日本大腸肛門病学会雑誌
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36 巻, 5 号
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  • 吉田 豊, 相沢 中
    1983 年 36 巻 5 号 p. 465-471
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    本邦におけるクローン病の歴史は浅く,その概念も一定でなかったため,急性回腸末端炎などとの鑑別も不十分な状態であった.1976年になり日本消化器病学会クローン病検討委員会および厚生省特定疾患クローン病調査研究班・厚生省特定疾患炎症性腸管障害調査研究班により,定義および診断基準が作成された.その基準にそった診断により,本邦のクローン病も諸外国と同様に,増加してきている難病の一つであることが判明してきた.本稿では,その病因に対する考え方と本邦における両研究班の全国集計の498例と64例の確診例について検討を加えた.
  • 若狭 治毅, 石川 秀雅, 浅野 重之
    1983 年 36 巻 5 号 p. 472-477
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    近年,炎症性腸疾患(IBD)の概念が明確になるにつれ,クローン病の病理学的特徴も次第に明らかになってきたが,その病理発生には不明の点が少なくない。
    本症は回腸や右側結腸を主としておかし,病巣は区域性で,腸壁の肥厚や狭窄および玉石状の粘膜隆起などを主な所見とする。特に,本邦の小腸に病変を有する例では回腸に比較的長い縦走潰瘍が腸間膜付着側に高率に見出され,診断的価値を有する.病変の程度は組織学的に粘膜固有層に比し粘膜下層に高度で,同部には線維比がみられ,腸壁の肥厚を伴う.炎症性変化は全層性に認められ,処々にリンパ球の集簇巣をみるが,特異なものとして類上皮細胞より成る肉芽腫が腸壁の各層に形成される.
    肉芽腫は上皮下の粘膜固有層内に先ず形成され,ついでリンパ行性に管内外に肉芽腫を形成しながら漿膜外に達する.この結果,リンパ管炎および周囲炎が起きlymphedemaの原因となり,玉石状の粘膜隆起を来たす.
  • 八尾 恒良, 岡田 光男, 渕上 忠彦
    1983 年 36 巻 5 号 p. 478-485
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1)診断:クローン病の診断はX線検査が施行されれば,ほぼ100%可能である。従って,外来受診→X線検査の過程が重要である.本症は15~29歳に好発し,腹痛,下痢発熱,体重減少を主徴とする.またルーチン検査では血沈亢進,CRP陽性などの炎症所見,低アルブミン血症,低コレステロール血症を認めることが多い.また,肛門症変も頻度が高く初期に発現することが多いので,生検が行なわれればより早期に診断される可能性がある.
    2)治療:長期予後を老慮に入れた治療が必要である.増悪期の保存的治療は入院によるED,IVHと外来でのステロイド治療の組合せが最も有効であろう.外科的治療はできるだけ避けるべきであるが,これを必要とする頻度が高い.広汎囲切除による再発予防効果は疑問である.
    上記の論旨につき,自験66例の分析に文献的考察を加えつつ述べた。
  • 福島 恒男, 土屋 周二
    1983 年 36 巻 5 号 p. 486-491
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    Crohn病の栄養管理について最近の内外の主要な知見を紹介した.
    まず本症患者の食習慣についてみると,精製した砂糖の摂取が多く,線維質の摂取が少いごとが欧米で指摘され,これを是正すると臨床症状が改善することがあるという報告があり,食事とCrohn病との関係について新しい観点からの研究が進められている.
    Crohn病にはさまざまな原因による栄養障害が併発しやすく,栄養管理は治療上もっとも重要なもののひとつである.これに関して人体測定学的および血液生化学的parametersが有用な評価規準となる.またIVHとEDの台頭により本症の栄養改善に多大の進歩がみられている.このような栄養法は本症の根治療法ではないが,その病変をどこまで改善させるかについても検討されており,これらは小腸潰瘍,cobblestone app-earance,裂溝にかなり有効とされる一方,線維化を伴う陳旧病変,大腸の病変には効果が少いと報告されている.
  • われわれの経験と最近の動向
    武藤 徹一郎, 上谷 潤二郎, 杉原 健一, 久保田 芳郎, 安達 実樹, 阿川 千一郎, 斉藤 幸夫, 森岡 恭彦, 沢田 俊夫, 小西 ...
    1983 年 36 巻 5 号 p. 492-499
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    教室におけるCrohn病17例の経験を報告し,最近の外科的治療方針の動向について文献的考察を行った.手術は9例に行われ,残る8例はいずれも経静脈栄養によって管理することができた.9例中6例には吻合術が可能であった,痔瘻は8例に合併していたが,7例は通常痔瘻と性状が変わらず,lay openにて治癒した.
