日本大腸肛門病学会雑誌
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47 巻, 3 号
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  • とくにTumor Necrosis Factor (TNF)-α, Interferon (IFN)-γのm-RNA発現について
    渡辺 賢治, 増田 英樹
    1994 年 47 巻 3 号 p. 207-214
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(UC)の病因・病態にサイトカインの役割が注目されている.今回われわれはUC患者の腸管上皮におけるTNF-α,IFN-γ,IL-2,IL-6 mRNAの発現をreverse transcription-coupled polymerase chain reaction (RT-PCR) を用いて検討した.対象はUC患者16例(活動期7例,緩解期9例)であり,大腸疾患を有さない17例(対照群)と比較した.その結果(1)UC患者のTNF-α,IFN-γ mRNAは対照群と比較して有意に発現増強を示した(p<0.01, p<0.05)が, IL-2, IL-6では差を認めなかった.(2)UC患者のTNF-α,IFN-γ mRNA発現は,炎症の程度による明かな差はみられなかった.(3)活動期,緩解期との比較でも有意差はなかった.以上より,UC患者では炎症の程度や病期分類にかかわらず,TNF-αやIFN-γ mRNA発現が亢進しており,これらのサイトカインの直接的な,もしくは接着因子の誘導やリンパ球の活性化を介した間接的な組織障害がUCをおこさせる誘因になっている可能性が考えられた.
  • 大沢 昌平
    1994 年 47 巻 3 号 p. 215-223
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    BALB/Cマウスの腸間膜静脈内にcolon-26(1×104個)を移植し,肝転移形成に対するMY-1を用いた免疫療法の効果を検討した.治療群はBCG由来DNA画分(MY-1,1回300μg)を移植日より隔日7回皮下投与するSC群(n=22)と,移植日は脾臓内,以後6回は皮下投与するIS群(n=21)の2群とした.移植後21日の肝表面転移結節個数は対照群111±7,SC群45±9,IS群32±7個であり,治療群で有意に減少した(p<0.01).またマウスの生存日数は対照群24.1±0.7に対しSC群30.4±1.4,IS群32.7±1.3日と延長した(p<0.01).治療群間ではIS群がより良好であったが,有意差はなかった.脾細胞を用いた腫瘍中和試験では非付着性細胞に中和活性を認め,抗L3T4抗体および抗Lyt2抗体+補体の処理により消失した.以上よりMY-1による免疫賦活は肝転移巣形成の抑制に有効であり,抗腫瘍効果の発現には主として脾内のTリンパ球の関与が示唆された.
  • 内山 雅之, 久保田 芳郎, 沢田 俊夫, 津野 ネルソン, 武蔵 徹一郎
    1994 年 47 巻 3 号 p. 224-233
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    正常大腸粘膜固有層の神経線維の分布,大腸癌およびtransitional mucosa(TM)間質における神経組織の異常について,VIPを中心に免疫組織化学的手法を用いて検討した.対象は31例の大腸癌および非癌部の移行部粘膜と背景粘膜で,粘液組織染色(HID-AB染色),免疫組織染色(VIPおよびS-100蛋白陽性神経線維)を施行し,TM,非癌大腸粘膜の腺窩長,固有層のVIP,S-100蛋白陽性神経線維の長さを自動画像解析装置により定量的に測定した,その結果,正常大腸粘膜ではVIPおよびS-100蛋白陽性神経線維は肛門側に向うにつれて減少しており,右側大腸と左側大腸を比較すると右側では有意に陽性神経線維が多かった.またTMではVIP陽性神経線維(2505vs9175μm/mm2)およびS-100蛋白陽性神経線維(4364vs12179μm/mm2)が共に対照より有意に減少していた,TMでは神経組織の異常があり,形態学的,粘液学的異常に影響を及ぼしている可能性が示唆された.
  • 吉田 勝俊, 鈴木 衛, 渡辺 和義, 井上 雄志, 亀山 健三郎, 高柳 泰宏, 羽生 富士夫
    1994 年 47 巻 3 号 p. 234-239
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    びまん浸潤型大腸癌16例の臨床病理学的特徴について検討した.頻度は全大腸癌の0.7%であった.性別は男9例,女7例,平均年齢49歳であった.主症状は腸管閉塞症状が13例と最も多く,占拠部位はT:5例,D:2例,S:4例,R:5例であった.組織型は中分化腺癌5例,低分化腺癌5例,粘液癌6例であり,壁深達度は全例s(a2)以上であった.リンパ管侵襲はly2以上が13例(81%)と高度であった.進展様式は粘膜面に潰瘍を形成せず,粘膜下層以深にびまん性に浸潤していく粘液癌・低分化腺癌の型と粘膜面に小型の潰瘍を形成し,高度のリンパ管侵襲を伴いながら深部に浸潤する中分化腺癌の型の2型に分類できた.進行度はstage IV以上が11例(69%)を占め,治癒切除率も25%と低率であった.再発形式は肝転移7例,腹膜播種3例,局所再発2例であった.予後は術後1年半以内の早期死亡が8例を占めたが,治癒切除例や肝切除例に5年以上の長期生存例をえた.
