日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
50 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 長谷 和生, 望月 英隆, 吉村 一克, 岩本 一亜, 倉永 憲二, 上野 秀樹, 宇都宮 勝之, 渡邉 千之
    1997 年 50 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1970年から1987年の間に治癒切除され5年以上追跡された直腸癌375例を対象とし,癌先進部における組織型(先進部組織型)の予後規定因子としての意義にっいて検討した.対象症例の癌巣全体における組織型(主組織型)は高分化37%,中分化54%,低分化4%,粘液5%であったが,先進部組織型はそれぞれ21%,59%,12%,9%であった.先進部組織型が低分化症例は高分化・中分化症例に比べ,肉眼型3型,環周度亜全周以上,壁深達度si(ai),リンパ節転移陽性,脈管侵襲中等度以上のものが高率であり(p<0.02~0.0001),また再発率,生存率が不良であった(いずれもp<0.0001).主組織型が同一であっても,先進部組織型が低い分化度を示す症例は分化度が変化しない症例に比べ生存率が不良であった.また多変量解析の結果,先進部組織型は生存期間に関与したが(p<0.04).主組織型は関与しなかった.以上より先進部組織型は直腸癌の予後規定因子として有用な指標と考えられた.
  • 徳嶺 章夫, 高野 正博, 辻 順行, 黒水 丈次, 久保田 至, 河野 洋一, 嘉村 好峰, 豊原 敏光, 島田 章, 城内 英郎, 日高 ...
    1997 年 50 巻 2 号 p. 80-86
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸の側方進展型腫瘍(Lateral spreading tumor:以下LST)は,大腸腫瘍の中で比較的特異な性格を持っため,その治療方針について判断に苦慮することがある、今回われわれは治療方針決定に役立てる目的で,LST21例22病変について検討したので報告する.対象は1992年6月から1995年7月までに経験した男性7例,女性14例の計21例22病変で,年齢,性別,発生部位などの臨床的項目の分析とともに,肉眼形態や大きさと病理組織診断との関連について検討した.形態分類では工藤らの顆粒型,非顆粒型をそれぞれ結節型,非結節型扁平隆起とし,さらに結節型は大田らの分類に従い結節均等型,結節不均等型,粗大結節型に分けた.結論として(1)結節型では諸家の報告と同様に結節が不均等になり,粗大結節が出現するにつれて悪性度が増してゆくと考えられた.(2)非結節型扁平隆起がとくに悪性度の高い病変であるということは考えにくかったが,悪性であれば結節型より早期に深達度を増してゆく可能性があると考えられた.(3)結節型で30mmを超える病変,または非結節型扁平隆起で10mmを超える病変であるときは粗大結節や陥凹の存在に注意し,視野の確保が不充分となる部位や分割切除となる可能性が高い場合は,内視鏡治療よりむしろ腹腔鏡などの方法含めた外科的切除を行ったほうが安全ではないかと考えられた.
  • 待寺 則和, 久保 隆一, 田中 晃, 安富 正幸
    1997 年 50 巻 2 号 p. 87-100
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌神経浸潤の同定,判定に基底膜の構成成分であるlamininを用いた免疫組織学的染色を行った.Laminin染色では神経線維束や神経周膜が明瞭に染色され,従来の染色法では観察が不可能であった微小な神経浸潤が正確に判定できた.神経浸潤陽性率は47.8%であった.神経浸潤は壁深達度,静脈侵襲およびリンパ節転移と強い関係を認めた.直腸癌局所再発は157例中26例(16.6%)に認め,神経浸潤陽性では75例中20例(26.7%)であり,陰性では82例中6例(7.3%)であった.7年生存は神経浸潤陽性39%,陰性77%であり有意差を認あた.さらに神経浸潤は局所再発や予後に重要な影響を与え,とくに神経周囲間隙型が予後を左右する重要な浸潤形式であることが明らかになった.Laminin染色を用いて神経浸潤を詳細に検討することは,術前術後の補助療法や自律神経温存手術の適応を決定するうえで意義があると考えられた.
