日本大腸肛門病学会雑誌
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55 巻, 10 号
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  • 山名 哲郎, 牧田 幸三, 岩垂 純一
    2002 年 55 巻 10 号 p. 799-806
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    骨盤直腸窩痔瘻は臨床的には指診で診断されるが,骨盤直腸窩に広がる瘻管や膿瘍腔をより正確に評価するためにはMRIが有用である.撮影法としては瘻管や膿瘍腔が高信号(白色)に描出されるT2強調像およびガドリニウム造影後Tl強調像が適しており,脂肪抑制法を適宜併用するのがよい.冠状断像では肛門管上方に逆ハの字型にひろがる低信号の肛門挙筋の上,横断像では直腸レベルの直腸周囲,矢状断像では尾骨より頭側に瘻管・膿瘍腔の所見がみられる.骨盤直腸窩痔瘻の所見を有する症例では坐骨直腸窩痔瘻や高位筋間痔輝の所見も同時に認める場合が多い.痔瘻癌を合併した骨盤直腸窩痔瘻では瘻管壁・内容の不整や肥厚,みチン貯留の所見が認められる場合もある.クローン病に合併した骨盤直腸窩痔瘻症例では複雑痔瘻自体はクローン非合併例の複雑痔瘻と大きな違いはないが,クローン特有の多数の錯綜する痔瘻がみられる.
  • 佐藤 公治, 小藤 宰, 山田 一隆, 高野 正博, 丸山 亮
    2002 年 55 巻 10 号 p. 807-810
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    骨盤直腸窩痔瘻の診断法について検討した.当院では術前診断に従来の視診,指診に加えて経肛門的超音波検査(肛門エコー)や肛門MRI検査を行なっている.1999年1月より2001年12月までに当院で経験した骨盤直腸窩痔瘻症例27例の正診率を比較してみると,指診77.8%,肛門エコー59.3%,肛門MRI52.6%であった.骨盤直腸窩痔瘻の診断は視診,指診,肛門エコー,肛門MRIを併用することによって正診率をあげることができると思われる.
  • 高野 正博
    2002 年 55 巻 10 号 p. 811-817
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    骨盤直腸窩痔瘻は最も難治性の痔瘻である.再発を防ぎ,他のタイプの痔瘻並みに良好な成績を得るには,その特徴を熟知した上で原則的な病態を押さえ,指診やMRIにより正確な診断を個々の症例で行うことが重要である.手術は括約筋温存術を採用し,原発口,原発膿瘍,仙骨前に至る瘻管,直腸穿孔,2次瘻管などの複雑な病変の処理を余すところなく丁寧に行い,必要に応じて十分なドレナージ形成と筋肉充填を行う.現在のところ,再発率を15.3%に押さえているが,同じIV型で再発することが17例中9例と多く,再手術に当たっては上記の主病変部のさらに十分な処置が必要で,再度確実な処理を行う.初回手術をさらに丁寧に行うことによって再発率を下げることは十分可能であると考える.なお癌化,結核によるものなど特殊な例もあるので注意を要する.
  • 岩垂 純一
    2002 年 55 巻 10 号 p. 818-823
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1990年から1999年までの骨盤直腸窩痔瘻の手術例を術後肛門機能のアンケート調査を含めて検討した.クローン病の腸病変ならびに痔瘻癌を合併したものを除く初回手術例60例に肛門保護手術33例,筋肉充填術19例,その他8例が行われ再発は各々24.2%,15.8%,12.5%となっていた.また平均治癒期間は4.4カ月,5.2カ月,4カ月となっそいた.骨盤直腸窩痔瘻初回手術例(IV群)28例と坐骨直腸窩痔瘻手術例(III群)246例の術後肛門機能のアンケート調査では満足度に差はなく肛門の締りが悪くなったと答えたものはIV群56%,III群54%と差は無かった.また固形便の失禁はIV群12%,III群5%,水様便の失禁はIV群53%,III群40%,ガスの失禁はIV群54%,III群41%があると答えた.
    以上の肛門の締りの悪さが日常生活に影響ありとしたものはIV群40%,III群25%であった.
