種々の合成ペニシリンのうち, Ampicillin (AB-PC) は広域スペクトルをもつが, ブドウ球菌, 大腸菌, 変形菌, 肺炎桿菌などの耐性菌の分離頻度も増加傾向にあり, 緑膿菌,
Cloacaなどには元来無効であるとされる. これらは, ペニシリンを加水分解するβ-ラクタマーゼをもつためであり, Isoxazolyl系の合成ペニシリンDicloxa Cillin (MDI-PC) がこの酵素作用を阻害することが報告されている. そこで, この性質を利用し, 両者の合剤が感染実験に試みられた結果, この合剤が感染防禦に対して相乗的作用をもつことがみとめられている1, 2, 3).
一方, 呼吸器感染の分野においても, 抗生剤を使用する機会は多いが, 最近はグラム陰性桿菌の感染が増加している4, 5) ため, 広域スパクトルをもつ強力な薬剤の投与を要するばあいがある. 呼吸器感染のうちで, 重要なものの1つに, 慢性呼吸器疾患, 特に慢性閉塞性呼吸器疾患 (Chronic obstructive lung disease: COLD) の急性増悪があり, 血液ガス所見の悪化による呼吸不全状態を惹起して, 最悪のばあいにはCO
2 narcosisを招来するなどの点から, これらに対する早期の対策を必要とし, このさい適切な抗生剤の選択を迫られることになる.
今回, 東洋醸造株式会社からAB-PCとMDI-PCの合剤 (HI-56) の提供をうけ, 呼吸器感染に使用する機会を得たので, 慢性閉塞性呼吸器疾患で経過を追つている患者の中から適応と考えられる症例を選んで, AB-PCを対照薬として, 2重盲検法で比較検討したので, 報告する.
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