日本大腸肛門病学会雑誌
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76 巻, 7 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 木内 純, 栗生 宜明, 有田 智洋, 清水 浩紀, 大辻 英吾
    2023 年 76 巻 7 号 p. 453-459
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢の大腸癌術後補助化学療法施行例において,術前,補助化学療法導入時,再発時の栄養状態が予後に与える影響について検討した.

    【方法】大腸癌術後補助化学療法を導入した227連続症例(うち70歳以上83症例)について後方視的に解析した.栄養状態の指標として小野寺のPNI値を用いた.術前,補助化学療法導入前,再発確認時のPNI値を算出した.

    【結果】1)術前低PNIは不良な長期予後に関連した(P=0.008).2)術前低PNI群において,補助療法導入時のPNI低値は,リンパ節転移陽性とともに独立した予後不良因子であった(P値0.037,ハザード比3.56).3)再発症例において再発時低PNI群は3年生存率が有意に不良であった(P=0.049).

    【結論】高齢者大腸癌に対する術後補助化学療法施行例において,術前のみならず補助療法導入時および再発時のPNI値も予後マーカーとなりうる.

  • 奥野 貴之, 日吉 雅也, 京田 有介, 山本 順司
    2023 年 76 巻 7 号 p. 460-466
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

    背景と目的:大動脈周囲リンパ節(以下216LN)転移陽性大腸癌に対しては,外科的切除により一定の頻度で根治や生存期間の延長を得られると報告されている.216LN切除の適応と意義を明らかにする.

    対象と方法:当院で216LN切除を伴う外科切除を行い,術後病理で216LN転移陽性であった大腸癌22例を解析した.

    結果:22例の3年全生存率(3yr-OS)は50.0%であった.216LN転移以外の遠隔転移のないM1a症例12例の3yr-OSは70.7%であり,特に術前CEA値<9.0ng/mlの症例の3yr-OSは85.7%で,216LN転移個数が3個以下の症例の3yr-OSは100%と良好であった.

    結語:他に遠隔転移がなく,術前CEA値<9.0ng/mlや,216LN転移個数が3個以下の大腸癌は,216LN切除を伴う根治的外科切除により予後が改善しうる.

総説
  • 日山 亨, 國弘 真己, 朝山 直樹, 卜部 祐司, 岡信 秀治, 小野川 靖二, 國弘 佳代子, 桑井 寿雄, 児玉 美千世, 佐野村 洋 ...
    2023 年 76 巻 7 号 p. 467-479
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

    プロバイオティクスは日常診療において頻用されているが,現在,その使用ガイドラインは作成されていない.そのため,「広島大学消化器内科関連病院プロバイオティクス使用ガイドライン」を作成した.

    実地診療における疑問や問題を取り上げ,7(実質10)項目のクリニカルクエスチョンを決定した.作成に当たっては「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0」に従い,推奨の強さとエビデンスの質を示した.なお,この領域における本邦からのメタアナリシスなど質の高い報告は少なく,委員のコンセンサスを重視せざるを得ない部分も多かった.

    ガイドラインは現時点でのエビデンスの質に基づいたものであり,医療の現場で患者と医師による意思決定を支援するものである.個々の患者に応じて,柔軟に対応する必要がある.

症例報告
  • 皆川 結明, 石山 泰寛, 伊藤 慎吾, 小根山 正貴, 成田 和広
    2023 年 76 巻 7 号 p. 480-483
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

    症例は64歳女性.下部直腸癌に対して術前化学放射線療法後に腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術,右側方リンパ節郭清術を施行した.術後会陰創の離開および多量の排液があり,腹部CT検査で右側方リンパ節郭清領域に液体貯留を認めた.術後リンパ嚢胞の診断でCTガイド下穿刺ドレナージを施行し,ドレーン留置のまま外来で経過をみていた.術後56日目に腹痛および右鼠径部痛で来院し,腹部CT検査でドレーンの逸脱およびリンパ嚢胞の増悪を認めた.右鼠径リンパ節穿刺によるリピオドールを用いたリンパ管造影を施行したところ,症状の改善を認め,15日目に退院となった.

    直腸癌側方リンパ節郭清術後の難治性リンパ嚢胞に対するリピオドールを用いたリンパ管造影の有用性について,文献的考察を含め報告する.

