日本大腸肛門病学会雑誌
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51 巻, 10 号
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  • 粘膜・肛門上皮縫縮術式
    野垣 正樹
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1061-1066
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    痔核に対する開放術式である結紮切除術はMilligan, Morganらによる発表以来,半世紀以上の長きに渡り,欧州を中心とした各国において施行されてきた.この事実のみを考えても本術式の評価はすでに確立されているものと思われるが,術後の疼痛の軽減や治癒期間の短縮等を目指して,さらなる改良や新たな工夫が試みられることの意義については論を待つまでもないであろう.われわれも早くから本術式を導入し,標準術式として施行してきたが,術後合併症・後遺症に対する反省からその都度少しずつ工夫・改良を加えながら今日に至っている.その結果として,現在のわれわれの術式は原法とはかなり異なったものとなっているので,その方法および術後成績について報告する.
  • 岩垂 純一
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1067-1075
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    現在,痔核へ対する手術は創の閉鎖を2段階に分けて行う結紮切除術の半閉鎖術式で行っている.つまり,肛門縁までは術後出血を防ぐため,インターロックしつつ連続縫合で行い,いったん結紮し,皮膚の縫合は単に創が合わさるようにゆるめに連続縫合している.痔核手術後の成績であるが,創を開放とした場合の創の全治は術後6週間目以降に見られたのに比し,肛門縁までの閉鎖では術後3週間目に治癒する例が多く,創治癒期間の短縮が見られた.また術当日の疼痛のために鎮痛用注射を必要とした例は開放創で68.4%に見られたのに比較し,肛門縁までの閉鎖では7.3%に見られただけであった.肛門縁まで閉鎖する術式のアンケートによる満足度調査では96.4%に満足が得られており,5年以上経過例と,そうでない例に分けての検討でも,ほぼ同様の結果であった.
  • 松田 保秀, 中村 悟, 石原 廉, 藤井 俊哉, 佐藤 滋美, 木村 浩三, 川上 和彦, 友近 浩
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1072-1082
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    痔核の手術は欧米では閉鎖式結核切除術が一般的であるが,本邦では開放式が主に行われている。私どもは1996年10月より,完全閉鎖術式を標準手術としている.
    私どもは1997年1月から1998年5月までに471例の閉鎖術式による結紮切除術を施行した.男性241例,女性230例,平均年齢は53.9歳であった.手術方法は3ヵ所の結紮切除術を終えてから,3-0または2-0vicryl糸で創を完全閉鎖するものである.合併症としては471例中39例(8.3%)に認めたが,その内わけは皮垂が一番多くて26例で合併症の中で66.7%を占めた.ついで創〓開6例(15.4%),術後出血は3例ときわめて少なかった.その他は難治創2例,狭窄と創感染が各1例認められた.結論的には完全閉鎖術式は創治癒が早くて,術後出血の防止効果がありメリットが多いが,一番の欠点は縫合線部に皮垂ができやすいことである.
  • 日高 久光
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1083-1086
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    近年,痔核に対する手術は肛門の形態と機能の保全が求められ,合併症が少なく,治癒期間の短い術式へとmodifyされている,著者らは内外痔核を別々に切除することで,肛門上皮を完全に温存する術式を試み検討を加えたので報告する.対象は,Goliger分類II~III度の内外痔核55例(男性38例,女性17例).本術式は,まず肛門周囲の皮膚切開創より外痔核および中間痔核を切除後,内痔核をMaC Givneyの結紮器を用いて輪ゴム結紮し,切開創の創辺を縫合固定する.術後治癒日数は22.4日と結紮切除術(30日)より短く,手術時間も短かった.術後合併症は,スキンタグが17例と多かった.本術式は手術侵襲が少なく,治癒も早いため,今後Day Surgeryへの応用も期待できる.
