日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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35 巻, 11 号
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  • 温存した迷走神経の機能と愁訴の関連について
    高山 祐一, 大山 繁和, 太田 惠一朗, 山口 俊晴, 高橋 孝, 中島 聰總, 武藤 徹一郎
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1639-1643
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    アンケートを用いて胃切除術を受けた胃癌患者の愁訴を解析するとともに, 患者からみた術後愁訴の順位づけを行った. また, グルカゴン負荷試験を用いて温存された神経の機能評価を行い, 愁訴との関連を検討した. 対象はD2リンパ節郭清の幽門側胃切除術が施行された早期胃癌241例である. 神経非温存群の愁訴は, 放屁が最も多く (20.7%), ついで下痢であった (16.3%), 一方, 温存群では, 放屁 (22.0%), 下痢 (4.0%) であった. 順位づけした患者さんの最も気になる愁訴は, 非温存群で下痢, 温存群で放屁であった. グルカゴン負荷試験にて迷走神経後幹の機能評価を行うと, 注射後6分値での術前後のc-peptideの差では温存群1.12±0.265, 非温存群2.87±0.39と非温存群において有意に高値を示し, インスリン分泌調節機能が保たれていた. したがって, 神経の温存により下痢の発生が軽減されているものと推察された. 迷走神経の温存術式は標準的に行うべきとはされていないが, 患者の術後愁訴は軽減されることが明らかであり, 根治性が損なわれないことが明らかとなれば早期胃癌に対しての標準的手術手技となるものと考えられた.
  • 森島 宏隆, 仲原 正明, 今分 茂, 黒住 和史, 城戸 哲夫, 中尾 量保, 辻本 正彦
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1644-1648
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 膵癌術後の胆汁中CEA値が肝転移再発の予測マーカーとなりうるか否かを検討した.方法: 膵癌治癒切除21例を対象とした. 肝転移群は13例 (6か月以内の早期肝転移群6例, 6か月以降の晩期肝転移群7例), 非肝転移群は8例であった. 術前, 術後の胆汁採取は胆管ドレナージチューブより行い, 胆汁中CEA値を測定した.結果: 病理組織学的諸因子と肝転移再発に相関を認めなかった. 術前胆汁中CEA値は, 肝転移群 (41±89ng/ml), 非肝転移群 (12±14ng/ml) で有意差を認めなかった. 術後胆汁中CEA値は, 肝転移群は295±432ng/mlで, 非肝転移群の67±62ng/mlより高値の傾向を示した. 早期肝転移群7例の術後胆汁中のCEA値は, 肝転移群は476±572ng/mlで, 非肝転移群に比べて有意に高値であった. また, 第14病日と, 第28病日の2回にわたって胆汁中CEA値を測定した13例の胆汁中CEA値の推移を検討すると, 早期肝転移群は, 術後経時的に胆汁中CEA値が増加した.結論: 胆汁中CEA値は膵癌術後早期の肝転移再発の予測マーカーとなりうることが示唆された.
  • 堀場 隆雄, 山内 晶司, 佐藤 榮作, 中塩 達明, 呉 成浩
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1649-1653
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌を合併した腸回転異常症の1例を経験した. 症例は73歳の男性で, 全身倦怠感を主訴に来院された. 胃内視鏡検査, 上部消化管造影, 注腸検査, 腹部CT検査により, 腸回転異常症に伴った胃癌と術前診断した. 開腹時, 小腸は右腹部に, 結腸は左腹部に偏在し, nonrotationtypeの腸回転異常症と診断された. 胃癌に対し, D2郭清を伴う幽門側胃切除術とBillroth I法再建を行った. 腸回転異常症に対して処置は加えなかった. 本邦で1993年から1999年までに報告された学童期以降に腸回転異常症と診断された72症例を検討した. その結果, 青少年期では14例中13例 (93%) が腸回転異常症を含む奇形による腹部症状から発症し, 腸回転異常症と診断されていた. 中高年期では36例中24例 (60%) が虫垂炎や腫瘍が契機となり診断されていた. また, 胃切除術を行った腸回転異常症8例の検討では, 2例が術後腸軸捻転を来たしていた.