  • 小沼 譲, 斉藤 博, 宇野 良治, 坂本 十一, 東野 治仁, 中島 均, 棟方 昭博, 吉田 豊, 田中 正則, 筒井 理裕, 今 充, ...
    1994 年 47 巻 3 号 p. 240-246
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は68才の女性.主訴は排便困難.昭和63年頃より症状を自覚していたが放置,平成3年7月頃より排便困難が増強し,腹部膨満感も出現.注腸X線写真でS状結腸の著明な拡張があったため当科に紹介された.巨大結腸症を二次的に生じる疾患の既往や薬剤の使用歴はなかった.入院後の注腸造影では肛門より約1.5cmから口側に約5cmの範囲で狭窄があり、さらにその口側で最大径約10cmと著明な拡張が見られた.大腸内視鏡検査で直腸は全周性に狭小化していたが,粘膜は正常で内視鏡も容易に通過した.生検組織診では明かな線維化や炎症性変化はなく,アミロイドの沈着も見られなかった.CTでは骨盤腔内の病変は見られなかった.神経学的検索で膀胱を除く全身の自律神経機能異常と感覚性ニューロパチーが見られた.横行結腸―肛門吻合術を施行し,術後経過は良好であった.手術標本の病理所見では腸管壁在神経叢の変性が見られた.
  • 山本 眞二, 国松 範行, 神谷 剛司, 鈴木 健司, 山崎 民大, 得平 卓彦, 久場 襄, 渡辺 圭三, 岡田 昌之, 望月 英隆, 玉 ...
    1994 年 47 巻 3 号 p. 247-251
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    生検により直腸カルチノイドと診断した後,マーキングックリップにて病巣を標識し,経肛門的直腸局所切除術を施行した1例を報告する.症例は52歳,男性で,人間ドックにおける全大腸内視鏡検査にて直腸に黄白色調の径約4mmの隆起性病変を認めた.生検を行い病理組織学的にカルチノイドと診断し,さらに2週間後に施行した再検査時の生検にてカルチノイドの遺残を認めなかったが,内視鏡的には黄白色調の隆起性瘢痕が存在したため,初回検査後6週に病変部にマーキングクリップにて標識し,経肛門的直腸局所切除術を行った,摘出標本では,粘膜下層に径約4mmのカルチノイドの遺残を認めるものの,固有筋層には達しなかった.本症例は最大径4mmの微小病巣であったため,術前に行った内視鏡下クリッピングが局所切除術の際に有効であった.
  • 谷若 弘一, 久保 精一, 石神 浩徳, 小西 宏育, 原 宏介, 富山 次郎, 福里 利夫
    1994 年 47 巻 3 号 p. 252-258
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    家族性大腸ポリポーシス(以下FAP)に多発性大腸癌と胃癌を合併し,同時切除した1例を経験した.症例は58歳,男性.便秘と貧血を主訴として来院し,諸検査にて直腸癌と胃癌の重複癌を認めた.直腸癌に対し骨盤内蔵全摘術を施行したところ切除腸管に直腸癌の他にびまん性にポリープを認めたたあFAPと診断し,大腸全摘術を追加した.ポリープは非密生型で直腸癌は最も下縁に位置し,下行結腸から直腸にかけて癌化を伴うポリープが散在した.胃病変は前庭部小弯前壁のBorrmann 3型胃癌で,胃亜全摘術を施行した.組織学的には直腸癌はadenocarcinoma muconodulareで,癌化したポリープはいずれもcarcinoma in ade-nomaの所見であった。FAPは癌化率が極めて高いうえに上部消化管病変を伴うことが知られている.本症例はFAPに多発性大腸癌と胃癌を同時に合併した稀な症例と思われた.
  • 新海 政幸, 市原 隆夫, 裏川 公章, 白野 純子, 黒田 浩光, 西尾 幸男, 川口 勝徳, 五百蔵 昭夫, 上田 隆, 島田 悦司, ...
