大腸癌は腺腫から発生するとされるが, 結腸と直腸ではその比率が異なる可能性がある. 今回両者における腺腫と癌の発生頻度を比較して, 腫瘍発生の場としての相違を検討した. 腺腫964病変, m癌219病変, sm癌37病変, mp以深癌178病変を, 肛門から15cmを境界として結腸腫瘍 (C群) と直腸腫瘍 (R群) に分類した. 合計1,398大腸病変のうちC群は77.5%, R群は22.5%を占めた. 腺腫はC群82.7%, R群17.3%, m癌はC群74.4%, R群25.6%, sm癌はC群56.8%, R群43.2%, mp以深癌はC群57.3%, R群42.7%の比率だった. R群ではm癌, sm癌, mp以深癌の比率は腺腫に比較し, それぞれ有意に高かった. さらにsm癌, mp以深癌の比率はm癌に比較し, それぞれ有意に高かった. しかしsm癌とmp以深癌の比率には有意差がなかった. 一方C群の中で腺腫は73.6%, m癌は15.1%, sm癌とmp以深癌は11.3%を占め, R群の中で腺腫は53.0%, m癌は17.8%, sm癌とmp以深癌は29.2%を占め, 結腸に比べて直腸では腺腫の比率は低いものの浸潤癌の比率は高かった. 以上より両者の浸潤癌の発生過程には相違があると推測される.
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