  • 松岡 欣也, 平井 隆二, 太田 徹哉, 村上 正和, 土井原 博義, 清水 信義
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1654-1658
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性. B型肝炎の経過観察中に肝腫瘤を指摘され精査加療目的に紹介となった. 肝S6に径3cm大の腫瘤が認められ画像診断では肝細胞癌が疑われたが典型例ではなく超音波ガイド下針生検を施行した. 診断は中分化型肝細胞癌であったため肝右葉切除術を施行した. 切除標本は4.0×3.3×3.2cmで比較的硬く周囲肝組織とは境界明瞭で被膜形成はなかった. 病理検査で中~低分化肝細胞癌と低分化胆管細胞癌の混在する混合型肝癌と診断された. 術後38日目に退院したが術後50日目頃から腹水が貯留し術後60日目に再入院となった. 腹部CT検査では多量の腹水と腹膜, 腸間膜に無数の播種結節を認め, 腹水細胞診ではClass Vであった. 入院後, 急速に進行し術後77日目に癌性腹膜炎のため死亡した. 剖検にて腹膜播種は肉腫様細胞で占められており, これらの細胞が術後, 急速にmonoclonalに増殖したため急速な転帰をとったと考えられた.
  • 西村 一宣, 松尾 英生, 玉榮 剛, 福田 秀一, 木下 壽文, 青柳 成明
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1659-1663
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    副交通胆管枝の2例を経験したので報告する. 症例1は52歳の男性で右肝内結石と胆嚢・総胆管結石にて当院入院となった. 胆管像は総胆管から後下亜区域枝が早期分岐し, 肝側でさらに前区域枝と交通していた. 胆嚢管は後下亜区域枝根部付近に合流していた. 後下亜区域枝と前区域枝との交通部の生検では, 付属腺を伴う過形成の粘膜上皮が存在した. 症例2は72歳の男性で胆嚢結石, 総胆管結石の診断にて経皮経肝胆道ドレナージ術を施行した. 胆道造影では総胆管から分岐する副肝管を認め, これに胆嚢管が合流していた. 副肝管は肝門でさらに右肝管と交通していた. 副交通胆管枝は, 他の胆道形態異常としばしば混同されており, 先天異常である本症の問題点および形態分類について考察した.
  • 高見澤 潤一, 藤岡 進, 加藤 健司, 待木 雄一, 朽名 靖, 竹之内 靖, 日比野 茂, 高良 大介, 吉田 カツ江
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1664-1668
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の女性. 夫に蹴られ上腹部を打撲. 受傷1週間後より腹痛, 背部痛が出現. 2週間後より黄疸を自覚し入院となった. 腹部CTでは, 膵頭部の軽度の腫大と肝内胆管, 総胆管, 胆嚢の拡張を認めた. ERCPでは, 膵内胆管の狭窄を認めるも主膵管に閉塞像を認めず, UGIでは十二指腸に狭窄を認めなかった. PTBDにて減黄を行い, 胆汁細胞診と狭窄部の擦過細胞診を行ったところ, いずれも悪性所見陰性で, 外傷性の総胆管狭窄を疑った. 総胆管は完全狭窄で内瘻化ができず, いったん外瘻のまま退院し, 後日内瘻化を行った. 発症より4か月後の胆管造影で胆管狭窄は改善し, 胆管tubeを抜去した. 現在, 血液生化学検査は正常で, 腹部CTでも膵頭部の腫大は軽減し再狭窄を疑わせる所見は認めていない. 外傷性総胆管狭窄は比較的まれであるが, 良性の可逆的病変であり, PTBDによる内瘻化は有用であると考えられた.
  • 長倉 成憲, 白井 良夫, 若井 俊文, 横山 直行, 畠山 勝義
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1669-1672
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵臓癌に対する膵頭十二指腸切除術 (以下, PD) 後に, 胆管虚血による良性胆道狭窄が生じた1症例を経験した. PD後の胆道再建を考える際に示唆に富む症例と考えられたので報告する. 症例は47歳の男性, 膵頭部の粘液性嚢胞腺癌に対し, PDが施行された. 胆管切離部位は中部胆管の下半部であった. 術後7か月目に発黄し, 精査により肝管空腸吻合部直上の胆道狭窄が認められた. 狭窄が高度であるため保存的治療を断念し, PDより12か月後に狭窄部切除および胆道再建術を施行した. 狭窄部位には長さ約1cmの索状物が存在し, 組織学的には慢性炎症性細胞浸潤を伴う瘢痕組織であった. これは, 虚血性胆道狭窄の組織像と合致しており, 自験例の胆道狭窄の原因は虚血と考えられた. 自験例の経験および文献的考察から, PDの際には, 上部胆管での胆管切離および肝側断端からの動脈性出血の確認を行うことにより, 術後の虚血性胆道狭窄の発生を防止できるものと考えられる.