  • 辻仲 康伸, 浜畑 幸弘, 松尾 恵五
    2002 年 55 巻 10 号 p. 824-828
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    骨盤直腸窩痔瘻は頻度は少ないが難治であり,その発症には少なからずSupralevator abscessの不適切drainageが含まれている.隅越分類のIV型を骨盤直腸窩痔瘻とした場合,新たにParks分類の進展形式に対応した規定を置き,頻度,成因,各種手術法による再発率を検討した.初回手術での骨盤直腸窩痔瘻は2.4%であり,他医再発例では44.4%を占めていた.手術法の選択にあたっては経験の少ない術者はまずsetonを行うのが妥当であり,extrasphinctericやsuprasphincteric fistulaには熟達した術者が筋縫合など1次口閉鎖術式を行うことが,治療期間を短縮し,肛門機能の保存のために最良の方法となる.坐骨直腸窩から骨盤直腸窩まで深く広く進展する例は積極的lay-openをする以外にないが,これらの症例は少ない.最新の診断法,肛門機能評価に基づいて,痔瘻の進展形式から適切な治療を選択できるような新しい痔瘻の分類も必要であると考えられた.
  • 黒川 彰夫, 木附 公介, 黒川 幸夫
    2002 年 55 巻 10 号 p. 829-833
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    骨盤直腸窩痔瘻の頻度は少ないものの病態を理解できず,治療に難渋する場合が多い.われわれは痔瘻に対する結紮療法(seton法)の有用性について,根治性と機能温存という2大要素を満足させる術式として強調してきたが,骨盤直腸窩痔瘻においても良好な成績を収めてきた,最近の痔瘻手術総数1,009例のうち,骨盤直腸窩痔瘻(IV型)は21例(2.1%)であった.手術方法は726例(72.0%)にseton法を実施.平均治癒日数は45.9日と長期であり,高位痔瘻(IIH型,III型,IV型)では平均3カ月を越えた.術後障害では便漏れをきたした症例はなく,軽度のガス漏れが1.0%にみられ,高位痔瘻で2.3%,IV型で5.6%であった.再発は少なく1.6%であったが,高位痔瘻では4.2%,IV型では16.7%であった.
  • 松田 保秀, 川上 和彦, 木村 浩三, 浅野 道雄, 金子 寛, 三枝 直人, 青山 浩幸, 青山 敦子, 野中 雅彦, 友近 浩
    2002 年 55 巻 10 号 p. 834-840
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    骨盤直腸窩痔瘻は全痔瘻の0.4~2.9%を占めるといわれるほど頻度の少ない痔瘻である.その急性期の症状は肛門痛,発熱,肛門腫脹,排膿など一般痔瘻と変わらないが,重症感が強い.本疾患は過去に痔瘻手術を受けていることが多く,再発,または複雑痔瘻化して専門医を受診することが特徴である.診断は指診でほぼつくが,坐骨直腸窩から骨盤直腸窩にかけての硬く大きな盤状の炎症性硬結を触知で切れば容易であるが.複雑な瘻孔の走行に関してはTAUS,CT,MRIが有用であり,指針よりも信頼性が高い.膿瘍期ではまず充分な切開排膿・ドレナージを行うことにより,痔瘻の重症度のレベルを減少させることができる.直腸への穿孔も頻度が高い.手術はHanley法に準じて行うが,創は大きく,深く,尾骨を切除することも多いので,治癒には平均3カ月を要し,再発率も20~30%と高い.しかも術後の肛門機能は多少低下する傾向にあるので,筋肉充填や括約筋温存手術を追求すべきである.
  • 内視鏡検査(通常,EUS,拡大)を中心に
    松永 厚生, 野村 美樹子, 内海 潔, 平澤 大, 妹尾 重晴, 鈴木 敬, 菅原 俊樹, 洞口 淳, 高澤 磨, 金 潤哲, 斉藤 千恵 ...
