日本大腸肛門病学会雑誌
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75 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
症例報告
  • 林 貴臣, 愛洲 尚哉, 大野 龍, 梶谷 竜路, 松本 芳子, 長野 秀紀, 薦野 晃, 吉松 軍平, 吉田 陽一郎, 長谷川 傑
    2022 年 75 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2022年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    神経内分泌腫瘍診療ガイドラインによると,径10mm未満の直腸神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor)は内視鏡的治療などの局所切除が推奨されている.今回われわれは中心陥凹を伴う径5mmの直腸NETに対し,リンパ節郭清を伴う直腸切除術を行い,病理組織診断にてリンパ節転移と脈管侵襲陽性を認め,さらに術後早期に多発性の肝転移再発した症例を経験したので報告する.症例は59歳女性.検診で直腸粘膜下腫瘍を指摘され,生検で神経内分泌腫瘍(NET-G1)と診断した.ロボット支援下直腸低位前方切除術を施行した.術後病理組織診断はNET-G1,5×5mm,ly0,v1,L251転移陽性,pStageIIIBであった.術後5ヵ月目で多発性の肝転移再発をきたし,肝部分切除術を施行した.術後病理組織診断にて肝転移巣はNET-G2の診断となり,Gradeの増悪を認めた.今後も再発リスクが高いと考え,現在補助療法(追加治療)を行っている.本症例のように微小病変であっても中心陥凹などのリスク因子があれば,外科的切除を考慮すべきと考えられた.

  • 帖地 健, 和田 陽之介, 大橋 真記, 平田 勝, 吉田 卓義, 小西 文雄, 早瀬 ヨネ子
    2022 年 75 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2022年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    脂肪肉腫は後腹膜や下肢に好発するとされている軟部組織由来の非上皮性悪性腫瘍であるが,結腸に発生することは稀である.症例は74歳,男性.約1年前にS状結腸癌に対して手術が施行され再発は認めていなかった.手術1年後の経過観察目的のCTにて上行結腸に造影効果を伴う腫瘤を認めた.自覚症状はなかった.大腸内視鏡では病変を指摘できなかった.GISTやNENなどの腫瘍を疑い,増大傾向を認めたため手術を施行した.手術は腹腔鏡下回盲部切除術,D2リンパ節郭清を行った.術中所見では腫瘍は上行結腸の壁外に突出していたが周囲への癒着は認めなかった.病理所見で結腸原発の脱分化型脂肪肉腫と診断された.脂肪肉腫の報告例は少なく稀な腫瘍である.

  • 村田 悠記, 上原 圭, 小倉 淳司, 相場 利貞, 三品 拓也, 神原 祐一, 鈴木 優美, 江畑 智希
    2022 年 75 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2022年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性.1年前に前医で,痔瘻癌に対する腹会陰式直腸切断術および右腹直筋皮弁による会陰再建が施行された.病理組織診断は粘液癌,pT4N0M0で,R1切除であった.今回,術後局所再発を指摘され当科を受診した.CT検査では,前立腺の右側で腹直筋皮弁の腹側に30mm大の嚢胞性腫瘤が存在し,穿刺生検で印環細胞癌を認めた.筋皮弁の主栄養血管である右下腹壁動静脈への浸潤はないと判断し,腹直筋皮弁温存の骨盤内臓全摘術を施行し,R0切除が得られた.

    会陰部へ広範に進展する直腸癌や痔瘻癌では切除後に腹直筋皮弁による会陰再建が行われることは少なくない.しかし,術後に局所再発をきたせば,再手術時に筋皮弁の取扱いに苦慮することは想像に難くない.栄養血管の温存は技術的難易度が高く,時として癌に近付き根治性を損ないかねないため,適応は慎重に考慮すべきであるが,筋皮弁切除を回避できたメリットは大きかった.

