日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
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ISSN-L : 0047-1801
43 巻, 7 号
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  • 鈴木 宏志
    1990 年43 巻7 号 p. 1251-1252
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    An association of longstanding ulcerative colitis and colorectal cancer is a well-recognized condition.
    Prognosis of colorectal carcinoma associated with ulcerative colitis is usually poor, because the early diagnosis is often difficult and curative resection is discouraged in most patients.
    Mucosal dysplasia has been appreciated as a marker indicating the association of carcinoma with ulcerative colitis, but controversies on the diagnostic criteria of mucosal dysplasia have still remained. The natural history of mucosal dysplasia is also uncertain.
    DNA flow cytometry or mucin histochemistry are also insufficient to detect the presence of carcinoma associated with ulcerative colitis.
    A surveillance program to detect colorectal cancer associated with ulcerative colitis and to establish the indication for “preventive” colectomy, based on clinical observation with endoscopy and on exact understanding of evolution and progression of colorectal carcinoma associated with ulcerative colitis will resolve above mentioned problems.
  • 中村 真一, 喜納 勇
    1990 年43 巻7 号 p. 1253-1259
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に合併する癌の特徴は, 多発性, 平坦隆起型で多彩な組織型を示すが, われわれが経験した症例でも同様であり, その組織像を提示した.またもう一つの特徴であるdysplasiaが, 癌の周囲や平坦な粘膜に広範に観察された.このdysplasiaの概念と, 欧米で用いられている分類について, われわれの考え方を述べた.このなかで高度異型のdysplasiaの中に明かな粘膜内癌を含めることには, 賛成できないことを強調した。具体的な軽度異型や高度異型のdysplasia, また絨毛腺腫様のdysplasiaの組織像を示した.
    dysplasiaの診断の補助として, 粘液組織化学的ならびに免疫組織化学的検索を行った.その結果粘液組織化学的検索では, 絨毛腺腫様dysplasiaや癌ではsialomucin優位であった.免疫組織化学的検索ではCEAは軽度のdysplasiaから癌まで陽性であり, 診断の補助として有用であると考えられた.
  • 田島 強, 門馬 久美子, 山田 義也, 坂本 輝彦
    1990 年43 巻7 号 p. 1260-1266
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌の内視鏡診断は, 基本的には潰瘍性大腸炎に無関係な一般の大腸癌のそれと同じである.本稿では, まず大腸癌の内視鏡診断について, 主として特殊な大腸癌を中心に述べ, ついで, 1989年までの本邦の報告例から集計し得た潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌の内視鏡所見の特徴について検討した.集計された143症例の中で内視鏡の記載のある症例は88例で, その内訳は腫瘤・隆起が45例, 狭窄が16例, 偏平隆起が11例, その他が16例であった.これらの症例の多くは, 内視鏡検査をすれば診断がさほど困難でないので, 積極的な内視鏡検査の重要性を強調したい.最後に, 当院で経験した潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌の2症例と, それとは断定できなかったが, 診断上問題となった2症例を紹介した.
  • 鈴木 公孝, 阿川 千一郎, 武藤 徹一郎
    1990 年43 巻7 号 p. 1267-1271
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    長期経過した潰瘍性大腸炎の患者に大腸癌の合併するリスクのあることはよく知られている.癌が発症する以前にdysplasia (前癌病変) の形で経過を追うことにより癌を未然に防ぐことが可能か否かを検討するsurveillance programの試みが欧米の各施設で行われてきた.今回これら各施設でのsurveillanceの方法と結果について概説した.
    当科における68症例を含む, surveillance症例1,225例の中から52例 (4.2%) の大腸癌が発見された.これらの症例に認められた癌はDukes AあるいはBが多く, surveillanceがなされずに癌の認められた症例に比し予後は良好であった.一方dysplasiaは293例 (24%) に認められ, over-diagnosisの可能性が示唆された.surveillance programは癌のhigh risk群の選別に有用であるが, より癌の合併と相関しうるマーカーによる補助診断法の進歩が期待された.
