日本大腸肛門病学会雑誌
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49 巻, 5 号
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  • 沢田 寿仁, 早川 健, 堤 謙二, 宇田川 晴司, 鶴丸 昌彦
    1996 年 49 巻 5 号 p. 347-354
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌術後早期イレウスは, 大腸癌開腹手術例1,845例中170例, 9.2%にみられた.いわゆる上腸間膜動脈症候群 (SMAS) 例が36例, 21.2%を占め, 通常のイレウスである非SMAS例が134例, 78.8%であった.その頻度は, 直腸に多く, 手術の根治度では根治度Aに, 郭清度ではD3郭清例に多く, 術式別では直腸切断術例に有意に多い.保存的治療は151例, 88.8%を占め, 不完全イレウス例に有意に多く, 食止め期間はSMAS例18.0日, 非SMAS例7.1日と明確な差を認めた.手術は19例11.2%で, イレウスより再手術までの期間はSMAS例22.2日, 非SMAS例12.1日と明確な差を認めた.イレウス合併の有無と予後には差はなく, 関連性を認めなかった.大腸癌術後早期イレウスの診断, 治療にあたっては癒着による通常のイレウス以外にもSMAS例の存在を忘れてはならない.
  • 大城 淳一, 金城 福則, 我喜屋 出, 諸喜田 林, 外間 昭, 前原 信人, 上原 剛, 上地 博之, 斎藤 厚
    1996 年 49 巻 5 号 p. 355-362
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    クローン病患者18例に対し超音波検査を行い, 13例 (72%) で腸管壁の肥厚が認められた.小腸病変, 大腸病変で検出率に差はなかった.壁肥厚として認められたのは29病変であり, 壁厚の平均は4.3±1.9mmであった.29病変中24病変では, 肥厚した病変部位をとり囲むようにして, 厚さ5.1±3.3mmの高エコー帯が認あられ, Fibrofatty proliferation of the mesenteryに相当するものと思われた.8症例22病変については, 治療前後の変化を比較できた.壁厚は治療前が4.2±1.6mm, 治療後が1.4±1.5mmで有意の減少が認められ, 高エコー帯についても治療前が5.0±3.1mm, 治療後が1.3±2.7mmと有意の減少が認められた.したがってクローン病の診断および経過観察に超音波検査は有用であると思われた.
  • 水澤 清昭, 小川 東明
    1996 年 49 巻 5 号 p. 363-367
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    横行結腸に発生した腺扁平上皮癌の1例を経験した.症例は67歳, 男性.腹痛, 腹部膨満を主訴に来院し, 多発性肝転移を伴う横行結腸癌と診断され, 手術目的にて入院した.腹腔内には腹膜播腫ならびに肝両葉に多数の転移巣を認めた.リンパ節転移も肝十二指腸間膜にまで及んでいたため, 通過障害解除のみを主眼とした横行結腸切除を施行した.腫瘍は5.4×6.0cm大で, 全周性で肉眼型は2型であった.病理組織学的検査で中分化型腺癌と扁平上皮癌が混在している所見より, 本腫瘍は横行結腸の腺扁平上皮癌と診断した.上部直腸より口側の大腸に発生する腺扁平上皮癌は稀とされている。自験例を含め現在まで本邦で71例の報告を数えるのみである。その臨床病理学的特徴は, 70歳台, 女性, 右半結腸, 2型, 腫瘍径は5cmを超える進行癌の症例が多く, その発生機転としては腺癌細胞の扁平上皮化生由来の説が現在では最も有力である.
