日本大腸肛門病学会雑誌
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49 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 固武 健二郎, 小山 靖夫, 那須 二郎
    1996 年49 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌術後に肺再発をきたした33例を対象として治療成績を検討した.根治目的で肺切除を行った12例の術後生存期間中央値は26.4カ月であった.12例中6例に再々発をきたしたが4例に再々発切除を行い, 10例が健存中である.切除例の累積5年生存率は78.7%であり, 非切除例よりも有意に良好であった (p<0.01).原発癌の部位と進行度, 転移巣の大きさ, 再発時の血清CEA値は切除例と非切除の間に差を認めなかった.一方, 原発癌切除から肺再発までの無病期間は, 切除例 (33.0カ月) が非切除例 (19.6カ月) よりも有意に長かった (p<0.01).以上から, 選択された症例に対しては肺転移切除により長期生存が期待しうることが示されたが, このような症例は癌の増大速度が遅く, 生物学的悪性度が低いという選択バイアスがあることが推察された.
  • 石黒 陽
    1996 年49 巻1 号 p. 8-20
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌の生物学的因子が数量化理論II類を用いて相対リスク値で量的に比較された.また個々の症例で予後得点を求め, 実際の生存期間とのずれを比較検討した.これを従来のstage分類を構成する4因子と, さらに細項目因子を追加した9因子で5年以上生存の判定を検討した.9因子の分析で結腸癌の5年生存に影響を与える因子のうち新たに加えられた5因子をみると, そのなかでも腫瘍占居部位, リンパ管侵襲, および腫瘍径がとくに5年生存への影響にかかわっていた.さらに直腸癌でも5年生存に不良な影響を与える因子をみてみると, リンパ管侵襲, 静脈侵襲, 腫瘍占居部位が新たな5因子の中では, とくに5年生存への影響にかかわっていた.5年生存の判別結果では, 4因子での的中率が結腸癌, 直腸癌79.4%であったのに対し, 9因子を用いての判別結果は結腸癌で89.3%, 直腸癌で83.8%であった.とくに結腸癌は9因子の判別結果が4因子に比較して有意に高かった (P<0.005).
  • 赤在 義浩, 木村 秀幸, 三村 哲重, 塩路 康信
    1996 年49 巻1 号 p. 21-29
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    単発直腸進行癌のうち側方郭清された352例を対象に, 側方転移の頻度と郭清効果を検討し, 無病生存例からみた側方郭清の適応を考察した.側方転移は43例あり, うち無病生存は13例で壁深達度はmp 4例, a1・ss 5例, a2・se 4例であった.
    12例はRa下部肛門側の治癒切除例で, 転移リンパ節部位は262・272・292の転移であった.側方転移の転移部位2箇所以内, 転移リンパ節個数4個以内に限られた.上方転移n1までが12例, 他の1例は252の跳躍転移であった.片側郭清の危険率は30%前後であった.側方郭清の適応は, 占居部位Ra下部肛門側で壁深達度mp以上の治癒切除可能例で両側の262・272の郭清が確実にできる範囲とし, 腫瘍下縁が歯状線に及ぶ例では292郭清も付加すべきと考えられた.適応となる側方転移は22例あり, うち無病生存は12例 (54.5%) で, 適応外の無病生存は1例のみであった.
  • 中尾 健太郎, 村上 雅彦, 成田 和広, 鈴木 和雄, 李 雨元, 清水 喜徳, 角田 明良, 澁澤 三喜, 草野 満夫, 副島 和彦
    1996 年49 巻1 号 p. 30-35
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    前駆症状に感冒様症状を伴い下痢, 腹痛を訴えた, 若年者 (15歳~33歳) 12症例に対し受診当日に大腸内視鏡検査を施行したところ, I型 : 粘膜面に色調の変化はないが浮腫状変化がみられるもの, II型 : 白苔を伴わず発赤, びらんがみられるもの, III型 : 紅暈を伴うびらん, a) びらんと正常粘膜の境界が不明瞭なもの, b) びらんと正常粘膜の境界が明瞭なもの, IV型 : 白苔を伴うびらんまたは潰瘍を呈するもの, に分類可能であった.全例便培養が実施されたが菌の検出はみられなかった.治療に関しては2~3日の絶飲食で症状は軽快し2~3週後の大腸内視鏡検査で所見の消失がみられた.これらのことより, 急性期の所見は多種の炎症性疾患と類似しており経過観察による評価が必要であると思われた.
  • 山田 靖哉, 西野 裕二, 松岡 翼, 西村 重彦, 繁澤 晃, 竹内 一浩, 有本 裕一, 新田 敦範, 西口 幸雄, 大平 雅一, 池原 ...
    1996 年49 巻1 号 p. 36-42
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移症例に対する治療成績を予後を中心に検討した.大腸癌肝転移症例99例を対象にし, I群 : 肝切除群16例, II群 : 肝切除+肝動注リザーバー群10例, III群 : 肝動注リザーバー群19例, IV群 : one shot肝動注あるいはTAE群14例, V群 : 抗癌剤全身投与群21例, VI群 : 非治療群19例の6群に分け, 予後について比較検討した.II群の肝切除+肝動注リザーバー群の予後が最も良好で, 1年, 3年生存率とも100%と, 他のいずれの治療群に対しても有意差を認めた.次にI群の肝切除群の予後が良好で, 累積生存率は1年75.0%, 3年39.3%, 5年29.5%であった.III群, IV群, V群, VI群の予後は非常に悪く, 1年生存率はそれぞれ, 44.2%, 28.6%, 38.1%, 26.3%であった.以上より, 肝切除後肝動注リザーバーによる反復動注が予後の延長に有用である可能性が示唆された.
