日本大腸肛門病学会雑誌
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66 巻, 1 号
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原著
  • 及川 芳徳, 藤本 佳也, 秋吉 高志, 小西 毅, 長山 聡, 福長 洋介, 上野 雅資
    2013 年 66 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2013年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    目的:大腸癌卵巣転移切除症例の臨床病理学的特徴について検討する.
    方法:2005年5月から2011年8月までに当院で大腸癌卵巣転移に対し卵巣切除術を施行した20例について検討した.
    結果:発見時有症状は14例(70%),卵巣腫瘍径中央値は12.5cm(4~30cm),異時性卵巣転移15例(75%)の原発巣切除後から発見までの期間中央値は15ヵ月(3~63ヵ月)であった.原発巣の特徴として左側結腸・直腸(75%),高・中分化型(100%),SS以深(90%),リンパ節転移陽性例(85%)が多かった.卵巣転移は両側性7例(35%),片側性13例(65%)で腹膜播種を各々86%,24%に伴っていた.大腸原発巣術後の生存期間中央値は38ヵ月(11~89ヵ月)で,5年以上生存例を7例認めた.
    結論:大腸癌卵巣転移症例は切除により症状緩和が得られ長期予後が得られる場合もあり切除が望ましい.
臨床研究
  • 松岡 宏, 前田 耕太郎, 花井 恒一, 佐藤 美信, 升森 宏次, 小出 欣和, 勝野 秀稔, 野呂 智仁, 本多 克行, 塩田 規帆, ...
    2013 年 66 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2013年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    進行大腸癌化学療法であるXELOX±BV療法の有効性・安全性を確認するための第II相臨床試験を計画した.[方法]主評価項目は奏効率,副次的評価項目は無増悪生存期間,安全性(手足症候群発生割合),治療成功期間とした.本試験では全例に対し医師,看護師,薬剤師によるチームで副作用対策に取り組んだ.この結果,副作用発現率の低下と相対的用量強度の維持に有効であったため報告する.
    国内I/II相試験であるJO19380試験での手足症候群(HFS)発現率はgrade2/3が17.2%/1.7%であったが当院では13.3%/0%と良好な結果であった.相対的用量強度は6コース時点でL-OHP 89.2%,Xeloda 91.0%で良好であった.またその効果はCR/PR/NC/PD割合がそれぞれ10%/56.7%/16.7%/3.3%で奏効率66.7%,病勢制御率96.7%と満足できる結果であった.[結語]今後も増加するであろう外来での抗癌剤治療では,自宅での管理がより一層重要となる.チームでの取り組みは今後更に必要になると考えられる.
  • 田中 彰, 鈴木 俊之, 岡田 和丈, 貞廣 荘太郎
    2013 年 66 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2013年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    【目的】大学病院など高度医療を担う病院では医師・入院ベッド不足が慢性化し,痔核診療には簡便ながら高リスク患者にも適用可能な治療法が求められていた.低侵襲・早期止血効果を特徴とするALTA療法を,出血素因(血液疾患,肝硬変,抗血栓療法)のある高リスク患者に適用し,長期成績と安全性を検証した.【方法】118例(Goligher III-IV 75例)中,出血素因29例,他の全身疾患10例を含む.原則入院,低位腰麻または局麻で施行し,術後2週と3ヵ月に出血・疼痛・脱出の改善と満足度(満5点)を評価した.【成績】投与量,在院日数と有害事象は,出血素因や全身疾患の有無で差がなかった.3ヵ月後症状消失率約90%,患者満足度4.7±0.7だった.再発率は11%(観察期間中央値20月)で,出血素因者に再出血(P=0.06),再脱出(P=0.03)が多かった.再ALTA療法後出血消失91%,脱出消失82%,満足度3.9±1.4だった.【結論】ALTA療法は高リスク患者でも安全で,再発例に対しても実施可能であった.
