1982年7月から外科感染症分離菌とその薬剤感受性に関する多施設共同研究を行ってきているが, ここでは1997年度 (1997年4月-1998年3月) の結果を中心にまとめた。1年間で調査対象となった症例は215例であり, このうち174例 (80.9%) から420株の細菌が分離された。 一次感染症から170株, 術後感染症からは250株が分離され, 一次感染症では術後感染症に比べ嫌気性菌の分離率が高く, 術後感染症では好気性グラム陽性菌や
Pseudomonas aemginosaの比率が高かった。 全体では好気性グラム陽性菌は
Enlerococcu faecalisの分離頻度が最も高かった。
E.faecalisに次ぐのは
Slaphylococcus aureusであり, とくに術後感染症からの分離頻度が高かった。 嫌気性グラム陽性菌では, 一次 感染症, 術後感染症ともに
Peplostreplococcus spp. や
Streptococcus spp. が多く分離された。 好気性グラム陰性 菌については, 一次感染症では
Escherichia coli, P. aeruginosa, Klebsiella pneumoniae の順であり, 術後感染症では
P. aeruginosa, E. coli, K. pneumoniaeの順であった。 嫌気性グラム陰性菌では, 一次感染症, 術後感染症ともに
Bacleroides fragilis groupの占める比率が高かった。 年次的には一次感染症でこれまで減少傾向にあった好気性グラム陰性菌の比率が増加に転じた。 術後感染症では好気性菌はグラム陽性菌の増加とグラム陰性菌の減少が継続し, 嫌気性菌ではグラム陽性菌は微減, グラム陰性菌は微増を示した。 薬剤感受性では,
S. aureusには
Vancomycin, Arbekacinに対する耐性株は認めず,
Enlerococcus spp. にもVCM耐性株はみられなかった。 カルバペネム薬に対する
P. aeruginosaの耐性の進行は1997年度分離株では認めなかった。
B. fragilis groupのセフェム薬に対する耐性は更に進行した。
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