日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
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76 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 在田 麻美, 高橋 秀和, 関戸 悠紀, 波多 豪, 荻野 崇之, 三吉 範克, 植村 守, 山本 浩文, 水島 恒和, 土岐 祐一郎, 江 ...
    2023 年 76 巻 3 号 p. 261-270
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/27
    ジャーナル フリー

    サルコペニアは大腸癌で予後不良因子であり,肥満も癌に関与していることが報告されている.サルコペニアはPsoas Muscle Mass Index (PMI),肥満はBody Mass IndexもしくはVisceral Fat Area (VFA)を用いてサルコペニア肥満群,非サルコペニア肥満群を設定し,2009年から2016年までに大腸癌に対して根治切除術を施行した患者915名に対してOverall Survival(OS),Cancer Specific Survival(CSS),Relapse Free Survivalを検討した.PMI,VFAを用いるとサルコペニア肥満群で有意にOS,CSSが短かった(P=0.0434,P=0.0291).またサルコペニア肥満であることはCSSで独立した予後不良因子であった.術前に運動食餌療法でサルコペニア肥満を改善すれば予後改善が期待される.

  • 名西 健二, 日野 仁嗣, 塩見 明生, 賀川 弘康, 眞部 祥一, 山岡 雄祐, 陳 開, 前田 周良, 田中 佑典, 笠井 俊輔, 新井 ...
    2023 年 76 巻 3 号 p. 271-277
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/27
    ジャーナル フリー

    目的:回結腸動脈,右結腸動脈(RCA)が支配血管の上行結腸癌(以下,近位上行結腸癌)に対する腹腔鏡下結腸切除術(以下,腹腔鏡下右結腸切除術)の短期・長期成績にRCAの有無が与える影響を明らかにする.方法:腹腔鏡下右結腸切除術D3郭清を施行した近位上行結腸癌96例をRCAの有無に従い2群に分け,臨床病理学的因子,短期・長期成績を検討した.結果:RCAあり(RCA群)は51例,RCAなし(non-RCA群)は46例で,臨床病理学的因子に差はなかった.RCA群ではnon-RCA群よりも手術時間が長く(p=0.047),リンパ節郭清個数が多く(p=0.003),特に主リンパ節郭清個数(p=0.044)が多かった.合併症率や長期成績に差はなかった.結語:近位上行結腸癌に対する腹腔鏡下右結腸切除術においてRCAの有無による短期・長期成績の差はないと考えられた.

  • 長森 正和, 辻仲 眞康, 前本 遼, 木村 恭彰, 田巻 佐和子, 初沢 悠人, 髙橋 礼, 柿澤 奈緒, 宮倉 安幸, 力山 敏樹
    2023 年 76 巻 3 号 p. 278-285
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/27
    ジャーナル フリー

    目的:ハルトマン手術(HP)後からハルトマンリバーサル手術(HR)を施行するまでの期間(インターバル期間)とHRの治療成績との関連について明らかにすること.

    方法:2009年9月から2021年12月までのHR 32例を対象とし,患者背景,HPおよびHR周術期の因子,治療成績を検討項目として,インターバル期間の短い症例(中央値以内)と長い症例(中央値よりも長い)との間で比較した.

    結果:インターバル期間の中央値は6ヵ月であった.Clavien-Dindo分類GradeIII以上の術後合併症は6例(19%)に発生した.インターバル期間の短い症例(N=18)と長い症例(N=14)との比較で,後者に併存疾患を2つ以上有する症例が有意に多かったが,術後合併症を含む治療成績に有意差はなかった.

    結語:インターバル期間を6ヵ月より延長しても,術後合併症を含む治療成績は改善しなかった.

  • 上原 拓明, 亀山 仁史, 山崎 俊幸, 岩谷 昭, 榎木 佑弥
    2023 年 76 巻 3 号 p. 286-291
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/27
    ジャーナル フリー

    目的:直腸癌手術での一時的小腸人工肛門造設でのHigh-output stoma(HOS)の予測因子を明らかにする.対象と方法:2008年1月~2021年6月に当科での直腸癌手術における一時的小腸人工肛門造設施行例のうち,排便量に影響する術後合併症発症例を除外した107例を対象として,HOSの予測因子を検討した.HOSの診断は排便量が1日2,000mL以上の時点とした.結果:HOSは18例(16.8%)で認められた.HOS群と非HOS群に分けての検討では,術前小野寺式栄養指数(PNI)45未満の症例がHOS群で有意に多く(P=0.010),多変量解析でも術前PNI 45未満はHOSの予測因子であった(オッズ比 4.86,95%信頼区間1.18-20.00,P=0.029).結論:HOSの予測因子として術前PNI 45未満が挙げられ,術前栄養状態の悪い症例では,HOSに注意が必要である.