    2002 年 55 巻 10 号 p. 841-845
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    通常内視鏡(CS),細径超音波プローブ(MS),拡大内視鏡(ME)における早期犬腸癌の深達度診断能を検討した.臨床における深達度正診率の成績は,CS(215病変)で90%,MS(250病変)は病変描出不能例を含めた全体で81%,病変描出例で91%,ME(54病変)は87%であった.内視鏡医の経験の長短(内視鏡経験10年以上(A群),3~4年(B群),2年未満(C群))と各診断法別(CS:215病変,MS:189病変,ME:56病変)の正診率をみてみた.正診率はCSではA群90%,B群83%に対し,C群では66%と低かった.MSは各々90%,81%,77%で,MEは各々89%,89%,77%と同様であった.内視鏡の経験が豊富な群ではCSのみで良好な深達度診断能が得られるが,経験の少ない群ではCSにMSとMEを付加することで深達度診断能が向上することが示された.
  • 松川 正明, 幸田 隆彦, 山本 栄篤, 平塚 伸
    2002 年 55 巻 10 号 p. 846-850
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸sm癌を750μmを境にsm-mild癌とsm-massive癌に分けて,sm-massive癌の特徴的なX線所見を求めた.病変による腸壁の変形を認めた場合はsm-massive癌であった.しかし,sm-massive癌でも腸壁に変形を認めない例もあった.隆起型sm-massive癌の1/3はバリウム斑を有していた.無茎性sm-massive癌で病変辺縁に平滑な隆起を認めた.表面陥凹型sm-massive癌の特徴はバリウム斑,陥凹辺縁の平滑な隆起,粘膜ヒダ集中であった.バリウム斑はやや円形で濃い傾向があった.sm-massive癌は陥凹型でsmに多く浸潤すると腫瘍自体の厚さで陥凹が隆起するので,バリウム斑はなくなり平滑な辺縁と二重の輪郭を形成する.sm-massive癌を示唆するX線所見が二つ以上あった場合にはsm癌と診断できる.
  • 岡部 聡, 杉原 健一
    2002 年 55 巻 10 号 p. 851-857
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    内視鏡的切除後の追加腸切除の適応を明確にするために自験の大腸sm癌についてリンパ節転移のrisk factorを検討した.またMSKCC大腸外科においてTl直腸癌に対する経肛門的局所切除例の予後を検討した,自験例のリンパ節転移は16症例(8.8%),異時性血行性転移は11症例に認められ,sm depthおよびsm widthの最低値は,リンパ節転移例がそれぞれ1,050μm,3.25mm,血行性転移例が2,450μm,3.85mmであった.大腸sm癌のリンパ節転移危険因子の多変量解析では,リンパ管侵襲のみが有意な独立変数であった.また経肛門的切除を施行したT1直腸癌81例中局所再発は4例に認められた.今回の検討の結果,組織型が高分化型腺癌のみからなる結腸sm癌は深達度に関係なく,内視鏡的切除を含めた局所切除で根治が期待できると考えられた.T1直腸癌の多くの症例は経肛門的局所切除のみで治癒が期待できるが既存の予後因子のみでは予測不能な局所再発例もあり,術後5年以上の長期follow-upが必要である.
  • 正木 忠彦, 松岡 弘芳, 阿部 展次, 泉里 友文, 森 俊幸, 杉山 政則, 跡見 裕
    2002 年 55 巻 10 号 p. 858-866
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    臨床的に有用な大腸sm癌のリンパ節転移の危険因子を明らかにする目的で,51病変の大腸sm癌切除標本に抗E-cadherin,a-catenin,β-catenin,CD44variant6,MMP-7,laminin-5γ2chain抗体を用いて免疫染色を行い,リンパ節転移・局所再発との関連を検討した.単変量解析では主たる組織型(p=0.02),簇出(P=0.004),β-catenin (nuclearpattern)(p=0.01),laminin-5Y2chain(p=0.001)の4因子がリンパ節転移・局所再発と有意に関連した.多変量解析の結果,β-catenin(nuclearpattern,)(p=0.029)とlaminin-5γ2chain(p=0.002)の2因子が独立したリスクファクターとして選択された.これら2因子が陽性であることをリスクファクターとみなすと,感度100%,特異度91%,陽性的中度50%,陰性的中度100%であった.β-cateninとlaminin-5γ2chain免疫染色は,追加腸切除の適応決定に有用である可能性が示唆された.
