直腸肛門部痛には,(1)過去に直腸肛門部の手術を受け,その創が完全に癒合しているのに,耐えられない痛みが続く侵害受容性疼痛,(2)なんらの病変もないのに,激しい直腸肛門痛を訴え続ける非侵害受容性疼痛,そして(3)不定期に短時間ではあるが激しい直腸肛門痛を繰り返す消散性肛門直腸痛などがあり,3者とも原因不明で決定的な治療法もない.
その発生頻度は当科の全外来患者の1%にも満たない稀な疾患であるが,治らない痛みに悩み,仕事もできず,うつ状態になりながら医師を歴訪しているのが現状である.
そこで,著者らはPainClinicにおける神経ブロックの手技を用いて,273例の直腸肛門痛患者(Proctalgia fugaxを除く)を治療し,良好な結果と良い長期成績を得たので報告する.なお痛みの評価は,治療前を10とし,治療後は0から10までの11段階に分けて表現した.結果は著効と軽快をあわせると,Caudal Blockでは74.7%(72/139例),持続硬膜外Blockでは80.4%(41/72例),Saddle Blockでは91.3%(42/62例)に効果があった.
以上から,これらのブロック手技により治癒する直腸肛門痛患者は多く,痛みの悪循環を遮断すれば改善することが示唆された.
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