日本大腸肛門病学会雑誌
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67 巻, 1 号
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原著
  • 新井 修
    2014 年 67 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    【目的】炎症性腸疾患以外を基礎疾患としたサイトメガロウイルス(CMV)腸管感染症の内視鏡像を明らかにする【方法】生検組織でCMV感染症と診断した15例を対象にi)臨床像,ii)内視鏡像,iii)治療反応性について検討した【成績】i)平均年齢64.1歳,男女比8:7,87%に消化器症状を認め,基礎疾患は造血器悪性腫瘍が47%と最多であった.ii)内視鏡像は発赤・アフタ性病変・びらん,潰瘍(不整形,打ち抜き,縦走,平皿状,輪状,地図状),顆粒状粘膜に分類されたが,複数の潰瘍形態が共存する例は比較的少なかった.iii)抗ウイルス剤の奏効率は41.7%であった.【結論】炎症性腸疾患以外を基礎疾患としたCMV腸管感染症の好発部位は回盲部と左側大腸で,粘膜障害が比較的軽度であった.
  • 秦 史壮, 荒川 高志, 岡田 邦明, 西森 英史, 池田 慎一郎, 山田 真美, 平間 知美, 矢嶋 知己, 阿部 伸一
    2014 年 67 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    下部直腸・肛門管と腟の間の組織構築および神経分布を検索するため,成人献体10体から矢状断ないし斜め水平断の組織切片を作成,弾性線維染色および神経免疫組織染色を施した.矢状断では,弾性線維に富む連合縦走筋が,会陰体外側延長部(LEPB)と内肛門括約筋の間を下行,外肛門括約筋に放散していた.前束と後束に分かれ,前束がLEPB内に放散することもあった.いわゆる直腸腟中隔は薄くかつ寸断されており,下部直腸・肛門管と腟の間の唯一恒常的な中隔組織は,連合縦走筋であった.神経は,直腸・肛門管側より腟側の方が明らかに多く,上下に斜走していた.水平断では,直腸前側方の傍腟組織内におよそ前後方向に配列する多数の神経を認めた.これらの神経の80%以上は,圧覚などの有髄線維・痛覚線維および自律神経の混合神経であった.直腸瘤の外科的治療などで同部に進入する際は,連合縦走筋の腟側面に沿う剥離層が神経温存に適切と思われた.
臨床研究
  • 諏訪 勝仁, 中島 紳太郎, 羽生 健, 鈴木 俊亮, 江川 安紀子, 岡本 友好, 小村 伸朗, 矢永 勝彦
    2014 年 67 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2014年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    目的:ストーマ傍ヘルニア(PSH)手術例の臨床的特徴および手術成績を検討する.方法:当科で施行したPSH修復術11例(初発8例,再発3例)について,ストーマ種類,ヘルニア発症までの期間,ヘルニア位置,術式,合併症,再発について検討した.結果:初発例のストーマ種類は,単孔式回腸2例,結腸4例,双孔式結腸2例であり,ヘルニア位置は単孔式は4例がストーマ外側に,2例が内側に,双孔式は2例ともに全周性であった.発症までの期間は平均15.3(3-36)ヵ月であった.開腹keyhole(KH)法2例,腹腔鏡下Sugarbaker(SB)法2例,ストーマ閉鎖術1例,位置変更術2例,Components separation(CS)法1例が行われ,KH法,CS法の3例(37.5%)が再発した.再発までの期間は平均6.7(5-9)ヵ月であった.再発に対しCS法1例,腹腔鏡下SB法2例が施行され,術後合併症,再発ともにみられていない.結語:当科におけるPSH修復術の再発率は38%であり,KH法の治療成績が不良であった.腹腔鏡下SB法は初発例,再発例ともに合併症,再発なく経過良好であり,今後の標準術式として考えている.
症例報告
  • 津久井 秀則, 須藤 剛, 石井 範洋, 川村 一郎, 池田 栄一, 佐藤 敏彦, 飯澤 肇
    2014 年 67 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代女性.45歳時に右腎盂癌(T1a,N0,M0,G1>G2,INFβ)にて右腎摘出,尿管引き抜き術施行.以後3~6ヵ月ごとに定期検査が行われていた.2009年1月から下腹部痛と肛門痛が出現し,近医受診.大腸内視鏡では直腸S状結腸部(以下Rs)の粘膜に浮腫性変化を認め,CTで膀胱背側左側に不均一な造影効果を示す約5cm大の腫瘤性病変を認め,直腸粘膜下腫瘍が疑われた.腫瘍による腸管の圧排によるイレウス状態となったため,2009年3月23日直腸低位前方切除を行った.摘出標本ではRsから間膜側右側に5.7×5.8×4.0cmのやや弾性の腫瘤を認め,粘膜側に異常所見は認めなかった.病理組織検査で腸管子宮内膜症を発生母地とする類内膜腺癌と診断した.術後に当院婦人科にて卵巣癌に準じた化学療法Docetaxel(70mg/m2)+Carboplatin(AUC5)(以下DJ療法)を行っており,術後43ヵ月無再発生存中である.
