日本大腸肛門病学会雑誌
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61 巻, 4 号
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原著
  • 加川 隆三郎, 野村 英明, 武田 亮二, 山本 道宏
    2008 年 61 巻 4 号 p. 151-160
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    III型,IV型痔瘻の真の形態を追求するため,75例のMRI所見について検討,以下の進展のルールが得られた.(1)III, IV型痔瘻の端緒たる膿瘍は,後方の浅あるいは深外肛門括約筋内,または内外肛門括約筋間に存在する(75例).(2)IIIB型痔瘻は,後方の外肛門括約筋内で2方向に分岐し括約筋外にでる(15例).(3)IIIU型痔瘻は,5時,7時方向で括約筋外にでて前側方に2次口を形成するが(23例),(4)6時方向ででるものは,後方に2次口を形成する(16例).以上(1)∼(4)のルールは100%適合した.III型痔瘻のなかには,(5)瘻管の走行の途中で肛門挙筋下に枝をだし膿瘍を形成するもの(5例)や,(6)内外肛門括約筋間を前方に進み,前方で括約筋外にでるものがあった(6例).(7)IV型痔瘻は,内外肛門括約筋間を上行して挙筋上にいたるもの(6例),いったん直腸外に出てIII型痔瘻の形態を呈したのち肛門挙筋を穿破するもの(4例)の2つに分類された.
  • 長田 俊一, 山口 茂樹, 森田 浩文, 石井 正之, 大田 貢由, 前田 敦行
    2008 年 61 巻 4 号 p. 161-168
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    目的: 当院で開院時に導入した大腸切除のクリニカルパスの妥当性および,パス達成に寄与する因子について検討した.対象と方法: 初発結腸癌および直腸S状部癌待機手術143例(開腹手術82例以下O群,腹腔鏡下手術61例以下L群)を対象とした.O群(術後4病日食事開始,10病日退院),L群(術後3病日食事開始,8病日退院)のパス管理を全例に施行した.1. 食事開始時期および術後在院期間のパスで規定した日より延長した日数,パス達成度について検討,2. 両群を前期,後期に分けて検討,3. ロジスティック回帰分析を行い,パス達成に関与する因子を検討した.結果: 1. L群の方が,術後在院日数の延長日数が短く,パス達成率は高率であった.2. 後期のL群で有意に食事開始時期が早くなり,パス達成率も上昇したが,O群での改善は認めなかった.3. パス達成に関与する因子は,O群で術後合併症,L群で術前併存症,中枢側郭清,食事開始時期であった.
症例報告
  • 本間 重紀, 益子 博幸, 近藤 征文, 岡田 邦明, 石津 寛之, 川村 秀樹, 三木 敏嗣, 山上 英樹, 横田 良一, 横田 健太郎
    2008 年 61 巻 4 号 p. 169-174
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.直腸癌で,1996年8月低位前方切除,D3郭清を行った.病理組織学的検査では,RaRb, 3型,43×42mm,中分化腺癌,SE, ly2, v1, N1, P0, H0, M0, Stage IIIaであった.術後は5'-DFURを内服していたが,1998年9月胸部CTで多発肺転移を認め,FP, UFTとPSKの内服,低用量CPT-11, 5'DFURとPSKの内服,IFL療法などを続けた.肺転移は著変なく経過した.2002年8月,脳MRIで小脳転移を認め,ガンマナイフ治療を行った.その後,小脳,大脳に新たな転移が出現し,2006年1月まで合計11回,20カ所(小脳5カ所,大脳15カ所)のガンマナイフ治療を施行したが,脳転移出現後も,明らかな神経学的異常を認めず,通常通り就労していた.しかし2006年5月,術後9年9カ月(肺転移後7年8カ月,脳転移後3年9カ月)で死亡した.多発脳転移,肺転移をともなった直腸癌に対して,ガンマナイフと化学療法により長期生存をえることができた.
  • 吉川 智, 指宿 一彦, 山本 淳, 谷口 正次, 後藤 崇, 中島 健, 加茂 仁美, 古賀 和美
    2008 年 61 巻 4 号 p. 175-178
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    横行結腸原発mucosa-associated lymphoid tissue(以下MALT)リンパ腫に対する腹腔鏡下手術の1例を報告する.大腸MALTリンパ腫はまれな疾患であり,治療法が確立されていないが,外科的治療が選択されることが多い.そのなかで,腹腔鏡下手術の報告例は,検索した限りでは自験例を含めて5例のみであった.症例は64歳男性.主訴は便潜血反応陽性精査.大腸内視鏡検査にて,横行結腸に粘膜下腫瘍様の腫瘤の集簇を認めた.生検にてMALTリンパ腫を疑い,腹腔鏡補助下横行結腸部分切除術を施行した.病理組織学的検索では小型から中型の異型リンパ球の増殖を認めた.免疫染色にてCD79a陽性,CD20陽性,bcl-2陽性でMALTリンパ腫と診断.術後15カ月現在再発兆候を認めていない.