  • 馬場 正三, 倉橋 隆之
    1990 年43 巻7 号 p. 1272-1279
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎 (UC) と大腸癌の合併について本邦における過去の報告例を集積する作業は必ずしも容易ではない, その理由は引用文献の記載のないもの.同一症例が重複しているもの, UCと癌の合併が偶発的なものであるか否かの判定や閉塞性大腸炎との鑑別が十分になされているかの問題などなどである.過去の本邦集計例においても論文と学会抄録のみのものが合わせて報告されており, 報告者の判定により症例の採否も必ずしも一定していない.とくに学会抄録のみのものには充分な解析に不適当な症例もある.しかし代表的本邦集計のいくつかを表1に示すと, 一定の傾向があることが伺える.今回われわれは1988年以降でこれまでの集計に含まれない症例を加えた84例について検討した結果を述べる.
  • 小西 文雄
    1990 年43 巻7 号 p. 1280-1285
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌は, 発症から10年以上経過した全大腸炎型の症例において発生頻度が高い.発生頻度は, 累積発生率, 1例当りのpatient-year, あるいは, これらのexpected/observed比によって示される.発生頻度は, どのような症例が対象となったかによって異なる.専門病院の症例が対象となったか, ある地域における全潰瘍性大腸炎患者が対象となったかによって異なるものと考えられ, 結果の比較検討を行う際に対象症例がどのようなものであったかについて十分検討されなければならない.専門病院における症例が対象となった従来の報告では, total colitisにおける発症後20年での累積発生頻度は, 20-30%と考えられてきた.しかし, 北欧その他の国からのpopulation based studyでは, その値は, 5-15%とより低値であった.国によって疫学的な発生頻度の差があることも考えられるので, 今後, さらにpopulation based studyが行われることが期待される.
  • 福島 恒男, 杉田 昭, 土屋 周二
    1990 年43 巻7 号 p. 1286-1292
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌を合併した潰瘍性大腸炎の外科治療について考察した.発癌の指標としてのdysplasiaが重視されているが, その発見率, 癌の合併率などが異なり, 手術適応の決定には問題が残っている.本邦の大腸癌を合併した潰瘍性大腸炎の手術例は51例であった.発生部位は直腸が53%で, その他にはほぼ均等に分布していた.早期癌は11例であった.手術例のうち30例 (59%) は大腸, または結腸全摘のような広範囲の切除が行われ, 21例 (41%) は直腸切断, 右半結腸切除衛のような部分的な切除が行われた.51例中に多発癌が12例 (24%) にみられており, 結腸全摘後の残存直腸に発生した癌もみられていることから大腸全摘が望しい.欧米では大腸全摘, 回腸肛門吻合術も数多く行われており, 今後は非癌部も含めた大腸全体を切除し, 肛門機能も温存する術式が取り入れられて行くと思われる。
  • 大出 直弘
    1990 年43 巻7 号 p. 1293-1300
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸癌に対する骨盤内自律神経温存手術後の排尿機能を尿流動態検査を用いて検討した.神経温存手術例53例を骨盤神経の温存の仕方により全温存, 両側S4温存, 片側温存, 片側S4温存の4群に分けて, 自律神経全切除と考えられる拡大郭清例11例および排尿障害のない術前症例11例 (対照群) と比較した.神経温存手術後の各群は, いずれも尿流動態検査において良好な成績を示し, 対照群との間にほとんど有意差をみとめず, 第4前仙骨孔~骨盤神経叢~下部尿路の骨盤神経を片側だけ温存して他を切除しても, 排尿筋一括約筋協調が維持されるため, 手術後に比較的良好な排尿機能が保たれると思われた.一方, 拡大郭清例は神経温存群各および対照群と比べて尿流動態検査成績が不良で高度の排尿困難を示す例が多く, 排尿筋-括約筋協調不全が主因と考えられた.
