本学会は,昭和14年(1939年)暮から,昭和15年春にかけて,同業有志が集まり合議し,3月21日日本直腸肛門病学会を設立し,第1回学会総会が開かれた.初代会長,山本八治先生は,学会誌発刊の辞において,直腸肛門領域の研究がさまざまな雑誌に分散発表されているので,これを本誌に集中させて専門家の研究心を刺激し,役立てたいという主旨を述べている.以来戦局不利,敗戦,戦後の混乱により昭和19年から24年まで活動ができなかった.昭和25年秋,学会総会が再開され,比較的小規模の肛門中心の特徴ある学会であった.大腸肛門病の増加と診療研究が盛んになり,国際結腸,直腸学会の影響もあり,昭和40年には日本大腸肛門病学会と改名された.その後,発展,進歩し立派に成長している本学会の現状は,学会会則の整備により,評議員制,理事制,理事選挙制,評議員定年制などと急速に推移している.
本学会は,臓器別の呼称を持つ歴史ある学会で,優れた職人気質を持つと同時に種々の診断,治療に精通する診療標榜科に関らない専門学会である必要がある,学術集会,教育セミナー,学会誌などを通じて,先進的高度な内容のほか標準的な指針をも示す指導的学会であると考える.その中で,将来の発展に希望する事項を思い付くまま述べる,
1)学会員を呼び込み増員すること、大腸肛門疾患の診断部門における内視鏡領域,CT,MRI,PETを含む放射線領域,分子生物学的,生検,摘出臓器など基礎・病理領域のほか,治療部門における炎症性腸疾患,がん化学療法,内視鏡外科治療,ストーマ治療管理,内視鏡治療外科的治療特化専門肛門治療などに関わる専門家を参加させる.2)専門医制度の充実と権威ある認定とすること.広告規制緩和による単なる専門医ではなく,本学会が権威を持って認定できる修練塾の制度を確立する(肛門領域だけでなく).3)学会誌は論文掲載のほか,各種領域の総説,大腸肛門病に関するすべての情報源(国際情報,全国学会・研究会など各地の情報,(スポンサーのある研究会も含めて))の掲載,国際性を上げるために,論文には英文抄録の復活,学会英文誌の発行,インパクトファクターの獲得.4)海外の専門学会との協力体制を作り,交流,交換し合うこと.5)大腸肛門疾患を専門職とする若手医師を,学会が助成する海外留学制度を確立する,6)当面,法人格を取得し,現状の専門医認定を申請すること.
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