  • 後藤 直大, 川崎 健太郎, 金光 聖哲, 味木 徹夫, 神垣 隆, 黒田 大介, 黒田 嘉和
    2008 年 61 巻 4 号 p. 179-182
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.便に鮮血が付着したことを主訴に下部消化管内視鏡検査を受けたところ直腸Raに20mm大のIIa+IIc病変を指摘された.pit patternはVI高度不整でsm massiveと判断されたため手術目的で当科に紹介された.20日後の下部消化管内視鏡検査ではIs病変と変化していた.7日後に腹腔鏡下低位前方切除術を施行したところ病変は8mm大のIIa+IIc病変として存在しており,形態および大きさの変化を生じていた.
    大腸癌の発育や進展に関してはさまざまな検討がなされており表面型大腸癌においても徐々に自然史が明らかにされてきている.本症例ではポリープ状の隆起部が欠損しており27日間で,形態変化と同時に腫瘍の大きさも明らかに縮小しており,基部のみが残存したものと推測された.大腸腫瘍における発育進展を考えるうえで興味深い症例であり,文献的考察を加え報告する.
  • 常深 聡一郎, 泉 信行, 岩本 伸二, 原 章倫, 北川 恵子
    2008 年 61 巻 4 号 p. 183-187
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    72歳女性.直腸癌に対して,腹会陰式直腸切断術を施行した.術後,人工肛門周囲の皮膚に強い疼痛をともなう潰瘍が出現し,急速な拡大を認めた.臨床経過·肉眼所見·生検より人工肛門周囲に発症した壊疽性膿皮症(Peristomal pyoderma gangrenosum: 以下,PPG)と診断し,タクロリムス軟膏による局所療法を行った.これにより,潰瘍は改善し病状は軽快しえた.PPGは,潰瘍性大腸炎やクローン病患者などのストーマ周囲に生じることがある難治性潰瘍である.まれな疾患ではあるが,その患者のほとんどは自己免疫疾患を有しており,本症例のように自己免疫疾患の既往がない癌患者の術後でPPGが発症した例は本邦では報告がない.人工肛門造設術後に発症しうる合併症として,今後念頭に置かなければならない病態と考えたため,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 森田 博義, 高杉 美紀子, 坂口 正高, 湖山 信篤
    2008 年 61 巻 4 号 p. 188-193
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    We report a case in which superficial tubular adenoma (IIa+IIc) of colonic mucosa, which showed no progression of size or shape in endoscopic examination for 6.5 years, had clearly expressed to become a cancerous lesion. This lesion had histologically completely replaced the adenoma with cancer in the central area, widely and continuously spreading to the surface of the adenoma, like the spread in patients with radiation colitis. It is conjectured that an adenoma-to-carcinoma sequence exists.
  • 佐藤 晋, 向出 将人, 遠藤 光史, 田村 和彦, 佐藤 茂樹, 片場 嘉明, 青木 達哉
    2008 年 61 巻 4 号 p. 194-198
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    症例は91歳男性,発熱と呼吸苦を主訴に入院した.喘息治療で呼吸苦は改善したが,胸部CTで偶然に肝腫瘍が描出された.精査の結果,横行結腸癌が発見されたため肝腫瘍は転移性腫瘍と診断された.横行結腸切除術と肝腫瘍核出術を施行した.病理組織検査では肝腫瘍は悪性細胞を認めず,著明な炎症細胞の浸潤を認め炎症性偽腫瘍と診断された.術後3年経過し無再発生存中である.肝炎症性偽腫瘍はまれな疾患であり,一般的に画像診断は困難である.悪性腫瘍に合併した場合は肝転移と診断されることが多い.横行結腸癌に合併した肝炎症性偽腫瘍を経験したので報告する.
  • 秋谷 行宏, 古川 清憲, 鈴木 英之, 松本 智司, 鶴田 宏之, 菅 隼人, 寺西 宣央, 佐々木 順平, 田尻 孝
    2008 年 61 巻 4 号 p. 199-203
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    急性出血性直腸潰瘍の止血困難例に対して,経肛門的直腸粘膜環状切除が有効であった症例を経験した.症例は81歳,男性.既往歴に糖尿病,慢性腎不全があり透析中であった.心筋梗塞を発症し冠動脈バイパス術をうけて入院中に下血を来した.大腸内視鏡検査にて歯状線直上から下部直腸に,全周性に多発する類円形,不整形潰瘍を認めた.ボスミン®ガーゼやスポンゴスタン®による圧迫止血の効果はなく,下血を繰り返し,多い時には1日2,000mlの出血を認めた.内視鏡的クリップ止血も無効で,経肛門的に縫合止血を行った.しかし,再度大量下血を来し,赤血球輸血の総量は36単位にも及んだため再手術を施行した.経肛門的に内肛門括約筋を温存しながら,直腸粘膜·粘膜下層を2.5cm幅で環状に切除した後,口側切除端と肛門上皮を縫合し,S状結腸に双孔式人工肛門を造設した.本術式は安全かつ低侵襲に行うことができる有用な止血術と考えられた.
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