日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
75 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
臨床研究
  • 鈴木 創太, 角田 明良, 高橋 知子
    2022 年 75 巻 4 号 p. 153-161
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】小腸瘤に特徴的な症状として高頻度に出現する骨盤底の圧迫感を呈した症例に対するLaparoscopic Ventral Rectopexy(LVR)の治療成績を検証する.

    【方法】骨盤底の圧迫感を呈した小腸瘤に対してLVRを施行した14症例を対象に,術後36ヵ月までの臨床症状および排便機能の評価を行った.排便機能の評価はCSSスコアとFISIスコアを使用した.また術前と術後6ヵ月に排便造影検査を施行し術前後で比較した.

    【結果】骨盤底の圧迫感を呈する頻度は術後36ヵ月までの各時期で,脱出感の頻度は術後12ヵ月までの各時期で有意に改善した.CSSスコアは術後3ヵ月で,FISIスコアは術後3ヵ月と6ヵ月で有意に改善を認めた.術後造影検査では小腸瘤は全例で消失していた.

    【結論】小腸瘤を有する患者に対してLVRを行った結果,骨盤底の圧迫感と脱出感が改善した.

  • 小村 憲一, 杉山 順子
    2022 年 75 巻 4 号 p. 162-169
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    目的

    肛門科医院における「肛門が臭う」という主訴患者に対しての治療を報告する.

    対象と方法

    2年間で19名の患者を対象とし,肛門疾患があれば手術,薬物治療,希望者に肛門管内低周波電気刺激療法,骨盤底筋体操指導を行った.

    結果

    19名中10名に症状の改善を認めた.内訳:手術は3例に行い,全例改善した.電気刺激療法は11例に行い,肛門管内随意収縮圧が90mmHg未満の4例は骨盤底筋体操の指導も同時に行い全例改善した.肛門周囲皮膚炎,直腸瘤の1例,慢性裂肛の1例は,薬物治療で改善.肛門に何の異常も認められなかった10名中9名は改善せず,改善した1例は海外移住することで改善していた.

    結論

    肛門に器質的疾患を有する肛門が臭うという主訴患者は,手術,薬物治療を行えば,改善する可能性がある.また,肛門管内随意収縮圧が90mmHg未満の女性患者には,電気刺激療法+骨盤底筋体操指導は試みられて良い方法である.

症例報告
  • 河原 直毅, 鈴木 佳透, 酒井 悠, 前島 新史, 島田 岳洋
    2022 年 75 巻 4 号 p. 170-175
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    症例は臀部痛を主訴に受診した36歳女性.腹部CTと骨盤MRIにおいて尾骨を跨ぎ,臀部皮下に達する前仙骨嚢胞性腫瘍を認めた.画像所見からtailgut cystが疑われた.経時的に増大傾向であり悪性化の可能性を考慮し根治切除の方針となった.手術は腹腔鏡を併用して経腹経仙骨的に行った.5ポートで経腹的に直腸の授動を行い,直腸背側に前仙骨嚢胞性腫瘍を同定したのちに腹部は閉創し,腹臥位に体位変換を行った.最後に経仙骨的アプローチにより尾骨とともに腫瘍を切除した.術後は特に合併症なく,退院となった.腫瘍は病理学的所見からtailgut cystの診断となった.腹腔鏡下経腹経仙骨的手術によって根治的切除と骨盤内神経の温存を低侵襲に行い良好な経過を得たため,文献的考察を含めて報告する.

  • 坪本 敦子, 小池 淳一, 鈴木 綾, 中山 洋, 大谷 泰介, 安田 卓, 指山 浩志, 堤 修, 浜畑 幸弘
    2022 年 75 巻 4 号 p. 176-181
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    症例は80歳,女性.肛門痛と脱肛を主訴に受診した.大腸内視鏡検査で,肛門管から直腸Rb前壁に達する白色調の腫瘤を認めた.生検組織の病理では肉腫様変化を示した扁平上皮癌の可能性があり,免疫染色で検討したところ,低色素性悪性黒色腫と診断された.画像診断で遠隔転移を認めなかったため,腹会陰式直腸切断術,D3郭清が施行された.術後病理診断はRb-P, Type1, sarcomatoid amelanotic malignant melanoma, pStageIIIbであった.Sarcomatoid amelanomatic malignant melanomaについて文献検索すると,肛門管原発ではあまり報告がなく,極めて希少な疾患であることが考えられた.本症例は術後3ヵ月で,多発肝転移,肺転移をきたし,15ヵ月を経過した時点で腸骨転移をきたした.現在,BSCの方針で経過観察中である.