  • 鈴木 紳一郎
    1990 年43 巻7 号 p. 1301-1310
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    深部痔瘻102例に対し経直腸的超音波検査を施行した.深部痔瘻は画像上low echoic areaに囲まれるhigh echoic lesionとして描出されることが多かった.描出された各病変は隅越らの分類を基本に以下のように分類した. (1) 低位筋問病変 : IILS (2) 高位筋間病変 : IIHS IIHC (3) 坐骨直腸窩病変 : IIIU IIIB III (穿破) (4) 肛門拳筋上病変 : IH (挙筋上) IIH (挙筋上) IV (浅部) IV (深部).画像上Courtney's spaceを経由せず高位筋間より直接坐骨直腸窩に連続する病変はIII (穿破) としてCourtney's spaceを経由する坐骨直腸窩病変と区別した.また肛門挙筋上で直腸粘膜粘膜下層に存在する病変はIH (挙筋上), 肛門挙筋上で直腸固有筋層 (内輪状筋, 外縦走筋) 内に存在する病変はIIH (挙筋上), 恥骨直腸筋に近接し存在する骨盤直腸窩病変はIV (浅部), 恥骨直腸筋より遠位に存在する骨盤直腸窩病変はIV (深部) と分けた.このように分類した各病変の部位別合併率を検討した結果, IILS病変合併例はIISで35例中17例 (48.6%), IIHCで60例中10例 (16.6%) とIIHSのほうがHLS病変を合併している割合が高かった.またIIIUは23例中IIHS病変合併例6例 (26.0%), IIHC病変合併例15例 (65.2%) であったが, IIIBは32例中IIHS病変合併例2例 (6.2%), IIHC病変合併例30例 (93.8%) とIIIBはIIHC病変合併例がほとんどであった.さらに肛門挙筋上病変でIH (挙筋上) はIIH病変単独合併例も存在したがIV (浅部), IV (深部), はIIH病変単独合併例は存在せずIIHC+IIIB病変を合併したものが7例中4例 (57.1%), 12例中9例 (75.0%) の結果を得た.深部痔瘻の進展形式を経直腸的超音波診断法により検討した場合, 肛門括約筋構造の特異性により一定の形式が存在し, 深部に進展するほど後方6時を原点として側方に病変が拡ることが多かった.
  • 三浦 力
    1990 年43 巻7 号 p. 1311-1319
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌73例 (79病変), 大腸腺腫30例 (30病変), 正常大腸粘膜75検体について, 抗ヒトc-mycp62マウスモノクローナル抗体 (MYC1-6E10) を用いた免疫組織化学染色法によるc-myc p62 oncoprotein発現を検討し, また大腸癌79病変中72病変については, DNA ploidyの検索を行った.p62の強い発現を見たのは大腸癌79病変中36病変 (45.6%), 大腸腺腫30病変中21病変 (70%), 正常大腸粘膜75検体中5検体 (6.7%) であり, p62の強い発現を見る頻度は大腸癌および腺腫では正常粘膜に比して有意に高かった.大腸腺腫ではp62の強い発現を見る頻度と組織型および異型度との間に相関がなく, また大腸癌ではp62の強い発現を見る頻度と臨床病理学的所見およびDNA ploidyとの間に相関を認めなかった.このことから, c-myc p62 oncoproteinは大腸腫瘍の発生段階に関与するが, 一旦発生した腺腫あるいは癌のその後の進展には関与するところが少ないと考えられた.
  • 田中 宏明, 裏川 公章, 中本 光春, 山口 俊昌, 出射 秀樹, 磯 篤典, 西尾 幸夫, 川北 直人, 五百蔵 昭夫, 植松 清
    1990 年43 巻7 号 p. 1320-1324
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    過去14年間の大腸癌切除266例のうち, sm癌8例 (3.0%), pm癌11例 (4.1%) の臨床病理学的特徴と予後について検討した.占居部位はsm癌7例 (87.5%), pm癌8例 (72.7%) がS以下の大腸にあり, 両癌ともに血便・下血の頻度が50.0%以上を占めた.高分化腺癌はsm癌7例 (87.5%), pm癌7例 (63.6%) であった.sm癌は腫瘍径20mm以下6例 (75.0%), 隆起型5例 (62.5%) であった。pm癌の平均腫瘍径は39mmであった.sm癌では全例v0であったが, 1例 (12.5%) にly2, n2 (+) を認めた.pm癌ではv1 18.2%, v3 9.1%, ly1 27.3%, ly3 18.2%, n1 (+) 18.2%, n2 (+) 9.1%であった.sm癌では浸潤度が増すほどリンパ節転移の可能性があり, sm3はR2の術式が妥当と考えた.
