目的 : 下部直腸癌術後の排便機能および性機能を明らかにする.
方法 : 超低位前方切除術後92症例における排便機能の経時的推移を外来診療録から調査した. また術後5年以上経過し, 無再発生存中の直腸癌術後症例を対象に, 排便機能および男性性機能に関するアンケート調査を実施, 術式別に比較検討した.
結果 : 超低位前方切除術直後には1日6回以上の頻便を呈する症例が54%を占めていたが, 術後1年では6.5%, 術後3年では3%未満と術後年数の経過とともに改善していた. 前方切除術後あるいは低位前方切除術後と比較すると, 超低位前方切除術後では便意切迫を経験する症例 (22% vs 44%, p=0.03) や便失禁を経験する症例 (18% vs 44%, p<0.001) が多かった.
男性性機能に関する有効回答が得られた107例中, 勃起能が保たれていたのは76例 (71%), 射精能が保たれていたのは64例 (59.8%) であった. 70歳以下で自律神経完全温存術をうけた症例においては勃起能が91.2%, 射精能が80.7%と高率に保持されていた. 吻合の高さによる差は認めなかった.
結論 : 超低位前方切除術後長期における排便機能はおおむね良好であった. 当科における自律神経温存術後の性機能は満足できるものと考えられた.
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