泌乳の遺伝的能力を間接的に表す形質(インディケータ形質)としての生理形質は,測定条件により異なる値を示すことがあり,泌乳形質との遺伝的関係を調べる際には,その測定条件を検討する必要があると考えられる,本報告では,インディケータ形質となりうる生理形質の種類と,その測定条件について調査した.ホルスタイン種雄4頭を用い5種類の血中代謝成分濃度変化について21週齢から32週齢までの週齢と採血時刻の効果,および48時間絶食に伴う血中代謝成分濃度変化について5,6,7ヵ月齢時の月齢の効果を調査した.また,5ヵ角齢時のホルスタイン種雌4頭を用い,48時間絶食および再給餌処理に対する5種類の血中代謝成分濃度の3時間毎の変化とその個体問差を調査した.週齢に伴う血中代謝成分濃度の変化は,総タンパク質(TP)で有意であり,総コレステロール(Cho)でも観察された.採血時刻の効果はグルコース(Glu),尿素態窒素(BUN)で有意であり,中性脂肪(TG),遊離脂肪酸(NEFA),総ケトン体(Ket)でも観察された.絶食負荷により,Glu, TG濃度の低下,SUN, TP, NEFA, Ket濃度の上昇が観察された.BUN, NKFA, Ket濃度の変化はGlu濃度低下と時間的な関連があった.絶食期間中のGlu, BUN, Ket濃度の変化は2つの局面を持ち,それぞれの局面で有意な個体間差があった.絶食によるGlu, BUN, TG, TP, Cho濃度の変化に月齢の効果がなかった.以上の結果より,血中代謝成分濃度をインディケータ形質として用いる際,通常飼養環境下の測定では測定週齢と採血時刻を考慮する必要があった.また,絶食環境下では,絶食の長さを考慮する必要性があるものの,血中代謝成分濃度の変化には月齢効果がないことから測定値の再現性が高いと考えられ,インディケータ形質の測定条件として適当であると示唆された.
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