  • 山口 俊昌, 裏川 公章, 植松 清
    1990 年43 巻7 号 p. 1325-1328
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸粘液癌20例の臨床病理学的特徴について分化型腺癌などの非粘液癌と比較した。発生頻度は6.3%, 男女差はなく, 60歳以下の若壮年者に多い傾向を認めた.占居部位は右側結腸11例, 左側2例, 直腸・肛門管7例で, 非粘液癌に比較して右側結腸に多かった (p<0.01).壁深達度は全例ss以上で, 非粘液癌に比較してリンパ節転移 (p<0.05), 腹膜播種陽性率 (p<0.01) が高く, 肝転移 (p<0.05), 静脈侵襲陽性率 (p<0.01) が低かった.治癒切除は11例 (55.0%) あり, このうち6例 (55.6%) が再発, 内訳は肝転移2例, 局所再発3例, 腹膜播種1例であった.治療成績向上のためには局所の広範な切除と十分なリンパ節郭清が必要と考えられた.
  • 粘液結節成分の面積比率の検討
    貞広 荘太郎, 大村 敏郎, 磯部 陽, 田村 光, 斉藤 敏明
    1990 年43 巻7 号 p. 1329-1332
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸粘液癌の組織分類に関して検討するため, 高分化・中分化・低分化腺癌および粘液癌に分類された281例の大腸癌を対象として, 大腸粘液癌の組織像として特徴的な粘液結節が癌全体に占める面積比率をデジタイザーを用いて算出し, 従来の鏡検のみにより診断された組織分類と対比した.粘液結節が認められたのは85例 (30.2%) であり, このうちの42例では粘液結節の面積比率は10%未満であった, 面積比率が50%以上である17例は大腸癌取扱い規約によると粘液癌に分類されるべき症例であるが, 粘液癌に分類されたのは10例で残りの7例は5例が高分化腺癌, 2例が中分化腺癌に分類された.これら7例の粘液結節の面積比率は50-70%台であり, 鏡検のみにより面積的に優勢な組織型を判定することは困難な場合があることが示された.
  • 臨床病理学的特徴と治療法を中心に
    高林 司, 小平 進, 寺本 龍生, 大石 崇, 有沢 淑人, 赤松 秀敏, 中山 隆盛, 藤田 伸, 久 晃生, 古川 和男, 山口 博, ...
    1990 年43 巻7 号 p. 1333-1342
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    過去12年間に経験した原発性大腸癌944例のうちイレウス症状を呈した87例 (9.2%) を非イレウス症例と臨床的および病理学的に対比検討した.イレウス症例はDukes C, Dの進行例が多く, 治癒切除率は59%にとどまった.治癒切除例の5年生存率は結腸64%, 直腸38%で, いずれも非イレウス症例より不良であった, 右側大腸癌イレウス症例の68%は待期手術が施行され, 緊急手術例のほとんどで一期的切除吻合が行われた.一方左側大腸癌イレウス症例の85%には緊急手術が施行され, その69%で一時的人工肛門造設に続く段階的切除が行われた.緊急に一期的切除を施行した症例ではリンパ節郭清の程度が低かったのに対して, 段階的切除例ではリンパ節郭清が不十分であったために非治癒切除となった症例はなく, 治癒切除率も段階的切除例で一期的切除例よりも高かったことより, 左側大腸癌イレウスに対する治療として段階的切除は妥当であると考えられた.
  • 福嶋 健一, 八木田 旭邦, 織間 一郎, 立川 勲, 熊川 寿郎, 森 真由美
    1990 年43 巻7 号 p. 1343-1351
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    クローン病 (CD) および潰瘍性大腸炎 (UC) の血小板数増加の意義について平均血小板容積ノモグラム (MPVノモグラム) を用いて検討し, さらに血小板由来成長因子 (PDGF), 血液凝固線溶能を測定した.CDにおける血小板数は重症度と正の相関関係を示した (CD : r=0.38 p<0.01) がUCでは正の相関関係を示さなかった (UC : r=0.12 NS).臨床経過とMPVノモグラムの関係ではCDの血小板数増加は何らかの原因による二次的なものと推定され, またMPVノモグラムは白血球数, ESR, CRPよりも実際の病態をよく反映していた.PDGFはCDでは活動期, 緩解期ともに健i常人と差を認めなかったが, UCでは活動期で健常人の約8倍と高値を示し有意差を認め (p<0.01), 緩解期では健常人と差を認めなかった.血液凝固線溶系では両疾患ともいずれの病期においても第XIII因子の低下が目立つ所見であった.血小板凝集能では両疾患ともいずれの病期においてもADP凝集率とepinephrine凝集率の亢進例を多く認めた.
