日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
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73 巻, 2 号
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原著
  • 小林 美奈子, 大北 喜基, 竹下 恵美子, 山口 トキコ, 山田 岳史, 問山 裕二, 長谷 和生, 楠 正人
    2020 年 73 巻 2 号 p. 49-57
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    日本における女性医師数は年々増加しており,日本大腸肛門病学会に新規入会する女性医師数も増加傾向にある.また,男女共同参画社会基本法や女性活躍推進法が成立し,社会全体において女性の活躍できる環境を整備する動きは着実に進んできている.そのような中,日本大腸肛門病学会でも女性医師の大腸肛門領域への積極的な参画を目的とし,2018年に総務委員会の下部組織として,男女共同参画小委員会が発足した.当委員会は,本学会において女性医師の活躍推進に向けた環境整備を検討する目的で,女性会員を対象にアンケート調査を行った.その結果,キャリア形成において妊娠・出産・育児は大きな負担となっていた.この結果を踏まえ,総会時の託児所設置や専門医制度における業績期間から妊娠・出産・育休などの期間を除する,さらに離職したとしても再度復帰可能な制度を確立することが重要であると思われた.

症例報告
  • 尾崎 邦博, 古賀 史記, 白土 一太郎, 赤木 由人
    2020 年 73 巻 2 号 p. 58-63
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    症例は46歳女性.腹痛の精査目的で当院紹介され,来院時にはイレウスを認めた.精査にて直腸癌の診断し大腸ステント留置後手術を施行した.術中所見でP1.直腸の可動性も不良であり切除不能と判断し手術終了した.術後化学療法はRAS変異型,ステント留置中であることからFOLFOXを選択した.8コース終了後のcomputed tomography(以下CT)にて摘出可能と判断し手術に移行した.腹腔鏡で腹腔内観察し腹膜播種は消失しており,直腸も可動性良好であり腹腔鏡下直腸前方切除術を施行した.病理診断はT4,N1,P0,M0,tub2,ly1,v1,PN0で,術後リンパ節再発疑いに対して化学療法(FOLFOX,ベバシズマブ併用療法)を8コース施行し,中止後1年経過した現在も再発所見は認めていない.

  • 阿部 馨, 亀山 仁史, 田中 花菜, 小柳 英人, 堀田 真之介, 田島 陽介, 中野 麻恵, 中野 雅人, 島田 能史, 佐藤 航, 梅 ...
    2020 年 73 巻 2 号 p. 64-69
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,男性.慢性腎不全による高カリウム血症に対しポリスチレンスルホン酸ナトリウムを内服中に急性心不全を発症し,弁置換術,弁形成術が施行された.術後9日目に腹痛と血便が出現した.上行結腸壊死による汎発性腹膜炎と診断し,結腸右半切除と二連銃式の人工肛門造設術を行った.術後半年後の人工肛門閉鎖の際に左側結腸に狭窄を認め,残存結腸全摘,直腸S状部切除を行った.下行結腸に著明な狭窄を伴う縦走潰瘍瘢痕を,S状結腸に潰瘍形成を認めた.病理組織検査では狭窄部,潰瘍部の腸管壁内に好塩基性結晶様異物を認め,異物反応を伴っていた.ポリスチレンスルホン酸塩が腸管壁内に取り込まれると排除困難で,慢性的な異物反応や炎症により組織障害が遷延する可能性がある.慢性腎不全患者の腸管壊死,穿孔,腸炎に対し手術を行う際には,ポリスチレンスルホン酸塩製剤の内服歴を確認し,腸切除範囲の決定や吻合の可否に注意する必要がある.

  • 幕谷 悠介, 鄭 充善, 末田 聖倫, 松村 多恵, 丸川 大輝, 清水 潤三, 長谷川 順一
    2020 年 73 巻 2 号 p. 70-76
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性.排便時出血を主訴に前医を受診した.下部消化管内視鏡検査にて直腸S状部に3型腫瘤を認め,生検にて高分化型管状腺癌と診断された.術前3D-CTangiographyでは,下腸間膜動脈は上腸間膜動脈より分岐していた.直腸S状部癌,cT3N0M0の術前診断で,腹腔鏡下高位前方切除術を施行した.術中所見では,下腸間膜動脈の根部を認めず,同部には腰内臓神経の結腸枝のみを認めた.リンパ節廓清範囲の頭側縁は十二指腸下縁までとし,左結腸動脈温存後に上直腸動脈を根部で切離した.左側大腸癌におけるD3リンパ節廓清とは,通常IMA根部周囲までの廓清を指す.しかし,本症例のように血管の走行異常・分岐異常を伴う症例における廓清範囲については一定の見解がない.今回,われわれは術前精査にて下腸間膜動脈分岐異常を診断しえた直腸S状部癌の1例を経験したので報告する.