  • 大森 隆夫, 馬場 洋一郎
    2023 年 76 巻 7 号 p. 484-491
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

    73歳男性,主訴は血便.S状結腸に40mmの隆起性病変と多発肝腫瘤を認めた.隆起性病変内部に癌の存在を疑いS状結腸切除術と,肝表面の小結節を生検目的に切除した.S状結腸の病変は有茎性ポリープに生じた管状絨毛腺腫内癌で,ポリープ茎部でわずかに粘膜下層に浸潤し毛細血管よりも径が大きい小静脈を侵襲していた.肝臓の小結節は大腸癌肝転移であった.有茎性大腸ポリープ茎部には毛細血管や細静脈より中枢側の血管が集束し走行(stalk vessels)している.粘膜下層浸潤大腸癌における同時性肝転移の陽性率は0.2%と低いが,本症例のような病理学的特徴を有する場合は文献的に肝転移の可能性が高まることを念頭に注意深いサーベイランスを行う必要があると考えられた.

  • 渡海 大隆, 平山 昂仙, 谷口 堅
    2023 年 76 巻 7 号 p. 492-495
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代,男性.直腸S状部癌に対して腹腔鏡下低位前方切除術を施行.Tubular adenocarcinoma,moderately differentiated,pStage IIIbであり,術後補助化学療法としてSOX療法を9コース施行.2年後,18F-fluorodeoxyglucose集積を伴う傍大動脈リンパ節(PALN)腫大に対して郭清術を施行.摘出した7個すべてに転移を認めた.術後,FOLFIRI療法を12コース施行.さらにその4年後,単発のPALN腫大を認め,摘出術を施行.病理組織検査でも転移の診断であった.術後,Capecitabine単剤を6ヵ月施行.初回手術から9年経過し,無再発生存中である.大腸癌のPALN転移症例において,他臓器転移を伴わない場合は,積極的な外科切除と適切な化学療法を行うことで長期生存を得られる可能性がある.

  • 大辻 晋吾, 竹山 廣志, 鈴木 陽三, 池永 雅一, 清水 潤三, 冨田 尚裕
    2023 年 76 巻 7 号 p. 496-500
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

    症例は50歳の女性.下部消化管内視鏡検査で直腸Rbに直径4.7mm大の粘膜下腫瘤を認めた.生検でNeuroendocrine neoplasmの診断となり内視鏡的治療を施行した.病理組織学的検査でSynaptophysin陽性,Chromogranin A(focal)陽性,mitotic count:0/10,Ki67指数:1.1%であり,Neuroendocrine tumor(NET)G1と診断された.病理組織学的検査でLy1であったことから追加切除の方針となり,D3リンパ節郭清を伴うロボット支援下低位前方切除術を施行した.摘出標本の腸管傍リンパ節に転移を認めた.進行度分類はTMN分類に則りpT1aN1M0,pStageIIIBであった.リンパ節転移を伴う腫瘍径4.7mmの直腸NET G1に対するロボット支援下低位前方切除術を施行した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

  • 平塚 孝宏, 荒金 佑典, 白水 章夫, 有田 桂子, 西田 陽登, 猪股 雅史
    2023 年 76 巻 7 号 p. 501-506
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/29
    ジャーナル フリー

    症例:72歳男性.

    現病歴:2ヵ月前より下痢,左下腹部痛が持続し,1ヵ月前にかかりつけ医より小建中湯,桂枝加芍薬湯を処方され内服するも1日20回に下痢が増悪したため当院受診.大腸内視鏡検査にてびらん,潰瘍,浮腫,血管拡張を伴うスコープ通過不能なS状結腸の狭窄を認めた.同部の生検では非特異的炎症の診断であり,狭窄型虚血性大腸炎と診断した.入院の上,絶食を伴う保存的治療を行うも症状改善せず横行結腸人工肛門を造設した.1.5ヵ月後のCT,大腸内視鏡検査では病変部の浮腫軽減を認めるもスコープ通過不能であったため腹腔鏡補助下低位前方切除術を施行した.切除標本の病理組織学的検査において特発性腸間膜静脈硬化症と診断された.手術の2ヵ月後に人工肛門を閉鎖し退院.術後8ヵ月現在,経過良好である.

    結語:保存的治療抵抗性のS状結腸を主座とする石灰化を伴わない特発性腸間膜静脈硬化症の1例を経験した.

編集後記
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