  • 伊藤 大介, 中島 紳太郎, 羽生 健, 諏訪 勝仁, 岡本 友好, 矢永 勝彦
    2014 年 67 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2014年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性で直腸癌に対し腹腔鏡下低位前方切除術を施行し,経過良好で術11日目に退院した.術5ヵ月後に腸閉塞を2度発症し保存的治療で速やかに改善したが,術7ヵ月後に正中創に発赤・圧痛を伴う硬結を自覚し外来を受診した.腹部造影CTで腹腔内から皮下に達する液体貯留を認め,原因不明の膿瘍形成と診断し緊急手術を施行したところ,皮下から右腹直筋外縁を通り吻合部近傍の腹腔内に至る膿瘍が認められた.吻合部周囲は小腸が癒着して一塊になっており,癒着剥離と小腸の部分切除を行って手術終了とした.術2日後に腹痛を訴え,骨盤底ドレーンから便汁様の排液を認めたため,腹膜炎の診断で緊急手術を行った.肛門からのair leak testで初回手術時の吻合部と推測される部位から空気の漏れを認め,人工肛門造設術を施行した.術後経過や緊急手術所見から本症例は遅発性縫合不全が瘻孔化し皮下膿瘍を形成したものと考えられた.
  • 錦織 直人, 小山 文一, 中川 正, 内本 和晃, 中村 信治, 植田 剛, 井上 隆, 川崎 敬次郎, 尾原 伸作, 中本 貴透, 藤井 ...
    2014 年 67 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 2014年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    原発性小腸癌は稀な消化管悪性腫瘍で,診断・治療は確立されていない.当科で経験した5例に加え本邦報告178例を合わせた計183例の臨床病理学的特徴・診断・治療について検討した.当科の症例を含め報告例の大多数が進行例であった.早期発見には,多くの病変が上部空腸と下部回腸に存在することから,上部・下部消化管精査時に小腸病変も念頭に置くこと,また原因不明の貧血例では積極的な小腸の精査が必要と考える.
    (1)66歳男,検診の上部消化管造影検査にて空腸癌を指摘され根治術施行した長期生存例.(2)72歳男,下行結腸浸潤を伴った空腸癌.(3)60歳女,既往・家族歴より遺伝性非ポリポーシス大腸癌関連小腸癌と診断した回腸癌.(4)64歳女,腹膜播種を伴う進行癌ながら術前診断しえなかった空腸癌.(5)70歳男,多発肝転移を伴い術後化学療法行うも予後不良であった空腸癌.
  • 内田 恒之, 加藤 秀明, 平沼 知加志, 渡邊 透
    2014 年 67 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2014年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の女性で,1週間前から持続する右下腹部痛を主訴に受診した.右下腹部に筋性防御を認め,炎症反応の軽度上昇を認めた.腹部超音波および腹部造影CTでは回盲部にtarget like appearance,pseudokidney signを認め,回盲部腸重積の診断にて同日緊急手術を施行した.開腹すると盲腸内に腫瘤を触知し,虫垂が盲腸内に引き込まれた虫垂重積と診断した.腫大した腸間膜リンパ節も認めたため,悪性腫瘍による虫垂重積の可能性を考慮して結腸右半切除術を施行した.また,回腸に粘膜下腫瘍を認めたため回腸を追加切除し,腹腔内に類似病変を認めなかったため手術終了した.切除標本では,盲腸内に完全翻転した虫垂を認めた.病理組織学的検査では,重積した虫垂の筋層と回腸の筋層に異所性子宮内膜組織を認め,虫垂・回腸子宮内膜症と診断した.術後1年6ヵ月経過した現在,無症状,無再発である.
  • 中島 紳太郎, 宇野 能子, 大熊 誠尚, 阿南 匡, 小菅 誠, 衛藤 謙, 小川 匡市, 矢永 勝彦
    2014 年 67 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2014年
    公開日: 2013/12/27
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは直腸癌術後の腹壁転移に対して腹壁切除を施行し,ParietexTM Composite Meshを用いて腹壁を再建した症例を経験したので報告する.症例は74歳男性で2007年に直腸癌に対して低位前方切除術を施行し,術後補助療法としてtegafur-uracilの投与を行った.2008年に吻合部位再発をきたしたため腹会陰式直腸切断術を施行し,術後に骨盤底部に放射線照射(50Gy)を施行し,その後はS-1(80mg/日,4週投与・2週休薬)の継続投与を1年間行った.2011年に正中創直下の腹壁に孤立性転移を認め,panitumumab + mFOLFOX6を12コース施行した後,他の再発・転移巣を認めなかったため2012年に腹壁切除術を施行した.腹壁切除部は11×10cmと大きな欠損となったため,人工肛門を考慮したメッシュによる腹壁再建術を施行した.現在,術後12ヵ月が経過したが無再発生存中で,再建部とストーマ周囲のトラブルを認めず順調に経過している.
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