日本大腸肛門病学会雑誌
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75 巻, 3 号
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原著
  • 崎尾 亮太郎, 辻仲 眞康, 宮倉 安幸, 町田 枝里華, 前本 遼, 福井 太郎, 柿澤 奈緒, 田巻 佐和子, 石川 英樹, 力山 敏樹
    2022 年 75 巻 3 号 p. 99-107
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:進行下行結腸癌手術における至適リンパ節郭清の範囲について考察する.

    方法:2005年1月から2020年6月の期間に経験したpT2以深の進行下行結腸癌76症例を対象とし,郭清度毎に臨床病理学的特徴とリンパ節転移の範囲を比較した.さらに,pStageIVを除く57例に関し,術後3年間での再発様式を調査した.

    結果:術前の進行度分類に応じてD2またはD3郭清が選択されていた.D3郭清群において,下腸間膜動脈温存の有無は郭清リンパ節総数に影響しなかった.pT2で腸管傍リンパ節,pT3で中間リンパ節,pT4で主リンパ節への転移を認めた.術後3年の追跡で14症例に再発がみられたが,いずれもpT3以深の症例で,肝転移が最多で肺転移,腹膜播種,遠隔リンパ節再発がそれに続いた.

    結語:pT3以深の症例に対してはD3郭清が望ましいが,下腸間膜動脈温存の有無は郭清の質に影響を与えない可能性が考えられた.

  • 平島 相治, 小林 博喜, 高木 剛, 福本 兼久
    2022 年 75 巻 3 号 p. 108-113
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

    急性虫垂炎において保存的治療が奏効するかどうか,治療早期に判断できる指標を検討する.

    当院で保存的治療を行った急性虫垂炎65例を検討した.65例中55例で保存的治療が有効であったが,10例は保存的治療が無効で即時手術を行った.保存的治療有効群55例中7例において,保存的治療が有効であったものの,入院期間が14日間を超え治療に難渋した.次に即時手術群10例に保存的治療が難渋した7例を加えた17例を,保存的治療が奏効した48例と比較した.年齢,糞石,膿瘍の有無,治療開始後のWBC,CRP値で差を認めた.これら因子を用いて,保存的治療が奏効するか否かの予測式を作成した.この予測式によって,保存的治療が奏効するか否かの感度は95.8%,特異度は88.2%であった.

    急性虫垂炎に対して保存的治療が奏効するか否か,この予測式が1つの指標になると考える.

  • 藤井 正一, 橋本 瑶子, 坂田 真希子, 吉水 信就, 嶋村 和彦, 出口 貴司, 金澤 真作
    2022 年 75 巻 3 号 p. 114-123
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:フレイル大腸癌患者に対する術前リハビリテーション介入効果を評価する.

    方法:2014-2021年の大腸癌切除術症例を対象にフレイルvs.非フレイル患者,およびフレイル患者でリハビリテーション介入開始時期(術前介入群vs.術後介入群)の短期成績を比較した.

    結果:フレイル64例,非フレイル78例でフレイル群は高齢,貧血,低栄養状態が多かった.術後合併症はフレイル群に呼吸器(10.9%:0%,p=0.003)・心臓血管(9.4%:0%,p=0.006)障害が多かった.フレイル患者のリハビリテーション介入は術前群33例,術後群31例で術前群にECOG PS2以上が多かった(51.5%:19.4%,p=0.007).合併症(術前群:術後群)は全Grade(30.3%:54.8%,p=0.047),Grade2以上(21.2%:48.4%,p=0.022)で術前群が術後群より少なかった.内容は呼吸器障害(3.0%:19.4%,p=0.037)が術前群で少なかった.

    結語:フレイル大腸癌患者に対する術前からのリハビリテーション介入は合併症軽減に有効と示唆された.