  • 絶対分類と相対分類を中心に
    太田 智之, 折居 裕, 村上 雅則, 佐藤 龍, 藤谷 幹浩, 斉藤 裕輔, 高後 裕
    2002 年 55 巻 10 号 p. 867-872
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    現在,大腸sm癌における癌浸潤度分類は相対分類と絶対分類が汎用されている.相対分類におけるsm1とsm2以深との区別はリンパ節転移率に有意差を認め,腸管切除例の評価においては有用性が高いが,標本作成の仕方で浸潤度が異なる可能性があることや内視鏡的治療後に追加治療を考慮する場合の評価において判定基準が曖昧となることが欠点である.絶対分類は腸管切除症例,内視鏡的治療例ともに客観的な浸潤度評価が可能であり,とくに内視鏡的治療切除後評価においては相対分類と比較して非常に有用である.しかし現状では大腸sm癌のリンパ節転移は浸潤距離のみではなく他の組織所見にも規定されるため,内視鏡的治療の適応基準はいまだ定まっていない.また一部の隆起型病変にはsm浸潤距離が測定困難なものも存在する.今後,大腸sm癌は低侵襲治療,とくに内視鏡的治療の適応拡大の方向に進むと考えられ,そのためには追加切除が必要となる癌浸潤度分類の病理組織学的な基準を早急に決定し,それを臨床診断に反映するべく努力してゆくことが重要である.
  • 富樫 一智, 小西 文雅, 櫻木 雅子, 堀江 久永, 鯉沼 広治, 河村 裕, 岡田 真樹, 永井 秀雄
    2002 年 55 巻 10 号 p. 873-877
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    内視鏡切除の対象となる大腸sm癌は,明らかな脈管浸潤がないこと,癌先進部も含めて低分化腺癌でないこと,1,000μmを越える癌浸潤がないこと,のすべてを満たす必要がある.大腸sm癌の内視鏡切除後における追加腸管切除の適応基準としては,癌浸潤距離を1,000μm程度まで引き上げることが可能と考えられ,リンパ管侵襲の判定基準を厳格にすることによっても追加腸管切除例を安全に減らすことも可能と考えられた.従来は内視鏡切除の対象とは考えられなかったsm癌に対する適応拡大を図るためには,リンパ節転移のない大腸sm癌を的確に診断することが必要で,明らかな脈管侵襲や癌先進部の低分化腺癌は内視鏡切除前に診断することは困難であるため,1,000μm以下の癌浸潤を示すsm癌を鑑別する内視鏡診断学の確立が急務である.著者の検討では,表面凹凸不整像や出血の内視鏡所見から鑑別可能であった.
  • 五十嵐 正広, 勝又 伴栄, 小林 清典, 佐田 美和, S. Yosizawa
    2002 年 55 巻 10 号 p. 878-883
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    当院で経験した内視鏡的摘除を行ったsm癌189病変を対象に内視鏡的摘除後の再発と転移について検討した.内視鏡的摘除後の局所再発例は1例(0.53%)であった.リンパ節転移例は内視鏡的摘除後追加腸切除を行った60例中5例(8.3%)に見られたが,遠隔転移例は認めなかった.当院でのsm癌の内視鏡的摘除の適応はsmS癌(粘膜筋板から1,000μm以内の浸潤癌).追加腸切除の基準は,smD癌(粘膜筋板から1,000μm以深浸潤癌),断端陽性,脈管侵襲陽性,低分化型癌,癌先進部に籏出陽性としている.再発や転移のリスクはこれまでの基準で予防可能と考えられるが,over surgeryをできるだけ防ぐ新たなリスクファクターの抽出が今後の課題である.また,sm癌の内視鏡的摘除後には,局所再発や異時性癌の監視のための内視鏡検査によるサーベイランスが必要と考えられる.
  • 2002 年 55 巻 10 号 p. 884
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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