  • 土屋 裕一, 吉川 宣輝, 松井 成生, 有馬 良一
    1990 年43 巻7 号 p. 1352-1357
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸pm癌の原発巣の病理組織学的所見がどの程度予後に反映されているかを検討した.1975年から1988年の間に当院で手術を行った直腸pm癌62例を対象とした.転移再発した14例を予後不良群-A群-, 転移再発を認めない48例を予後良好群-B群-として2群を比較した.A群では高分化型腺癌3例, 中分化型腺癌11例であり, B群ではそれぞれ29例, 19例であった.固有筋層への浸潤程度pm1, pm2, pm3に分けるとA群ではそれぞれ2例, 4例, 8例, B群ではそれぞれ18例, 19例, 11例であった.静脈侵襲陽性率はA群で71.4%, B群で35.4%, リンパ節転移陽性率はA群で64.3%, B群で12.5%であった.これらについては2群間に有意差を認めたが, INFとリンパ管侵襲は, 2群間に有意差を認めなかった.以上の結果より, 直腸pm癌においては癌の分化度, 固有筋層への浸潤程度, 静脈侵襲, リンパ節転移が予後を推測する上で重要な因子であることが示唆される.
  • 内田 敬之, 鎌野 俊紀, 田村 順二, 菅野 勉, 佐藤 徹也, 榊原 宣
    1990 年43 巻7 号 p. 1358-1361
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    当科における大腸疾患以外の症例で, 術前注腸検査で大腸癌および大腸腺腫がどれくらい発見できたかを検討してみた.対象は1986年1月から1988年5月までの2年5カ月の間に入院した胃疾患389例, 胆道疾患299例, 膵疾患28例, 肝疾患10例の合計726例です.男性366例, 女性360例, 平均年齢は60歳.胃疾患では, 大腸癌6例 (1.5%), 大腸腺腫41例 (10.5%), 計47例 (12%) を, 胆道疾患では癌3例 (1%), 腺腫23例 (7.7%) の計26例 (8.7%) を, 膵疾患では癌2例 (7%), 腺腫1例 (3.6%) の計3例 (10.7%) を, 肝疾患では癌1例 (10%), 腺腫1例 (10%) の計2例 (20%) を発見した.全体としては癌12例 (1.7%), 腺腫66例 (9%) の計78例 (10.7%) の併存率であった.これらは, 50歳以上の男性に併存する率が高く, 10mm以上の大きさに癌を併存する率が高かった.最近, 大腸癌の増加がみられているので, 十分な大腸の検索が必要であると思われた.
  • 落合 匠, 長濱 徴, 榊原 宣
    1990 年43 巻7 号 p. 1362-1366
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    ストレスが大腸に及ぼす影響を明らかにするために, イヌ5頭を対象に拘束ストレス負荷実験を行った。初回ストレス負荷を3週間行い, 1週間の休息後さらに1週間の再ストレス負荷を行い以下の結果を得た。初回ストレス負荷開始2週間後5頭中4頭に水様便排泄が認められた.再ストレス負荷開始4日後5頭中4頭に水様便排泄および下血が認められ, 大腸内視鏡検査にて中結腸動脈の肛門側末梢枝と左結腸動脈の盲腸側末梢枝の吻合部付近にびらんおよび粘膜欠損が粘膜下層にとどまる浅い潰瘍が認められた.またその潰瘍発生部におけるAuerbach神経叢の網目構造に粗造化が認められた.以上のごとく胃・十二指腸のみならず大腸においてもストレスにより潰瘍が生じることなど, ストレスが大腸に多大なる影響を及ぼすことが明らかとなった。
  • 小里 俊幸, 馬場 正三
    1990 年43 巻7 号 p. 1367-1373
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    予後の判明している大腸癌切除症例122例を対象として, 切除材料のパラフィンブロックを用いてflow cytometryによりDNA ploidy patternを求め, Ploidy patternが大腸癌の進展, 予後を反映する因子となるか, retrospective studyを行った.その結果, DNA異常を示すaneuploid症例は, over allと治癒切除症例において5年生存率がDNA異常のないdiploid症例に比べ有意に低く (p<0.05), その予後は不良であった.またリンパ節, 肝転移を生じやすい傾向も認めた.つぎに, aneuploidとdiploidの悪性度の相違の原因について, 細胞動態学的 (S期細胞標識率) に検討を行った.摘出臓器にex-vivo organ perfusionを行い, bromodeoxyuridineを癌細胞に取り込ませ, S期細胞標識率をflow cytometryにて算出した.その結果, S期細胞標識率はdiploid 19.3%, aneuploid 20.8%となり, 両者に差を認めなかった.