  • 石田 祐一, 中里 雄一, 黒田 徹, 小林 進, 山崎 洋次, 青木 照明
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1673-1677
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性. 上腹部痛を主訴に近医を受診し, 腹部超音波検査, 腹部CTにより膵臓に腫瘍性病変を指摘され当院を紹介された. 初診時, CEA, CA19-9などの腫瘍マーカーは異常を認めなかったが, 好酸球増多を伴った白血球の増加とCRPも1.9mg/dlに上昇していた. 腹部超音波検査とEUSでは嚢胞成分を伴った膵頭部腫瘍を認め, 腹部CTと腹部血管撮影では上腸間膜静脈への腫瘍浸潤が疑われた. ERCPでは膵頭部領域において主膵管のびまん性狭窄を認めSantorini管も同様の狭窄像を呈していた. 膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理組織検査により, 好酸球と好中球の浸潤の目立つ退形成性膵管癌 (巨細胞癌) と診断された. 術前認めた好酸球増多を伴った白血球の増加は術直後より正常化したが, 腫瘍の再発に伴い再増加した. 術後経過は良好であったが, 転帰はきわめて不良であった.
  • 藤川 奈実香, 井上 克彦, 金光 敬一郎, 辻 龍也, 平岡 武久, 川筋 道雄
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1678-1682
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の男性. 突然の上腹部痛を主訴に某院に入院. 急性膵炎の診断にて治療を受けていたが症状軽快せず, 血管造影にて膵動静脈奇形と診断された. 一時症状軽快するが, 再び上腹部痛出現し, 加療目的で当科に入院となった. 腹部造影CTで膵体尾部がenhanceされ, MRI T1強調画像で同部に多数のsignal void signを認め, 速い血流の血管の存在が示唆された. カラードップラーエコーでは脾静脈に流入する動脈を認め, 血管造影では動脈相で膵体尾部に網目状異常動脈が描出され, 同時に門脈と脾静脈も描出された. 膵体尾部動静脈奇形と診断し, 膵体尾部, 脾合併切除を行った. 術中血行遮断に伴い門脈圧と門脈血中酸素分圧の低下を認め治療効果が確認できた.
  • 石原 寛治, 鈴木 範男, 伊東 了, 永来 正隆, 西川 正博, 大村 泰, 上田 正直, 永野 晃史, 藤井 弘一
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1683-1687
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    下血などの消化器症状がない場合, 回腸平滑筋肉腫の術前確定診断は, その解剖学的位置・頻度から困難であることが多い. 症例は53歳の女性で, 他院にて多発性肝膿瘍の治療中骨盤腔内腫瘤を指摘され女性付属器腫瘍の疑いで当院へ紹介された. 骨盤部MRI検査で膀胱背側子宮直腸前面に6cm大の不整な腫瘤を認め, 充実性卵巣腫瘍の診断のもと婦人科において開腹手術施行された. 術中回腸原発腫瘍と判明, 外科転科後回腸切除術施行し病理診断で平滑筋肉腫の診断を得た.
    我々の検索しえた限り1985年以降, 肝膿瘍を合併した小腸腫瘍の本邦報告例は自験例を含めて12例であった. 自験例の肝膿瘍起炎菌は小腸常在菌のStreptococcus intermediusであり, 小腸常在菌を起炎菌とする肝膿瘍に骨盤腔内腫瘤の併発をみた場合, 小腸腫瘍の存在を念頭に置く必要があると考えられた.
  • 日月 亜紀子, 曽我部 豊志, 西原 承浩, 奥野 匡宥, 上田 モオセ, 小林 正夫, 高島 澄夫, 辻本 正彦, 湯川 永洋
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1688-1692
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は, 27歳の男性. 腸閉塞症状が出現し, 近医に入院. 骨盤内腫瘤を指摘されたが, 症状が軽快したため退院, 経過観察を行っていた. 腹部全体の痛みが出現するようになり, 当院受診となった. CTでは, 骨盤内に腫瘤が認められた. MRIでは, 骨盤内に膀胱を圧排する. 内部不均一で蜂の巣状を呈する約10cm大の腫瘤が認められた. 小腸X線造影検査では, 回腸に腫瘤による圧排所見が認められたが, 粘膜面に異常は認められなかった. 以上より, 小腸腸間膜腫瘍の診断で, 手術を施行した. 術中所見では, 直径約10cm大の表面凸凹, 弾性軟で, 易出血性の腫瘤が, 回腸末端から約180cmの腸間膜に認められ, 骨盤腔内にはまりこんでいた. 腫瘤に近接する小腸の合併切除にて腫瘤を摘出した. 病理組織学的には, 海綿状血管腫と診断された.
