日本大腸肛門病学会雑誌
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64 巻, 1 号
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原著
  • 徳原 克治, 吉岡 和彦, 岩本 慈能, 中根 恭司, 權 雅憲
    2011 年64 巻1 号 p. 1-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    目的:右側結腸癌に対する腹腔鏡下手術群(Laparoscopic surgery群;以下,LS群)と開腹手術群(Open surgery群;以下,OS群)間の臨床成績,医療経済面上の優位性を検討した.対象:2006,2007年度に結腸切除術を施行した右側結腸癌患者のうち,組織学的病期分類がII,IIIの患者を対象とした(LS群25例,OS群17例).腫瘍占居部位はLS群が盲腸(C)7例,上行結腸(A)17例,右側横行結腸(T)1例,OS群が虫垂1例,C 2例,A 14例であった.結果:手術時間がLS群で長かったが,出血量は少なく,入院日数,経口摂取再開時期,合併症併発率は差を認めなかった.経済面では,総入院費用,DPC包括請求分はOS群で高額であったが,1日あたりの入院費用はLS群が高額であった.手術費用はLS群が高額であったが,材料費などを差し引いた手術純利益はOS群が高額であった.考察:LSは術後のquality of life向上には有用な術式であるが,病院経営の観点からみると,手術材料費の圧縮が課題であると考えられた.
  • 渡部 顕, 齊藤 修治, 橋本 洋右, 賀川 弘康, 別宮 絵美真, 富岡 寛行, 塩見 明生, 絹笠 祐介
    2011 年64 巻1 号 p. 6-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    TNM第7版(以下TNM7)による結腸癌Stage III細分類の妥当性を当院データで検討する.
    対象と方法:根治度A手術を施行したStage III結腸癌症例を対象としてTNM7,TNM第6版(以下TNM6),大腸癌取扱規約第7版(以下JGR7)別に無再発生存を検討した.またTNM7に基づいたT因子とN因子を組み合わせ,それぞれのグループの無再発生存を検討した.
    結果:対象は217例.TNM7 Stage IIIA,Stage IIIB,Stage IIICでは3年無再発生存率(以下3y-RFS)がそれぞれ95%,82%,74%と有意差を持って層別化されたが(p=0.0468),JGR7とTNM6では有意差を認めなかった.この主な要因としてはT4b N1群(3yRFS=50%)をTNM7ではStage IIICと予後不良群に分類したことであると考えられた.
    結語:TNM7による結腸癌Stage III細分類は予後をよく層別化し,その妥当性が示された.
臨床研究
  • 指山 浩志, 辻仲 康伸, 浜畑 幸弘, 堤 修, 赤木 一成, 星野 敏彦, 南 有紀子, 角田 祥之, 松尾 恵五, 中島 康雄, 高瀬 ...
    2011 年64 巻1 号 p. 11-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    目的:肛門部尖圭コンジローマ症例(ACA)におけるハイリスク型,ローリスク型HPVの関与を調べる.方法:33例のACA切除標本についてhybrid capture II(hcII)法とpolymerase chain reaction(PCR)法でHPV型を検索した.結果:ハイリスク型HPV陽性例はPCR法では51型1例であり,hcII法では10例であった.hcII法とPCR法で相違が見られたため,種々のHPV-DNAについて交差反応を調べたところ,6型,42型のローリスク型HPVについて,hcII法でハイリスク型HPVとの交差反応が見られた.そこで,Relative luciferase unit(RLU)値のカットオフ値を変更し過去の症例を再検討したところ,ACAにおけるハイリスク型HPVの陽性率は6%であったが,HIV陽性ACAでは,70%と評価された.考察:ACAでは,hcII法においてローリスク型HPVの交差反応により,ハイリスク型HPVの偽陽性が生じる可能性がある.一方,交差反応を考慮してもHIV陽性ACAでは,高い確率でハイリスク型HPV陽性である可能性があった.
症例報告
  • 岩川 和秀, 清地 秀典, 今井 良典, 梶原 伸介, 西江 学, 濱野 亮輔, 宮宗 秀明, 大塚 眞哉, 岩垣 博巳
    2011 年64 巻1 号 p. 17-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    直腸脱をともなう重症の便秘症に対し結腸亜全摘術および直腸固定術を施行した.症例は36歳,女性.現病歴は20歳頃より便秘に対して下剤を内服し始め,最近では1日に80~100錠服用し排便の度に直腸脱を認めていた.注腸検査では大腸全体にびまん性の拡張を認めた.バリウムを用いたtransit time studyでは2日目に右半結腸までしか進まず,5日目で直腸にバリウムが停滞した.直腸肛門内圧検査では肛門管随意収縮圧は低下し,直腸肛門反射は認めなかった.Defecographyでは不完全排出を認めた.以上の所見よりslow transit constipationをともなう重症便秘症および直腸脱と診断し,腹腔鏡補助下結腸亜全摘および直腸固定術を施行した.病理検査では神経の異常を認めなかった.術後下剤は服用せず,1日1~2回の軟便となった.直腸脱をともなう重症便秘症に対して本術式は一つのオプションになり得ると思われる.