    1994 年 47 巻 3 号 p. 259-263
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    血清CEAが高値を示した虫垂粘液嚢胞腺腫の1例を経験した.症例は84歳,男性,主訴は右側腹部腫瘤.右側腹部に手挙大で表面平滑,可動性を有する腫瘤を触知した,小腸および注腸造影で虫垂は造影されず,回盲部が偏位し管外性の圧排像を認めた.腹部CT検査,超音波検査で回盲部位に粘液性嚢胞性腫瘤を認めた.血清CEA値が71.9ng/mlと高値を示すたあ虫垂粘液嚢胞腺癌と診断し右半結腸切除術を行った.開腹時,すでにpseudomyxoma peritoneiの状態で,虫垂は発赤緊満腫大し回盲部からさらに上行結腸を圧排していた.病理組織学的には嚢胞壁は腺腫構造を示し,CEA染色では腺管全長にわたり管腔表面に腸性所見を認めた.術前高値を呈した血清CEAは術後約1か月で3.0ng/mkとなり,術後6か月の現在も3.5ng/mlで再発の所見を認めていない.
  • 大谷 典也, 佐々木 木巖, 舟山 裕士, 内藤 広郎, 神山 泰彦, 柴田 近, 松野 正紀
    1994 年 47 巻 3 号 p. 264-269
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    壊疽性膿皮症を合併した炎症性腸疾患の3例を経験した.症例1は,55歳,男性で潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術後,壊疽性膿皮症の改善を認めた.症例2は,潰瘍性大腸炎の40歳,女性でKock式回腸瘻造設後,周囲に難治性潰瘍が出現した.通常のストーマ管理では改善しなかったが,プレドニゾロンの全身投与が有効であり,その臨床経過より壊疽性膿皮症が考えられた.症例3は,Crohn病の52歳,女性で両側下腿の壊疽性膿皮症に対して,各種の軟膏を使用したが,デキサメサゾン軟膏が著効を示した.3例ともに治療に難渋したが,それぞれ外科的治療・内科的治療・外用療法により,壊疽性膿皮症の改善を認めた.炎症性腸疾患と壊疽性膿皮症の合併の頻度は,決して高いものではないが,今回の検討では,症例に応じ種々の治療法を選択し,それぞれに改善効果が認められた.
  • 服部 和伸
    1994 年 47 巻 3 号 p. 270-274
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸sm癌では,稀ながら肝転移を認めるというが,その報告は少なく,本邦では25例の報告があるにすぎない.著者はS状結腸sm癌の術後に多発性肝転移を認めた症例を経験したので報告する.症例は78歳,女性.便潜血陽性にて精査を施行したところ,S状結腸に長径15mmのIs型の隆起性病変を認めた.生検にて高分化腺癌と診断され,広基性のため,開腹手術を施行した.切除標本は12×8mmのIs型の高分化腺癌で,深達度はsm2,粘膜下層でリンパ管侵襲が認められてn0,ly1,v0であった.術後6カ月の腹部CT検査にて肝に多発性の低濃度域を認めて,術後24カ月に死亡した,死亡後の肝生検にて管状腺癌を認めて,S状結腸癌の肝転移と確診した.
  • 本邦26例の検討
    佐藤 美信, 丸田 守人, 黒水 丈次, 宮島 伸宜, 内海 俊明, 遠山 邦宏, 滝沢 健次郎, 奥村 嘉浩, 升森 宏次, 小出 欣和, ...
    1994 年 47 巻 3 号 p. 275-281
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    虫垂の杯細胞カルチノイドはカルチノイド類似像と腺癌類似像の両者を有する比較的希な腫瘍である.著者らは盲腸の粘液嚢腫で回盲部切除術を施行した虫垂に発見された杯細胞カルチノイドの1例を経験したので本邦報告26例を集計し文献的考察を加えた.症例は65歳女性で便潜血反応陽性で精査した結果,盲腸に腫瘤性病変を認めた.盲腸嚢腫の診断で回盲部切除術を施行し,摘出虫垂に杯細胞カルチノイドを認めた,本邦26例の多くは急性虫垂炎の診断で切除された虫垂に発見されている,本邦26例中5例に再発,転移を認め,その悪性傾向が指摘されている.本症例では杯細胞カルチノイドによる症状は認めなかった.また術中所見では転移を認めず,2年7カ月経過した現在も再発の徴候を認めていない,本症例は虫垂遠位端の杯細胞カルチノイドは粘液産生傾向が著しく,虫垂根部には正常粘膜をはさんで非連続性に粘液嚢腫を認めた点で興味深いものであった.
  • 1994 年 47 巻 3 号 p. 282-294
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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