  • 和田 雅孝, 黒川 貴則, 細井 勇人, 金子 行宏
    2022 年 75 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は79歳女性.盲腸癌に対して腹腔鏡補助下回盲部切除を施行され,術後10ヵ月目に腸閉塞で緊急入院となった.CTにて浮腫状変化を伴った回腸の拡張,closed loop sign,少量の腹水を認め絞扼性腸閉塞を疑い緊急手術を行った.術中所見で,前回手術の腸間膜欠損部に回腸が嵌入する内ヘルニアによる腸閉塞と診断した.嵌頓した回腸を用手的に整復し狭窄を解除した後,4cmの腸間膜欠損部を縫合閉鎖した.術後合併症を認めず,第53病日に自宅退院となった.腹腔鏡下大腸切除における腸間膜欠損部が原因の内ヘルニアはまれな合併症の1つである.初回手術において腸間膜欠損部の閉鎖を全例に行う意義は少ないと考えられるが,本症例のように吻合部背側に立体的な空間が生じ,欠損部と後腹膜との癒着が不十分となることが予想される場合は,内ヘルニアに対する予防対策をとるべきと考えられた.

  • 錦織 英知, 高野 正太, 田渕 聡, 伊禮 靖苗, 桑原 大作, 中村 寧, 久野 三朗, 辻 順行, 山田 一隆, 高野 正博, 吉丸 ...
    2022 年 75 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2022年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    機能性便排出障害に対してバイオフィードバック療法をはじめとした保存的治療は有用とされる一方で手術適応については明確でない.われわれは,保存的治療無効な機能性便排出障害で著しくQOL低下をきたしたために外科的腸管切除を施行した症例を経験したので報告する.

    症例は71歳女性.10年前から便排出困難,著明な腹部膨満認め下剤使用も改善なく精査加療目的入院となる.排便造影検査にて便排出を認めず,大腸通過時間検査にて24時間後に不透過マーカーが直腸まで到達していることを確認.保存的治療を3ヵ月間施行も症状改善認めず,横行結腸双孔式人工肛門造設施行.腹部膨満改善するも人工肛門脱出を認めたため,腹腔鏡下左側結腸切除,直腸切除,横行結腸単孔式人工肛門造設術施行した.ストーマからの便排出良好で患者およびご家族の満足度も高い.患者QOLの向上への貢献を第一に考え,個々の症例に応じた手術術式を選択すべきであると考える.

  • 前本 遼, 辻仲 眞康, 崎尾 亮太郎, 柿澤 奈緒, 髙橋 礼, 初沢 悠人, 木村 恭彰, 町田 枝里華, 田巻 佐和子, 石川 英樹, ...
    2022 年 75 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 2022年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代,男性.腹痛のため前医を受診し,S状結腸憩室穿孔と診断され当院へ紹介された.HincheyIIIのS状結腸憩室炎・穿孔と診断し,腹腔鏡下ハルトマン手術を施行した.術後合併症なく経過し,初回手術から4ヵ月後に腹腔鏡下ハルトマンリバーサル手術を行った.人工肛門を直視下に閉鎖した後に,腹腔鏡下に直腸断端の癒着を剥離した.直腸を授動した後に,結腸と直腸を端側吻合した(single stapling technique).術後経過は良好で,合併症なく退院した.S状結腸憩室穿孔に対するハルトマン手術,またその消化管再建術であるハルトマンリバーサル手術を腹腔鏡下に行うことの有用性が報告されているものの,本邦での報告は少ない.文献的な考察を含め報告する.

  • 三品 拓也, 上原 圭, 相場 利貞, 小倉 淳司, 村田 悠記, 神原 祐一, 鈴木 優美, 佐藤 雄介, 服部 憲史, 中山 吾郎, 小 ...
    2022 年 75 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    再発大腸癌に対する完全切除は治癒や長期予後を得るために重要な治療法である.今回,解剖学的知識に疎い大腿骨頭周囲への稀な再発を,整形外科と合同で積極的に切除した経験を報告する.

    症例は69歳の女性.前医で右大腿まで広範囲に膿瘍形成を伴う盲腸癌の後腹膜穿通と診断された.全身化学療法により腫瘍は著明に縮小し,2年半前に回盲部切除術,腸腰筋および右付属器合併切除が施行された.今回,大腿骨頭腹側の腫瘤を指摘され,当院での切開生検で盲腸癌再発と診断された.孤発性転移であり,整形外科と合同で関節包および大腿神経合併切除を伴う腫瘍切除を施行した.寛骨臼との剥離面に術中放射線照射を追加した.同部は病理学的検査でR1と診断された.術後難治性リンパ漏に対し,形成外科と合同で腹直筋皮弁充填術を施行した.術後1年7ヵ月の現在,脳髄膜播種再発は認めるものの局所制御は良好で,良好なQOLを保ちつつ,全身化学療法を継続中である.

編集後記
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