日本大腸肛門病学会雑誌
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37 巻, 5 号
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  • 総論-展望
    佐久間 貞行
    1984 年 37 巻 5 号 p. 519-521
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸腫瘍性疾患の画像診断で最初に行われるのは注腸二重造影検査である.しかし内視鏡検査の正診率も高く, 相補的である.
    CTは深達度, 周囲への浸潤, リンパ節転移の検索に用いられる.超音波断層は肺転移の検索に用いる.
    血管造影は侵襲的であるが血行状態を把握するのに有用である.大腸腫瘍性疾患の診断の意志決定過程を図1に示した。
  • 斉藤 典男, 鈴木 秀, 布村 正夫, 新井 竜夫, 奥井 勝二, 古山 信明, 樋口 道雄
    1984 年 37 巻 5 号 p. 522-528
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    術前, 直腸癌の浸潤程度およびリンパ節転移の有無を検索する目的で, 直腸癌59例, 直腸カルチノイド3例の計62例を対象に体腔内走査の経直腸的超音波断層法を施行した.本法は病巣部を直接描出するため高い解像能の画像が得られ, low echo levelの主病巣の描出率は96.5%であった.骨盤内臓器, 直腸固有筋層を指標として3群に分類した壁深達度診断では, 86.3%の正診率を示した.また類円型のlow echo level像で描出される転移リンパ節の診断では, 74.4%の正診率を得た.これらの成績より, 本法は従来の検査法で困難とされていた術前の直腸癌壁深達度診断, リンパ節転移の有無の判定が可能であり, 直腸癌の手術術式の決定において重要な検査法であると考えられた.また直腸癌術後の経過観察においても定期的に本法を施行することにより, 局所ならびに骨盤内再発の早期発見が可能であることも示唆された.
  • 亀岡 信悟, 浜野 恭一, 秋本 伸, 由里 樹生, 五十嵐 達紀, 志村 紀子, 立花 正史, 三神 俊史
    1984 年 37 巻 5 号 p. 529-534
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    (1) スクリーニングによる主病巣の捨いあげ, (2) 肝転移, 腹水, リンパ節転移, 水腎症など副病変の診断, (3) 壁深達度, 他臓器浸潤の診断 (4) 肝転移, 局所再発の術後follow-upなどが大腸癌における超音波検査の主な役割である.体表走査法, 経膀胱的走査法, 経直腸的走査法を用いた自験例を中心に超音波診断の現状と有用性について述べた.体表走査法による腫瘍描出率は77%でスクリーニングとして有用である.他臓器浸潤診断率は67%でとくに膀胱浸潤に対し診断率は高い.現状では1群のリンパ節以外のリンパ節転移の診断は困難である.経直腸的走査法では腸管の壁構造が層状に描出されるので将来壁深達の診断も可能になると思われる.局所再発腫瘍の描出率は75%であるが質的診断は困難である, しかし経時的変化を容易に追跡でき, またエコーガイド下細胞診なども応用できるため局所再発に対する超音波検査の診断的意義は大きい.
  • 須藤 俊之, 近藤 博満, 対馬 健一, 相沢 中, 吉田 豊
    1984 年 37 巻 5 号 p. 535-539
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌例に対し肛門より逆行性に温水を注腸しながら超音波検査を行い, 腫瘍像の描出, 進行程度の診断, 肝転移, リンパ節転移の診断を行い, その有用性を検討した.
    対象は当科にて諸検査を行い, 手術または内視鏡的ポリペクトミーにて摘除し診断が確定した大腸癌35例である.方法は前処置として検査前日にBrown変法による検査食, 下剤を服用させ, 検査前に鎮痙剤の筋注または静注を行った.その後, 微温湯300~1000mlを注腸し, 検索部位を温湯で充満させた状態で腹壁より超音波検査を施行した.使用装置はリニア電子走査型超音波診断装置 (東芝SAL-5OA, SAL-30A, 探触子5MHz, 3.5MHz) である.
    結果 : 超音波検査により大腸癌35例中34例 (97%) に腫瘍像が描出できた.超音波検査により描出された大腸癌は全例が低エコー像を示した.描出不能例は直腸癌の1例であった.描出できた34例の大腸癌の進行程度についてDukes分類と超音波検査の一致率をみるとDukes A 100% (7例/7例), B67% (6例/9例), C50% (9例/18例) で, 全体の正診率は65%であった.超音波検査による肝転移の診断率は100% (6例/6例) と非常に高かった.また, リンパ節転移の診断率は29% (5例/7例) と低かったが, 超音波検査でリンパ節の腫大が描出できた例はいずれも転移陽性であった.
