日本大腸肛門病学会雑誌
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48 巻, 6 号
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  • 皮内投与との比較
    有本 裕一, 鄭 容錫, 山田 靖哉, 前田 清, 新田 敦範, 池田 光慶, 高塚 聡, 澤田 鉄二, 仲田 文造, 西口 幸雄, 曽和 ...
    1995 年 48 巻 6 号 p. 471-476
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌の予後を左右する肝転移の予防における免疫療法の有効性について,とくにその投与経路につき検討した.BALB/cnu/+マウスに同系のマウス大腸癌株であるcolon26,1×10 5を経門脈的注入し微小肝転移モデルを作製し,BRMとしてOK-432とrlL-2(以下,IL-2)を用い,脾内投与(ISp)と皮下投与(ISC)につき比較検討した,その結果,各薬剤単独あるいは併用のいずれにおいても,ISp群においてISC群に比し有意に肝転移形成を抑制した(p<0.05).また担癌マウスの脾細胞を用いた抗腫瘍中和活性(Winnassay)では,OK-432,IL-2併用脾注群において最も高い抗腫瘍中和活性が得られた.このことは,両薬剤併用脾内投与が脾細胞の抗腫瘍活性を高めた結果,転移を抑制したと考えられる.以上より,大腸癌肝転移予防におけるBRMの投与経路として,脾内投与の有効性が示唆された.
  • 吉田 勝俊, 鈴木 衛, 渡辺 和義, 高柳 泰宏, 天満 祐子, 安原 清司, 高崎 健
    1995 年 48 巻 6 号 p. 477-483
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    右側結腸癌のリンパ節転移様式からみた,合理的な郭清範囲に関する検討を行った.対象は1993年12月迄の10年間の単発右側結腸癌切除例のうち,組織学的に根治度Aが得られた223例である.全症例の転移率は30.9%,転移度は7.1%であった,組織型別転移率はwel1:26.3%,mod:41。5%,por:50.0%,mucl37.5%であった.壁深達度別転移率はmp以下では0%,ss;28.5%,se:43.5%,si;53.8%であった.跳躍転移率は13.0%(31/223例)であった.占拠部位別には盲腸,上行結腸,右側横行結腸のいずれの腫瘍も壁達度ss以上の場合には203,213,223の主幹動脈根部リンパ節への転移例が認められた.再発形式は血行性転移が主体であり,リンパ行性再発は4群リンパ節に転移を認めた2例のみであった,右側結腸癌のリンパ節転移は分化度が低く,深達度が深いほど高度であり,壁深達度ss以上では203,213,223の郭清を伴うD3郭清の右半結腸切除術が必要である.
  • 下向 博洋, 完山 裕基
    1995 年 48 巻 6 号 p. 484-488
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    HNPCC家系の父子に陥凹型(IIc)と隆起型(I)の異なるタイプの早期大腸癌を発見し治療を行った.父(57歳)は大腸4多発癌で,第4癌は進行が速く悪性度が高いといわれている陥凹型(IIc)を呈し腺腫成分を伴わず,病巣が3.5mmと小さいにもかかわらず,すでに粘膜下層まで浸潤していた.次男(26歳)の癌は隆:起型(I)を呈し,病巣は3cmと大きかったが,腺腫成分を含む粘膜内にとどまる高分化腺癌であった。HNPCCにおける父子は大腸癌発生についての遺伝的背景は同じであると思われるが,この様に異なったタイプの大腸早期癌の発生を見たことは大腸癌の発育形式を考える上で非常に興味深いことと思われる.
  • 須郷 貴和, 森田 隆幸, 山中 祐治, 平間 公昭, 和島 直紀, 今 充, 塩谷 晃, 大黒 博
    1995 年 48 巻 6 号 p. 489-495
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.小学生の頃より,左下肢の腫脹と下血があり,17歳時にKlippe1-Trenaunay-Weber症候群と診断された.1990年11月18日,十二指腸潰瘍穿孔のために,公立七戸病院で手術が行われ,手術中の腹腔内検索で,S状結腸から直腸にかけて静脈瘤が認められた,下血を繰り返し,静脈瘤による腸管狭窄症状を併発しているため根治的手術が必要と判断され,当科に紹介された.1991年2月26日,S状結腸・直腸切除を行い,経肛門的に結腸肛門吻合で再建した.予防的回腸ストーマ閉鎖後の排便は頻回であったが,現在は日常生活に支障なく社会復帰している.S状結腸・直腸に静脈瘤を合併しているKlippel-Trenaunay-Weber症候群は本邦では6例が報告されている.いずれの症例も保存的に治療されており,われわれの症例は根治的な肛門温存手術で治療された第1例目である.この手術は,下血を繰り返す例や腸管狭窄の症状を伴う例には有効な術式と考えられた.
