日本大腸肛門病学会雑誌
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65 巻, 1 号
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原著
  • 鉢呂 芳一, 安部 達也, 國本 正雄, 佐藤 ゆりか, 鶴間 哲弘
    2012 年 65 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    緒言:ホワイトヘッド手術が行われなくなって久しいが,ときにホワイトヘッド手術後の後遺障害として出血や粘膜脱に加え疼痛,粘液もれなどの症状が散見される.当院では特に粘膜脱を主体とするホワイトヘッド手術後遺障害に対し,内痔核硬化療法であるALTA療法を用いた治療を施行している.症例:対象は2006年5月から2010年10月までの40例.主訴は脱出が12例,出血が8例,脱出および出血が20例.加えて排便困難,疼痛,粘液もれなども散見された.ALTA投与は,痔核組織の残存や再発が主体であれば四段階注射法に準じ,全周性の粘膜脱が主体であれば少量ずつ投与する多点法を施行した.外痔核病変を伴った1例にLEを,肛門狭窄5例に対し4例に用手的肛門拡張術を,1例にSSGを併用した.成績:ALTA総投与量は平均26.6ml.再発を3例(7.5%)に認め再ALTA治療を施行した.肛門狭窄を呈した1例に用手的肛門拡張術を施行した.結論:ホワイトヘッド手術後の直腸粘膜脱に対するALTA療法は簡便な低侵襲治療であり,粘膜脱や出血症状改善に有用であった.
臨床研究
  • 渡部 通章, 小菅 誠, 小川 匡市, 大塚 正彦, 柏木 秀幸, 矢永 勝彦, 穴澤 貞夫
    2012 年 65 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    目的:双孔式回腸ストーマ造設において高さと直立性を維持するための工夫を検討した.工夫:正円形を基本に(1)口側ストーマの尾側への傾斜を補正し直立かつ適正な高さをもったものにする(2)肛門側ストーマの高さを可及的低くするの2点である.方法:2005年1月より2008年6月までにこの手技により造設された双孔式回腸ストーマ26例を対象としretrospectiveに調査した.結果:造設目的はcovering stoma 18例,悪性疾患腸閉塞解除6例,diverting stoma 2例であった.口側ストーマの高さ(n=18)は19.3mm(5~32mm)でほぼ直立していたが若干の左右傾斜6例と尾側傾斜1例(尾側傾斜補正不足,左右傾斜と重複)を認めた.左右傾斜例の平均口側ストーマ高は24.2mmで傾斜のない症例より高かった.合併症は傍ストーマヘルニア2例,陥没/陥頓,ストーマ脱各1例で重度の皮膚障害は認めなかった.結語:われわれの工夫により,適切な高さで,尾側傾斜の少ない双孔式回腸ストーマ造設が可能である.
症例報告
  • 小棚木 均, 岩崎 渉, 澤田 俊哉, 吉川 雅輝
    2012 年 65 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    臀部膿皮症(以下,膿皮症)を伴った痔瘻癌を経験した.患者は59歳男性で,30数年来の痔瘻を有し,発熱と肛門痛を主訴に前医を受診.膿皮症,深部痔瘻,痔瘻開口部の癌と診断されて紹介入院した.術前検査では明らかに癌の腫瘤を指摘できなかったが,膿皮症瘻孔内の癌を想定して直腸切断術を行った.術中に直腸に接する腫瘍を認めたため腫瘤を含めて切除した.なお,膿皮症皮膚は分割切除せざるを得なかった.切除後,臀部には植皮をしたが,骨盤死腔と会陰創は開放のままとし,術後に肉芽形成を得て閉鎖せしめた.病理結果では直腸に接する腫瘍は痔瘻周囲の粘液癌であり,既往や存在形式などから痔瘻癌と推定した.また,膿皮症皮膚に癌は認めなかった.本例のような病態下では診断・治療上注意すべき点が多い.
