日本大腸肛門病学会雑誌
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69 巻, 3 号
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総説
  • 米村 豊, 水本 明良, 平野 正満, 野口 耕右
    2016 年 69 巻 3 号 p. 135-146
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    国際腹膜播種学会は腹膜播種の治癒を目指す包括的治療法を提唱してきた.肉眼的に認められる播種を腹膜切除で可及的切除し,遺残した微少転移を術中・術後腹腔内化学療法で治療する方法である.この方法による術後合併症発生率は容認できる範囲内である.5年生存率も19%前後と全身化学療法単独の生存率より良好である.イギリスのガイドラインで,この包括的治療は大腸癌播種に対する最も有効な治療法として推奨されている.この治療の適応は播種が1・2領域に限局した例である.広範な転移のある例・完全切除が不可能と思われる例・高齢者や重篤な併存症を有する例は適応から外す,この方法はLearning curveに達していない施設では行うべきではない,今からこの方法を行いたいと考えている施設は,経験豊富な施設での研修を受けなければならない.本邦でのこの治療法の普及が急がれる.
臨床研究
  • 木村 聖路, 田中 正則, 福田 眞作
    2016 年 69 巻 3 号 p. 147-153
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    過去5年以内に内視鏡がなされた大腸浸潤癌を通常発見癌と比較した.859例中interval cancerは21例で頻度は2.4%だった.年齢性別は interval cancer 74.2歳,0.91:1,通常発見癌70.4歳,1.42:1,通常発見癌より高齢だった(p<0.05).部位は右側大腸が10例で47.6%を占めた.形態は通常発見癌で72.6%を占める2型は52.4%のみ(p<0.05),深達度は検索できた17例中SM 4例,MP 4例で47.0%を占めた.病理所見に特記事項はなかった.前回内視鏡でポリープが21例中14例(66.7%)あり,10例は浸潤癌発生部近傍に局在し,2例は浸潤癌に発育進展した.interval cancerは高齢者に多く,右側に多く,2型以外の形態が多く,深達度は浅く,通常発見癌とは異なる特徴を示した.見逃し癌や残存ポリープの癌化が原因と考えられた.
  • 白畑 敦, 三浦 康誠, 松本 匡史, 石田 康男, 大賀 純一
    2016 年 69 巻 3 号 p. 154-158
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    化学療法を施行した切除不能進行・再発大腸癌41症例の好中球/リンパ球比(以下NLR)を好中球とリンパ球数から算出しその意義を検討した.NLRの平均値は3.19±2.19(0.45-10.5)で,白血球(r=0.634,p<0.0001),CRP(r=0.526,p=0.0004),アルブミン(r=-0.425,p=0.0056)と相関を認めた.これらの症例をNLRが2.77以下の群とそれ以上の群に大別し,両者の生存率を比較した.両者の生存率には有意差がみられ,NLRが2.77以下の群の生存期間中央値は765日,2.77以上の群では535日であった(p=0.0002).NLRは切除不能進行・再発大腸癌症例において有用な予後予測マーカーである可能性が示唆された.
症例報告
  • 武田 良祝, 福長 洋介, 長嵜 寿矢, 上野 雅資
    2016 年 69 巻 3 号 p. 159-163
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性.膀胱浸潤S状結腸癌に対して腹腔鏡下S状結腸切除,膀胱部分切除を施行した.最終診断はtype3,175×80mm,tub2,pSI(膀胱),int,INFb,ly1,v1,pN1(1/16),pPM0,pDM0,pRM0,f-stage IIIaであった.術後補助化学療法中に左側方領域リンパ節再発を認めたが,レジメン変更により縮小し,新出病変は認めなかった.そこで膀胱浸潤部からの領域リンパ節再発の可能性を考え,初回手術の11ヵ月後に腹腔鏡下に切除した.稀な再発形式だが根治の可能性があり,手術を選択した.現在,リンパ節切除から術後2年無再発生存中である.また最近,側方郭清に鏡視下手術が有用という報告もあり,リンパ節再発にも適応可能と考える.
  • 建 智博, 的場 周一郎, 富沢 賢治, 花岡 裕, 戸田 重夫, 黒柳 洋弥
    2016 年 69 巻 3 号 p. 164-169
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    患者は43歳女性.直腸前壁に4cm大のGISTを認めた.画像上,腫瘍は膣と近接しており,膣後壁への浸潤を否定しきれなかった.肛門温存は可能であったが,腫瘍を縮小させ,より確実な温存を行うため,メシル酸イマチニブを術前に投与.44日目で副作用により投与中止となったが,投与後の画像では腫瘍の縮小(45mm→38mm)を認めた.膣後壁への明らかな浸潤もなく,肛門温存もより確実と判断し,手術の方針となった.腹腔鏡下に直腸を骨盤底まで充分に剥離.肛門管内は内肛門括約筋を温存しつつ剥離を行った.肛門側より内肛門括約筋を温存しつつ,腹腔内からの剥離と交通させた.直腸前壁の腫瘍を露出しないように膣後壁の一部を合併切除した.膣後壁は経膣的に縫合閉鎖.再建は経肛門的に結腸肛門吻合を行った.直腸GISTに対して術前のメシル酸イマチニブ投与と腹腔鏡の手術は,肛門温存をより安全で正確に行えると考えられた.
  • 柵山 尚紀, 小林 昭広, 小嶋 基寛, 池田 公治, 松永 理絵, 河野 眞吾, 伊藤 雅昭, 齋藤 典男
    2016 年 69 巻 3 号 p. 170-175
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌とその術後肝転移に日本住血吸虫卵が併存した症例を経験したので報告する.症例は72歳,男性.貧血,便潜血陽性を主訴にS状結腸癌と診断され,手術治療目的に当院紹介受診となった.S状結腸癌type2 cSS N1 H0 P0 M0 cStage IIIbの診断で,腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.術後病理診断は,S状結腸癌 pSE,pN1,pM0 pStage IIIa with Schistosoma japonicum eggであった.虫卵の分布は切除腸管全般にわたっており,癌との関連性は否定的であった.術後,9ヵ月後に肝転移を発症し腹腔鏡下肝部分切除術を施行.術後病理所見は転移性肝癌でも癌部非癌部にかかわらず虫卵の併存を認めた.患者は生活歴に山梨県甲府市に在住があった.本症例では虫卵が死卵であり活動性もないことから日虫症に対する治療は施行せず,術後化学療法も通常通り施行した.
  • 鴈野 秀明, 安藤 昌之, 天笠 秀俊, 青木 信彦
    2016 年 69 巻 3 号 p. 176-181
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.腎機能障害で当院内科に通院中であった.感冒症状に対してCefcapene(CFPN)を11日間内服していたところ嘔吐下痢が出現した.細菌性腸炎を合併した急性腎不全と診断され当院内科に入院となった.その後,腹部膨満が増悪し,入院第5病日に偽膜性腸炎と診断された.入院時に中毒性巨大結腸症を合併し,当科紹介時はすでに重篤化していたため結腸瘻造設術により結腸を減圧したのち,結腸瘻からVancomycin(VCM)の結腸内投与を開始した.術後5日目の便培養でClostridium difficileは陰性となり,入院第63病日に退院となった.本症例は重篤な状態であったが,結腸の減圧とVCMの結腸内投与を迅速かつ確実に施行したことが救命につながったと考えられた.
第191回大腸肛門病懇談会
編集後記
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