  • 自見 政一郎, 南嶋 洋司, 佐藤 裕, 大畑 佳裕, 千々岩 一男, 壬生 隆一, 田中 雅夫, 植木 隆
    1996 年 49 巻 5 号 p. 368-372
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    放線菌症はActinomyces属の細菌により膿瘍や瘻孔を形成する慢性の化膿性肉芽腫性感染症であり, 近年抗生剤の発達により比較的稀な疾患となっている.今回, 横行結腸に発生した放線菌症の1例を経験した.症例は41歳, 女性.主訴は発熱, 腹痛, 腹部腫瘤.胆嚢摘出, 虫垂切除の既往がある.入院時, 贋左下方に境界不明瞭な手拳大の有痛性腫瘤を触知.便潜血陽性であり, 白血球増多とCRP値の上昇を認めたが, 血液生化学, 凝固系や腫瘍マーカーは正常範囲内.注腸造影で横行結腸に約10cmにわたる鋸歯状の全周性狭窄が認められた.CT, MRIでは, 腹壁に接する6cm大の腫瘤を認めた.抗生剤で炎症を鎮静化した後, 開腹した.大網を巻き込んで腹壁に強固に癒着した横行結腸を中心とした炎症性腫瘤であった.切除標本の病理診断にて特徴的な “菌塊” druse, sulfur granuleを認め, 横行結腸放線菌症と診断した.
  • 黒崎 哲也, 藤川 亨, 片山 隆市, 池内 健二, 高尾 良彦, 大塚 正彦, 穴沢 貞夫
    1996 年 49 巻 5 号 p. 373-377
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸脂肪腫は比較的まれな疾患であるが, 最近の診断技術の向上によりその報告例は増加している.われわれは巨大な結腸脂肪腫を経験したので報告する.症例は54歳男性, 下血を主訴に来院.注腸造影検査, 下部消化管内視鏡検査, CT検査より下行結腸脂肪腫と診断した.直腸単純性潰瘍の並存を認め, 主訴である下血はこれによるものと考えられた.腫瘍は巨大なため内視鏡的切除は不可能と判断し, 結腸部分切除術を施行した.病理診断は脂肪腫 (70×50mm) であった.大腸脂肪腫は3cm前後のものが多く, 径が大きくなるほど腸重積をはじめ諸症状を呈しやすい.今回われわれの症例では70mmの大きさにもかかわらず, 脂肪腫による主だった症状は認められなかった.これには脂肪腫の発生した場所が, 後腹膜に固定された下行結腸であったことが関係していたと考えられる.
  • 根本 充, 千葉 泰彦, 小尾 芳郎, 高橋 利通, 浜口 洋平, 福島 恒男
    1996 年 49 巻 5 号 p. 378-383
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    クローン病における巨大結腸症の報告はほとんどが中毒性巨大結腸症であり, 非中毒性巨大結腸症は非常に稀である.われわれは非中毒性巨大結腸症を伴ったクローン病の1例を経験したので報告する.症例は41歳, 男性で, 21歳の時, 下痢を主訴に近医を受診し, 大腸型クローン病と診断された.薬物栄養療法を38歳まで受けていたが, その後放置していた.1994年10月31日腹部膨満感の精査で腹部単純X線写真上, 最大径22cmの巨大結腸を認め, 11月14日当科紹介入院となった.高カロリー輸液を中心とした保存的治療を開始し, 約1カ月後, 大腸亜全摘術, 回腸人工肛門造設術を施行した.摘出された大腸は, 全長32cm, 横径25cmと著しく短縮し, 深く長い縦走潰瘍を伴っていたが機械的閉塞はなかった.拡張部では炎症所見は軽度で, 線維化による肥厚も含め筋層の肥大を認め, 慢性炎症による腸管の機能的障害が原因と考えられた.
  • 木村 聖路, 鈴木 和夫, 相沢 中, 塩谷 晃, 山形 和史
    1996 年 49 巻 5 号 p. 384-389
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は80歳, 女性, 主訴は下血.糖尿病, 脳出血後遺症で当科加療中, 平成6年11月から平成7年10月までの約1年間に5回にわたる突然の無痛性大量下血で入退院を繰り返した.下血発症時にはいずれも肛門輪直上の下部直腸に浅い潰瘍性病変が観察され, 形状は不整地図状, 小型類円形, Dieulafoy型と多彩であった.保存的治療や内視鏡的止血術にて5回とも速やかに止血し, そのたびに直腸潰瘍も瘢痕化して治癒した.再発を繰り返し再出血が危惧されるため手術適応と判断し, 平成7年10月12日に直腸局所切除, 人工肛門造設術を施行した.組織像は中等度の非特異性炎症所見を伴う上皮欠損であった.臨床経過と内視鏡所見および組織像から急性出血性直腸潰瘍と判断した.本疾患の手術適応は少ないが, たびたび再発を繰り返すため最終的に手術を要したまれな1例であった.