症例報告
  • 佐藤 力弥, 川村 統勇, 川村 武, 佐々木 邦明, 細野 知宏
    2013 年 66 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2013年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    患者は51歳,男性.10日以上持続する軽度の左下腹部痛を主訴に受診した.来院時に発熱はみられず,左下腹部に圧痛を認めたが腹膜刺激症状はみられなかった.血液検査で炎症反応増加があり,腹部CT検査でS状結腸壁肥厚および周囲脂肪組織の濃度上昇を認めS状結腸憩室炎と診断した.入院にて絶食,補液,抗生剤による保存的治療を行ったが軽快せず,入院4日目に施行した腹部造影CT検査,超音波検査でS状結腸周囲の膿瘍形成を認めた.手術の方針としS状結腸部分切除術を行い,病理組織学的には腸間膜膿瘍を合併したS状結腸憩室炎と診断された.結腸憩室炎の合併症として穿孔による汎発性腹膜炎や腹腔内膿瘍はよくみられるが,本症例のように腸間膜膿瘍を形成することは比較的稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 久田 将之, 河北 英明, 和田 建彦, 井上 敬一郎, 土田 明彦, 青木 達哉
    2013 年 66 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性.飲酒後の嘔吐および吐血にてMallory-Weiss syndromeと診断され緊急入院となる.発熱と腹痛に対してdiclofenac sodiumを計9日間にわたり計500mgを投与した.最終投与6日後,腸閉塞を認めた.下部消化管内視鏡検査では脾曲部の膜様狭窄を認め,これに対し内視鏡的拡張術を施行した.その後,保存的加療を行ったが回腸末端部の狭窄による腸閉塞を認めた.再度内視鏡的拡張術を試みたが拡張は困難であったため発症後32日に回盲部切除術を施行した.狭窄部の終末回腸の漿膜は,えくぼ状のひきつれを認め病理所見では筋層までの潰瘍形成を認めたが血管炎や肉芽腫の形成は認めず非特異的な所見のみにとどまった.臨床経過および非特異的な病理所見よりNSAID腸症と診断した.今回,我々は短期間のNSAIDの投与にもかかわらず発症したNSAID腸症の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 小倉 拓也, 大司 俊郎, 岡崎 聡, 嘉和知 靖之
    2013 年 66 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2013年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.2010年5月夕食後より心窩部痛・嘔吐出現し,翌日症状増悪して救急搬送され,当科受診となった.腹部造影CT検査では盲腸に造影効果を伴った腫瘤とそれより口側の腸管の拡張を認めた.盲腸癌イレウスと診断し,同日回盲部切除術を施行した.術後はおおむね良好に経過し第11病日に退院となった.切除標本の病理組織学的所見はtype2,30×30mm,深達度SSであり,組織像には杯細胞カルチノイドに類似した所見を認めた.既往で2001年7月に急性虫垂炎に対して虫垂切除術が施行されており,その際の虫垂の病理診断は杯細胞カルチノイドであったことから,今回の腫瘍は虫垂カルチノイドの再発と診断した.今回の手術の半年後,S状結腸再発および腹膜播種を認めている.悪性度の高いとされる杯細胞カルチノイドが再発までに9年という長い期間を要したことは非常に稀有である.我々は,虫垂切除後9年で盲腸,S状結腸,腹膜に再発した杯細胞カルチノイドの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 増田 勉, 稲次 直樹, 吉川 周作, 内田 秀樹, 久下 博之, 横谷 倫世, 山岡 健太郎, 稲垣 水美, 下林 孝好, 榎本 泰典
    2013 年 66 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2013年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は80代,女性.肛門からの脱出を主訴に近医にて直腸脱と診断,Gant-Miwa-Thiersch手術を施行された.手術中に下部直腸の亜全周性側方発育型腫瘍を認めたため,手術は中止となり,当センターに紹介された.怒責診断にて,肛門より約10cm脱出し,下部に亜全周性側方発育型腫瘍を合併する直腸を認めた.術前大腸内視鏡検査で腺腫または腺腫成分を伴う粘膜内癌と診断した.下部直腸腫瘍と直腸脱の両方の根治性を考えて,経会陰的アプローチで侵襲が少なく,腸管の全層切除ができるAltemeier法を施行した.切除腸管は15cm,腫瘍径は90×40mmであった.病理組織学的検査結果は,腺腫成分を伴う乳頭腺癌で,深達度はm,ly0,v0であった.術後経過は良好で,排便機能の増悪は認めなかった.術後8ヵ月後の現在,直腸の脱出を認めていない.下部直腸に側方発育型腫瘍を合併した直腸脱に対して施行したAltemeier手術が有効であることが示唆された.