    腸間膜原発血管腫の本邦報告例は, 自験例を含め21例で, 非常にまれな腫瘍である.
  • 森野 茂行, 重政 有, 羽田野 和彦, 碇 秀樹, 清水 輝久, 菅村 洋治, 國崎 忠臣, 米満 伸久
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1693-1697
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は23歳の女性. 平成13年7月4日より腹痛嘔吐が出現し7月7日当院を受診した. 触診上, 左下腹部に圧痛を伴った鶏卵大腫瘤を触知した. 腹部エコー, CT検査において左下腹部にターゲットサインを認め, また上部小腸の拡張を認めた. 小腸重積症の診断で高圧注腸を試みたが, 整復が困難であったため緊急手術を行った. 回腸末端部より90cm口側の回腸が約15cmにわたって重積を起こしており, 約40cmの回腸を切除した. 重積回腸先進部の粘膜面に径約3cmの腫瘍を認めた. 病理組織学的には, 粘膜下組織と筋層内に平滑筋組織と混在する導管構造を認め, 迷入膵Heinrich分類III型と診断した. 迷入膵は胃, 十二指腸, 空腸などの膵の近傍に好発する疾患で, 回腸に発生することは比較的まれである. 回腸迷入膵は腸重積を引き起こし発症することが多く, 高圧注腸による整復が困難で腸切除を余儀なくされることが多い. 発生部位は回腸末端部より100cmまでの下部回腸に好発する.
  • 位田 歳晴, 吉田 正史, 飯塚 恒, 芹沢 隆宏, 村上 恭紀
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1698-1702
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    アミロイドーシスによる消化管穿孔はまれであり, 予後は極めて悪い. 続発性アミロイドーシスによる小腸穿孔症例を手術によって救命しえたので報告する.患者は79歳の女性. 40歳からの慢性関節リウマチ (以下, RA と略記) の治療中, 穿孔性腹膜炎のため緊急手術を施行した. 回腸末端より口側約1mの回腸に直径3mmの穿孔を認め, この部を含む硬く, 腫大した約80cmの小腸を切除した. 切除小腸粘膜面には大小不同の潰瘍が多発していた. 病理組織学的には粘膜下層の血管壁にアミロイドの沈着を認めた. このアミロイドは免疫染色でamyloid A蛋白と同定され, RAによる続発性アミロイドーシスと考えられた. 術後約3か月で経静脈栄養から完全に離脱でき, この1年間とくに腹部症状は認めていない.
  • 種田 靖久, 向井 正哉, 岡本 祐一, 向山 小百合, 伊東 功, 中崎 久雄, 田島 知郎, 幕内 博康
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1703-1707
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の女性. 平成10年8月上行結腸癌の診断で右半結腸切除術を施行した. 病理組織学的所見は高分化型腺癌, mp, ly2, V0, n1, H0, P0, stage IIであった. 術後1年8か月目に肝S6, S8領域に転移を指摘され肝部分切除術を施行した. さらにその術後1年6か月目の超音波検査で, 右腎上極に接する40mm大の副腎腫瘍を指摘され, 短期間で急速に増大していることより右副腎転移を疑い手術を施行した. 病理組織学的に原発巣と同様の高分化型腺癌を認め, 他に転移・再発がみられないことより孤立性副腎転移と診断した. 術後経過は良好で第14日目に退院した. 現在, 術後6か月で再発徴候なく外来通院中である. 大腸癌の孤立性副腎転移に関する本邦報告例は自験例を含め19例のみであった. 手術侵襲は少なく長期生存例も認められることから, 積極的に外科的治療が選択されるべきであると考えられた.
