日本大腸肛門病学会雑誌
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76 巻, 8 号
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原著
  • 松本 朝子, 野明 俊裕, 小篠 洋之, 入江 朋子, 玉置 裕香, 榊原 優香, 白水 良征, 荒木 靖三
    2023 年 76 巻 8 号 p. 509-515
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

    特発性慢性巨大結腸症は大腸の機械的な閉塞を伴わず,また基礎疾患や薬歴が存在しないにもかかわらず,大腸が病的に拡張している状態である.治療は内科的治療が優先されるが,効果が不十分な場合には外科的治療の適応となる.外科的治療として一般に大腸亜全摘術+回腸直腸吻合が施行されているが,拡張腸管のみの切除では遺残結腸の拡張をきたす症例や術後に直腸肛門機能障害による便排出障害を伴う症例もある.

    外科的治療を行う上で,病態の把握と範囲診断が重要であり,当院ではX線不透過マーカーによる大腸通過時間検査を用いて切除範囲を,排便造影と直腸肛門内圧検査,患者背景を考慮して再建方法を決定している.

    当院で経験した7例の手術症例の短期・長期成績は良好であり,術後は排便状況・腹部症状ともに改善している.

臨床研究
  • 木村 聖路, 山岸 晋一朗
    2023 年 76 巻 8 号 p. 516-525
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

    サーベイランス患者2,738例(期間85.0月,回数4.08回)を初回所見により,A群:正常大腸736例,B群:微小腺腫放置708例,C群:低リスク腺腫切除560例,D群:高リスク腺腫切除388例,E群:粘膜内癌,粘膜下浸潤癌切除346例に分類した.高異型度腺腫または癌の累積発生率はLogrank検定にてA群よりB群は高く(p<0.0001),B群とC群は有意差なく,C群よりD群,E群は高かった(p<0.05,p<0.005).初回から2回目の検査間隔はA群52.1月,B群34.3月,C群32.5月,D群31.4月,E群27.1月でA群以外は一律3年未満であった.本邦版,US-Task Force版,ESGE版のガイドラインに対しA群96.2%,B群65.8-99.4%,C群67.0-98.0%,D群15.7-66.4%,E群28.5-77.2%の比率で推奨間隔より短い検査であった.

症例報告
  • 山本 雄大, 馬場 裕信
    2023 年 76 巻 8 号 p. 526-532
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

    症例は52歳男性.下腹部腫瘤の精査目的に外来受診され画像検査にて5cm大の腸間膜腫瘍を回盲部に認め,診断的治療目的に手術を施行した.腹壁に浸潤する腸間膜腫瘍を回盲部に認め,腹腔鏡下回盲部切除術にて肉眼的に完全切除し得た.病理組織学的にc-kit,S-100,Desmin,CD34陰性,β-catenin陽性でありデスモイド腫瘍と診断した.本症例は家族性大腸腺腫症の合併はなくβ-catenin陽性であるため,孤発性の腹腔内デスモイド腫瘍と考えられた.このタイプでは機械的刺激が誘因となり発生することが知られているが本症例では認めず,その成因は不明である.腹腔内デスモイド腫瘍は術前診断が困難であり,局所浸潤傾向が強いことから開腹下に拡大手術が行われてきたが,近年,腹腔鏡手術の報告も増加してきており,その有用性について文献的考察を加え報告する.

  • 塩入 幹汰, 國末 浩範, 久保 孝文, 松村 年久
    2023 年 76 巻 8 号 p. 533-537
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

    症例は45歳,女性.腹痛および血便を主訴に前医を受診した.下部消化管内視鏡検査でS状結腸に腫瘤を認め,生検ではGroup1であった.精査加療目的に当院へ紹介となった.生検および画像検査では確定診断に至らず,診断的治療目的に手術を行った.腫瘤は左卵巣動静脈および左外側大腿皮神経と癒着しており,悪性腫瘍による浸潤の可能性も考慮して,それらを合併切除し腹腔鏡補助下S状結腸切除術(D2郭清)を施行した.病理組織診断は腸管子宮内膜症で,悪性所見は認めなかった.術後は外来にて,再発予防のホルモン療法を行っている.腸管子宮内膜症の病変は粘膜下層以深に存在することが多く,生検による術前診断率は低い.以上の要点を中心に文献的考察を加え報告する.

  • 田邊 太郎, 酒井 透, 徳永 良太, 石田 幸子, 保母 貴宏, 西 健, 大槻 克文, 横山 登, 井上 晴洋
    2023 年 76 巻 8 号 p. 538-543
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー

    29歳女性,初産.妊娠40週4日目,胎児機能不全のため鉗子分娩(急速墜娩)で3,230gの男児を出産.分娩時第III度会陰裂傷に対し縫合閉鎖を行ったが,分娩後4日目に便失禁を発症し,身体所見で肛門・膣の総排泄腔様変形を認めたため,創哆開に伴う肛門括約筋不全と診断した.分娩後7日目に当院に転院,分娩後8日目に肛門括約筋修復術および会陰修復術を施行した.術後は便失禁スコアの著明な改善を認め,創部の感染や合併症もなく退院した.分娩時肛門括約筋損傷に対する早期の括約筋修復術は,一時的人工肛門を造設することなく肛門機能を回復させることができ,患者のQOL向上においても有用であると考えられた.

第47回日本大腸肛門病学会九州地方会
第27回大腸肛門機能障害研究会
編集後記
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