  • 食餌のおよぼす影響
    窪田 良彦, 片上 利生, 中村 穣, 大坪 隆男, 日高 道生, 中田 健一, 清水 慎介, 渡辺 浩一, 白鳥 泰正, 宮岡 正明, 斉 ...
    1996 年49 巻1 号 p. 43-50
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    腸内細菌が産生する糞便中発癌関連酵素について, DMH誘発ラット実験大腸癌に対する食餌の影響を検討した.セルロース投与群では全経過を通して各種酵素活性は減少し, とくにNitroreductaseおよびAzoreductase活性は中期, 後期いずれも有意に減少した (p<0.01).コレステロール投与群ではNitroreductaseおよびAzoreductase活性は後期に増加する傾向を示した.ラット一匹当たりの腫瘍発生個数はセルロース投与群で異型腺管が多いのに対し, コレステロール投与群では癌が多く認められた.癌一病巣当たりの大きさは食餌による差を示さなかった.したがって, 癌発生における食餌の影響に糞便中発癌関連酵素, とくにNitroreductaseおよびAzoreductase活性の関与が示唆された.
  • 大川 清孝, 佐野 弘治, 濱崎 尚子, 大庭 宏子, 渡辺 憲治, 針原 重義, 李 光春, 藤本 泰久, 奥野 匡宥, 北野 厚生, 小 ...
    1996 年49 巻1 号 p. 51-56
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は25歳, 男性である.13歳でクローン病を発症し, 多発性肛門周囲膿瘍のため入院した.回腸末端に強い狭窄を示す主病変があり, 上行結腸とS状結腸にも病変が存在した.肛門部病変は高カロリー輸液や切開排膿, ドレーンの挿入などの保存的な治療にて一旦軽快したが, 食事摂取の開始により再発し, 治療に難渋していた.治療による線維性狭窄のためと考えられるイレウスのため回盲部切除術を行ったところ, 肛門部病変は著しく軽快した.このような報告例は本邦では稀であり, 主に病変部腸管が肛門部病変に与える影響について考察した.
  • 腹直筋および皮膚転移
    土屋 十次, 松井 康司, 立花 進, 梶間 敏彦, 星野 陸夫, 池田 庸子, 下川 邦泰
    1996 年49 巻1 号 p. 57-63
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    びまん浸潤型を呈する癌腫は胃に多く見られ, 全胃癌の約10%を占めるのに対して, 大腸においては全大腸癌症例の1%前後に見られるのみで比較的稀れな疾患である.このびまん浸潤型大腸癌は手術開腹時に既に広範囲に進展した症例が多く, 生物学的悪性度が極めて高いことが指摘されている.最近われわれはS状結腸の原発性びまん浸潤型大腸癌症例を経験したが, 開腹時の腹壁切開過程で, 臍より隔たった腹直筋層内に小指頭大の転移巣を確認し, さらに術後3カ月後には, 前胸部に数カ所の皮膚転移巣を形成するなど, かって経験したことのない転移形成を示した症例であった.びまん浸潤型大腸癌は一般にリンパ節転移, 腹膜播種が著明であり, 肝転移は比較的少ないとされるが, 腹腔外遠隔転移をきたした症例報告はさらに稀れである.本邦におけるびまん浸潤型大腸癌報告症例を渉猟し, とくに遠隔転移に関して検討した.
  • 増子 毅, 佐々木 巌, 舟山 裕士, 内藤 広郎, 児山 香, 高橋 賢一, 松野 正紀, 樋渡 信夫
    1996 年49 巻1 号 p. 64-68
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    小児期潰瘍性大腸炎2例に対し回腸肛門吻合術を施行し良好な成績を得たので報告する.症例1は10歳, 女児, 下血により発症した初回発作型, 全大腸炎型, 重症であった.症例2は13歳, 男児, 9歳時下血にて発症の再燃緩解型, 全大腸炎型, 難治例であった.症例1は2期的に, 症例2は3期的に手術を施行し, いずれも術後の排便機能, 学業への復帰状況, 日常生活状況は良好であった.回腸肛門吻合は小児に対しても安全に施行し良好な術後成績が期待できる術式であり, 適応があれば積極的に行われて良いものと思われる.
  • 国本 正雄, 佐々木 一晃
    1996 年49 巻1 号 p. 69-72
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    1991年より1994年までの4年間に受診した成人肛門疾患症例は3,629例であった.このうち3,016例において下部大腸内視鏡検査を施行した.378例 (12.5%) にポリープを発見した.このうち298例にポリペクトミーを施行し433個の検体を得た.病理組織的検索を施行し得たポリープのうち305検体 (70.4%) が大腸腺腫で, 38例 (1.3%) で腺癌および悪性リンパ腫の悪性病変を認めた.50歳以上の肛門疾患を有する症例における直腸癌の有病率は1.3%であった.肛門病変を有する50歳以上の症例では大腸癌を有する率が高く, これらの症例に対する外来での下部大腸内視鏡検査は非常に有用であるとともに, その重要性を念頭におく必要が示唆された.
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