  • 岡部 弘, 北野 厚生, 押谷 伸英, 福島 龍二, 加島 和俊, 中村 志郎, 小畠 昭重, 橋村 秀親, 日置 正人, 松本 誉之, 大 ...
    1990 年43 巻7 号 p. 1374-1378
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    当科にて昭和61年3月より平成1年2月までの期間に臨床的に検討しえた小児潰瘍性大腸炎9症例 (発症年齢 : 11歳から14歳までの男子6名女子3名, 平均12.4歳) について検討した。初発症状, 既往歴, 家族歴に特異的な事象は認められなかった.罹患範囲は全大腸炎型5例, 左側大腸炎型3例, 直腸炎型1例であった.臨床経過は再燃・緩解型が6例, 現時点での初回発作型は2例, 慢性持続型が1例である.9症例をまとめた結果, (1) 罹患範囲としては全大腸炎型が過半数を占め, 重症度別には重症例が少ない傾向を認めた, (2) 病型は再燃緩解型が67%であり, 頻度的に成人型と変わりはなかった. (3) 再燃緩解型は, 投薬の漸減中に再燃を起こしやすい傾向にあった. (4) betamethazone (リンデロン ®) 坐薬の併用が緩解維持に有効と考えられた. (5) salazosulfapyridine (サラゾピリン ®) の緩解維持効果は確認できなかった. (6) 再燃時のsteroidhormone投与開始量としては30mg/dayが有効と考えられた.
  • 石井 誠一, 大内 明夫, 川上 一岳, 椎葉 健一, 蝦名 宣男, 斉藤 善広, 後藤 慎二, 額田 泰志, 溝井 賢幸, 安西 良一, ...
    1990 年43 巻7 号 p. 1379-1383
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    肛門周囲に発生したgiant condyloma acuminatum (Buschke-Loewenstein tumor) の1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する.症例は49歳の男性.肛門周囲の易出血性腫瘍を主訴として来院した.入院時所見では肛門周囲に12.0cm×9.5cmの巨大なカリフラワー状の腫瘍を認め, 轡部および臍下部にも転移巣と思われる直径2~3cmの腫瘤をそれぞれ2個および1個認めた.また陰茎包皮にも小腫瘤を2個認めた.臍下部腫瘤の生検の結果は尖圭コンジローマの組織像であったが, 主病巣が巨大であることより会陰部のverrucous carcinomaと同義であるgiant condyloma acuminatumと診断し, 肛門癌に準じて直腸切断術を施行した.臀部の広範な皮膚欠損に対しては二期的に植皮術を施行した.本症は組織学的には良性の尖圭コンジローマの像を呈するが, ときに浸潤性に発育し, 臨床的には悪性の経過をたどることもあるとされており, 治療に際しては慎重を要するものと考えられた.
  • 石原 通臣, 森田 建, 岡部 郁夫, 岩田 光正, 矢野 博道
    1990 年43 巻7 号 p. 1384-1387
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    juvenile polypは単発性が多く, 良性とされている.一方結腸に多発するJuvenile polyposis coliは稀であり, 本邦において10例の報告しかない.11年間に渡り治療を必要とした直腸に限局した多発性のJuvenile polyposis coliの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告した.症例は14歳の男児, 主訴は下血, 11歳 (1977年) の秋頃, 便に血液の付着に気付き, 久留米大学小児外科において多発性直腸ポリープの診断で3回に分け計105個のポリープ摘出術を受けた.14歳の春, 父親の東京転勤に伴い日大第1外科へ紹介来院した.直腸鏡でみると歯上線直上より口側へ約6cmに大小不同のポリープを無数認めた.一般検査成績注腸造影, 胃十二指腸造影では異常を認めなかった.当科においても休みを利用し4回, 計104個のポリープ摘出術を行った.組織検査ではいずれも同様な所見であり, juvenile polypであった.