  • 福田 賢一郎, 出口 勝也, 阪倉 長平, 萩原 明郎, 山岸 久一
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1708-1712
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の女性. 主訴は右下腹部痛. 虫垂切除の既往有り. 大腸憩室炎の疑いで抗生剤投与を行うも改善せず, 汎発性腹膜炎となり手術目的で緊急入院となった. 腹部CTで上行結腸の近傍に卵円形の薄いリング状のheperdensityな層を伴った脂肪組織濃度の上昇領域を認めた. 開腹所見は, 上行結腸の腹膜垂の1つが茎部で360度捻転して鶏卵大に腫大し, 暗赤褐色を呈していた. 表面は顆粒状で一部壊死に陥り右側腹壁に癒着していた. これを上行結腸付着部で切除した. 病理組織で脂肪織の出血性梗塞壊死を認め, 上行結腸腹膜垂炎と診断した. 腹膜垂炎はまれな疾患で, 急性虫垂炎や大腸憩室炎などと鑑別が極めて難しいが, CTでの卵円形の薄いhyperdensityなリング層を伴う脂肪組織濃度上昇は, 腹膜垂炎の画像診断に有用であると考えられた.
  • 山田 英貴, 金井 道夫, 濱口 桂, 小川 弘俊, 中村 從之, 大場 泰洋, 鷲津 潤爾, 山田 達治, 朴 哲浩, 矢野 孝
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1713-1716
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は15年前よりサルコイドーシスと診断されている60歳の女性. 左頸部腫瘤を自覚し, 当科受診. 左頸部腫瘤の穿刺吸引細胞診で中分化腺癌を認めた. 精査の結果, Virchowリンパ節転移, 腹部大動脈周囲リンパ節 (No.216) 転移を伴う進行横行結腸癌と診断し, 左頸部リンパ節郭清と4群リンパ節郭清を伴う結腸右半切除術を施行した. 縦隔リンパ節はサルコイドーシスによる腫大と考えられたため経過観察とした. 切除標本では中結腸リンパ節 (No.222), 腹部大動脈周囲リンパ節 (No.216a2, 216b1) にサルコイド結節と低分化腺癌の混在するリンパ節を認めた. 術後カルモフール (HCFU) 300mg/day 経口投与を行い, 3年11か月後の現在, 無症状, 無再発である
    以上, 興味深いリンパ節組織所見を有するサルコイドーシスに合併した結腸癌の1例を経験し, 積極的な外科的切除と化学療法により, 良好な経過を得たので報告する.
  • 村上 真基, 森川 明男, 飯島 智, 鈴木 彰, 宮沢 幸一
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1717-1720
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    まれな疾患, 結腸GISTを経験したので報告する. 症例は35歳の女性で, 下腹部痛を主訴に受診し, 腹膜炎の診断で緊急手術を行った. S状結腸には壁外性に発育し穿孔を伴う大きな腫瘤を認め, S状結腸切除術を施行した. 病理組織学的検査および免疫組織学的検査では, 紡錘形を主とする束状から充実性に増殖する腫瘍細胞が結腸全層に及び, SMA染色陰性, S-100染色陰性, c-kit染色陽性, CD34染色陽性であること, また細胞異型, 増殖形態より悪性と考えられ, malignant gastrointestinal stromal tumor“uncommitted type”と診断された. 術後18か月経過し, 無再発生存中である.
  • 丸山 浩高, 鈴木 夏生, 佐々木 正志, 関谷 正徳, 三尾 寿樹
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1721-1725
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    S状結腸間膜窩ヘルニアの2症例を経験したので報告する. 症例1は71歳の男性. 腹痛を主訴に当科受診. 55歳の時に胃癌にて幽門側胃切除術の既往歴があった. 下腹部に軽度の膨満と圧痛を認めた.同日, 腹部膨満は増強し腹痛も高度となったため, 絞扼性イレウスと診断し緊急手術を行った. 開腹所見では, S状結腸間膜窩に嵌頓絞扼された回腸を認め, 同部の嵌頓を解除し血流が良好であることを確認の上, ヘルニア門の縫合閉鎖を行った. 症例2は78歳の男性. 腹痛を主訴に来院. 下腹部に軽度の膨満と圧痛を認めた. 腹部X腺写真にて鏡面像を認め, 入院となった. イレウス管を挿入し, 保存的に治療しつつ精査を行った. イレウス管造影にて小腸に輪状狭窄を認めた. 小腸腫瘍あるいは小腸結核等を主に疑い開腹手術を行った. 開腹するとS状結腸間膜窩に回腸が嵌頓しているのが確認された. 嵌頓解除後, ヘルニア門を縫合閉鎖した.
