直腸カルチノイドの5例を経験したので, 本邦報告例の集計を加えて報告する.自験例は男2例, 女3例, 平均年齢51歳, 4例はドック検診で発見された.いずれも無症状で, 腫瘍の最大径は6~8mm, 肛門縁より5~7cmに存在し, 生検にてカルチノイドと診断された.局所切除を施行し, 深達度はsm, 銀反応は1例のみ陽性であった.
渉猟しえた本邦報告例は436例であった.男女比は1.49 : 1, 平均年齢47.8歳.腫瘍は肛門縁から5~8cmに好発し, 腫瘍径20mm以下のものが8割強を占めた.転移率は20mm以下7.8%, 21mm以上77%, 筋層浸潤は20mm以下13%, 21mm以上85%で, 欧米の報告と差はなかった.しかし, 20mm以下の症例のうち, 11~20mmの転移率, 筋層浸潤率は, それぞれ23%, 31%と高率で, これらの治療方針の選択を最も慎重に行う必要があると考える.
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