日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
56 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 浜谷 茂治, 和田 了, 横内 幸, 織田 良夫
    2003 年 56 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸鋸歯状腺管ポリープ(BCP-ESP)を客観的な指標に基づいて組織形態分類し,それらの粘液形質を免疫組織化学的に検討した.BCP-ESP60病変および鋸歯状腺管をもたない通常型腺腫30病変を対象に,抗胃腺窩上皮型アポムチン抗体,抗胃幽門腺型ムチン抗体,および抗腸型アポムチン抗体のそれぞれを用いて免疫染色を行った.BCP-ESP60病変は,Zone形成の有無(核サイズが陰窩底部から表層部に向かって減少する場合をZone形成「有り」とした),および腺管分枝(下方,側方)の有無により,5型に分類された.いずれの病変でも,胃腺窩上皮型形質が腸型との混合形質として様々な頻度で発現していた.胃腺窩上皮型細胞は,type1からtype3BCP-ESPでは病変全体に分布し,type5BCP-ESPでは,ある領域に限って認められる場合が多かった.type3BCP-ESPおよびvillousadenomaでは,より高率に胃腺窩上皮型細胞が出現していた.BCP-ESPにおける胃型形質の発現形式には,胃腺窩上皮化生を示唆する例と腫瘍の部分的な胃腺窩上皮型分化と考えられる例のあることが示唆された.
  • Ki-67,P53免疫染色を用いた悪性度を中心に
    立石 訓己, 有馬 純孝, 二見 喜太郎, 立川 大介, 成富 一哉, 高山 成吉
    2003 年 56 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    2cm以下の進行癌(小型癌,n=26)の悪性度を検討する目的で2cm以上の進行癌(対照A群,n=530)と臨床病理学的に比較し,小型癌と対照A群のうち小型癌と臨床病理学的因子の一致する26例(対照B群)のKi-67標識率とP53蛋白発現の評価を行なった.A群と比較すると年齢,男女比に差はなく,小型癌で左側結腸に有意に多く直腸に少く,肉眼型では1型が,壁深達度でmpが有意に多かった.リンパ節転移は小型癌は2群に留まっていた.小型癌をpolypoid growth(PG,n=6)とnonpolypoid growth(NPG,n=20)に分けると脈管浸襲陽性例はNPGにおいて有意に多かった.同時性肝転移は小型癌2例で,いずれもNPG症例であった.5生率で差はなかった.P53蛋白発現に差はなく,Ki-67標識率では小型癌の特にNPGで垂直方向の増殖能が高かった.以上より小型癌のNPG症例は垂直に浸潤する癌で,生物学的悪性度が高いことが推察された.
  • 須田 和義, 菊田 信一, 早川 一博
    2003 年 56 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症には直腸肛門病変を伴うことが比較的多いと言われており,直腸肛門病変から本感染症が発見される可能性がある.本症例は当初炎症性直腸肛門狭窄を疑い後に,後天性免疫不全症候群(AIDS)発症を来した免疫不全を基礎に生じた直腸肛門部lymphomaによる腫瘍性狭窄と判明した一例である.症例は58歳男性で,肛門部疼痛を主訴に来院した.指診上,直腸肛門部の壁硬化,狭窄を認め,画像診断とから当初痔瘻や膿瘍による炎症性狭窄を疑った.保存的に疼痛鎮静せず,切開排膿を試みた.しかし,全く排膿が得られず,硬結部の針生検によりlymphomaの結果が,またHIV抗体(+)の血液検査結果も術直後に判明しており,今回の病態が明らかとなった.今後本邦でもHIV感染症の増加が予想され,疑わしい場合はもとより通常診療において,HIV抗体測定の重要性は増してゆくものと思われる.
  • 高 成勲, 大川 清孝, 青松 和揆, 追矢 秀人, 青木 哲哉
    2003 年 56 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    一卵性双生児の姉妹双方に発症したクローン病症例を経験した.症例1は19歳,女性.右下腹部痛,発熱を主訴として当院受診,内視鏡検査で回腸末端に縦走潰瘍を認め,クローン病と診断した.症例2は症例1の双生児の姉.右下腹部痛の訴えにて当院受診,注腸造影で上行結腸の部分狭窄と全大腸にアフタの多発を認め,クローン病と診断した.両症例とも,内科的治療にて一時軽快したが,その後,症状の再燃がみられたため,回盲部切除を施行した.術後,再発はなく,経過良好である.