    以上の結果より, 温水注腸法を用いた超音波検査は大腸癌の検索には非常に有用である.特に大腸癌の進行程度の診断, 肝転移, リンパ節転移の診断がある程度可能であり, 術前検査として大きな意義をもつと考える.
  • 辻仲 康伸, 土屋 周二, 大見 良裕, 大木 繁男, 城 俊明, 古嶋 薫, 池 秀之
    1984 年 37 巻 5 号 p. 540-545
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸癌の術式選択にあたってはCTなどを用いて癌の進行度を客観的に把握する必要がある.CTから得られる直腸癌の情報は壁深達度, リンパ節転移, 浸潤度の3つである.CTによる壁深達度診断はRsを除く直腸癌に有用であり, 直腸傍リンパ節転移に対するCTの正診率は, 67.1%であった。CT画像上腫瘤陰影辺縁のケバダチ, 放射状陰影は腫瘍の浸潤度を反映し, INF分類に対応させることができた.CTは, 直腸癌の術式選択に客観的判断の材料を与えることができ有用である.
  • 久 直史, 甲田 英一, 小平 進, 寺本 龍生, 村山 憲永, 吉田 博之
    1984 年 37 巻 5 号 p. 546-550
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    130例の大腸癌症例につき術前検査としてCTを施行し, 肝転移, 漿膜浸潤, リンパ節転移, 腹膜播種性転移について手術診断との対比を行った.CTは横断断層面が得られるという利点から奨膜浸潤に関し手術所見と高い相関を示し, 特にS3症例については他の画像診断に比べて明らかに高い診断能を有するものと考えられた.リンパ節転移に関してもCTは手術所見とかなり高い一致を示すが, 必ずしも組織診断と一致しないことが問題となった.腹膜播種性転移に対してはsensitivityの低さが問題となる.また直腸癌における縦方向の浸潤範囲の評価には直接冠状断スキャンが有用があった.CTは肝転移のみならず局所病変の評価に関しても高い診断能を有し, 大腸癌の術前検査として重要な位置を占め得るものと考えられた.
  • 原 英, 木戸 長一郎, 遠藤 登喜子
    1984 年 37 巻 5 号 p. 551-556
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸癌によるabdomino-perineal (AP) resection後の会陰部再発50例のCT像を検討した.CT診断は腫瘤がリンパ節転移による腫大か, 切断部での局所再発かを矢状面・横断面において画像上分け, 腫瘤の形態, 内部構造, 筋肉・臓器・骨などの周囲への侵襲, 続発性病変について検索し, 画像上の癌占有域と手術・剖検による癌占有域の比較検討を試みた.CTで確認し得た再発腫瘤50例中44例は充実性であり, 側方再発例に嚢胞像・内部石灰化を示した.周囲組織への侵襲においては, 局所再発と側方再発各々に特徴を示したが, 側方再発13例中4例に尿管閉塞による水腎症の発生をみとめた。また手術・剖検による癌占有域との比較検討により, 最大径2cm以下の再発癌においても, 計画的な骨盤部CT検査により検出可能であり, CTガイド針生検も含め早期発見・早期診断にCTは有用である.
  • 勝又 貴夫, 小平 進, 寺本 龍生, 阿部 令彦, 久保 敦司
    1984 年 37 巻 5 号 p. 557-561
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸癌リンパ節転移の術前診療法において, 従来施行されている方法 (Kinmonth法) では主たる転移経路である上方および側方経路の転移状況を明確にすることは出来ない.私達は直腸癌23例, S状結腸癌9例に対して, 経肛門的RI lymphographyを施行し, 直腸領域のリンパ流の画像上の検索を行い, 病理学的診断と対比検討した.
    直腸リンパ流がほぼ正常と考えられる no 直腸癌症例およびS状結腸癌症例では, 上方経路, 側方経路のscintigram上の描出率は各々100%, 88%であった.上方経路, 側方経路リンパ節に転移が著明で, リンパ流のブロックをおこしていると考えられる症例では, negative patternとしてscintigram上で診断可能であった.また上方経路のscintigram 上の描出を認めない症例は, 同経路のリンパ節の転移度が高い傾向を認めた.
