肛門疾患の中で治療法に一番苦心するのは痔瘻である.その痔瘻の分類が不統一な為に,治療法をますます難解なものにしている.一方手術に於ても色々な手術法が試みられ,何れも良い成績をおさめているが,失敗や術後機能障害もあり,どの方法も万能ではない.個々の症例の進展度に応じた,必要にして且つ充分な最少侵襲の手術法を選択すべきである.私は治療方針をたてるのに,従来の痔瘻分類を検討し,最も優れていることの判明した隅越分類を採用した.手術にはlay-open法,粘膜下切除法,Parks法,Hanley法,それに新しいGoligher変法を加え,5通りの手術法を採用した.過去5年間284症例をこの分類を用いて治療方針をたて手術し,おおむね満足すべき結果を得た.隅越分類の採用を提唱し,それに5通りの手術法をあてはめる試みは,診療の簡易化と初心者の指標となり,活用すべき方法と考える.
抄録全体を表示