日本大腸肛門病学会雑誌
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60 巻, 2 号
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原著
  • 白 京訓
    2007 年 60 巻 2 号 p. 55-60
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    目的 : ストーマ閉鎖術は合併症発生率が20~40%と高く, ほとんどが創部感染である. ストーマ閉鎖術において創部を巾着状に縫縮する環状皮膚縫合法の有用性に関してretrospectiveに検討した. 方法 : 当施設で経験したストーマ閉鎖術66例を, 単純皮膚縫合施行群 (単純縫合群) 33例と環状皮膚縫合施行群 (環状縫合群) 33例に分けて臨床背景, 早期合併症, 術後在院日数に関して検討した. 結果 : 両群間で臨床背景に有意差はなかった. 創部感染率は環状縫合群で有意に低かった (環状縫合群0%対単純縫合群27%, p=0.002). 全合併症発生率も環状縫合群で有意に低かった (9%対36%, p=0.017). 術後在院日数も環状縫合群で有意に短かった. また術後瘢痕は5~20mm大の点状瘢痕であり整容性でも優れていた. 結語 : 環状縫合法は創部感染の減少と創部瘢痕の整容性から極めて優れた術式であると考えられた.
  • 川上 雅代, 山口 達郎, 松本 寛, 安留 道也, 岩崎 善毅, 荒井 邦佳, 森 武生
    2007 年 60 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    目的 : 下部直腸癌術後の排便機能および性機能を明らかにする.
    方法 : 超低位前方切除術後92症例における排便機能の経時的推移を外来診療録から調査した. また術後5年以上経過し, 無再発生存中の直腸癌術後症例を対象に, 排便機能および男性性機能に関するアンケート調査を実施, 術式別に比較検討した.
    結果 : 超低位前方切除術直後には1日6回以上の頻便を呈する症例が54%を占めていたが, 術後1年では6.5%, 術後3年では3%未満と術後年数の経過とともに改善していた. 前方切除術後あるいは低位前方切除術後と比較すると, 超低位前方切除術後では便意切迫を経験する症例 (22% vs 44%, p=0.03) や便失禁を経験する症例 (18% vs 44%, p<0.001) が多かった.
    男性性機能に関する有効回答が得られた107例中, 勃起能が保たれていたのは76例 (71%), 射精能が保たれていたのは64例 (59.8%) であった. 70歳以下で自律神経完全温存術をうけた症例においては勃起能が91.2%, 射精能が80.7%と高率に保持されていた. 吻合の高さによる差は認めなかった.
    結論 : 超低位前方切除術後長期における排便機能はおおむね良好であった. 当科における自律神経温存術後の性機能は満足できるものと考えられた.
  • 角田 明良, 保田 尚邦, 中尾 健太郎, 横山 登, 神山 剛一, 丸森 健司, 吉澤 康男, 草野 満夫, 橋本 英樹
    2007 年 60 巻 2 号 p. 69-76
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    European Organization for Research and Treatment of Cancer QLQ-CR38日本語版 (CR38J) を開発し, その信頼性と妥当性に関する検討を行った. CR38Jは38の項目より成り, 4つの機能尺度と8つの症状尺度が評価される. 大腸癌患者81例を対象に4回の調査を行った. 調査は治療前とその1~2カ月後, さらにその3カ月後に行われた. 再現性の検討のために3回目調査の1週間後に4回目の調査を行った. Multitrait scaling analysisでCR38Jの良好な構成妥当性が示された. Cronbach's α係数は9つのうち7つの尺度で, 1, 2回目調査の少なくとも1回は0.7以上であった. 再現性は機能尺度では良好であるが, 症状尺度では半数で不良であった. Known-groups comparisonでは病変部位, PS, stomaの有無でスコアに有意差のある尺度が認められた. 以上の結果によりCR38Jは良好な信頼性と妥当性を有することが示唆された.
臨床研究
  • 柳生 利彦, 柳 秀憲, 池内 浩基, 野田 雅史, 吉川 麗月, 外賀 真, 中埜 廣樹, 内野 基, 橋本 明彦, 大嶋 勉, 中村 光 ...
