日本大腸肛門病学会雑誌
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73 巻, 6 号
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総説
  • 佐伯 泰愼, 山田 一隆, 岩本 一亜, 田中 正文, 福永 光子, 野口 忠昭, 伊禮 靖苗
    2020 年 73 巻 6 号 p. 227-236
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    Pagetoid spreadを伴う肛門管癌は比較的稀な疾患なためまとまった報告例はなく治療成績もほとんど報告されていない.今回臨床病理学的特徴と治療成績を明らかにするために本邦で治療された81例の検討を行った.平均年齢70.2歳,男女比1対1.3.自覚症状を97%に認め,治療前に原発巣同定困難な症例が32%認め,粘膜内癌を含む早期例でもPagetoid spreadを認めていた.原発性Paget病とPagetoid spreadの皮疹の鑑別に免疫染色が行われGCDFP-/CK20+/CK7+が多かった.切除範囲同定のための術前mapping生検が46%行われ,治療の多くは直腸切断術が行われていた.5年生存率は45.4%で5年累積再発率は51.3%で鼡径リンパ節と局所に多く認め,通常の肛門管癌よりやや予後不良であった.

原著
  • 安部 達也, 鉢呂 芳一, 小原 啓, 稲垣 光裕, 菱山 豊平, 國本 正雄
    2020 年 73 巻 6 号 p. 237-243
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    実地臨床における大腸通過時間検査の診断能を分析し,その臨床的意義について検討した.慢性的な便秘症状のために当院を受診し,X線不透過マーカー法による大腸通過時間検査を行った184例(平均年齢67歳,女性109例)を対象とした.SITZMARKS®を1カプセル服用して,3日後または5日後に腹部X線を撮影し,残存マーカー数をカウントした.マーカー服用後3日目に撮影した170例のうち,64例(38%)が大腸通過遅延型(マーカーが40%以上残存)であった.大腸通過遅延型のマーカー分布はrectosigmoid(31例)とleft colon(23例)が多かった.残存マーカー数と便秘の重症度の間には有意な相関関係は認められなかった(rs=0.086,p=0.237).大腸通過時間検査に伴う副作用は1例も認めなかった.日本人を対象として大腸通過時間検査を行い,海外での成績と同等の結果が示された.

臨床研究
  • 藤田 昌久, 石川 文彦, 釜田 茂幸
    2020 年 73 巻 6 号 p. 244-251
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    右側結腸憩室炎を区域に分けて検討した報告はない.本検討では,2005年1月から2019年12月までの15年間に当院で入院加療した右側結腸憩室炎170例を対象とし,右側結腸を回盲部と肝彎曲部に分けて検討した.発症部位は肝彎曲部の22%と比べて回盲部は78%と多かった.初発時年齢は回盲部48.8歳,肝彎曲部39.9歳,男性の割合は回盲部62%,肝彎曲部26%であり,肝彎曲部は回盲部と比べて年齢が若い女性に多かった.回盲部は膿瘍・穿孔を伴った複雑性憩室炎が14%と多く,手術率も13%と高いが,肝彎曲部は複雑性が3%と少なく,手術症例はなかった.再発歴は回盲部17%,肝彎曲部16%と差はなかった.再発症例はすべて初発時が非複雑性であり,再発時の複雑性への重症化は少なく,再発部位は初発時と同じか近傍の区域が多かった.回盲部と肝彎曲部では異なる特徴も多く,分けて検討する必要があると思われた.

症例報告
  • 庫本 達, 大浦 康宏, 鈴木 重徳
    2020 年 73 巻 6 号 p. 252-257
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    症例は39歳,妊娠20週の女性.右下腹部痛を主訴に当院産婦人科を受診後,虫垂炎が疑われ当科紹介となった.腹部超音波検査と腹部MRI検査にて虫垂の腫大と壁肥厚を認め,急性虫垂炎と診断した.安定期の妊婦であることから手術加療の方針とした.手術は単孔式腹腔鏡下手術で開始した.仰臥位で軽度頭低位,左側低位にローテーションを行うことで視野を確保し,単孔式で手術を完遂した.術後経過は良好で術後3日目に退院となり,妊娠42週目に健児を自然分娩した.腹腔鏡下虫垂切除術は妊婦においても安全に施行でき,整容面で優れる単孔式腹腔鏡下虫垂切除術も有用な選択肢となり得ると考えられた.

  • 相原 一紀, 梶原 由規, 神藤 英二, 岡本 耕一, 阿尾 理一, 米村 圭介, 白石 壮宏, 永田 健, 安部 紘生, 小林 美奈子, ...
    2020 年 73 巻 6 号 p. 258-263
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/25
    ジャーナル フリー

    症例は70歳男性.便柱の狭小化を主訴に前医を受診された.下部消化管内視鏡検査にて直腸に全周性腫瘍を指摘され,精査加療目的に当科紹介受診した.既往に9年前内痔核に対して痔核根治術を施行された.初診時に肛門縁の9時方向に1cm大の圧痛を伴わない硬結を認めた.直腸腫瘍と肛門部腫瘤の生検ではいずれもtub1の病理組織診断であった.精査の結果,直腸S状部(RS)癌cT4a cN2a cM1b(PLU2,SKI)cStageIVbの診断にてHartmann手術および経肛門的腫瘍切除術を施行した.病理組織所見ではRS癌と肛門部腫瘤は共に,免疫組織化学的にcytokeratin(CK)20一部陽性,CK7陰性で,肛門部腫瘤はRS癌からの肛門部皮膚転移と診断された.確定は困難であるが,管腔内に脱落した癌細胞のimplantationや,中枢側リンパ流の閉塞によるリンパ行性進展が考え得る転移経路と考えられた.

第44回日本大腸肛門病学会九州地方会
第25回大腸肛門機能障害研究会
編集後記
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