  • 矢野 匡亮, 小池 貴志, 倉持 純一, 赤木 一成, 指山 浩志, 堤 修, 中島 康雄, 浜畑 幸弘, 辻仲 康伸
    2013 年 66 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2013年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.約1年前から全身倦怠感があった.2010年8月より血便,大量の下痢を認めていた.2010年11月,肛門からの腫瘤の脱出を主訴に当科を紹介受診した.血液検査で著明な貧血と低カリウム血症を認めた.大腸内視鏡検査で直腸に全周性の絨毛腫瘍を認めた.拡大観察で深達度MからSM浅層までの癌と診断した.電解質異常と貧血を補正の後,低位前方切除術を施行した.切除標本肉眼所見では直腸S状部から上部直腸にかけて90mm×80mm大の絨毛腫瘍を認め,病理組織学的には腫瘍の大部分は絨毛腺腫の像であったが,一部に粘膜内癌を認めた.術後,電解質異常は速やかに改善した.術後1年4ヵ月の現在,再発を認めていない.絨毛腫瘍からの多量の粘液分泌によりElectrolyte Depletion Syndorome(EDS)を呈した症例であると考えられた.
  • 斎藤 健一郎, 宗本 義則, 高嶋 吉浩, 天谷 奨, 飯田 善郎
    2013 年 66 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2013年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の女性.40歳時に潰瘍性大腸炎を発症し,他院へ通院していた.2008年6月の定期大腸内視鏡検査でcolitic cancerと診断され,当院へ紹介受診した.同年7月,大腸全摘,回腸嚢肛門吻合術を施行した.病理診断はtype4,4.5×3.8cm,muc>tub2>por,se,n0(0/72),ly1,v1であった.術後補助化学療法は本人の希望で行わなかった.2010年3月に腸閉塞を発症し,CT,内視鏡検査により吻合部再発と診断した.遠隔転移は認めず,腹会陰式回腸嚢全摘,回腸人工肛門造設術を施行した.病理診断は9.3×9.0cm,por-sig>muc,n+(15/20)で,初回のS状結腸癌の再発として矛盾しなかった.再発形式としては初回手術時の深達度がSEで,組織型に低分化型腺癌を含んでおり,また再発時の切除標本で,腫瘍の首座が粘膜下層以深にあったことより,腹膜播種再発と考えた.
    Colitic cancerの術後吻合部再発の報告例は稀少であり,その再発形式を考察して報告する.
  • 富沢 賢治, 花岡 裕, 戸田 重夫, 森山 仁, 的場 周一郎, 黒柳 洋弥
    2013 年 66 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2013年
    公開日: 2012/12/27
    ジャーナル フリー
    今回われわれは脳室腹腔シャントを有する3例の大腸癌に対してそれぞれ腹腔鏡下に拡大右半結腸切除術,ハルトマン手術,内肛門括約筋切除術(intersphincteric resection:以下ISR)を施行した.すべての症例に対して特に脳室腹腔シャントチューブに処置を加えることなく気腹圧8mmHgの設定にて術中合併症を認めず,通常の腹腔鏡手術が安全に施行可能であり,術後も合併症を認めなかった.脳室腹腔シャントを有する大腸癌患者に対してチューブに無処置で腹腔鏡手術を施行した症例は過去に国内外に存在しなく,本報告が初の3例報告となる.無処置下で腹腔鏡手術を安全に施行するためには,術前にシャントが逆流防止弁つきで正常に作動していること,術中に何らかの形で脳圧をモニタリングすること,術後にCTにて脳室の拡大所見を認めないことなどについて注意する必要がある.
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