MNNG誘発ラット大腸癌に於いて上行結腸部の人工肛門造設から便流遮断空置大腸を作製し,大腸癌発生に及ぼす便流並びに便流期間の影響を検索するとともに便流遮断空置大腸に対する各種胆汁酸の付加注腸投与から胆汁酸の意義についても併わせ検討した.
1.便流非遮断(無処置)群の腫瘍発生率,腫瘍個数(/匹)が各々73.5%,1.32個を示したのに比し便流遮断群ではそれぞれ13.5%,0.16個と便流の完全遮断によりともに有意に低下,減少した.
2.MNNG注腸投与後の便流期間と腫瘍発生率,腫瘍個数の関係は便流期間10週までは共に有意の低下,減少を示したのに対し15週以降では次第に増大し便流非遮断群に近似する傾向を示した.
3.便流遮断空置大腸に対しDCA及びLCの2次胆汁酸の付加注腸投与によって腫瘍発生率,腫瘍個数は共に有意に増加し,便流非遮断群に近似する傾向を示した.
以上より大腸癌発生に対し一定期間以上の便流の存在は促進的内的環境を形成し,しかもその主役として2次胆汁酸の存在の重要性が示唆された.
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