  • 大平 猛, 小西 文雄, 石橋 敏光, 金澤 暁太郎
    1997 年 50 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    自然腎盂外尿溢流,自然腎盂破裂は稀な疾患である.われわれは,結腸癌再発により異時性に左右の腎盂外尿縊流をきたした症例を経験した.症例は36歳の男性である.1991年8月に横行結腸癌にて横行結腸切除(D3)が施行された.組織所見は粘液癌ss,n1(+),ly2,v2,であった.1991年8月に右背部から右側腹部にかけての疼痛を訴え,諸検査にて右腎盂破裂の診断でカテーテルによる後腹膜ドレナージ術を行った後手術を施行した.手術所見では,ダグラス窩の左右に2個の転移性腫瘍を認め,右の腫瘤は右尿管および直腸壁に浸潤していた,直腸低位前方切除,右尿管部分切除を施行して再発腫瘤を切除した.1994年8月左側腹部痛を訴え,DIP,CT,などの所見より再発腫瘤による左腎盂外尿溢流と診断された.経皮的に左腎瘻を造設したのみで経過を観察した.以上,異時性に左右の腎盂外尿漏出をきたした症例を経験したので文献的考察を加えて報告した.
  • 前田 耕太郎, 丸田 守人, 洪 淳一, 橋本 光正, 細田 洋一郎, 堀部 良宗
    1997 年 50 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    胃前庭部の狭窄による急性胃拡張症状にて発症し,手術により横行結腸潰瘍穿通に起因する小網,大網のひきつれによる胃前庭部狭窄と判明した1症例を経験したので報告する.症例は72歳の女性で,上腹部痛と嘔気を主訴に来院した.上部消化管造影検査で胃前庭部の高度の狭窄を認め,内視鏡では病変の確認はできなかったため胃癌による胃前庭部狭窄の疑いで手術を施行した.開腹所見では肛門側横行結腸に狭窄を認め,同部に小網,大網が索状にひきこまれ,胃前庭部の狭窄を引き起こしていたため横行結腸切除術を行った.切除標本では腸管の横軸方向に辺縁が鋭な下掘れ状の潰瘍を認め,組織学的には潰瘍周囲の肉芽と炎症性細胞浸潤を伴うUL4の潰瘍で悪性所見はなかった.潰瘍底付近には,ヘモシデリンの沈着や小血管内の血栓および血管内膜の肥厚などの所見が認められ,限局性の循環障害による虚血を伴った潰瘍と考えられた.
  • 大槻 正樹, 森岡 大介, 木内 幸之助, 千葉 泰彦, 金村 栄秀, 山内 毅, 山本 雅由, 小尾 芳郎, 高橋 利通, 福島 恒男, ...
    1997 年 50 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に合併する眼病変として,上強膜炎,虹彩毛様体炎,ブドウ膜炎が知られているが,視神経炎の合併はきわあて稀で,本邦で数例の報告を認めるのみである.著者らは潰瘍性大腸炎に両側視神経委縮を合併した1例を経験した.症例は14歳,女性で,平成6年9月膿粘血便で発症した中等症の全結腸型潰瘍性大腸炎患者で,平成6年10月から当科においてサラゾビリン内服,ステロイドの経口および注腸投与などの保存的療法を行っていたが,平成7年4月下旬より,右眼の中心性視力低下を訴え,平成7年6月5日,眼底検査を行ったところ右視神経乳頭萎縮が認められた.また平成7年9月に左眼のかすみを訴え,眼底検査にて左視神経萎縮が認められた.検索の結果,視神経萎縮をきたす他の疾患が認められず,潰瘍性大腸炎の合併症として視神経炎を発症したものと考えた.
  • 竹政 伊知朗, 吉川 宣輝, 柳生 俊夫, 三嶋 秀行, 西庄 勇, 安井 昌義
    1997 年 50 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.23カ月前,S状結腸のIp型腺腫を内視鏡的に切除されている.経過観察中の注腸X線検査にて,横行結腸脾弯曲側にapple core signを指摘され,2型進行癌の診断で左半結腸切除術が施行された.切除標本では,ssまで浸潤した中分化腺癌であった.内視鏡的ポリペクトミーを行った23カ月前の注腸X線と比較したところ,ほぼ同一の部位に19×16mmのIIa+IIc型の表面型の腫瘍陰影が描出されていた.2回の注腸X線像の遡及的検討から,本症例は陥凹を伴う表面型腫瘍が2型進行癌へ進展発育したもので,そのdoublingtimeは7.6カ月と考えられた.大腸表面型腫瘍は,大腸癌への重要な経路で,隆起型腫瘍とは異なった発育進展様式をとるとされるが,本症例のようにその形態推移が遡及的に追跡できた報告はまだ稀である.このような症例を集積することは大腸癌の自然史の解明の一助となると思われる.
