The Japanese Journal of Antibiotics
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36 巻, 8 号
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  • 福留 厚, 松峯 敬夫
    1983 年 36 巻 8 号 p. 1999-2006
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefoxitinsodium (マーキシン注射用, 以下CFXと略す) はStreptomyces lactamduransが産生するCephamycin Cの誘導体として, 最初に開発されたCephamycin系抗生物質である。CFXは, 特にグラム陰性桿菌のうち, Escherichia coli, Klebsiella, Proteusに対して, 優れた抗菌力を示し, 又多くの抗生物質に耐性の嫌気性菌Bacteroides fragilisに対しても極めて有効であると言われている1~4)。
    今回, 著者らは消化器外科領域での重症感染症に対して, CFXを使用し, その臨床効果, 起炎菌, 副作用に対する検討を行つたので報告する。
  • 石川 鋭, 紙田 信彦, 佐々木 喜一, 長堀 順二, 木嶋 泰興, 黒川 博之, 岡崎 護, 斎藤 寛文, 原田 伸, 山口 善友
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2007-2016
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefoxitin (CFX, 商品名: マーキシン注射用) は, 1972年米国のMerck Sharp & Dohme Research Laboratoriesによつて, Streptomyces lactamduransが産生するCephamycin Cの誘導体として開発された世界最初のCephamycin系抗生物質である。CFXは, β-Lactam環の7α 位にMethoxy基を有するため, 各種細菌が産生するβ-Lactamaseに対して極めて安定で, グラム陽性菌からグラム陰性菌にわたる幅広い抗菌スペクトルを持つている。特に, グラム陰性桿菌のうち, Escherichia coli, Klebsiella, Proteusなどに強い抗菌力を示し, 又嫌気性菌Bacteroides fragilisにも優れた抗菌力を有することが報告されている1, 2)。
    今回, われわれは一般消化器外科領域の術後感染症及び術後の感染予防にCFXを使用し, その臨床効果, 細菌学的効果及び副作用について検討を行つたので報告する。
  • 菊田 高行, 増田 信義, 杵渕 孝雄, 寶田 博
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2017-2028
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefroxadine (CXD) は1972年スイスCiba-Geigy社が開発した経口合成Cephalosporin系抗生物質であり, 化学名は7β-[D-2-Amino-2-(1, 4-cyclohexadienyl)-acetamido]-3-methoxy-ceph-3-em-4-carboxylic acid, 分子量は401.43, 構造式は図1のとおりである1, 2)。
    本剤はCephalexin (CEX) など他のCephalosporin系抗生物質と同様の抗菌スペクトルを有するが, 抗菌力においては, これらよりも優れ, 特にグラム陽性菌, グラム陰性菌に対する抗菌力は共にCEXに比べ, 同程度から2倍程度もあると言われている3~7)。
    一方, 本剤の毒性は他のCePhalosporin系抗生物質と比べ, はるかに弱く8~11), 他科領域での使用経験から副作用の少ない安全性の高い薬剤とされている2, 12, 13)。
    口腔領域は, その環境から菌種が多彩であり, これによる感染症も近年多様性を増し, 難治性の感染症に遭遇する機会も増加しているが, この領域の感染症に対する本剤の効果は未だ解明されていないのが現状である。そこで今回われわれは歯科口腔外科領域の各種感染症について本剤を使用し, その治療成績を検討した。
  • 北口 正, 衣非 脩
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2029-2052
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam (CTM, Pansporin (R)) は, 武田薬品工業株式会社中央研究所で合成された注射用セフェム系抗生剤である (図1)。
