日本大腸肛門病学会雑誌
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68 巻, 7 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
症例報告
  • 大城 望史, 平田 雄三, 岡本 有三, 吉岡 伸吉郎
    2015 年 68 巻 7 号 p. 473-476
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性,3年前に盲腸癌の肺転移,傍大動脈リンパ節転移に対してmFOLFOX6とbevacizumabの併用療法を行っていた.途中休薬,薬剤の変更はあったが,oxaliplatinとしてはそれまで計21cycleの投与を行っていた.22cycle目を開始して12時間後に,突然の歯肉出血と紫斑を認めた.血小板数が著明に低下しており,速やかにステロイド投与と濃厚血小板輸血を行い,出血傾向は改善し,血小板数は正常値に帰した.Platelet associated IgGが異常高値であり,drug lymphocyte stimulation testは最終的に複数の薬剤が陽性であった.以上から,薬剤性血小板減少症と診断した.大腸癌化学療法,とくにoxalipl atinを使用するレジメンで治療中には,まれではあるが重篤な薬剤性血小板減少症が発生することに注意すべきである.
  • 䕃地 啓市, 中塚 博文, 住谷 大輔, 藤森 正彦, 奥川 浩一, 吉田 誠, 谷山 清己
    2015 年 68 巻 7 号 p. 477-485
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は80歳女性.下血を認め紹介となった.大腸内視鏡検査では直腸Rbに25mmの隆起性病変,その対側に5mmのSMT様隆起性病変を2病変認め,生検にてMALTリンパ腫と診断した.各種検査よりLugano国際会議分類StageIと診断した.
    H.pylori抗体陽性であり,除菌治療施行,除菌は成功したものの,3ヵ月の観察で5mmの2病変は消失したが,25mmの病変は不変であった.EUS検査でmp浸潤も考慮されたため,4ヵ月目に外科にて局所切除,術後放射線療法(30Gy)を施行した.病理組織では生検と同様であった.治療後は経過良好,3年間無再発生存中である.今回,除菌治療に加え外科切除,放射線療法を併用し寛解,除菌治療後に興味深い経過をたどった1例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.
  • 藤田 昌久, 石川 文彦, 釜田 茂幸, 山田 千寿
    2015 年 68 巻 7 号 p. 486-489
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    経肛門的直腸内異物の大部分は自慰行為や性的行為により生じるが,異物は多種多様である.今回,われわれは,経肛門的に直腸内に挿入された巨大なシリコン製玩具に対して,ミオームボーラーを用いて経肛門的に摘出した症例を経験した.症例は34歳男性.自慰行為にて肛門よりシリコン製玩具を挿入,摘出できなくなり当科を受診した.外来で無麻酔下には摘出できず,全身麻酔下に摘出を行った.各種鉗子では異物を把持,牽引できなかったがミオームボーラーを異物に刺入することで安全に摘出することができた.異物は円錐状で,大きさは30×10cmと巨大であった.異物の形状や材質により摘出の工夫が必要であるが,シリコン製玩具に対してはミオームボーラーが有用である.
  • 桑原 隆一, 山口 茂樹, 田代 浄, 原 聖佳, 鈴木 麻未, 近藤 宏佳, 石井 利昌
    2015 年 68 巻 7 号 p. 490-493
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.貧血を主訴に近医受診.大腸内視鏡検査で肛門縁より約50cmの横行結腸に2型病変認め生検で高分化腺癌と診断され当院へ紹介された.腹部CT検査にてトライツ靭帯の形成不全があり,上行結腸が正中を走行,3D血管構築にて上腸間膜動脈(SMA)が上腸間膜静脈(SMV)の右側に存在する腸回転異常を認めた.腫瘍は横行結腸脾弯曲寄りに認め,T3 N2 M0 cStageIIIbで腹腔鏡下結腸左半切除術を施行した.上行結腸は正中を走行し,肝弯曲は形成されておらず,右上腹部に小腸を確認できた.また脾弯曲部は固定されていなかった.支配血管は中結腸動脈および左結腸動脈で,それぞれ慎重に根部で処理し,D3郭清とした.術後合併症はなく第8病日に退院となった.
    腸回転異常症の報告は小児に多く成人例は比較的稀である.術前に腸回転異常症の併存を疑うことで,通常腹腔鏡手術における重要な構造物の破格を事前に予測することができ,安全に腹腔鏡手術が施行可能であった.
  • 篠原 敏樹, 前田 好章, 濱田 朋倫, 武田 広子
    2015 年 68 巻 7 号 p. 494-500
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    近年腹腔鏡下大腸切除後の門脈血栓症が稀に報告されている.今回大腸癌同時性肝転移に対し腹腔鏡下で原発切除し,その後の肝切除時に偶発的に門脈血栓を認めた1例を経験したので報告する.症例は72歳,男性.血便を主訴に当院を受診,大腸内視鏡検査でS状結腸に5cmの全周性2型腫瘍と腹部超音波で肝S6に3cmの低エコーな腫瘍を1個認めた.単発同時性肝転移を伴うS状結腸癌と診断した.狭窄が強かったのでまず原発切除とし,腹腔鏡補助下S状結腸切除術D3郭清を行った.病理所見はtub2,pT4a,pN1であった.術後経過は良好であった.術後14日目に肝転移評価のためCTを施行した.肝腫瘍の軽度増大と門脈右枝に5mmの塞栓を認めた.原発切除1ヵ月後に肝右葉切除で門脈塞栓ごと肝転移巣を切除した.病理では塞栓は血栓であった.腹腔鏡下手術は血栓形成のリスクが高くなる可能性があり本疾患に留意する必要がある.
  • 八木 寛, 山崎 俊幸, 岩谷 昭, 眞部 祥一
    2015 年 68 巻 7 号 p. 501-505
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    大腸癌腎転移に下大静脈腫瘍栓を合併した症例に対し腎摘出術,および腫瘍栓除去術を施行した1例を報告する.症例は70歳女性,2010年4月に上行結腸癌に対し,腹腔鏡下右半結腸切除術を施行し,最終診断はpSI(十二指腸)N3H0P0M0,pStageIIIbであった.外来にて術後補助化学療法を行っていたが,2011年8月に右腎下極に軟部影が出現した.同年10月のCTで軟部影はさらに増大し,下大静脈には腫瘍塞栓が出現した.腎生検の結果,右腎の軟部影は大腸癌腎転移と診断されたため,2012年3月に右腎摘出術,下大静脈壁切除,腫瘍栓除去術を施行した.術後6ヵ月で肺,傍大動脈リンパ節,腹壁再発を認め,2013年3月癌性腹膜炎のため永眠された.大腸癌の孤立性腎転移に下大静脈腫瘍栓を伴う症例は極めて稀であり,手術を含めた集学的治療が可能であったため報告した.
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