  • 大浦 康宏, 鈴木 重徳, 庫本 達
    2020 年 73 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    症例は31歳男性.クローン病で治療中であったが自己中断していた.腹痛,血便を主訴に受診され,肛門周囲膿瘍および下行結腸穿通による左腸腰筋膿瘍と診断された.腸腰筋膿瘍に対して保存的治療を行っていたが,改善を認めないため腹腔鏡下下行結腸部分切除術を施行した.術後12日目に嘔気,腹痛を認め,腹部CTで癒着性腸閉塞と診断し,経鼻イレウス管を挿入した.その後腸間膜欠損部による内ヘルニアが原因と判断されたため,術後20日目,腹腔鏡下に腸閉塞解除および腸間膜欠損部の縫合閉鎖術を施行した.術後は合併症なく経過し退院した.腹腔鏡下大腸手術後の内ヘルニアは比較的まれな合併症であり,腸間膜欠損部は閉鎖しないのが一般的であるが,内ヘルニア発症のリスクが高いと思われる症例は腸間膜欠損部を閉鎖するなどの予防策を行うべきと考えられる.

  • 大橋 勝久, 大橋 勝英, 佐々木 章公, 松尾 嘉禮, 守都 敏晃
    2020 年 73 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    症例は60代,男性.直腸脱嵌頓の診断で他院から救急搬送された.ソフトボール大の巨大な嵌頓痔核状の外観で,内部に弾性軟な腫瘤を触知したため,巨大な血腫を合併した嵌頓痔核と考えた.治療目的で別の病院に転院し行ったCT検査で造影効果に富む腫瘤として描出され,直腸GISTの経肛門脱出と診断した.用手還納不能のため,同日腰椎麻酔下に経肛門的腫瘍切除術を行った.術後病理組織学検査ではc-kit陽性,CD34陽性,MIB1<1%で直腸GIST(中間リスク)と診断された.術後補助療法は行わず,術後1年目の再発なく外来で経過観察中である.

  • 安留 道也, 古屋 一茂, 宮坂 芳明
    2020 年 73 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    症例は76歳男性.便潜血陽性にて消化器内科受診,下部消化管内視鏡検査で盲腸に0-Is病変を認め,乳頭腺癌と診断,粘膜下層深層への浸潤が疑われた.cT1b,N0,M0,H0,P0,PUL0,cStageIと診断し,2015年2月腹腔鏡下回盲部切除術施行した.病理でtub1,pT1b(SM),Ly0,V1a,PN0,BD1,N0(0/9),pStageIと診断された.術後1年6ヵ月目よりCEAの上昇が認められた.CTでは異常認めず,FDG-PET/CT,MRIで肝転移あるいは播種が疑われた.2017年8月開腹手術施行,腹腔内に播種結節を多数認め,肝表面にも結節が散見,3ヵ所の結節を切除した.病理で腹膜播種と診断された.追加治療の希望無く,再発手術後1年8ヵ月で永眠された.T1(SM)大腸癌で腹膜播種性再発を認めた報告例は極めて稀であり,考察を加え報告する.

  • 大浦 康宏, 鈴木 重徳, 庫本 達
    2020 年 73 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

    症例は43歳,男性.繰り返す腹痛を主訴に当院受診した.腹部圧痛や腹膜刺激症状を認めず,上腹部に弾性軟の腫瘤を触知した.腹部CTで盲腸付近を先進部とし,横行結腸へ嵌入した腸重積症を認めた.注腸造影検査により腸重積は整復され,上行結腸から盲腸に隆起性病変を認めた.下部内視鏡検査では回盲弁の肛門側に粘膜壊死・びらんを伴う隆起性病変を認め,粘膜下腫瘍が疑われた.悪性腫瘍の可能性も否定できず,待機的に手術を行う方針として,腹腔鏡下結腸右半切除術(D3郭清)を施行した.術後経過は良好であり,術後6日目に退院となった.切除標本では回盲弁が著明に肥厚しており,病理組織学的検査で上行結腸リンパ管腫と診断された.成人腸重積症は腸重積全体の1~5%であり,リンパ管腫を原因とした大腸腸重積症は非常にまれである.今回,われわれは上行結腸リンパ管腫による成人腸重積症の1例を経験したので報告する.

編集後記
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