  • 村田 賢, 吉田 重幸, 山形 充佐子, 立石 秀郎, 本告 正明, 柴田 邦隆, 小林 哲郎
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1726-1730
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    マルチスライスCTより作成した3次元画像が術式決定に有用であった大腸癌肝転移の1例を報告する. 症例は63歳の男性. 他院で下行結腸癌の手術を受け経過観察中, 肝転移を指摘され当院を受診した. 肝CT水平断像で腫瘍はS3を中心にS4に進展しており, 左葉切除が必要であると考えられた.CT肝動脈造影検査で左肝動脈は左胃動脈より分枝し, これが腫瘍に流入していることが示された.CT門脈造影検査では, 腫瘍は門脈P3本幹と離れていることが示された. 以上より左肝動脈を切離の後, 門脈P3本幹を温存したS3部分切除が妥当であると判断され, これらの画像に推奨された手術が可能であった. 近年, 低侵襲で多くの情報が得られるマルチスライスCTが普及しつつあるが, 肝臓外科領域での有用性についてはあまり報告されていない. 本症例に肝切除を行うに際して, マルチスライスCT は適切な術式の決定に有用であった.
  • 大森 浩志, 仁尾 義則, 山澤 邦宏, 北村 義則, 小池 誠, 板倉 正幸, 矢野 誠司, 橋本 幸直, 角 昭一郎, 樋上 哲哉
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1731-1734
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    慢性骨髄性白血病の治療薬であるメシル酸イマチニブ (Glivec®) を用い部分寛解PRとQOLの改善を得られた直腸原発c-Kit陽性gastrointestinal mesenchymal tumor (GIMT) 症例を経験した. 症例は64歳の女性. 直腸原発平滑筋肉腫にて低位前方切除術を施行されて以来, 腹腔内再発により計5回の腫瘍摘出手術を施行. その後, 再発腫瘍による右尿管閉塞をきたしたため, 平成14年1月16日入院となった. 右尿管閉塞に対してdouble-Jカテーテルを挿入留置した後, メシル酸イマチニブ400mg/日の経口投与を2か月行ったところ, CT画像上評価可能な2個の病変は縮小率62%, 70%となり, 新病変の出現もないことから部分寛解の状態となった. 下腹部痛および腰背部痛は消失し, 排便状態および腹部膨満感の改善が認められた. c-Kitの発現が確認できれば, 狭義のGIST以外の消化管間葉系腫瘍にもメシル酸イマチニブによる治療が可能である.
  • 大沢 常秀, 徳原 克治, 小島 善詞, 馬殿 芳郎
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1735-1739
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    49歳の女性. 直腸癌穿孔による腹膜炎, 敗血症性ショックのため緊急開腹術を施行した. 術後多臓器不全を呈し, 人工呼吸管理下にエンドトキシン吸着, 持続的血液濾過透析を施行した. 多臓器不全の回復とともに50日目から意識は改善し呼吸器から離脱したが, 四肢麻痺・球麻痺の状態で, 深部反射も消失していた. CTで脳に器質的変化認めず, 髄液検査では軽度の蛋白増加を認めた. 抗ガングリオシド抗体は陰性であった. 末梢神経伝導検査では活動電位は著明に低下していた. 術後4か月に上肢の筋力のみやや改善したが, 嚥下・構音障害のため経過不良である. 本例は, 重症敗血症に合併したcritical illness polyneuropathy (CIP) の典型例であると診断した. CIPは敗血症・SIRSの病態で発現するpolyneuropathyで, 欧米では詳細に報告されているが本邦での報告例はほとんどなく, 類似症例の集積と本症の今後の原因究明が望まれる.
  • 新居 利英, 稲葉 聡, 矢吹 英彦, 吉川 大太郎, 石崎 彰, 富田 一郎, 唐崎 秀則
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1740-1744
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大網原発成人発症のlymphangiomaはまれなものでありその術前診断率も低率であるが, 今回CT, 超音波, MRIにて術前診断可能であった1例を経験したので報告する.