  • 田島 秀浩, 西村 元一, 宮崎 逸夫
    1996 年 49 巻 5 号 p. 390-393
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    1974年から1993年までの20年間に当科で経験した大腸癌手術症例653例のうち他臓器重複癌症例51例 (7.7%) について非重複癌症例と臨床病理学的諸因子の比較検討を行った.大腸癌の分化度, 占拠部位, 根治度, 術後生存率には両群で差はみられなかった.死因として重複癌症例は大腸癌による死亡が少なく, 他臓器癌による死亡が多くなっていたが, 悪性腫瘍による死亡としては両群に差はなかった.重複癌の発生部位としては胃が26例と最も多く, 肝, 胆道, 喉頭, 尿路系, 乳腺などがこれに続き, 三重複癌は5例認められた.重複癌の発生時期は大腸癌手術時から術後10年の間に51例 (56病変) のうち38例 (67.9%) が集中しており, なかでも胃癌は26例中21例 (80.8%) が発生していた.また大腸癌手術症例おける胃癌罹患率 (3.98%) は一般集団の胃癌罹患率 (0.06%) よりも有意に高く, 大腸癌手術時および術後follow-up期間における上部消化管の精査は重要であると思われた.
  • 藤田 正幸, 大矢 正俊, 寺田 春彦, 佐々木 勝海, 赤尾 周一, 石川 宏
    1996 年 49 巻 5 号 p. 394-398
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    S状結腸までの観察を主目的とした大腸内視鏡検査 (S状結腸内視鏡検査) の前処置をより良好にすることを目的として, 緩下剤センノシド (s) と消化管運動賦活剤シサプリド (c) を検査前日に投与する方法の有用性を検討した.痔核等による肛門部症状があり大腸疾患スクリーニングのための大腸内視鏡検査を施行された99例の前処置を, 封筒法によって, (1) 当日GE120mlのみ施行する方法, (2) S (24mg分 1) を服用しGE120mlを施行する方法, (3) C (7.5mg分 3) を服用しGE120mlを施行する方法, (4) SとCの両方を服用しGE120mlを施行する方法の4法に分け, 内視鏡により初めて有形便がみえた部位, 大腸各部位の観察しやすさ, 挿入可能範囲などを検討した.その結果SとCの両方を前日服用し当日GEを施行する方法により, 直腸内の有形便が少量となり, 下行結腸が観察しやすくなり, 時に全大腸が観察できるなど, 本法は, 人間ドックなどで行われるS状結腸内視鏡検査の前処置法として有用と考えられた.
  • 神藤 英二, 望月 英隆, 長谷 和生, 玉熊 正悦
    1996 年 49 巻 5 号 p. 399-404
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸癌前方切除時の生理食塩水2,000mlによる術中直腸内洗浄の有効性を評価するため, 吻合部再発率の改善効果および腸管内遊離癌細胞の除去効果の2点について検討した.吻合部再発については洗浄を行うことで著明な減少を認めた (11.3%→3.5%).しかし粘膜の擦過細胞診による吻合予定部の腸管内遊離癌細胞除去効果の検討では, 洗浄後にも47%の症例でclassIIIb以上の陽性を示し, 遺残する直腸内遊離癌細胞の吻合部再発への関与の可能性が示唆された.とくに低位前方切除においては洗浄後にも70%と高率に癌細胞の遺残が認められ, 術中直腸内洗浄法のさらなる改善の必要性が示唆された.
  • 痔痩と間違い易い直腸肛門病変
    1996 年 49 巻 5 号 p. 405-423
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
  • 1996 年 49 巻 5 号 p. 424-452
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
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