  • 分離結紮術を中心に
    増田 芳夫, 黒川 彰夫, 畑 嘉也
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1087-1093
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    古典的療法のうち痔核結紮術の科学性と有用性に着目し,若干の工夫を加えて分離結紮術を考案したので,その具体的な方法と術後成績について検討した。その手技は非常に簡便で術後障害が少ないことから,痔核根治術として外来治療にも応用できる有用な方法と考えた.過去1年間に分離結紮術を実施した477例の内痔核(2~4度)のうち,外来だけで治療した症例は334例(70.0%)であった.症例の年齢層は14歳の中学生から86歳の高齢者まで広範で,平均は49.1歳であり,軽度の術後出血が0.84%にみられ,導尿が必要だった症例1例(0.21%)を認めたが,その他の術後障害はなく,安全に実施できた.また本法の特徴でもある術後瘢痕は弾力に富み柔らかく,便失禁,soiling,ガス漏れ,瘢痕痛などの訴える症例は認められなかった.
  • 馬場 正三
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1094-1100
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 松田 圭二, 横山 正, 篠崎 大, 鈴木 公孝, 渡辺 聡明, 正木 忠彦, 武藤 徹一郎
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1101-1108
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    UC合併腫瘍を早期に発見するためのサーベイランス,およびp53免疫染色の臨床応用にづいて報告する.7年以上経過した全大腸炎型・左側大腸炎型の208例に対し,年1回の大腸内視鏡検査を行った.5例の浸潤癌が発見された(2.4%)が,サーベイランスを経ずに発見された5例の大腸癌に比べ予後は良好であり,サーベイランスはUC合併腫瘍の早期発見に有効であった.p53蛋白過剰発現は,UC合併浸潤癌では89%(8/9),HGDで70%(7/10),LGDで57%(13/23),腫瘍で0%(0/8),INDで0%(0/9),NEGで0%(0/37症例)であった.一方,非IBD大腸癌では69%(59/86)であった.免疫組織染色を用いたp53蛋白過剰発現の検索は,組織診断と併せてUCのdysplaiaや癌化例発見に,そして腺腫との鑑別に有用であると考えられた.
  • 服部 隆志, 藤田 力也
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1109-1112
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    現在わが国では大腸癌1次スクリーニング法として便潜血検査が行われている.確かに世界的にもその有効性は証明されているが期待したほどの死亡率効果ではなかった.より優れた感度・特異度・費用効果を有する検診法が望まれている.近年,分子生物学の進歩により大腸癌の遺伝子研究も盛んに行われてきている.大腸癌の遺伝子学的スクリーニング法も糞便を用いた研究レベルでの検討がここ数年報告されている.アメリカ癌研究所が1996年に発表した"Early detection research program at the NCI"では大腸癌の遺伝子診断の有用性を,(a)家族性大腸癌家系患者における癌の発症前診断をする,(b)検診的意味合いでの大腸癌細胞の検出,(c)個々の癌についての特性を遺伝子を用いて診断する,の3つに分類している.本稿では(b)の検診を中心として,遺伝子異常を用いた大腸癌スクリーニングについて未来への可能性も含めて言及した.
  • 木内 喜孝, 樋渡 信夫, 千田 正樹, 熊谷 進司, 高木 承, 根来 健一, 豊田 隆謙
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1113-1117
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    テロメアはヒト体細胞において一細胞分裂ごとに短縮することより,細胞分裂回数を数えるマーカーと考えられている.この特徴を利用して,潰瘍性大腸炎の発癌リスク評価を試みた.またテロメラーゼはde novoでテロメアを伸長させる酵素で,大腸癌においても9割以上で高発現を示すことより,診断マーカー,治療の標的として有望である.臨床検体を用いたテロメラーゼ活性の検出法として,従来からのTRAP法と新規に開発したhTERT遺伝子のin situ hybridization法について,その結果と特徴について記述した.