  • 大西 秀哉, 大畑 佳裕, 壬生 隆一, 八尾 隆史, 中房 祐司, 青柳 邦彦, 田中 雅夫
    1997 年 50 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸狭窄の原因には腫瘍,隣接臓器・組織による圧排,炎症性腸疾患,性病,放射線・虚血・座薬使用・肛門性交などによる直腸炎,直腸間膜脂肪織炎があるが,非特異的炎症による直腸狭窄症の切除例の報告はきわめて少なく,検索し得た範囲では本邦においては本症例が最初である.症例は61歳の男性で,1年前より次第に増強する排便困難感のため1995年5月に精査を受け,下部直腸の全周性の狭窄を指摘された.7月にS状結腸に人工肛門造設術を受けたが確定診断に至らず,悪性腫瘍も否定できなかったため9月25日に腹会陰式直腸切除術を行った.切除標本の組織学的検査では粘膜下層,固有筋層に厚い線維組織と密な慢性炎症細胞の浸潤を認めた.本症例は術前の画像診断,手術所見,組織検査より除外診断を行い,非特異的炎症による直腸狭窄と診断した.粘膜下層,固有筋層主体の壁肥厚による直腸の全周性の狭窄は非特異的炎症が原因になることもあり得る.
  • 中嶋 裕人, 今村 幹雄, 山内 英生
    1997 年 50 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸では稀な神経鞘腫の1手術例を経験したので報告する.症例は58歳,女性で,平成6年10月初旬より血便を認あ,当院消化器科を受診した.11月下旬に1日5行以上の下血がみられ,精査のため入院した.注腸造影および大腸内視鏡検査で下行結腸に隆起性病変を認め,下行結腸癌の診断で当科へ転科した.術前の血液生化学検査では軽度の貧血が認められたのみで,腫瘍マーカーは正常範囲にあった.手術所見では,腫瘍は下行結腸に位置し,6×4×2cm大で,表面は壊死物質に覆われていた.また周囲のリンパ節も硬く腫大していた.腫瘍部の術中迅速診断では悪性所見は認あなかったが,肉眼所見で悪性が強く疑われたため,左半結腸切除術を施行した.術後の病理組織学的所見では紡錘形細胞が束状に錯綜しており,免疫染色でS-100蛋白およびVimentin陽性で,下行結腸神経鞘腫と判断された.
  • 山村 卓也, 松崎 弘明, 松岡 博光, 田中 一行, 菊池 賢治, 及川 博, 花井 彰, 小笹 貴夫, 瀬尾 圭亮, 赤石 治, 月川 ...
    1997 年 50 巻 2 号 p. 130-135
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1979年から1990年までの根治度Aの大腸進行癌265例(再発87例,5年以上無再発例178例)を対象として,どの臨床病理学的因子が切除後の再発に強く影響しているかを多変量解析により検討した.対象例全体ではリンパ節転移,大きさ,環周度の順であった.再発形式別にみると肝転移再発ではリンパ節転移,深達度,vの順であり,リンパ節転移の程度が増すのにしたがって肝転移再発の頻度が増加した.肺転移再発ではリンパ節転移,発生部位,vの順であり,リンパ節転移の程度が増すのにしたがって肺転移再発の頻度が増加した,局所再発では肉眼型,CEA値,環周度の順であった.リンパ節転移再発ではリンパ節転移,大きさの順であり,リンパ節転移の程度が増すのにしたがってリンパ節転移再発の頻度が増加した.腹膜転移再発に強く影響する因子はなかった.以上の結果をふまえ再発形式別の再発予知因子を念頭においた術後の治療計画をたてる必要があると思われた.
  • 宇都宮 高賢
    1997 年 50 巻 2 号 p. 136-140
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    自然治癒傾向を持つ乳児痔瘻の非観血的治療法として,瘻孔形成時に,30%硝酸銀液をU字肉厚鈍針を用いて,一次孔である肛門陰窩より注入し,その経過を観察した。今回,過去3年間の17症例について検討した.硝酸銀液注入後瘻孔閉鎖までの期間は14±7日,通院回数も平均5.2±3.9回であり,早期に家族に負担をかけることなく治療できた.一度の注入で閉鎖しえた症例は7名,2回目で3名,3回目では7名あり,全例再発することなく完治し得た.今後,乳児痔瘻に対し本治療法の有効性が期待される.
  • 1997 年 50 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 50 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
feedback
Top