日本大腸肛門病学会雑誌
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52 巻, 1 号
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  • sm癌浸潤の絶対的評価と相対的評価との対比から
    井上 雄志, 鈴木 衛, 吉田 勝俊, 手塚 徹, 高崎 健
    1999 年 52 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    過去10年間に当センターで経験した大腸sm癌のうち,初回から外科切除を選択した86例のsm層癌浸潤度を測定し,sm癌浸潤の絶対的評価を行い,sm層を3等分する相対的評価と対比検討した.sm1は平均828μ,sm2は1925μ,sm3は3091μであった.隆起型は,表面型に比べ有意にsm浸潤度が深く,sm1,sm2,sm3に分けても有意に隆起型が深いことから,通常mp層を欠く内視鏡切除標本のsm浸潤度を評価する場合,肉眼形態を考慮する必要があると思われた.またsm1は80~2500μ,sm2は625~4875μ,sm3は730~90000μとかなりのばらつきがあり,内視鏡切除標本を相対的評価するのは,mp層が切除されている症例以外では不可能と思われた.脈管侵襲およびリンパ節転移の有無別ではsm浸潤度に差はなかったが,リンパ節転移は,最小875μで,つぎが1750μであり,リンパ節転移陽性11例中10例は1500μ以上であった.リンパ節転移のrisk factorを脈管侵襲陽性で,1500μ以上とすると約30%にリンパ節転移を認めることになり,sm浸潤度の絶対的評価の有用性が示唆された.
  • 宋 靖鋼
    1999 年 52 巻 1 号 p. 8-17
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    224例の大腸腺腫性病変に対する大腸内視鏡的摘除例において,病変の見逃し率,新生率よりサーベイランスコロノスコピーの適正なあり方をretrospectiveに検討した.1年末満に発見された病変を見逃し,1年以後に発見された病変を新生病変として扱うと,見逃し率が30.6%,新生率は49.6%に認めた.新たな癌の発生率は初発時癌の場合10.0%で,初発時腺腫の3.0%より有意に高かった(p<0.01).Clean colon後新生病変を発見までの期間と新たな癌の発生までの期間は,初発時腺腫群ではそれぞれ38.4カ月と33.2カ月で,初発時癌群の28.8カ月と20.3カ月よりともに有意に長かった(p<0.01,p<0.01).これにより,初回摘除術後,6カ月前後に2回目の大腸内視鏡検査を行って,その以後は初発の組織型が癌である場合では約2年,腺腫である場合では約3年の間隔をあけてサーベイランスコロノスコピーを行うのが適当と考えた。
  • 勝田 和信, 今井 俊一, 亀岡 信悟
    1999 年 52 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    1991年10月から1997年4月までに,当教室で切除した直腸癌264例中,術前に経直腸超音波検査(TRUS)を施行し評価可能であった81例を対象にTRUS画像上,腫瘍先進部を境界明瞭型と境界不明瞭型に分類し,病理組織像と対比した.さらに病理学的因子との関係,および予後について検討した.その結果,1)直腸癌のTRUS像は病理組織像をよく表現していた.2)TRUS像で境界不明瞭型直腸癌は境界明瞭型に比べてリンパ節転移が高率に認められた.3)深達度がSS,A1以深の深達度を示す直腸癌のうち,TRUS像で境界不明瞭型を示すものは,境界明瞭型に比べて予後不良であり(p=0.0059),局所再発が多くみられた.以上より,直腸癌のTRUSにおける腫瘍先進部画像は腫瘍の生物学的悪性度を反映し,臨床的に有用な検査であると思われた.
  • 姫野 秀一, 菊池 隆一, 内田 雄三
    1999 年 52 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    腺腫内に早期印環細胞癌を含む,大腸同時性4多発癌の1例を経験した.症例は60歳,女性.平成8年3月26日,他院にて横行結腸癌に対し横行結腸切除術(高分化型腺癌,stage II)を施行した.その10カ月後,同院にて全大腸精査を行ったところ,上行結腸に直径5cm大の腫瘤型腫瘍を認め,手術目的にて当院に紹介された.平成9年2月17日,右半結腸切除術を施行(stage II).切除標本には,(a)上行結腸中央部に腫瘤型病変,(b)上行結腸下端にIIa病変,および(c)結節集簇様病変,を認めた.各々の病理組織学的診断は,(a)中分化型腺癌,深達度ss,(b)tubular adenomaの一部に印環細胞癌を認める腺腫内癌,深達度m,(c)高分化型腺癌,深達度m,であった.本症例はきわめて稀な印環細胞癌の腺腫内癌を含む多発癌であり,発癌の機序を考えるうえでも非常に興味深いと考えられた.
