1998年3月現在,欧米を中心に150を越える癌の遺伝子治療のプロトコールが承認され,その臨床試験にはすでに約2,000人の癌患者が:登録されている.しかし,大腸癌に関しては,直接的,間接的遺伝子治療の両者併せても,未だいくつかのプロトコールが承認されたにすぎない.直接的な抗腫瘍効果を発揮する主なプロトコールとしては,毒性のないprodrugである5-FCを細胞毒性のある5-FUに変換するcytosine deaminase遺伝子を導入する自殺遺伝子療法が,肝転移巣に対し臨床試験が開始されている.しかし,未だその結果は報告されていない.さらに,p53遺伝子導入による直接的遺伝子治療も,肝転移巣に対し行われているが,現時点では,その結果も公表されていない,また,これらの殺細胞効果を発揮する遺伝子をCEA陽性癌細胞のみに発現させることが,CEA promotorの使用により,動物モデルで可能となっており,今後の臨床応用に期待がもたれる.一方,間接的遺伝子治療では,IL-2,IL-7,HLA-B7,CEAなどの遺伝子を腫瘍細胞に導入するプロトコールが,進行している(腫瘍ワクチン療法).これらの評価もまた,結論が得られていない.
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