  • 特に壁深達度について
    森 克彦
    1984 年 37 巻 5 号 p. 562-572
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸癌の血管造影による診断能向上の目的で摘出標本動脈造影を18例に行い, 深達度を中心に, 占居部位, 大きさ, 形態, リンパ節転移について検索し, その結果を基に術前下腸間膜動脈造影110例を再読影し検討した.
    深達度診断に関しては摘出標本動脈造影の上直腸動脈を壁分布状態より3群に分け深達度を調べると, si・ai, s・a2では1次分枝に, ss・a1では2次分枝に, pm以下では3次分枝にそれぞれ始めて所見が出現し, 術前下腸間膜動脈造影においてもほぼ同様の結果が得られた.従って術前動脈造影で, 始めて出現する動脈分枝変化を読影することにより深達度の判定をより正確に行うことができた.
    また術前下腸間膜動脈造影で腫瘍描出能の低い低位直腸癌に内腸骨動脈造影を行うと, 血管変化はai 100%, a2 36%, a1 17%にみられ, 下腸間膜動脈造影と併せて読影すると壁外進展の判定は容易となった.
  • 小林 俊介
    1984 年 37 巻 5 号 p. 573-583
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎症例を対象として, PHA, Con Aによる末梢血リンパ球芽球化率, PHA皮内反応, リンパ球subset, モノクローナル抗体を用いた T cell subset, 末梢血ロゼット形成阻止因子などの免疫機能検査を行い, 各病期, 治療別, 罹患範囲別における細胞性免疫能について検討した.その結果, 1) PHA皮内反応, PHA芽球化率は, ともに低下したが, 治療別, 罹患範囲別による相違は認められなかった.2) 免疫複合体と関連の深い血清中ロゼット形成阻止因子が病期にかかわらず高率に認められた.3) 潰瘍性大腸炎で増加するTγは, cytotoxic T cellの1つであり, PHA, Con Aに対する反応の相違から, suppressor T cellと考えられている大腸癌のTγとは異っていることが示唆された.4) モノクローナル抗体を用いた T cell subsetのうち, 活動期では緩解期に比べ, OKT8+T cellは有意に減少し, OKT4/OKT8比は有意に上昇していた.
  • 五十嵐 正広, 中 英男, 奥平 雅彦, 高橋 俊毅, 勝又 伴栄, 岡部 治弥
    1984 年 37 巻 5 号 p. 584-589
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸腺腫症4例 (腺腫928病変, 腺腫内癌27病変) のmicroangiographyによる微小血管構築の検討により, 本症の特徴を検討し, 以下の結果を得た.
    1) 大腸腺腫症の腺腫は, 柵状型, 扇状型, 樹枝状型の3型に分類された.
    2) 本症では, 樹枝状型が27%にみられ, その頻度は予後不良例に高い.
    3) 本症では, 5mm以下の小さな腺腫においても16.3%に樹枝状型を認めた.
    4) 本症にみられた腺腫内癌27病変中20病変 (74%) の非癌部に樹枝状型を認め, 樹枝状型を基本型とした癌の発生が強く示唆された.
    5) 本症では, 無茎性病変においても11.3%に樹枝状型をみとめ, 早期からmalignant potentialityの高いことがうらずけられた.
  • 阿川 千一郎, 沢田 俊夫, 武藤 徹一郎, 森岡 恭彦
    1984 年 37 巻 5 号 p. 590-596
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    近年, 各種大腸疾患に伴う大腸粘膜の杯細膜粘液組成の変化が指摘されている.しかしながら正常大腸粘膜の粘液組成に関する検討は必ずしも十分ではない.著者らは大腸内視鏡検査時に盲腸, 上行結腸, 横行結腸, 下行結腸, S状結腸, 直腸より正常大腸粘膜を採取し, その杯細胞粘液組成を粘液組織化学的に詳細に検討し以下の結果を得た.