    症例は55歳の男性. 腹痛, 腹部膨満感を主訴として受診. CTにて胃大彎に接し骨盤内にまで及ぶ充実性腫瘍を認め超音波にて多房性, またMRIにてcystic lymphangiomaパターンを呈した. 他の検査を含め大網原発のlymphangiomaと診断し手術を施行した. 開腹すると腫瘍は薄い皮膜に覆われ腹腔内前面を占居. 網嚢を解放し大網を頭側に脱転してくると膵や胃結腸間膜が認められ, 腫瘍は大網原発であることが確認された. 腫瘍内容は透明なやや粘張性のある液体であった. 病理にて大網内に嚢胞上に拡張するリンパ管の増生を認め内皮細胞に異形性はなくlymphangiomaと診断された.
  • 北山 佳弘, 山中 若樹, 光信 正夫, 林 勝彦, 安井 智明
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1745-1748
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は70歳の女性. 食欲不振, 嘔吐を主訴に来院. 腹部超音波検査, CT検査, MRI検査で肝左葉, 胃, 膵に接する単房性の嚢胞性腫瘤を認めた. 小網ないしは腸間膜嚢腫と診断し手術施行した. 腫瘍は小網より発生し肝, 胃, 膵からは独立しており, 摘出術を施行した. 組織学的にはリンパ管腫と診断された. 小網嚢腫は非常にまれであり, 本邦でもその報告例はほとんどない. これらを含め若干の文献的考察を加え報告した.
  • 長谷川 健司, 鎌野 尚子, 小倉 徳裕, 奥野 雅史, 山田 修, 森田 治雄, 大沢 常秀, 高田 秀穂, 四方 伸明, 泉 春暁
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1749-1753
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の女性で, 腹膜膨満, 上腹部痛を主訴に受診, 腹部CTにて腹水貯留を認めるも, 血液検査所見にては, 腫瘍マーカーCA15-3, CA125の異常高値を認めるのみであった. 試験開腹術を施行した. 腹膜播種と部分的に肥厚した大網を認めるも, 原発巣不明の癌性腹膜炎の状態で, 術中迅速病理検査では卵巣癌と類似した組織像であった.
    Omental cake状の大網を可及的に切除し, 腹腔内にCDDPを散布して閉腹した. 術後の病理組織学的検査で腹膜原発漿液性乳頭状腺癌と診断され, CDDPを用いた化学療法を続けた. 8か月後に再開腹したところ, 腹膜播種巣は消失しており, 遺残した大網にわずかな腫瘍遺残を認めるのみであった.初回手術より24か月後の現在, 再発徴候もなく健在である. 腹膜原発漿液性乳頭状腺癌はまれな疾患であるが, 原発巣不明の癌性腹膜炎の鑑別診断として銘記すべき疾患と考えられた.
  • 森 克昭, 米川 甫, 千葉 斉一, 山本 裕
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1754-1758
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    開腹手術を契機に症状が発現したMorgagni孔ヘルニアの1例を経験したので報告する. 症例は69歳の女性で, 婦人科において開腹手術施行後1週間頃より嘔吐, 呼吸苦を認め, 精査にてMorgagni孔ヘルニアと診断され当科転科となった. 手術は経腹的に行い, ヘルニア内容は横行結腸, 大網であった. 嚢を切除し, 横隔膜の直接縫合にて修復し手術終了した. 術後7か月を経過し再発は認めていない.
  • 青木 利明, 河野 守男, 原 知憲, 太田 喜洋, 斉藤 勝正, 一宮 博勝, 青木 達哉, 小柳 泰久
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1759-1762
    発行日: 2002年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    右鼠径ヘルニア嚢より腹腔鏡下イレウス解除術を施行した1例を報告した. 症例は68歳の男性. 嘔気, 下痢にて受診し内服加療受けるも改善せず再受診した. 腹部単純X線写真にてイレウスと診断し入院となる. 同時に右鼠径ヘルニア脱出を認めたが用手整復可能であった. 保存的療法にて小腸ガスは軽減したが, 完全には消失しなかった. 手術は右鼠径ヘルニア根治術とともに, 右鼠径ヘルニア嚢から12mmと5mmのトロカーを2本挿入し, 気腹法にて腹腔鏡にて観察したところ, 臍下部に臍腸管索と思われる索状物を認め, 同部を凝固, 切断した. 鼠径ヘルニアとイレウスを合併した症例に対し, 鼠径ヘルニア嚢からトロカーを挿入して行う腹腔鏡下イレウス解除術は, 腹壁切開や穿刺を伴うことなく手術できることから, 有効なアプローチ法と考えられる.
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