会陰部血管腫は報告例も少なく,非常に稀な疾患である.著者らは陰茎・陰嚢皮下,会陰部肛門周囲から直腸周囲骨盤腔内におよぶ広範な血管腫に対し,各種画像診断をもとに保存的治療を選択した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は18歳の男性で,主訴は肛門痛,排便時出血,高熱であった.出生時より会陰部に赤褐色の小腫瘤を認め,小児期より週に1度程度の割合で排便時の激痛,出血と高熱を呈し,近医にて抗生物質の内服薬を投与され軽快していた.5歳時に会陰部の血管腫の治療を受けたが,治療後も徐々に会陰部の腫瘤は増大し,主訴が持続するため紹介入院となった.各種画像所見にて完全摘出が困難な広範囲な会陰部血管腫と診断した.年齢および社会的背景を考慮して,保存的加療を行った.現在症状は消失している.広範な会陰部血管腫は稀であるが,不容易な治療は不幸な転帰を招来する可能性があり,治療法の選択は慎重に行うべきだと考えられた.
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