    正常大腸杯細胞粘液は酸性粘液が主体であり, 酸性粘液のうちsulphomucinとsialomucinを含有するが主にsulphomucinを含有していた.部位別には盲腸, 上行結腸では他の部位に比してsialomucinを含有する比率が若干高い傾向にあった.さらにsialomucinではシアル酸の側鎖に, 隣接する水酸基を持たないO-Acylated sialomucinが多く認められたが, 右側結腸では, 隣接する水酸基を有するsialomucinを含有する例の割合が左側結腸に比して多く, 左右大腸で粘液組成に差異が認められた.
  • 池田 孝明, 池 秀之, 堀 雅晴, 高橋 孝
    1984 年 37 巻 5 号 p. 597-602
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    1950年より79年までの30年間に癌研外科にて手術した単発大腸癌1389例を対象とし, 大腸癌の臨床的病理学的変化を検討した.大腸癌の発生頻度は近年増加しており, 特にS状結腸癌の増加が著しく, 今回の手術症例の検討においても同様の結果であった.S状結腸の部位にポリープおよび癌の発生率が高くなり, 直腸癌の頻度が相対的に低下してきたものと考えられる.組織学的には結腸癌, 直腸癌ともに粘液癌の頻度が低下傾向にあり, 粘液癌には高分化型腺癌と比較し, ポリープの合併率が低い傾向にある.近年大腸癌を増加させている要因としては食生活の変化が大きな比重を占めると思われるが, これらの要因は高分化型腺癌の発生をもたらしやすいと考えられる.上行結腸癌の相対的頻度は減少しているが, ポリープの合併率が上昇していること, アメリカ, カナダでの上行結腸癌の頻度の増加を考えあわせると日本においても頻度が上昇してくる可能性があると思われる.
  • 北野 寛, 野垣 正宏, 野垣 正樹, 尾関 武郎, 升森 茂樹, 木村 弘, 藤野 和己, 野垣 茂吉
    1984 年 37 巻 5 号 p. 603-607
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    当院で大腸ファイバースコープを導入した昭和53年以降5年間における大腸癌, 特に早期癌の拾い上げ成績を検討し, 大腸癌の精密スクリーニング法について考察した.但し家族性ポリポージスの癌化例および進行癌の切除範囲に含まれた早期癌は除外した.
    この5年間に拾い上げられた大腸癌は404個 (うち早期癌121個30%) であった.年度毎の新患総数に対する大腸癌の発見率は0.6%から1.1%に, 全大腸癌に占める早期癌の割合は12%から37%に向上を見た。この間, colonoscopyの適応が, 注腸透視で異常のあった部位に対する検査から大腸癌のハイ・リクス者に対する初回精密検査としてのtotal colonoscopy (注腸透視同日併用) へ拡大された結果, 注腸透視およびcolonoscopyの総検査数に対する早期癌の発見率が0.2%から0.9%に上昇, 検査の効率化がみられた.
    以上から, 大腸癌の精密スクリーニング法としては “注腸X線検査同日併用total colonoscopy” が最も効率的と考えられた.
  • 唐木 芳昭, 宗像 周二, 藤田 敏雄, 沢田石 勝, 真保 俊, 田沢 賢次, 藤巻 雅夫
    1984 年 37 巻 5 号 p. 608-612
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    13歳女子と同じく13歳男子の虫垂カルチノイド2例を経験した.前者は急性虫垂炎として手術され, 切除標本虫垂内腔尖端に9×9mmの隆起性病変を認めた.割面は黄白色髄様であった.組織学的には, 充実性腫瘍胞巣を示すカルチノイドで, 漿膜下まで浸潤していた.Grimelius染色.Fontana-Masson染色共に陽性で, 電顕的には80~400nmの多形性内分泌顆粒が証明された.術後5年7カ月再発なく健在である.後者は同じく虫垂炎として手術されたが, 切除標本の肉眼所見では, 腫瘤は全く認め得なかった.組織学的には, 固有筋層に浸潤するスキルス様の微小病変が虫垂尖端にあり, Grimelius染色は陽性, Fontana-Masson染色は陰性であった.電顕的に134-174nm大の高電子密度円形内分泌顆粒が認められ, カルチノイドと診断された.術後28ヵ月再発なく健在である.
  • 小田桐 弘毅, 唐牛 忍, 藤井 昌彦, 藤田 正弘, 今 充, 小野 慶一, 鳴海 裕行
    1984 年 37 巻 5 号 p. 613-617
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    進行直腸癌を合併した48歳男性の巨大直腸脱を経験したので報告した.
