日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
76 巻, 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 中西 芳之, 水内 祐介, 三渕 晴香, 渡邊 歓, 田村 公二, 佐田 政史, 永吉 絹子, 永井 俊太郎, 古賀 裕, 小田 義直, 中 ...
    2023 年76 巻4 号 p. 313-319
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    症例はアルコール肝硬変を既往にもつ64歳の男性で,右下腹部痛と血便のため前医を受診され,CTで終末回腸に壁肥厚を指摘され当院紹介となった.カプセル内視鏡で,中部から下部小腸を中心に頂部発赤調のSMT様隆起の多発を認め,ダブルバルーン内視鏡を用いて病変より生検を行い,回腸に多発する神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine tumor;以下,NETと略記)の診断となり手術目的に当科を紹介受診された.術中所見ではTreitz靭帯より315cmから365cmに多発する腫瘍を認め,同部は小腸切除を施行した.また,術中内視鏡で同部以外の離れた6ヵ所にも腫瘍を認め,小腸切除後の栄養障害および肝機能増悪を回避するため,それぞれ楔状に局所切除を施行した.術後の病理診断で腫瘍はすべてNET(G1,G2)の診断であった.多発する小腸NETは本邦では比較的稀な疾患であるため,若干の考察を加えて報告する.

  • 中村 寧, 辻 順行, 高野 正太, 伊禮 靖苗, 濱田 博隆, 桑原 大作, 玉岡 滉平, 久野 三郎, 福永 光子, 田中 正文, 佐伯 ...
    2023 年76 巻4 号 p. 320-325
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    目的:直腸脱の経腹的吊り上げ固定術の手術成績について検討を行った.

    対象:2012年から2019年までの94症例.

    結果:開腹術24例,腹腔鏡手術70例.平均年齢72.3歳(17-93),男性10例,女性84例.平均脱出長4.3cm(1-10).初回手術症例55例,再発症例39例(再再発以上8例).平均手術時間は開腹縫合固定148分,腹腔鏡下縫合固定143分,腹腔鏡下ventral rectopexy 229分.再発は8例(8.5%)に認められた.再発例で前治療が縫合固定例では,すべて腸管側の固定が外れており,組織脆弱や浅く狭い運針により固定部腸管漿膜筋層が裂けて再発をきたしていることが推測された.

    結語:経腹的吊り上げ固定時には特に縫合固定時に腸管の組織脆弱性に十分注意し,確実な固定を行うことが重要である.

  • 青松 直撥, 前田 清, 福井 康裕, 黒田 顕慈, 西居 孝文, 日月 亜紀子
    2023 年76 巻4 号 p. 326-332
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    【背景】高齢大腸癌患者の術前のリスク評価法としてprognostic nutritional index(PNI),Modified Glasgow Prognostic Score(mGPS)を用いて手術リスク評価と予後の解析を行った.【方法】根治度Aの大腸癌手術を施行した高齢者75歳以上332例を対象とし,PNI 40以下(Low群)81例,40を超えた(High群)251例の2群およびmGPS0,1(Low群)278例,mGPS2(High群)54例に分け,臨床的因子と手術成績および全生存期間との関係について後方視的に検討した.【結果】mGPSHigh群は有意に術後合併症が高率であり,縫合不全が多かった.予後の検討ではPNILow群,mGPS2群で有意に予後不良であった.PNIとmGPSは相関を認め,PNI低値かつmGPS高値が最も予後不良であり,独立した予後予測因子となった.

  • 鉾之原 健太郎, 盛 真一郎, 喜多 芳昭, 田辺 寛, 大塚 隆生
    2023 年76 巻4 号 p. 333-338
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】taTME併用低位前方切除術におけるSST吻合は手技の難度が高く,定型化と工夫が必要である.当院では縫合不全を予防するため,口側・肛門側ともに2重にPSSを行うquadruple PSSを用いたSST吻合を施行している.本手技のポイントと短期治療成績について報告する.【結果】2014年11月から2020年10月の期間で本手技を用いてSST吻合を行った27例について短期治療成績を検討した.手術時間中央値は368分,直腸断端のPSSに要した時間の中央値は689秒であった.直腸リングのcomplete率は85.2%であった.術後合併症を6例に認め,吻合部関連合併症は2例であった(骨盤内感染1例,縫合不全1例).【結語】taTME併用下低位前方切除術におけるSST吻合の際のquadruple PSSは,切除リングのcomplete率を向上させ,吻合部関連合併症を減少させる可能性がある.