  • 沼田 正勝, 藤井 正一, 五代 天偉, 山岸 茂, 佐藤 勉, 大島 貴, 利野 靖, 國崎 主税, 益田 宗孝, 今田 敏夫
    2011 年64 巻1 号 p. 24-28
    発行日: 2011年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性.33歳から全大腸型の潰瘍性大腸炎を指摘されていた.2005年9月,直腸癌RbP,type 3,cAI(vagina),cN2,pM1(両側鼡径リンパ節)に対し,腹仙腹式直腸切断術(D3 prxD2),大腸全摘術,回腸人工肛門造設術,および両鼡径リンパ節部分切除術を施行した.病理組織学的所見ではRbP,type 3,68×30mm,moderately differentiated adenocarcinoma(mod>por),pAI(vagina),pN2,ly2,v3,pM1(両側鼡径リンパ節),Cur C,f-stage IVであった.FOLFIRI療法10サイクルで両側鼡径リンパ節がCRとなりCEAも一旦正常化したが,2007年9月CEAが33.1ng/ml まで上昇し,PET検査で左大腿部に集積を認め,穿刺吸引細胞診で腺癌と診断された.同月,直腸癌左大腿転移の診断にて,左大腿腫瘍切除を行った.組織学的には低分化腺癌で,免疫染色の結果から直腸癌の転移と確認された.術後,CEAは正常化し,転移巣切除から27カ月経過した現在,無再発生存中である.大腸癌の骨格筋内転移症例は非常にまれであり若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 野木 真将, 宮阪 英, 関岡 敏夫, 田中 俊樹, 熊本 新一, 梶原 正章, 仲井 理, 山田 拓司
    2011 年64 巻1 号 p. 29-34
    発行日: 2011年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    症例1は72歳女性で主訴は赤黒い血便であった.心不全治療のため当院循環器科入院中に貧血精査目的で施行した上部消化管内視鏡検査で胃角部に地図状潰瘍を認め,露出血管に対する止血処置を行った.その後,赤黒い血便を認め大腸内視鏡検査を施行した.直腸に急性出血性直腸潰瘍を認め露出血管を凝固止血した.直腸潰瘍底から生検を行ったところ免疫染色でサイトメガロウイルス感染が証明された.ガンシクロビル投与にて直腸潰瘍の著明な縮小を認めた.
    症例2は68歳男性で主訴は黒色便であった.多発胃潰瘍および急性出血性直腸潰瘍を認めた.潰瘍底からの生検標本でサイトメガロウイルス感染が証明された.
    2症例ともに,胃と直腸に同時に潰瘍が合併し,直腸潰瘍底からサイトメガロウイルスが証明された.胃潰瘍底からはサイトメガロウイルス感染は証明できなかった.長期臥床が原因で急性出血性直腸潰瘍を呈する症例はしばしば経験されるが,本症例のようにサイトメガロウイルス感染が証明された報告は極めて稀である.正常免疫患者であっても急性出血性直腸潰瘍ではサイトメガロウイルス感染を疑う必要がある.
  • 矢ヶ部 知美, 隅 健次, 中房 祐司, 能城 浩和, 宮崎 耕治
    2011 年64 巻1 号 p. 35-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代,男性.骨盤壁浸潤をともなう局所進行直腸癌によるイレウスに対して横行結腸人工肛門造設術および中心静脈ポート留置術を行った.術後7日目よりmFOLFOX6による全身化学療法を導入した.2コース目よりBevacizumabを併用し,5コース終了時には著明な縮小効果が得られ,腫瘍マーカーはCEA,CA19-9ともに正常化し,PRに入ったと判断した.根治切除術を行う方針とし,6コース目はBevacizumabの併用は行わずmFOLFOX6のみ行い,Laparoscopic intersphincteric resectionを施行した.切除標本の病理組織学的効果判定はGrade 2,リンパ節転移,断端はいずれも陰性であった.術後経過は良好で,術後9カ月無再発生存中である.mFOLFOX6/Bevacizumab併用療法は局所進行直腸癌の術前補助化学療法として有用と考えられた.
  • 別府 直仁, 吉江 秀範, 相原 司, 柳 秀憲
    2011 年64 巻1 号 p. 41-46
    発行日: 2011年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.下血を主訴に来院.横行結腸脾彎曲部に全周性2型腫瘍,下部直腸に3/4周性2型腫瘍を認め,生検にて両者とも中分化管状腺癌と診断した.画像診断にてリンパ節腫大や遠隔転移は認めなかった.第1期手術として結腸左半切除術,横行結腸人工肛門造設術(ハルトマン手術)を施行し横行結腸癌に対する根治手術,および下部直腸癌治療に対するfecal diversion stomaを造設した.引き続き下部直腸癌に対し化学放射線療法(chemoradiation therapy:以下CRT)を施行.第2期手術として残存結腸亜全摘,超低位前方切除,内肛門括約筋切除(intrasphincteric resection:以下ISR),盲腸肛門吻合,回腸人工肛門造設術を施行した.自験例では計画的二期分割切除に術前CRTを組み合わせることで根治性および術後機能の向上が得られると考えられた.また左側結腸が口側吻合腸管として使用できない症例でも盲腸肛門吻合術を施行することにより肛門温存可能であり有用な術式と考えられた.
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