  • 小野寺 久, 有井 滋樹, 今村 正之
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1118-1124
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移における分子生物学的研究の意義につき解説した.従来肝転移予知には静脈侵襲深度が有用であったが,癌の浸潤・転移のプロセスの解明が進むにつれ,この事実に対する分子生物学的裏付けが明らかになってきた.血管内皮細胞の増殖作用を有するVEGFや基底膜破壊に関与するMMPはとりわけ重要であるが,著者らが大腸癌66例に対してVEGF,MMP familyのmRNA解析を行った結果,肝転移例に有意に発現度が高かった.また流血中の癌細胞検出の目的で,cytokeratin20のmRNAを測定すると転移再発例に有意に陽性例が多かった.さらに糖鎖抗原であるsialyl Lewis Xや接着因子としてのCD44も肝転移予測に有用であると報告されている.これらが従来の予後因子では肩代わりできない独立した予後因子かどうかは,多変量解析による評価が必要であるが,単に予測のみでなく,転移の予防や治療の戦略を確立する意味でも分子生物学的研究の一層の発展が期待される.
  • 冨田 尚裕, 大西 直, 多田 正知, 大植 雅之, 関本 貢嗣, 先田 功, 玉木 康博, 門田 守人, 大久保 公策
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1125-1131
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    近年,上皮細胞で特異的に発現する遺伝子のRT-PCRを利用して体液やリンパ節中に存在する微量の癌細胞を検出し,癌の進行度評価や治療方針の選択に応用する試みが報告'されている.しかしながら現在まで報告されているマーカーのほとんどはその組織特異性に問題があり,実際の臨床応用は困難である.われわれはヒトゲノムプロジェクトの一環として作製されている3'directed cDNA libraryを用いて,大腸組織特異的な発現を示す候補遺伝子マーカーのスクリーニングを行い,その臨床応用を検討している.まず正常大腸粘膜から作製した3'directed cDNA libraryと他のlibraryの発現profileの比較を行い,次いで種々の組織のRNAを用いたRT-PCRから最終的にgs04094が特異的遺伝子マーカーとして選択された.gs04094は胃,小腸,大腸などの消化管上皮で発現し,正常リンパ節,肝,腹膜,脂肪組織,皮膚などでの発現は全く認めなかった.大腸癌組織のRNAを正常リンパ節のRNAで希釈して行った実験から,その検出感度は10と算定された.また上流のcoding regionのcDNAクローニングを行った結果,このgs04094はchloride channelをコードする遺伝子であることが判明した.RT-PCR法を用いた癌の微小転移診断においてはその発現特異性が最も重要な問題であるが,3'directed cDNA libraryは組織特異的遺伝子マーカーの検索に有用であると考えられた.
  • 村松 博士, 新津 洋司郎
    1998 年 51 巻 10 号 p. 1132-1137
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    1998年3月現在,欧米を中心に150を越える癌の遺伝子治療のプロトコールが承認され,その臨床試験にはすでに約2,000人の癌患者が:登録されている.しかし,大腸癌に関しては,直接的,間接的遺伝子治療の両者併せても,未だいくつかのプロトコールが承認されたにすぎない.直接的な抗腫瘍効果を発揮する主なプロトコールとしては,毒性のないprodrugである5-FCを細胞毒性のある5-FUに変換するcytosine deaminase遺伝子を導入する自殺遺伝子療法が,肝転移巣に対し臨床試験が開始されている.しかし,未だその結果は報告されていない.さらに,p53遺伝子導入による直接的遺伝子治療も,肝転移巣に対し行われているが,現時点では,その結果も公表されていない,また,これらの殺細胞効果を発揮する遺伝子をCEA陽性癌細胞のみに発現させることが,CEA promotorの使用により,動物モデルで可能となっており,今後の臨床応用に期待がもたれる.一方,間接的遺伝子治療では,IL-2,IL-7,HLA-B7,CEAなどの遺伝子を腫瘍細胞に導入するプロトコールが,進行している(腫瘍ワクチン療法).これらの評価もまた,結論が得られていない.
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