    欧米ではCrohn病に対する外科的治療として,小範囲切除を行う一派と広範囲切除を行う一派とがあり,主として前者には英米の専門家が,後者にはスカンジナビア,ドイツの専門家が属している.広範囲切除派は術中の凍結切片標本の検索により,病変の取り残しを防ぐことを主張している.これら欧米のCrohn病に対する外科治療方針の現況を紹介し,われわれの方針についても述べた.
  • 再発の問題を中心として
    浜野 恭一, 秋本 伸, 由里 樹生, 亀岡 信悟, 五十嵐 達紀, 立花 正史, 志村 紀子, 三神 俊史, 矢沢 知海
    1983 年 36 巻 5 号 p. 500-505
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    われわれの経験したクローン病症例は24例で,うち切除術を施行した18例につき検討した.術後follow upが確実に出来た症例は17例でその平均期間は3年8カ月である.再発は5例29%に認められた.病変部位と再発についてみると,小腸大腸型が8例中4例再発と最も高率で,大腸型は3例中1例,小腸型5例と虫垂型1例は再発を認めていない.切除断端の炎症の有無と再発の関係をみると,断端(+)6例中再発は2例,断端(-)11例中再発3例で特別な相関はなかった.ただ再発までの期間は,断端(-)の症例は平均5年11カ月で,断端(+)の症例の平均1年10カ月に比し有意に長かった.最近われわれは術中内視鏡により病変部より20~40cm離して健常腸管を切離しているが,これら6症例はfollow up期間は平均2年1カ月とまだ短かいが,全例再発なく,有効な方法と考えている.予後は17例中14例は社会復帰しており,再発をおそれて手術をいたずらに遷延させる必要ははないと考える.
  • 高野 正博, 藤好 建史, 相良 泰至, 長尾 和治
    1983 年 36 巻 5 号 p. 506-517
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    我々の経験したクローン病の36例中肛門疾患から由来する症状を主訴として来院した例は23例で60%を越え,クローン病の発見に大きく貢献したといえる.病変別に我々の症例を見ると痔瘻(肛囲膿瘍)19例,腫脹(skin tag)14例,裂肛(難治創)11例となっている.クローン病の肛門病変の特徴は,広範囲,高度かつ難治性であること,一見してそれといった特異な状態を示すこと,しばしば腸管病変に先行して現われること,治療が困難で長期を要し,再発し易いことなどである.ただし,病変のcontrol,腸疾患と全身状態の改善をまって手術を行えば,根治が高い率で期待でき,我々の症例では保存療法あるいは手術療法によって痔瘻(肛囲膿瘍)は19例中17例,裂肛(難治創)は11例中9例,腫脹(skin tag)は14例中13例で良好な成績を得ている.
  • 家田 勝幸, 河野 暢之, 浦 伸三, 石本 喜和男, 山本 真二, 康 権三, 湯川 裕史, 坂口 雅宏
    1983 年 36 巻 5 号 p. 518-522
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌374例について,胆石同時合併および胆嚢摘除術の既往と大腸癌との関連性を,胃癌1011例と対比して検討した.胆石同時合併例は,大腸癌19例(5.1%),胃癌45例(4.5%)で,両者間に有意差はみられなかった.胆嚢摘除術の既往を有するものは大腸癌10例(2.7%),胃癌4例(0.4%)で有意に大腸癌の方が多かった(p<0.01).また,年齢,性,手術時期が一致したmatched pair 332組で同様の検討を行った.胆嚢摘除術の既往を有するものはp<0.1で有意に大腸癌の方が多かった.relalive riskもρ=3.33(1.04-13.29, p<0.05)で大腸癌の方が多かった.左側結腸,右側結腸,直腸の三区分における検討では,部位別に有意差はみられなかった・胆嚢摘除術から癌手術までの期間は大腸で2~30年,胃で7~20年であったが有意な傾向は見出されなかった・胆嚢摘除が大腸癌発性と関連性があるということが示唆されたが,さらに詳細な検討が必要である.