    2007 年 60 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    家族性大腸腺種症 (FAP) や潰瘍性大腸炎 (UC) に対する1期的大腸全摘 (RPC), 回腸嚢肛門吻合術 (IAA) を腹腔鏡を用いないビキニラインアプローチ法で施行した女性患者16症例 (FAP4例, UC12例) を対象としその有用性を検討した. 平均年齢は27.1歳で平均手術時間は236.7分, 平均出血量196.3ml であった. 平均術後在院日数は24.5日で術中および術後に重篤な合併症は認めなかった. 同時期に施行された従来の正中切開法18例と比較すると手術時間は従来法 (208.9分) に比し有意に長かったが出血量, 術後在院日数, 合併症の頻度に有意差はなく患者の満足度も高かった. 本術式では鏡視下手術設備や器具は必要とせず安全に合併症なく施行できた. 美容的にも優れ, 特に若年女性には有用と思われた.
症例報告
  • 赤丸 祐介, 弓場 健義, 山崎 芳郎, 伊藤 章, 籾山 卓哉
    2007 年 60 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは患者要因で約4年にわたり経過観察した直腸肛門部悪性黒色腫の1例を経験した. 症例は79歳, 女性. 2000年12月, 白色調の肛門ポリープに対して内視鏡的粘膜切除術を施行し, 組織診で無色素性悪性黒色腫と診断した. 2001年10月, 局所再発を認めたが根治手術の承諾を得られず, 経肛門的腫瘍切除術のみを施行した. その後再度の局所再発を認め, この頃より腫瘍はそれまでの無色素性から黒色調へと色調変化をきたし, 典型的な悪性黒色腫像を呈するようになった. 2003年7月, 腫瘍の増大, 出血のため, 腹会陰式直腸切断術を施行したが, 2004年12月, 全身転移による悪液質のため死亡した. 剖検にて, 心, 肺, 肝, 腹膜など全身に転移を認めたが, 転移腫瘍はメラニン色素沈着を認めず, 無色素性腫瘍成分のみであった. 直腸肛門部悪性黒色腫の進展や転移様式を検討するうえで, 示唆に富む症例であると考え, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 柴田 智隆, 唐原 和秀, 和田 伸介, 内田 雄三, 野口 剛, 川原 克信
    2007 年 60 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    今回我々は, 虫垂炎を疑い手術を施行した閉経後虫垂子宮内膜症を経験したので報告する.
    症例は57歳の女性, 主訴は下腹部痛であった. 右下腹部を中心に圧痛をみとめ, Blumberg徴候陽性であった. また, 頻尿を認めた. 血液検査で白血球数の増加およびCRP値の上昇認め, 腹部超音波検査, 腹部骨盤CT検査で虫垂穿孔性の骨盤膿瘍が疑われた. 穿孔性虫垂炎および骨盤内膿瘍の診断にて, 緊急手術を施行した.
    手術所見では虫垂は末梢側約1/2が腫大し, 後腹膜側に癒着しており, 虫垂末梢側に膿瘍を認めた. 切除標本の病理組織学所見では虫垂粘膜に炎症は認められず, 虫垂の漿膜側の筋層内に子宮内膜を認め, 虫垂子宮内膜症と診断した.
    虫垂子宮内膜症は術前診断が極めて困難であり, 術後の詳細な病理学的検索が重要であると考えられた.
  • 島崎 二郎, 渡辺 善徳, 中地 健, 生方 英幸, 中田 一郎, 田渕 崇文
    2007 年 60 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 女性. 全身性エリテマトーデスにて加療中, 下血を認め精査施行. 上部直腸に易出血性の隆起性病変を認め, 生検組織にて炎症性直腸粘膜の診断であった. 腫瘍性病変の可能性もあり, 確定診断の目的にてリンパ節郭清をともなう直腸低位前方切除術を施行した. 切除された腫瘍は直径4.0cmで, 病理組織学的に異型リンパ球 (CD20陽性, CD5陰性) の浸潤増殖像から成り, low grade B-cell lymphoma, mucosal associated lymphoid tissue (MALT) typeであった. 所属リンパ節には腫瘍性変化は認めず, 臨床病期Iの直腸原発悪性リンパ腫と診断された.
    自己免疫性疾患に悪性疾患, 特に悪性リンパ腫が合併した報告例は散見されるが, 消化管原発悪性リンパ腫が合併した例はまれである. 今回われわれは, 全身性エリテマトーデスに直腸原発悪性リンパ腫が合併した一例を経験したので文献的考察を含め報告する.