  • 北川 和男, 高橋 直人, 梶 睦, 栗田 紗裕美, 吉岡 聡, 平本 悠樹, 衛藤 謙
    2022 年 75 巻 4 号 p. 182-187
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    【症例】70歳台,女性.【現病歴】上行結腸癌,多発肝転移,肺転移の診断で結腸右半切除術を施行した.病理はpT3pN2b cM1b pStageIVb,RAS野生型,BRAF V600E変異型であった.Bevacizumab+FOLFOXIRI療法を開始したが,Microsatellite instability-high(以下,MSI-H)であったため,Pembrolizumabに変更した.肺転移は消失,肝切除を施行した.病理はpCRで癌細胞は認めなかった.【考察】BRAF変異陽性切除不能大腸癌の1-2次治療不応後化学療法としてBRAF阻害薬を用いたEncorafenib±Binimetib+Cetuximab併用療法で既存治療より生存期間の延長を認める報告があるが,MSIを測定することで予後良好群を選別し,免役チェックポイント阻害薬による個別化医療ができる可能性がある.

  • 鎌田 陽介, 松本 辰也, 小泉 範明, 阪倉 長平
    2022 年 75 巻 4 号 p. 188-192
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    症例は71歳女性.既往に精神疾患があり,バルプロ酸ナトリウムを含む多数の薬剤を内服していた.20XX年に発熱と腹部膨満を主訴に当院救急受診された.炎症反応の高値,巨大結腸症を認め,直腸内に多量の内容物貯留を認めた.当院内科で入院加療を開始した.下部消化管内視鏡検査で直腸内にバルプロ酸ナトリウムのゴーストピルと考えられる多量の未消化薬剤を認め,S状結腸から直腸にかけて多発潰瘍を認めた.慢性便秘,巨大結腸症から多量のゴーストピルが直腸内に長期遺残し,難治性多発直腸潰瘍が生じたと考えられた.その後も内科的治療を継続したが奏効せず当科紹介となった.S状結腸双孔式人工肛門造設術を施行し,術中内視鏡を用いて腸管洗浄を行った.直腸内には約膿盆1杯分のゴーストピルの貯留を認めた.術後経過は良好であった.今回われわれは多量のゴーストピルの長期遺残により難治性直腸潰瘍をきたした症例を経験したので報告する.

  • 田口 司, 竹山 廣志, 能浦 真吾, 鈴木 陽三, 清水 潤三, 冨田 尚裕
    2022 年 75 巻 4 号 p. 193-197
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    症例は74歳の男性.9年前に膀胱癌に対して膀胱全摘,回腸代用新膀胱造設術を受け,以降6ヵ月毎に腹部CTフォローを施行されていた.手術から9年後の腹部CTで上行結腸の壁肥厚を認め,上行結腸癌の診断で腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.回腸腸間膜の処理に伴う新膀胱の虚血の可能性を考慮し,術中Indocyanine green(以下,ICG)蛍光法を用いて新膀胱への血流が保たれていることを確認した.また,本症例では終末回腸は骨盤壁と広範囲に強固に癒着しており,腸管の体外への牽引が困難であったことから体腔内再建を行った.術後4日目に尿路感染症を発症したが,抗生剤加療にて軽快し,術後18日目に退院した.新膀胱造設術後の大腸癌手術時に術中ICG蛍光法を用いることで,新膀胱の血流が維持できていることが確認でき,安全に手術を施行し得た症例を経験したので報告する.

編集後記
feedback
Top