  • 松本 朝子, 野明 俊裕, 小篠 洋之, 入江 朋子, 玉置 裕香, 榊原 優香, 白水 良征, 荒木 靖三, 高野 正博
    2023 年76 巻4 号 p. 339-346
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    結紮切除術(LE)はあらゆる形態の内外痔核や随伴病変がある痔核にも対応できる術式であり,汎用性は高く肛門外科医として習得すべき手技の1つであるが,他の治療法と比較して疼痛,出血,狭窄などの合併症や技術習得に時間を要するなどの問題点もある.

    【目的・方法】2015年12月~2022年3月までに当院で3ヵ所以上LEを施行した558例中,術前後に直腸肛門内圧検査を施行した368例を対象とし,術後成績,術後合併症に関して検討した.

    【成績】男性/女性134/234,年齢中央値49.5歳,手術時間中央値23分,手術により肛門管最大静止圧は男性で17.6%,女性で13.6%低下していた.術後合併症は,出血4.3%,狭窄2.2%,便失禁1.6%であった.

    【結論】術後合併症は諸家の報告と同等であった.LEは根治性の高い術式であるが,手術により一定の括約筋機能低下が起こりうることを念頭に置く必要がある.

臨床研究
  • 松村 彰太, 加藤 滋
    2023 年76 巻4 号 p. 347-352
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    肛門管扁平上皮癌の標準治療として化学放射線療法(CRT)が定着しつつある.本報告では当院で経験した肛門管扁平上皮癌7例の治療成績を検討した.各症例の進行度はStageI/II/III/IV=1例/1例/5例/0例,全例に対してCRTを施行した.CRTは5-FluorouracilおよびMitomycin C(1例に対してはCisplatin)を2コース施行し,骨盤内および両鼠径リンパ節領域に放射線照射した.治療結果は全例がCR,無再発生存中である.Grade 3以上の有害事象として,発熱性好中球減少症などの血液毒性および下痢,放射線性皮膚炎を認めた.晩期障害は,Grade 2の放射線性直腸炎および膀胱炎を認めた.さらに本邦既報の5-FUおよびMMCを用いたCRT症例47例に関しても比較的良好な治療結果が得られていた.血液毒性に注意が必要であるが,CRTは根治が期待できる治療法と考えられた.

症例報告
  • 鈴木 綾, 指山 浩志, 堤 修, 赤木 一成, 小池 淳一, 安田 卓, 大谷 泰介, 坪本 敦子, 中山 洋, 有馬 秀英, 松尾 恵五 ...
    2023 年76 巻4 号 p. 353-358
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    Implantation cystとは腸管吻合部に遅発性に生じる嚢胞である.Low anterior resection,Procedure for prolapse and hemorrhoids(PPH)後に生じる病変として報告されている.今回PPH後のimplantation cystが自壊したと考えられる隆起性病変を認め内視鏡的開窓術を行った症例を経験したので報告する.症例は2006年に前医にてPPHを施行し2019年に定期検診の内視鏡検査で直腸に粘膜下腫瘍様病変を認めた.精査の結果瘻孔を有する粘膜下腫瘍様病変であり,PPHのstaples口側に位置し,内肛門括約筋外に突出していた.内容物は便塊であった.診断的治療目的に開窓術を安全に施行した.今回報告したようなimplantation cystはPPHで5例,LARで23例認め,比較的珍しい症例といえ,文献的考察を加えて報告する.

  • 山下 晋也, 水野 均, 城光寺 龍
    2023 年76 巻4 号 p. 359-364
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    症例は47歳女性,主訴は下腹部痛であった.左卵巣子宮内膜症性嚢胞で手術予定であったが下腹部痛を認めたため腹部CT検査を施行したところ虫垂腫大を指摘された.血液検査所見でCA19-9は208U/mLと高値であり,下部内視鏡検査では虫垂開口部より隆起性病変を認めたが生検結果はGruop1であった.以上より診断目的に婦人科手術と同時に腹腔鏡下盲腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査でpaired box(PAX)8(+)の立方上皮と上皮下にcluster of differentiation(CD)10(+),エストロゲン受容体〈Estrogen Receptor;ER〉(+)の内膜様間質組織を認め,線維性結合組織の増生で虫垂壁は内腔に向かって内反し,虫垂重積を伴う子宮内膜症の診断であった.重積を伴う子宮内膜症はまれであり,術前診断は困難である.今回,重積を伴う虫垂子宮内膜症の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

編集後記
feedback
Top