  • 玉井 修, 武藤 良弘, 白石 祐之, 草野 敏臣, 山田 護, 伊佐 勉
    1995 年 48 巻 6 号 p. 496-501
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    虫垂粘液嚢胞腺癌は粘液産生の亢進により容易に穿破し,腹膜偽粘液腫を形成することが特徴とされる.今回筆者らは,腹膜偽粘液腫を合併せず,後腹膜に穿通し腸腰筋,腸骨筋内に粘液の貯溜を伴い浸潤した粘液嚢胞腺癌の1例を経験したので報告する.症例は39歳,男性,右側背部の鈍痛と右下腹部の腫瘤を主訴に受診,各種画像診断にて虫垂原発の粘液嚢胞腺癌が疑われ右半結腸切除術,右腸腰筋腸骨筋合併切除を施行した.病理組織学的には多量の粘液貯留を伴った腺管上皮の増殖が認められ,N/C比の増大は目立たず,細胞異型,構造異型に乏しい癌巣の腸腰筋内への浸潤,腹膜播種,リンパ節転移を認めた.嚢胞型の虫垂癌は一般的に浸潤傾向が少なく転移を生じにくいとされ,自験例は稀な進展形式を呈した1例であると思われた.
  • 齋藤 修治, 大木 繁男, 石原 伸一, 山口 茂樹, 池 秀之, 嶋田 紘, 荒井 勝彦, 下山 潔, 原 正道
    1995 年 48 巻 6 号 p. 502-508
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例,31歳,女性.肛門部の腫瘤で受診した.直腸肛門指診,穿刺組織診,CT,MRIより肛門部粘膜下の非上皮性悪性腫瘍と診断し,直腸切断術を施行した.切除標本では5.0×4.0×3.5cmの肛門部粘膜下腫瘍で,組織診断は外肛門括約筋由来の胎児型横紋筋肉腫であった.核DNA ploidy patternはaneuploid(tetraploid)であった.術後化学療法としてシスプラチン,塩酸ピラルビシンを投与した.しかし,術後80日で左浅鼠径リンパ節腫脹を認めたため左鼠径リンパ節郭清術を行った.組織学的検査で転移を認めたためCYVADIC療法に変更したが,術後11カ月に多発性骨転移を認めた.肛門部横紋筋肉腫は稀であり,本邦および外国の報告例は25例(小児17例,成人8例)であった.横紋筋肉腫は切除後の肺転移,リンパ節再発が高率であるため術前の画像診断法で病変の進展範囲を明らかにし,組織診断で肛門部横紋筋肉腫と判定された場合,所属リンパ節郭清を伴う直腸切除術と術後化学療法,およびその後の厳重なfollow upが必要である.
  • 堀江 良彰, 金丸 洋, 多田 真和, 鈴木 啓子
    1995 年 48 巻 6 号 p. 509-514
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    虫垂に発生した稀な黄色肉芽腫の1例を若干の文献的考察を加えて報告する.下腹部痛と便秘を訴えて来院した51歳男性の超音波検査で回盲部腫瘤を認めたが,注腸と大腸内視鏡検査では盲腸の粘膜下腫瘍とS状結腸の粘膜不整を認あるのみで,生検でも特異的診断は不可能であった.回盲部切除とS状結腸切除を行い,病理検査にて虫垂黄色肉芽腫と診断した.腫瘍マーカーの上昇がなく,悪性腫瘍に伴う画像診断上の変化を示さない腫瘍性病変を認めた場合,黄色肉芽腫も鑑別診断の一つとして考慮する必要がある.これは腎臓・胆嚢・肺・膀胱などにおける発生が報告されているが,いずれも稀で,とくに虫垂に発生した例は,本症例が本邦第3例目と思われる.発生原因は未だ不明である,黄色肉芽腫に特徴的な所見はない.しかし,癌あるいは免疫不全を伴って予後不良であった症例の報告もあるので,診断が困難な腫瘍では黄色肉芽腫も鑑別診断に含め,外科的切除に踏み切ることも必要であろう.本症例においても今後厳重な経過観察を続けるつもりである.
