1995年6月から翌年5月までの間に全国11施設において, 尿路感染症と診断された患者から分離された菌株 (
Enterococcus faecalis, Staphylococcus aureus, Escherichia coli, Klebsiella spp., Pseudomonas aemginosa) を供試し, それらの各種抗菌薬に対する感受性を測定し, 1989~1994年と1995年の感受性を比較した。比較は菌種を単純性尿路感染症と複雑性尿路感染症 (カテーテル非留置とカテーテル留置を含む) に分類して行った。
E. faecalisでは, 1994年以前に比べマクロライド系薬剤に対して, 単純性尿路感染症からの分離菌に耐性株が増加し, 1989年以来初めて過半数を越えた (10株/18株)。
S. aureusでは,感受性の変化はほとんど認められず,Vancomycinが最も強い抗菌力を示し2μg/mlで全ての菌株の発育を阻止した。
E. coliでは, キノロン系薬剤に対する低感受性株が, 複雑性尿路感染症で増加しMIC
90が7~8段階後退した。
Klebsiella spp.では1993年から1994年に全般的に感受性の低下がみられたが, ほとんどの薬剤に対して1995年は回復し, ペニシリン系薬剤を除き優れた感受性を示した。特に単純性尿路感染症では, 低感受性株はほとんど検出されなかった。
P. aeruginosaではGentamicinに対して, 複雑性尿路感染症からの分離菌の感受性が低下した。また, キノロン系薬剤に対しても複雑性尿路感染症において1991年から1994年まで低感受性株が減少傾向にあったが, 1995年は増加しMIC
50が3~5段階後退した。
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