家畜と実験動物の計8品種において,ある遺伝子座とマーカー遺伝子座のうちの一つとが,一定の強さで連鎖している確率を求めた.その遺伝子座は,一つで1形質を支配していると仮定した.確率の計算にあたり,連鎖の強さは,最も近いマーカーからの物理的距離dとして,任意に指定できる.距離dがゲノムサイズの1~2%までの範囲で,目的とする遺伝子座と一つのマーカーとの連鎖が見つかる確率
Pr(D≦d)は,dの増加とともに急速に高まった.dがこの範囲を超えると,一定量のdの増加に対する確率の上昇量は小さくなった.確率
Pr(D≦d)は,ほとんど完全に常染色体の数nにより決定されていた.使えるマーカーのmが,例えば50と一定であれば,nの少ない動物ほど
Pr(D≦d)が高く,dが大きくなるにつれてしだいに
Pr(D≦d)の動物間差は広がった.dがゲノムサイズの5%で,mが50のとき,
Pr(D≦d)のnに対する一次回帰係数は-0.0076,両者の間の相関は0.98であった.距離dがゲノムサイズの5%となる正確さで遺伝子座とマーカーとの連鎖を見つけられる確率はmの増加とともに高まり,チャイニーズハムスター(n=10),ラット(n=20),ウシ(n=29)の間の
Pr(D≦d)の差は,m=20のときに最大で,mが20から遠ざかるにつれて小さくなった.豚のある遺伝子座とマーカーのうちの一つが,ゲノムサイズの0.25%以下の距離で連鎖しているのを,0.9より高い確率で見つけるには,約500の無作為に分布するマーカーが必要であった.豚の性染色体を除くゲノムサイズは,約20モルガンであると推定されているので,その0.25%は,ほぼ5センチモルガンにあたる.
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