  • 田代 和弘, 日高 久光, 樋口 隆一, 杉山 俊治, 廣国 敏昭, 井上 文孝, 鹿毛 雅義
    1995 年 48 巻 6 号 p. 515-520
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は80歳女性.術前の画像診断は虫垂粘液嚢胞であったが,血清CEA値の上昇を認めたため,癌の合併を否定できず腹腔鏡下に術中超音波検査による精査を試みた.術中超音波検査上は虫垂起源の嚢胞性病変で癌の合併を示唆する所見はみられず,回盲部切除を施行した.切除標本では内部に白色調のゼリー様物質が充満した単房性嚢胞で,組織学的には嚢胞壁内面に軽度異形性のある高円柱上皮細胞で覆われた粘液嚢胞腺腫であった.
  • 田島 秀浩, 西村 元一, 宮崎 逸夫
    1995 年 48 巻 6 号 p. 521-525
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    近年,大腸癌の増加ならびに平均寿命の延長に伴い高齢者の大腸癌が増加している,今回,過去11年間に当科で経験した80歳以上の高齢者大腸癌手術症例について,80歳未満を対照群として臨床病理学的諸因子の比較検討を行った.高齢者群では術前合併症を有する例が有意に多かったが,術後の合併症発生率には両群間に差がなく,在院期間にも差は認あなかった.術式としては高齢者群では直腸切断術やハルトマン手術などの人工肛門造設を伴うものが多く,リンパ節郭清に縮小傾向があったが,根治度に差はなかった.術後生存率には両群間に有意差はなく,両群ともD2以上のリンパ節郭清を施行した症例の予後がDl以下の症例に比して良好であった.死因としては高齢者群で有意に他病死例に多く特徴的であった.以上より,80歳以上の高齢者においても重篤な合併症がなく,根治性の期待できる進行癌症例にはD2以上の系統的リンパ節郭清を伴う根治手術を施行すべきであると考えられた.
  • 55歳以上65歳未満の大腸癌と比較して
    国崎 主税, 小林 俊介, 今井 信介, 原田 博文, 森脇 義弘, 笠岡 千孝
    1995 年 48 巻 6 号 p. 526-533
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    高齢者大腸癌の特徴と問題点を明らかにするために,75歳以上の高齢者大腸癌90例と55歳以上65歳未満の大腸癌105例を臨床病理学的に比較検討した.性別,占居部位,肉眼的分類,組織学的分類,肝転移,腹膜播種,リンパ節転移,リンパ管侵襲,静脈侵襲,Dukes分類,組織学的根治度,術後合併症,緊急手術には両群間で有意差を認めなかった。リンパ節郭清度,術前併存疾患には両群間で有意差を認めた.治癒切除例の生存率は両群問で有意差を認あなかった.組織学的進行度別(Dukes)の生存率はA・B・Cでそれぞれ両群間で有意差を認めなかった.高齢者の術後合併症有無別の5年平均生存期間は有意差を認めなかったが,60日の短期生存率は合併症有の症例で有意に不良であった.75歳以上の症例と55-65歳の症例では,病理学的な相違はないが,高齢者の術前併存疾患を有している症例では,術後合併症を併発しやすく,死に至る症例があるので,侵襲を考慮した過不足のない術式の選択と周到な周術期管理が必要である.
  • 前田 耕太郎, 橋本 光正, 山本 修美, 洪 淳一, 中島 顕一郎, 白石 天三, 石川 秀樹, 田島 厳吾, 細田 洋一郎, 森川 康英
    1995 年 48 巻 6 号 p. 534-540
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    便失禁を伴う直腸膣壁弛緩症と直腸脱に対して,これまで本邦での報告のない骨盤底修復術を付加した手術を施行した.直腸膣壁弛緩症に対しては,経膣的に余剰膣壁の切除,縫合閉鎖とともに,骨盤底修復術として恥骨直腸筋および肛門挙筋の縫縮を行うanterior levatorplastyと外肛門括約筋縫縮術を施行した.直腸脱と直腸膣中隔の菲薄化を認めた症例には,経会陰的にGant-三輪法と,骨盤底修復術としてanterior levatorplastyと外肛門括約筋縫縮術,postanal repairを行うtotal pelvic floor repairを施行した.肛門括約筋欠損を伴う直腸脱には,腹式直腸後方固定術とS状結腸人工肛門造設術後,経会陰的に括約筋修復術とともに,total pelvic floor repairを施行した.術後,肛門括約筋がほぼ欠損した症例では,便失禁の改善はなかったが,他の2例は改善し,改善した症例では,直腸肛門内圧検査で肛門静止圧の上昇と肛門管長の延長がみられた.
  • 1995 年 48 巻 6 号 p. 541-558
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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