    直腸腫瘍合併直腸脱の報告例は本邦過去30年間で2例, 欧米過去10年間で1例にすぎない.自験例を含めた4例で特徴的なことは, 単純な直腸脱に比して脱還納困難, 便通異常, 血便の頻度が高いことであった.したがって直腸脱患者でこれらの症状を伴う例では直腸腫瘍合併も考慮し, すみやかに検索を進める必要があることを痛感した.
    自験例に対し術前に癌合併を確診し, さらに直腸脱運動の映像工学的観察, 直腸肛門内圧・反射について検討したが直腸癌合併のための特有な所見は認められなかった.術式は根治を目的としてMiles手術を施行したが, 症例によってはanterior resectionの適応となる場合もありえよう.
  • 安尾 信, 生沢 啓芳, 山田 恭司, 栗原 正典, 亀谷 忍, 飯島 登, 高桑 俊文
    1984 年 37 巻 5 号 p. 618-622
    発行日: 1984年
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    骨化を伴った上行結腸平滑筋腫の1例を報告した.
    症例は68歳男性.主訴は下血.注腸レ線検査・大腸内視鏡検査にて上行結腸に潰瘍を伴う隆起性病変を認めた.腫瘍は硬く, 悪性腫瘍と鑑別しえず, 癌に準じて切除した.切除標本では径1.8×1.5cmの粘膜下腫瘍で, その頂部に潰瘍形成を認めた.組織学的には腫瘍内骨化を伴う平滑筋腫であった.
    平滑筋腫が上行結腸に発生することはまれで, 本例は本邦で3例目である.本症は無症状のことが多く, 時に疼痛・出血にて発見される.しかし生検は勿論切除標本の組織診にても肉眼との鑑別の不可能なことがあり, 悪性腫瘍に準じた治療の必要な症例が存在する.本症の骨化例は報告がなく, 発生機序については, 腫瘍発生時既に母地がosteogenic potentialityを有するという説をはじめとして諸説あるが, 詳細は不明である.
  • 武安 宣明, 西川 邦寿, 五十嵐 良典, 新井 功, 関 清, 沢井 寛人, 酒井 義浩
    1984 年 37 巻 5 号 p. 623-627
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    Schonlein・Henoch紫斑病に下部消化管内視鏡検査を施行し, 興味ある所見を得たので若干の文献的考察を加えて報告した.
    症例は51歳, 男性.腹痛と血尿と主訴として入院.入院直後より四肢に紫斑が出現し, 下血を来たした.症状, 検査等よりSchonlein-Henoch紫斑病と診断, steroidにて治療を開始したが, steroidの漸減とともに症状の再燃, 増悪を来たした.上記症例に対し, 治療開始時, 症状再燃増悪時, 症状改善後の各々に下部消化管内視鏡検査を施行し, 下部消化管粘膜面の変化と症状の病勢の変化とを観察した.治療開始時には下部の消化管粘膜には小出血点が散在するのみであったが, steroid減量中症状増悪を来たした時点では, 下部消化管全体にびまん性の粘膜下出血斑と浮腫像が認められ, 症状改善後には同部位の粘膜面の変化は消失していた.
    以上のことよりSchonlen・Henoch紫斑病の下部消化管粘膜面の変化と症状の病勢の程度が, ほぼ一致することが観察された.
  • 神保 勝一, 服部 了司, 大原 毅
    1984 年 37 巻 5 号 p. 628-631
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    近年わが国におけるクローン病の報告は急増しているが, クローン病による消化管穿孔例は, 比較的少い.欧米での報告によれば, 穿孔頻度は, 1~3%であり, わが国では, 1.3~4.0%ではないかと述べられている.
    われわれは, 全く無症状で経過中, ある日突然穿孔を起こしたileocolic型クローン病を経験したので報告し, 併せて一つの提言をしたい.
    クローン病は, 永い経過中或いは, ステロイドの使用中に穿孔した例は報告されているが, 全く無症状で経過し, 突然穿孔を来たすこともありうることを経験した.従って, 腸管の穿孔症状と診断した時には, クローン病による穿孔も鑑別すべき疾患の中に加えるべきものと考える.
  • 1984 年 37 巻 5 号 p. e1
    発行日: 1984年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
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