  • 竹村 哲, 由井 三郎
    2012 年 65 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.腹部膨満感を主訴に当院外来を受診した.イレウスの診断で入院となり,精査の結果回盲部の腫瘍によるイレウスと診断し,手術を施行した.腫瘍は腹腔内停留睾丸に発生したセミノーマであった.術前術中に確定診断に至らず,大腸癌としてのリンパ節郭清を施行した.術後,泌尿器科に紹介し,化学療法は施行せずに再発なく経過中である.一般外科医が精巣腫瘍を扱うことは少なく,腹腔内停留睾丸に発生した精巣腫瘍は,本邦で116例と稀である.さらにイレウスでの発見は本症例が2例目と極めて稀である.しかし,腹腔内の原発不明腫瘤の鑑別診断として,停留精巣腫瘍も念頭に置くべき疾患であると考えられた.
  • 花岡 裕, 的場 周一郎, 戸田 重夫, 森山 仁, 黒柳 洋弥, 澤田 壽仁
    2012 年 65 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は81歳女性.排便時,肛門からの脱出感を自覚し近医受診したところ,肛門からの小腸脱出を認め,当院へ緊急搬送となった.診察を行うと,肛門から小腸が1m以上にわたって脱出しており,脱出小腸は絞扼され暗赤色調であった.腹部CT検査を施行したところ直腸内に小腸が陥入し体外へ脱出していたことから,直腸穿孔に伴う小腸脱出と考え緊急手術を行った.術中所見としては直腸前壁に穿孔を認め,その穿孔部を通じて小腸が脱出していた.小腸を還納した後,ハルトマン手術を施行した.術後経過は敗血症,腹腔内膿瘍などを生じることなく,術後35日目に退院となった.
    小腸脱出を伴った直腸穿孔の報告は,稀な病態と考えられたので文献的考察を加え報告する.
  • 岡田 和丈, 北村 東介, 松井 孝至, 固武 健二郎
    2012 年 65 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    術後にヘパリン起因性血小板減少症(heparin induced thrombocytopenia:以下,HIT)II型を発症した直腸癌の1例を経験した.患者は53歳,女性.直腸癌術後の静脈血栓塞栓症予防に未分画ヘパリンを投与中,術後9日目に血小板数減少(4.8万/μl)をきたし,緊急CT検査で肺動脈,左深部大腿静脈,門脈などに多発性血栓形成を認めた.HITを疑い直ちにヘパリンを中止して,薬物療法を開始するとともに下大静脈フィルターを留置した.同日に採血した検体からHIT抗体が検出され,HITII型と診断した.その後,血小板数は2万/μlまで低下したが漸次回復し,術後22日目に肺動脈血栓の消失を確認した.その後,ワーファリン投与で血小板数の一過性減少と右下肢静脈血栓の発生を認めたが,保存的療法により軽快退院した.免疫反応により重症化をきたしやすいHITII型を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 辰巳 健志, 大田 貢由, 諏訪 宏和, 熊本 宜文, 谷口 浩一, 渡辺 一輝, 山岸 茂, 長田 俊一, 藤井 正一, 市川 靖史, 遠 ...
    2012 年 65 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    症例1:64歳女性.直腸癌に対する腹腔鏡下低位前方切除術施行後3年1か月のCTで臍下部に腹壁腫瘤を認めた.Port site recurrenceと診断し腹壁腫瘤切除術を施行.同時に右尿管近傍,吻合部に腹膜播種再発も認めた.その後Virchowリンパ節に転移をきたしたため化学療法を施行するも初回手術4年11ヶ月後に死亡した.症例2:60歳男性.横行結腸癌に対し腹腔鏡下結腸部分切除術施行後9か月のCTで肝転移,左上腹部のport部に腹壁腫瘤を認めた.肝転移,port site recurrenceの診断で肝拡大後区域切除,腹壁腫瘤切除術を施行.転移性腺癌であった.術後4ヶ月後のCTで多発肺転移,肝転移,リンパ節再発を認め,現在抗癌剤治療中である.Port site recurrenceは他臓器転移を高率に合併するため厳重なfollow upが必要である.
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