った.幼若ラットにおいて,陰窩はfission mechanismに従ってその数が増えることを確認した.まずはじめに,1つの陰窩底部の嵌入から2分割が始まり完全に2つの陰窩に分かれる.完全に2つの陰窩に分かれる前に一方または両方の底部で次の分割が始まると,3分割,4分割の陰窩となる.1,2-di-methylhydrazine(DMH)誘発ラット大腸aberrant crypt foci(ACF)もまたfission mechanismに従いその陰窩の数が増えることがわかった.ACFの経時的変化を調べると,多くのACFの中には,可逆性のものがあることが示唆され,不可逆性のものの一部に陰窩開口部の形態が小円型や脳回状のものが現れ,そのようなものが発癌過程における次のステップに進むと推察された.
  • 石原 雅巳, 寺本 龍生, 松井 孝至, 千葉 洋平, 山本 聖一郎, 安井 信隆, 石井 良幸, 奈良井 慎, 立松 秀樹, 小林 直之, ...
    1997 年 50 巻 6 号 p. 440-445
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は22歳の男性.1995年5月,排便困難,血便を主訴に近医を受診した.直腸癌の疑いで当院を紹介され1995年5月29日,入院となった.注腸造影,大腸内視鏡検査では肛門縁より約7cmの直腸左壁を中心とし半周性の隆起を主体とした腫瘤の集蔟を認め,感染性腸炎を疑わせる所見であった.生検の病理組織像は形質細胞の多い非特異的炎症のみであった.梅毒血清反応が陽性であったことから,梅毒性の直腸炎と診断し,駆梅療法を開始した.開始後,梅毒血清抗体価の低下にともない病変の縮小を認め,治療後約4カ月で梅毒血清抗体価の陰性化と病変の消失を認あた.さらにTreponema pallidum(以下T.p.)に対する抗体を用いた酵素抗体法によりT.p.が生検部の病理組織より証明され,梅毒性直腸炎の確定診断がされた.
  • 西森 武雄, 坂崎 庄平, 小池 洋志
    1997 年 50 巻 6 号 p. 446-451
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性,腹痛,腹部膨満感を主訴に入院.腹部単純X線検査でニボー像がみられた.注腸造影では横行結腸に腫瘍像を認め,それより口側へは造影剤は流入できなかった.大腸内視鏡検査では横行結腸に中央に潰瘍を認めた全周性の腫瘍を認め,それより口側へは内視鏡は挿入できなかった.腫瘍部の生検ではgroup Vであり,横行結腸癌と診断した.術中に回腸末端部に硬結を認めたため,結腸右半切除術を施行した.切除標本にて回腸末端部に数個の潰瘍病変を認め,病理組織学的に閉塞性回腸炎と診断した,本邦における閉塞性回腸炎の報告は自験例を含めて15例であった,閉塞性の大腸癌の手術に際しては,本症の存在を念頭に置く必要があると思われた.
  • 1997 年 50 巻 6 号 p. 452-468
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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