臨床研究
  • 服部 和伸, 前多 力, 中村 寿彦
    2022 年 75 巻 3 号 p. 124-128
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

    「目的」10代の痔瘻患者におけるクローン病(CD)の可能性について検証する.「対象・方法」当院で経験した10代の痔瘻患者67例のうちで大腸内視鏡検査(TCS)を42例に施行した.そのうちCDと診断した33例を後ろ向きに検討した.「結果」42例のうちCDの確診が24例(58%),CDの疑診が9例(21%),併せて33例(79%)がCDであった.初診時に痔瘻の形態あるいは経過からクローン病を疑った症例は18例(55%)で,15例(45%)は通常の痔瘻であった.14例(42%)は消化器症状がなかった.腸管の所見で縦走潰瘍は2例,敷石状所見は3例で,多くは潰瘍やアフタの多発であった.「結論」10代の痔瘻患者はクローン病の可能性が高く,痔瘻の形態,消化器症状の有無にかかわらず積極的にTCSをする必要がある.

症例報告
  • 髙橋 礼, 辻仲 眞康, 石川 英樹, 前本 遼, 木村 恭彰, 初沢 悠人, 柿澤 奈緒, 町田 枝里華, 田巻 佐和子, 宮倉 安幸, ...
    2022 年 75 巻 3 号 p. 129-137
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

    Body mass index(以下,BMIと略記)35kg/m2以上の高度肥満を伴う大腸癌に対し腹腔鏡下手術を施行した4例を検討した.数値を中央値(範囲)で示す.年齢64(54-80)歳,男性2例,女性2例,BMI 41.6kg/m2(35.6-48.7).2例において術前のエネルギー制限を行った.術式は回盲部切除術,低位前方切除術,S状結腸切除術,結腸左半切除術それぞれ1例.手術時間393(335-688)分,術中出血量173.5(40-1,790)mL,術後在院日数10(7-63)日.1例で手術創の追加,2例でポートの追加を行った.低位前方切除術の症例において出血制御不能のため開腹移行し,術後に縫合不全を認めた.高度肥満を伴う大腸癌症例に対する腹腔鏡手術において,手術操作上の困難性を克服することが重要と考えられた.また,術前減量の意義については症例集積のうえ今後も検討を要する.

  • 杉田 久記, 小野 千尋
    2022 年 75 巻 3 号 p. 138-143
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

    症例1は80歳,男性.慢性便秘,腹部膨満感を主訴に来院した.大腸の著明な拡張とガス像を認め,内視鏡下のガス吸引を繰り返していたが,呼吸困難を認め入院となった.腹部単純X線写真,注腸透視にて全大腸が著明に拡張し,精査の結果慢性特発性大腸偽性腸閉塞症(chronic idiopathic colonic pseudo-obstruction:CICP)と診断した.症状改善目的に横行結腸人工肛門造設術を施行した.症例2は82歳,男性,慢性的な便秘,下痢,腹部膨満感を主訴に紹介された.症例1と同様に保存的加療を行うも改善が認められなかった.精査の結果CICPと診断され,人工肛門増設術を施行した.両症例とも術後経過は良好で,症状も速やかに改善した.CICPは本邦では比較的稀な疾患である.今回,われわれは人工肛門造設術の良い適応であったCICPの2症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

  • 竹本 典生, 松田 健司, 田村 耕一, 岩本 博光, 水本 有紀, 三谷 泰之, 中村 有貴, 阪中 俊博, 田宮 雅人, 兵 貴彦, 小 ...
    2022 年 75 巻 3 号 p. 144-150
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

    有茎性に壁外に発達した極めて稀な横行結腸原発の消化管間葉系腫瘍(以下,GIST)の1例を経験したので報告する.

    症例は81歳男性.腹部エコーで偶発的に嚢胞性病変を指摘.CTで嚢胞性部分主体として実質性部分を併せ持ち,横行結腸に接して壁外発育した長径8cmの腫瘤を認めた.横行結腸由来のGISTで腹腔鏡下に手術を施行した.横行結腸漿膜から有茎性・壁外性に発育した腫瘍を認めた.茎基部を結紮・切離し腫瘍を摘出した.c-kit,CD34,DOG1が陽性で,壁外性に発育した横行結腸原発GISTと診断した.摘出標本のサイズから小腸GISTに準じた転移リスクは分類は中間リスクであった.術後4年3ヵ月経過した現在まで,無再発生存中である.茎基部切除は議論を要するので,厳重なフォローアップを今後も行う.

編集後記
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