  • 小島 卓, 宮下 章, 金光 泰石, 鈴村 和義, 窪田 展裕, 徳永 裕, 篠辺 龍一郎, 成瀬 隆吉
    1999 年 52 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の女性で,直腸癌のためDuble stapling techniqueによる低位前方切除術を施行したが,約1カ月後に膣より糞便の漏出を認めた.注腸透視および大腸内視鏡検査にて直腸膣痩を確認した.まず最初に経肛門的に吸収糸にて結節縫合を行いIVH管理にて閉鎖を試みたが成功せず約半年後に経膣的閉鎖術にて治癒せしめることができた.
  • 安永 芳樹, 前田 和弘, 岡田 光男, 山田 豊, 古賀 有希, 是久 哲郎, 池田 靖洋
    1999 年 52 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.肝腫瘍を指摘され入院.大腸X線検査,内視鏡検査にて大腸肝弩曲部に4.5cm大の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め,その口側に陥凹を伴う発赤調の隆起病変を認めた.切除標本にて陥凹を伴う隆起病変は中分化型から低分化型腺癌を呈し,その肛門側は癌の直接浸潤により漿膜下に腫瘤を形成し粘膜下腫瘍様形態を示していた.本症例は癌の壁内転移ではなく,直接浸潤により漿膜下に腫瘤を形成し粘膜下腫瘍様形態を呈した大腸進行癌であった.
  • 吉岡 和彦, 今田 世紀, 中野 雅貴, 岩本 慈能, 吉田 良, 高田 秀穂, 日置 紘士郎
    1999 年 52 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    生理学的および解剖学的検査を8例の男性のrectoceleの患者を対象として行い,15例のコントロール群と比較検討した.8例中4例は前立腺摘除術の既往があった.安静時肛門内圧,直腸内圧,直腸コンプライアンス,直腸肛門反射はコントロール群と比べて有意差は認めなかった.defecographyによる解剖学的評価では,対象群のrectoceleの最大長はコントロール群より有意に長かった.しかし直腸肛門角,pelvic floor descent, perineal descentおよび肛門管長は両群で有意差は認めなかった.これら結果より,男性のrectoceleは,女性の場合と異なり生理学的および解剖学的指標のうちrectoceleそのものの長さ以外は有意の違いは認めないと思われた.
  • 手術決定の指標に関する検討
    大川 清孝, 追矢 秀人, 佐野 弘治, 大庭 宏子, 青木 哲哉, 針原 重義, 藤本 泰久, 奥野 匡宥, 黒木 哲夫
    1999 年 52 巻 1 号 p. 48-56
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎にて緊急手術を行ったのは6例であり手術群とした.手術理由は中毒性巨大結腸(TMC)3例,大量出血2例,内科治療無効1例であった.内科的に治療し得たTMC3例と大量出血にて一時的に手術を考えたが内科的に治癒した大量出血例3例の計6例を非手術群とした.2群を比較した結果,手術群は経過中に輸血を必要とする症例,経過中に肝機能障害が出現する症例が多かった.TMCにおいて小腸の拡張がみられ,多量の小腸ガスがみられる症例は緊急手術の適応と考えられた.下部内視鏡にてS状結腸に広範な粘膜脱落がみられる場合も速やかに手術すべきと考えられた.したがって,緊急手術の決定のためにはS状結腸までの内視鏡を積極的に行うことが有用であると考えられた.重症例の診断目的の内視鏡でもS状結腸までの観察が推奨される.また輸血量,腹部単純X線での小腸ガス像,肝機能値異常が手術を必要とするパラメーターとなりうると考えられた.
  • 1999 年 52 巻 1 号 p. 57-90
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
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