術後にヘパリン起因性血小板減少症(heparin induced thrombocytopenia:以下,HIT)II型を発症した直腸癌の1例を経験した.患者は53歳,女性.直腸癌術後の静脈血栓塞栓症予防に未分画ヘパリンを投与中,術後9日目に血小板数減少(4.8万/μ
l)をきたし,緊急CT検査で肺動脈,左深部大腿静脈,門脈などに多発性血栓形成を認めた.HITを疑い直ちにヘパリンを中止して,薬物療法を開始するとともに下大静脈フィルターを留置した.同日に採血した検体からHIT抗体が検出され,HITII型と診断した.その後,血小板数は2万/μ
lまで低下したが漸次回復し,術後22日目に肺動脈血栓の消失を確認した.その後,ワーファリン投与で血小板数の一過性減少と右下肢静脈血栓の発生を認めたが,保存的療法により軽快退院した.免疫反応により重症化をきたしやすいHITII型を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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