ラクトース存在下で加熱したβ-ラクトグロブリン (Lac-β-Lg) には, β-ラクトグロブリン (β-Lg) 自体の熱変性により形成された一次構造依存型の抗原決定部位が少なくとも3個存在し, それらはβ-Lgの一次構造上, 41-107域と125-145域に位置することを示すと共に, 61番目のTrp残基付近にも抗原決定部位が存在する可能性を, 先に示した. そこで, 本論文では, β-Lgに2-nitro-5-thiocyanobenzoicacidを作用させてシアニル化後, アルカリ処理を施し, Cys残基の位置で特異的に切断し, その分解物より, N-末端から65番目までのペプチドを単離し, そのペプチド1-65と既報で単離した25-107の抗原活性を比較した. ペプチド1-65, 25407および両ペプチドの混合物は, 抗Lacβ-Lg抗体とS-カルボキシメチル化β-Lgの反応における沈降物の形成を, それぞれ, 51.9%, 552%および55.0%阻害した. また, 酵素免疫測定法においても, ペプチド1-65と25-107は抗Lac-β-Lg抗体と同程度の反応性を示し, かつ, 両ペプチドを混合しても反応性に顕著な増加は認められなかった. これらの結果, 並びに既報において単離したβ-Lgの一次構造上, 1-7, 8-24, 25-40, 41-107, 25-61, 62-107, 108-124, 125-145, 108-145および146-162域のペプチドの抗原活性より, Lac-β-Lgの調製時にβ-Lg自体の熱変性により形成された抗原決定部位は, 41-61域, 125-145域に位置するものに加えて, 61番目のTrp残基が関与したものも存在するものと考えられる.
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