    同様の症例は,欧米では比較的多くみられ,その検討より,クローン病の発症に遺伝的因子の関与が強く疑われる.本邦では,同様の症例報告は過去に一組のみであり,双生児双方に発症したクローン病症例は非常に稀である.
  • 小森 孝通, 柳生 俊夫
    2003 年 56 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌では,血行性・リンパ行性の膣壁転移は極めてまれであり,これまでに詳細な報告例は,本邦ではわずか5例しかない.今回,我々は,膣壁転移を伴ったS状結腸癌の1切除例を経験した.症例は74歳,女性.不正性器出血を主訴に当院産婦人科を受診した.内診にて膣壁に2cm大の腫瘍が認められ,生検にて腺癌と診断された.大腸内視鏡にてS状結腸に1/2周性の2型進行癌が認められた.手術時,腹水や腹膜播種は認められなかった.S状結腸癌は漿膜面へは露出しておらず,膣とは接していなかった.S状結腸切除術の後,経膣的膣壁腫瘍切除術が施行された.S状結腸癌は径28mm,中分化腺癌,sslylvln(-)と診断された.膣壁腫瘍は径23mmで,S状結腸癌と極めて類似した癌病巣が平滑筋層と横紋筋層の間にまで浸潤していた.病理組織学的所見の詳細な検討より,膣壁腫瘍はS状結腸癌からの脈管性転移と診断された.
  • 奥田 哲也, 岩垂 純一, 佐原 力三郎
    2003 年 56 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門疾患は差恥心を伴うため,患者に通院をためらわせ,正確な情報も入手しがたい.
    著者はインターネットのホームページを利用し肛門疾患の医療情報を公開すると共に,電子メールを用いて,医療相談を行ってきた.
    今回,相談者に対してアンケート調査を行ったところ,電子メールによる医療相談は患者が求める情報を提供する手段として有用であり,患者側からの評価も高いという結果が得られた.その反面,相談結果に対する責任問題に対しては医療側に厳しい対応が望まれており,医療―患者間のコンセンサスが確立する必要があると思われた.
  • 渡辺 賢治, 渡辺 元治, 増田 英樹
    2003 年 56 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    ニトログリセリン軟膏の最大肛門静止圧に与える影響について検討した.対象:平成12年11月から平成13年4月までに,0.5%ニトログリセリン軟膏(以下0.5%GTN軟膏)を投与した90例を対象とした.方法:0.5%GTN軟膏を肛門部に塗布し,約30分後に最大肛門静止圧を測定.0.5%GTN軟膏投与前後の最大肛門静止圧を比較検討した.結果:(1)0.5%GTN軟膏投与前の最大肛門静止圧110.2±52.2mmHgに対し,投与後は90.7±41.lmmHgと有意に低下した(p<0.0001).(2)0.5%GTN軟膏で低下した症例は最大肛門静止圧100mmHg以上で有意に多かった(p=0.0045).(3)最大肛門静止圧が100mmHg以上の症例は,未満の症例より有意に圧の低下を認めた(p=0.Ol21).以上より,0.5%GTN軟膏の投与は,内痔核患者において術前の最大肛門静止圧を下げるのに有効である.特に圧の高い症例ではより有効であると考える.
  • 佐藤 晋, 米田 啓三, 小方 二郎, 森 崇高, 和田 建彦, 坂本 啓彰, 馬島 亨, 加藤 孝一郎, 青木 達哉, 小柳 泰久
    2003 年 56 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    高齢者大腸癌(75歳以上)115例の術式,郭清度,予後,術後合併症,組織学的因子を壮年者大腸癌(41歳以上75歳未満)303例と比較検討した.組織学因子は両群間に大きな差はなかった.高齢者群の腫瘍占居部位は結腸癌では右側結腸に多く,直腸癌では下部直腸への発生が多く認められた.術式は直腸癌では腸管吻合を避けたHartmann手術と括約筋非温存術式が多く用いられていた.郭清度を比較すると結腸癌では差がなく,直腸癌では縮小手術を採用する傾向にあったが,根治度はいずれも両群間に有意差を認めなかった,治癒切除例の他病死を除く5年無再発生存率には,両群間に有意差を認めなかった.高齢者に術死・在院死を多く認めたが,縫合不全が原因となる症例はおよそ3割で,他の原因から重症感染を経て敗血症となることが多かった.
  • 冨木 裕一, 渡部 智雄, 仙石 博信, 田中 真伸, 須田 寸実人, 坂本 修一, 坂本 一博, 鎌野 俊紀, 鶴丸 昌彦
    2003 年 56 巻 1 号 p. 48-49
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 2003 年 56 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
feedback
Top