  • 寿美 哲生, 勝又 健次, 村越 雄介, 須田 健, 尾形 高士, 米田 啓三, 安田 祥皓, 鈴木 芳明, 青木 利明, 土田 明彦, 青 ...
    2007 年 60 巻 2 号 p. 100-104
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは腹膜垂を原因とする絞扼性イレウスを経験したので報告する. 症例は手術既往のない52歳の男性で, 嘔吐を主訴に来院した. イレウスの診断で入院し, 保存的治療法で改善傾向にあったが, 入院7日目に急激な腹痛が出現したため緊急手術を行った. 術中所見は, ループ状となったS状結腸腹膜垂による小腸の絞扼性イレウスであり, 回腸部分切除術を行った. 腹膜垂による絞扼性イレウスの報告は少なく, 本邦17例目であるので, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 牧野 知紀
    2007 年 60 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    57歳の女性で, 主訴は発熱および全身倦怠感. 注腸造影および大腸内視鏡検査で下部直腸に1/3周性の2型病変を認め, 生検で扁平上皮癌と診断した. 腹部造影CT上で, 腫瘍の子宮後壁への浸潤を認めた. surgical marginを確保して根治術を行うため術前放射線化学療法 (体外・全骨盤照射50Gy, 5-FU+CDDP) を施行し, 特に大きな有害事象なく経過した. 注腸造影および大腸内視鏡検査で腫瘍は消失したが, 腹部CTで病変の残存が疑われたため根治手術を施行した. 手術は低位前方切除術, 子宮・腟後壁合併切除術を施行した. 病理組織学的検査では, 直腸壁は繊維化のみであり, 郭清リンパ節も含め癌細胞は認めなかった. 術後, 軽度の排尿障害および肛門機能障害を認めたが軽快し, 術後12カ月現在無再発生存中である. 自験例のような下部進行直腸癌に対して術前放射線化学療法は有効であると考えられた.
  • 長嶺 寿秋, 権田 剛, 崎元 雄彦, 北岡 斎, 中田 博, 横山 勝, 石橋 敬一郎, 石田 秀行, 藤野 幸夫, 望月 智行
    2007 年 60 巻 2 号 p. 110-115
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は33歳, 男性. 生後2~3カ月時にHirshsprung病の疑いで, S状結腸人工肛門が造設され, その後閉鎖された. 2歳時には直腸血管腫に対し, 外照射治療を受けた (詳細不明). 今回, 繰り返すイレウスと下血の精査・加療を目的に紹介入院となった. 入院後イレウスは保存的に軽快したが, 下血の原因は直腸びまん性血管腫であり, これに対して, 直腸切除・結腸肛門吻合術を施行した. 術前の画像診断では指摘できなかったが, 開腹時に虫垂のほぼ全長にびまん性血管腫を認めたため, 虫垂切除術も同時に行った. 術後15カ月の現在, 下血はなく健在である. 本症例は直腸びまん性血管腫に虫垂びまん性血管腫を合併していたこと, 臀部の皮膚に血管腫, 左下腿に静脈性血管瘤, 内腸骨血管の動静脈瘻を併存しており, Blue rubber bleb syndromeとは異なるものの, 血管系の異常の結果生じた稀な疾患単位の可能性があり, きわめて貴重な症例と考えられる.
  • 小池 淳一, 船橋 公彦, 後藤 友彦, 渡邊 正志, 栗原 聰元, 斉藤 直康, 岡本 康介, 渋谷 和俊, 鎌田 重康, 寺本 龍生
    2007 年 60 巻 2 号 p. 116-119
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    異時性に肛門転移をきたしたS状結腸癌の1例を経験したので報告する. 症例は74歳男性, 下血を主訴に近医受診し, 大腸内視鏡検査にて肛門縁より35cmのS状結腸に, 約2/3周の2型の腫瘍を認め, S状結腸切除術 (D3) を施行した. 術後8カ月の腹部CT検査にて肝臓のS7に約3cmの転移性腫瘍を認め肝部分切除を行った. 術後1年後に再度下血を主訴に当院を受診し, 肛門上皮に隆起性病変を認めた. 生検にてadenocarcinomaと診断され, 経肛門的に局所切除を施行した. 病理所見では, 肛門腫瘍は肛門部重層扁平上皮に認められ, 原発巣と組織像が類似し, 肉眼的所見からimplantationの可能性が示唆された. 文献上S状結腸癌の肛門管転移は非常に稀な症例であったため報告する.
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