臨床研究
  • 榎本 浩也, 諏訪 勝仁, 竹内 奈那, 塚﨑 雄平, 牛込 琢郎, 岡本 友好, 衛藤 謙
    2023 年 76 巻 3 号 p. 292-298
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/27
    ジャーナル フリー

    TaTMEは肛門側切離端,外科剥離面の確保,手術時間短縮,自律神経温存などのメリットがあるが,手術手技のトレーニング,2チームアプローチ人員確保や医療機器の問題などがあり導入が難しい.High volume centerへの国内留学での集中的な学習経験を経て自施設へTaTMEを導入したためその過程と短期成績について報告する.導入前には,麻酔科・手術部への説明会,模擬的な器材セッティング,手術手順の定型化を目的としたマニュアル作成を行った.安全に導入するために早期直腸癌に対してプロクター指導下で初回の手術を行い,段階的に手術適応を拡大した.導入後の原発性直腸癌22例の治療成績で,TaTMEに特異的な合併症,開腹移行例,Clavien-Dindo分類IIIb以上の合併症は認めなかった.TaTMEはhigh volume centerでの学習,入念な準備によって安全に導入可能であった.

症例報告
  • 高橋 里奈, 高橋 玄, 井 祐樹, 河口 恵, 百瀬 裕隆, 茂木 俊介, 塚本 亮一, 岡澤 裕, 河合 雅也, 杉本 起一, 小島 豊 ...
    2023 年 76 巻 3 号 p. 299-303
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/27
    ジャーナル フリー

    はじめに:括約筋間直腸切除術後(Intersphincteric resection:ISR)後の粘膜脱は,治療法として確立されたものはないが,当科ではDelorme手術を施行しており,その臨床経験を報告する.

    結果:2010年6月から2020年12月の間に直腸癌に対し36例にISRを施行した.

    ISR術後粘膜脱を4例(11.1%)に認め,うち3例にDelorme手術を施行した.周術期の合併症は認めなかった.粘膜脱の再発を1例に認め永久人工肛門造設となったが,他の2例は再発なく経過している.

    結語:ISR術後の粘膜脱に対してDelorme手術は安全に施行でき,治療の選択肢の1つとなり得る術式であった.しかし粘膜脱を再発する症例も認めており,粘膜脱の機序や術式の検討を継続すべきであると考えられた.

  • 荒川 敏, 加藤 宏之, 浅野 之夫, 志村 正博, 小池 大助, 越智 隆之, 神尾 健士郎, 河合 永季, 国村 祥樹, 谷 大輝, 佐 ...
    2023 年 76 巻 3 号 p. 304-309
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/27
    ジャーナル フリー

    59歳の男性で,左下腹部痛と発熱を認めたため当院を受診した.下腹部に限局した圧痛と筋性防御を認めたが,反跳痛は認めなかった.白血球数16,200/μl,CRP 5.29mg/dlを認め,腹部CT検査ではS状結腸の壁肥厚を認め,周囲に遊離ガス像を認めた.S状結腸穿孔,限局性腹膜炎と診断し,手術を勧めたが患者の同意が得られず絶食と抗生剤による治療を行った.全身状態は改善したのちに精査を行いS状結腸癌と診断した.腹部CT検査で腫瘍は左骨盤壁への近接が予測され,麻酔導入後に蛍光尿管ステントを留置した.腹腔鏡下に手術を行い,術中所見で腫瘍は尿管に近接していたが,近赤外光で尿管を視認し,尿管への浸潤は認めなかった.しかし精管への癒着浸潤が疑われ,腹腔鏡下S状結腸切除術,精管合併切除術を行った.術前に尿管損傷を危惧する際において蛍光尿管ステントは術中に尿管の位置を把握するために有用であると考えられた.

私の診療と工夫
編集後記
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