  • 泉本 源太郎, 八田 昌樹, 西山 真一, 田中 晃, 松田 泰次, 福原 毅, 岩佐 善二, 安富 正幸, 陣内 傳之助
    1983 年 36 巻 5 号 p. 523-531
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    結腸癌のリンパ節転移様式を解明するために,切除材料を用いてクリアリング法によるリンパ節転移を検索した.検討した結腸癌60例のうち転移率56.7%,1例当りの検索リンパ節数72.2個,転移度4.3%であった.本法は従来の検索法に比べ微小なリンパ節の検索もれがないばかりでなく,血管走行,癌腫と転移リンパ節との位置関係を明確にすることができる.旁結腸・結腸壁在リンパ節への転移陽性リンパ節の分布は右側結腸癌では癌腫辺縁より7cm,左側結腸癌では4cm以内に限局し,中枢方向への転移率は右側結腸癌では中間リンパ節15.0%,主リンパ節10.0%で,左側結腸癌では中間リンパ節20.0%,主リンパ節12.5%であった.右側結腸癌の中間リンパ節転移は最寄りの主幹動脈と回結腸動脈,S状結腸癌では第1,2,3S状結腸動脈と上直腸動脈に沿うリンパ節であった.跳躍転移例は10例(跳躍転移率29.4%)に認められ,このうち8例は第2群リンパ節を跳躍した型式であった.
  • 高島 茂樹, 片山 外一, 小森 和俊, 宮崎 逸夫
    1983 年 36 巻 5 号 p. 532-540
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    MNNG誘発ラット大腸癌に於いて上行結腸部の人工肛門造設から便流遮断空置大腸を作製し,大腸癌発生に及ぼす便流並びに便流期間の影響を検索するとともに便流遮断空置大腸に対する各種胆汁酸の付加注腸投与から胆汁酸の意義についても併わせ検討した.
    1.便流非遮断(無処置)群の腫瘍発生率,腫瘍個数(/匹)が各々73.5%,1.32個を示したのに比し便流遮断群ではそれぞれ13.5%,0.16個と便流の完全遮断によりともに有意に低下,減少した.
    2.MNNG注腸投与後の便流期間と腫瘍発生率,腫瘍個数の関係は便流期間10週までは共に有意の低下,減少を示したのに対し15週以降では次第に増大し便流非遮断群に近似する傾向を示した.
    3.便流遮断空置大腸に対しDCA及びLCの2次胆汁酸の付加注腸投与によって腫瘍発生率,腫瘍個数は共に有意に増加し,便流非遮断群に近似する傾向を示した.
    以上より大腸癌発生に対し一定期間以上の便流の存在は促進的内的環境を形成し,しかもその主役として2次胆汁酸の存在の重要性が示唆された.
  • 小西 隆蔵, 勝見 正治, 河野 暢之, 家田 勝幸, 松本 孝一, 永井 裕吾, 嶋田 浩介
    1983 年 36 巻 5 号 p. 541-546
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    回盲弁に騎乗する下堀れ傾向の強い大きな潰瘍症例を経験したので報告する.
    症例は45歳男性,右下腹部痛を主訴として受診し,外来初診時に右下腹部腫瘤が触知された.注腸透視では回盲部の拡張不良と皺襞の集中を伴うバリウムのたまりが認められたが,大腸ファイバースコピーでは回盲部は浮腫状に肥厚しており,潰瘍は確認できなかった.切除標本では,回盲弁に騎乗する5×5×0.5cmの下堀れ傾向の強い潰瘍が認められ,周堤のもり上がりも著明であった.また,これより15cm口側の回腸腸間膜反対側に4×0.2cmの長軸に沿う線状潰瘍が認められた.組織学的には慢性炎症を伴うul IVの潰瘍で,特異性慢性炎症の所見も得られなかった.
    本症例は,回盲部単純性潰瘍が最も考えられるが,ベーチェット病との鑑別は困難である.本邦における大腸単純性潰瘍123例を集計し,盲腸部単純性潰瘍と腫型ベーチェット病との関連について若干考察を加えた.
  • 田中 勤, 小林 一雄, 大谷 忠久, 柳田 謙蔵, 吉雄 敏文
    1983 年 36 巻 5 号 p. 547-551
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(以下UCと略す)に合併するtoxic megacolon(以下TMCと略す)は頻度は少ないが,穿通性潰瘍の発生,穿孔,狭窄,大出血などの危険から,最も重篤なもので,予後不良となることも多い.病期や病型からみると,一般に再燃緩解型の再燃期や,急性電撃型で全結腸型のものに併発しやすい.予後を考えると病態を早期に把握し,適切な治療を,早急に行うことが重要である.
    今回著者らは,急性電撃型のUCに合併したTMCの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて,報告する.
  • 1983 年 36 巻 5 号 p. 552-561
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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