日本大腸肛門病学会雑誌
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57 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 病理組織学的研究
    白水 和雄, 緒方 裕, 荒木 靖三
    2004 年57 巻6 号 p. 315-323
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    下部直腸癌,肛門管癌に対する新しい肛門温存術の可能性について検討した.対象,方法:腹会陰式直腸切断術の切除標本211例について,肛門管への浸潤や転移の有無を組織学的に検討した.結果:占居部位を腫瘍下縁が歯状線より上部のPa癌(176例)と下部のPb癌(35例)に分類すると,Pa癌では深・浅外肛門括約筋,皮下外肛門括約筋への浸潤または転移は,それぞれ11.3%,1.1%と極めて低頻度で,深達度はすべてal以上であった.Pb癌では,それぞれ37%,9%で,深達度はすべてa1以上であった.括約筋問溝への浸潤または転移はPa癌で2.3%,Pb癌で29%であった.結論:深達度が筋層以内の時には,すべての外肛門括約筋を温存することにより肛門温存が可能である.筋層を越える時には,皮下外肛門括約筋のみを温存することにより肛門温存が可能である.括約筋間溝に浸潤するPa,Pb癌では肛門温存は不可能である.
  • 痔疾患か?癌か?
    板野 聡, 寺田 紀彦, 堀木 貞幸, 遠藤 彰, 大多和 泰幸
    2004 年57 巻6 号 p. 324-328
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    邦文要旨:最近の2年間に当院を肛門症状を主訴として来院した症例484例で,主訴や検査内容,診断名,治療などを調査検討した.痔疾患と診断されたものは462症例で,内痔核が85.3%を占めていた.根治手術は89例(19.3%)で行われ,約8割の症例では保存的治療が行われた.大腸ポリープは63例(13.0%)で,55例は痔疾患を,2例は痔疾患と癌を合併しており,63例中29例(46,0%)が内視鏡的処置を受けていた.大腸癌は11例(2.3%)で発見され,主訴では出血と便通異常が多かった.性別では男性5例,女性6例で,部位では直腸7例(63.7%),S状結腸4例(36.3%)であり,下行結腸より口側にはなかった.根治手術ができたのは7例(63.6%)であった.以上から,肛門症状を主訴とした症例では,主訴から症例を絞り込み,S状結腸内視鏡検査を行うことが,癌の見落としを予防するために重要と考えられた.
  • 小澤 広太郎, 金井 忠男, 栗原 浩幸, 石川 徹, 金武 良憲, 橋口 陽二郎, 望月 英隆
    2004 年57 巻6 号 p. 329-335
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Gastrointestinal stromal tumor(GIST)は問葉系腫瘍として近年注目されている.今回,直腸肛門部GISTの3症例を経験したので報告する.第1例は,平成12年に平滑筋腫の診断で切除され,平成14年に再発をきたしたたΨ再切除しGISTと診断された.初回切除標本を免疫染色したところ,smooth muscle typeのGISTであり,,再発時にはuncommitted typeと脱分化していた.第2例目は平成11年に平滑筋腫として経肛門的腫瘍切除を施行した例を免疫染色を行い,GISTと診断した例である.第3例目は,平成15年に手術を行い初回手術時にGISTと診断された例である.GISTの概念は近年確立されたもので,過去に平滑筋腫と診断されたものの中に,少なからずGISTの症例が含まれていると考えられる.したがって過去に切除された平滑筋腫はGISTを念頭に置き経過観察する必要がある.
  • 大久保 賢治, 辻仲 康伸, 浜畑 幸弘, 松尾 恵五, 小出 章, 堤 修, 高野 仁, 赤木 一成, 寺田 俊明
    2004 年57 巻6 号 p. 336-339
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    目的:痔瘻の一次口診断として,視診,肛門指診が信頼され施行されているが,判明しない病変もみられる.我々は,二次口が開口していた痔瘻98例,114病変に対し,1:1に混和した原液ポビドンヨードと3%オキシドールを二次口より注入して一次口からの流出を確認し,痔瘻の一次口補助診断としての有用性を検討した.結果:肛門指診で一次口が確認された病変は85/114(74.6%)であり,ポビドンヨード・オキシドールでは60/114(52.6%)病変であった.しかし肛門指診で確認されなかった病変でも12/29(41%)でポビドンヨード・オキシドールの流出が認められ,肛門指診とポビドンヨード・オキシドールの両方では合計97/ll4(80.7%)の一次口が確認され,診断率が向上した.一方,肛門指診とポビドンヨード・オキシドール法の両方で一次口が確認され,一次口が一致したのは92%(44/48)病変であった.以上よりポビドンヨード・オキシドール法は補助診断として有用であると思われた.
  • 根塚 秀昭, 薮下 和久, 尾山 勝信, 道輪 良男, 山本 精一, 加治 正英, 前田 基一, 小西 孝司
    2004 年57 巻6 号 p. 340-344
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂癌症例に関して手術成績を検討した.対象は過去18年間に当科で手術施行した原発性虫垂癌症例の12例で,男女比3:9,平均年齢56.8歳(33~74歳),同期間の全大腸癌手術症例中0.69%の頻度であった.症状は右下腹部痛,右下腹部腫瘤,発熱などで,貧血にて精査後発見された無症状例は2例であった.術前に注腸造影検査,腹部CT,大腸内視鏡検査が施行され,虫垂癌の術前診断を得た症例は3例のみ,他は盲腸癌3例,癌性腹膜炎3例,回盲部膿瘍1例などであった.術式は結腸右半切除6例,回盲部切除4例,虫垂切除1例などであった.組織学的臨床病期はstage IIが3例,stage IIIaが1例,stage IVが8例で,stage IV症例では6例に腹膜播種を,3例に肝転移をともなっていた.術後遠隔成績は,4例が無再発生存中,8例は術後短期間に癌死,1生率66.7%,3生率,5生率ともに25%であった.特徴的な画像所見に乏しいため術前診断は困難で,手術時には進行した症例が多かったが,下腹部痛や腫瘤の鑑別診断のひとつとして念頭に置くべきと考えられた.
  • 吉田 鉄郎, 笹口 政利, 吉田 英毅
    2004 年57 巻6 号 p. 345-350
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部痛には,(1)過去に直腸肛門部の手術を受け,その創が完全に癒合しているのに,耐えられない痛みが続く侵害受容性疼痛,(2)なんらの病変もないのに,激しい直腸肛門痛を訴え続ける非侵害受容性疼痛,そして(3)不定期に短時間ではあるが激しい直腸肛門痛を繰り返す消散性肛門直腸痛などがあり,3者とも原因不明で決定的な治療法もない.
    その発生頻度は当科の全外来患者の1%にも満たない稀な疾患であるが,治らない痛みに悩み,仕事もできず,うつ状態になりながら医師を歴訪しているのが現状である.
    そこで,著者らはPainClinicにおける神経ブロックの手技を用いて,273例の直腸肛門痛患者(Proctalgia fugaxを除く)を治療し,良好な結果と良い長期成績を得たので報告する.なお痛みの評価は,治療前を10とし,治療後は0から10までの11段階に分けて表現した.結果は著効と軽快をあわせると,Caudal Blockでは74.7%(72/139例),持続硬膜外Blockでは80.4%(41/72例),Saddle Blockでは91.3%(42/62例)に効果があった.
    以上から,これらのブロック手技により治癒する直腸肛門痛患者は多く,痛みの悪循環を遮断すれば改善することが示唆された.
  • 2004 年57 巻6 号 p. 351-387
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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