  • 笠原 大城, 磯山 徹, 豊島 宏
    1990 年43 巻7 号 p. 1388-1391
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    1985年1月から1989年6, 月までに, 完全直腸脱の4症例に対してMarlex meshを用いての直腸後方固定術 (Ripstein手術変法) を施行した.経腹的直腸固定術は, 直腸脱の治療方法として優れた術式であり世界的に広く用いられており, これまでに多数例の報告, 集計がなされている.著者らの術式は, 仙骨前面中央にmeshを縫着し, これで直腸の左右側面を覆い吊り上げ固定する方法で, Ripstein法の欠点を考慮したものである.死亡例や腹腔内感染, 他の重篤な合併症はなく, 観察期間4年から5カ月間で再発は1例も見られていない.ほぼ全例に高い満足感が得られており, 有効な術式であった.またその素材に関しては吸収性メッシュがより適したものであると考えられ, 本術式への応用の可能性について検討した.
  • 飯塚 政弘, 千葉 満郎, 伊藤 良, 五十嵐 潔, 正宗 研, 大窪 天三幸
    1990 年43 巻7 号 p. 1392-1397
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は36歳男性.31歳頃よりときどき便秘出現, 昭和62年6月, 腹部不快感が持続したため湖東総合病院内科受診大腸内視鏡検査で回盲部に広範な潰瘍を指摘され当科に紹介された.当科入院時の大腸内視鏡検査では, 回盲部に周囲が集中した粘膜により周堤様に盛り上がった深い潰瘍がみられ, その口側にmucosal bridgeがみられた.入院後prednisolone 60mg/日の経口投与を開始, 次第に漸減したが, 潰瘍の大きさは不変であった.退院後prednisoloneを中止, 昭和63年6月よりsalicylazosulfapyridine (Salazopyrin) とtranilast (Rizaben) を投与した.平成元年4月施行の大腸内視鏡検査では, 潰瘍の肛門側に新たにmucosal bridgeの形成がみられた.mucosal bridgeの形成をみた非特異性腸潰瘍の報告はこれまできわめて稀である。本症例はその形成過程を内視鏡的に追跡し得た貴重な症例と考えられた.
  • 固武 健二郎, 小山 靖夫, 清水 秀昭, 池田 正, 菱沼 正一, 尾形 佳郎, 中嶋 英雄, 福積 聡
    1990 年43 巻7 号 p. 1398-1402
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    骨盤内臓器癌の根治術後に発生した骨盤内の難治性瘻孔・死腔に対して, 筋皮弁を用いた修復術を施行し良好な創治癒が得られたので報告した.症例1 : 62歳, 男.直腸癌.術前照射および直腸切断術後に後部尿道瘻が発生した.尿瘻の閉鎖と骨盤内死腔の充填を目的に, 拡大大殿筋皮弁による再手術を行ったところ, 短期間のうちに尿瘻・死腔の完全閉鎖が認められた.症例2 : 70歳女・子宮頸癌の局所再発術前照射および骨盤内臓器全摘出術を施行後, 死腔炎, 恥骨骨髄炎を併発し死腔閉鎖が遅延した.死腔の充填・閉鎖を目的に拡大大殿筋皮弁を用いた修復術を行った, 骨髄炎の治癒は遷延したものの会陰創の一次的創治癒が得られ, 死腔は速やかに閉鎖された.
  • 増田 英樹, 谷口 利尚, 佐和 尚信, 林 成興, 堀内 寛人, 渡辺 賢治, 林 一郎, 手島 洋一, 加藤 克彦, 田中 隆, 坂部 ...
    1990 年43 巻7 号 p. 1403-1408
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    1963年6月より1989年9月までに67例の大腸穿孔を経験した.予後に影響する因子として, 年齢, 原因疾患, 術式, 穿孔から手術までの時間, 検出菌をとりあげ, これらの予後との関係について検討した.全症例の死亡率は25.3%であり, 悪性疾患によるものでは45.8%と高く, とくに61歳以上の悪性疾患では55%の死亡率であった.特発性穿孔は5例中3例が死亡したが, その他の悪性以外の疾患では, 術式のいかんにかかわらずきわめて高い生存率 (92.3%) を得た.穿孔から手術までの時間と予後との関係は, 一般に発症より手術までの時間が短いほど生存率が高いといわれているが, 自験例ではそれらと一致せず, むしろ経過時間が長いほど死亡率が低かった.これは経過時間が短い症例の中に, 悪性疾患や特発性のものが多く含まれていたためと考えられ, 経過時間そのものよりも患者の基礎疾患や全身状態などが, 予後に大きく影響すると考えられる.
  • 松本 収生, 松本 好市, 石島 直人, 菅谷 義範, 山村 剛司, 三浦 力, 寺島 秀樹, 北川 達士, 山本 純二, 鈴木 宏志
    1990 年43 巻7 号 p. 1409-1414
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    15年間に経験した大腸癌手術症例525例における他臓器重複癌は39例 (7.4%) であった.同時性重複癌は10例, 1.9%で, 異時性重複癌は29例, 5.5%であった.異時性重複癌のうち大腸癌先行は11例, 他臓器癌先行は18例であった.重複癌の高危険群を同定するため, 同時期の単発大腸癌症例455例を対照として大腸癌病変の臨床病理学的事項について比較したが, 重複癌と単発癌との問で性別, 年齢, 家族歴, 占居部位, 進行度, 併存大腸ポリープの頻度に差はなかった.重複癌と単発癌の間で家族歴に差がなく, 他臓器癌先行例の年齢が単発癌より有意に高いことは重複癌が遺伝的因子よりは第一癌の良好な予後から延命がはかられるために増加していることを示唆している。重複癌の高危険群の同定は容易ではなく, とくに重複癌臓器で頻度の高い胃と子宮癌の放射線治療後の直腸癌に留意し, 重複癌の早期発見に努めなければならない.
  • 芳賀 駿介, 松本 紀夫, 加藤 博之, 芳賀 陽子, 森 正樹, 梅田 浩, 高橋 直樹, 遠藤 俊吾, 清水 忠夫, 遠田 譲, 梶原 ...
    1990 年43 巻7 号 p. 1415-1418
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    痔核切除におけるCO2レーザーメスの有用性をみる目的で従来の電気メスを用いた手術法を対照とし, その臨床的評価を試みた.1988年9月から1989年6月までの10カ月間に内痔核の根治手術にCO2レーザーメスを用いた72例と従来の電気メスを使用した51例の計123例を対象とした.症例の内訳は男性35例, 女性88例で, 年齢は18~76歳, 平均42.6歳であった.手術時の出血量をみると, 電気メス群では平均65.2mlであるのに対し, レーザーメス群では90.4%の症例が20ml以下ときわめて少量であった.手術時間は, 電気メス群では, 70.6%の症例が31分以上であるのに対し, レーザーメス群では94.4%が30分以下であった.アンケート調査によると, 術後の疼痛, 肛門部の腫脹感の程度および持続時間, 術後の排便時の出血の程度およびその持続時間も電気メス群に比較し, レーザーメス群で優れた結果を得た.
  • 鈴木 宏志, 山村 剛司, 松本 好市, 三浦 力, 石島 直人, 菅谷 義範
    1990 年43 巻7 号 p. 1419-1422
    発行日: 1990年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌切除例80例を対象としてDNA flow cytometryを行い, 腫瘍細胞のDNA ploidyと患者の術後累積生存率の関係を検討した.腫瘍細胞のDNA ploidyは37例でdiploidであり, 43例でaneuploidであった.Stage Aの9例は腫瘍細胞のDNA ploidyと関係なく全例再発なく生存しているのに対して, stage Dの14例は1例を除いて術後4カ月ないし2年2カ月で腫瘍死しており, 患者の予後と腫瘍細胞のDNAploidyには関連を認めなかった.Stage Bおよびstage Cの57例についてみると, 腫瘍細胞がDNA aneuplploidであった28例の術後累積生存率は, これがDNA diploidであった29例に比して良好だったが, その差は統計学的に有意なものではなかった.
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