    CTMはグラム陽性菌, グラム陰性菌に対し広い抗菌スペクトラムを有し, 諸種の細菌に対して, 強い抗菌力を示すことが認められた。更にin vivoの感染防御, 治療実験においても, in vitroの抗菌力と相関して優れた効果を示した。
    臨床的にも一般臨床試験並びに二重盲検比較対照試験において1~4), 本剤の有効性, 安全性が検討され, 各科領域の各種感染症に優れた有用性を示すことが確認された。
    CTMは日本においては1981年2月に市販され, 現在約2年を経過し, 各種感染症に広く使用されている。
    新医薬品については, 市販後医薬品監視 (PMS: Postmarketing surveillance) が重要とされ, 市販後の使用条件下での有効性, 安全性の確認, 特に未知・重篤副作用の発見, 更に特殊患者層 (高齢者, 腎障害者など) への投与や, 長期投与時の有効性並びに安全性フォローアップなどを目的として組織的な調査が行われるようになつてきている。
    当社においても, 新医薬品について, 製造承認以後Phase IV studyの一環として使用成績調査を実施しており, Sulbenicillin (リラシリン (R)) 5), Citicoline (ニコリン (R) 注射液) 6), Tribenoside (ヘモクロン (R)) 7) などについてその成績を報告してきた。
    CTMについても, 承認以後直ちに使用成績調査を開始し, 承認後2年間に10,499症例の使用成績を収集した。今回, CTMの有効性と安全性について詳細な集計, 解析を行つたので報告する。
  • 川越 光博, 成島 勝彦, 木谷 敦, 渋谷 利雄, 原 まさ子, 細野 清士, 設楽 政次
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2053-2057
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam (CTM, Pansporin (R)) は武田薬品工業中央研究所で開発されたセフェム系抗生剤で, 広い抗菌スペクトラムを持つており1, 2), その後数種のセフェム系抗生剤が発売された現在でもグラム陽性菌と陰性菌に対する抗菌力のバランスの良さではトップクラスにある3, 4)。今まで, その有効性の検討は, 他の抗生剤と同様に, MIC又は臨床効果で別個になされることが多かつた。今回我々は, CTMを主として呼吸器感染症に投与し, 臨床症状, 検出菌に対するMIC及び喀痰内菌量の変化を指標とし有効性を検討したので報告する。
  • 特にCefmetazoleの骨盤死腔浸出液中濃度
    久保田 武美
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2058-2064
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    術後感染予防に繁用される抗生剤に関して従来, 血中濃度, 尿中排泄, 性器内濃度, 検出菌に対するMICなどについては多くの報告がなされている。しかし, 手術により解剖学的変化を受けた後の組織における抗生剤の移行状況に関する報告は比較的少ない1, 2)。そこで今回, 術後感染予防に用いる広範囲抗生剤としてCefmetazole (CMZ, Cefmetazon (R) 三共) を選び, 経腟ドレーン中抗生剤濃度の測定により, 広汎性子宮全摘術後骨盤死腔及び単純子宮全摘術後腟断端部への抗生剤の移行状況について詳細に検討したので報告する。
  • 金沢 裕, 倉又 利夫, 松本 清幸
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2065-2072
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefmetazole (CMZ) は, 三共株式会社において開発されたセフェム骨格の7α 位にメトキシ基を有するセファマイシン系の抗生物質である。その作用は殺菌的であり, β-Lactamaseに強い抵抗性を持ち, β-Lactamase産生菌に対しても非産生菌に対すると同様の抗菌力を有するだけでなく, セファロスポリン系抗生物質に比べ, 特にグラム陰性桿菌 (大腸菌, 肺炎桿菌, インドール陽性, 陰性変形菌), 嫌気性菌 (バクテロイデス等) に強い抗菌力を示すと報告1~4) されている。又, 臨床的にもこれらの基礎データを反映して優れた臨床効果が認められており, 新しいセフェム系抗生物質の二重盲検法による薬効比較試験においても, 従来基準薬として多用されてきたCefazolin (CEZ) に代つて本剤が対照薬として採用される場合も多くなつてきている。
    今回われわれは, 臨床分離菌株検査としてのディスク法による本剤に対する感受性測定法を検討したので報告する。
    CMZのように新しく出現した薬剤の臨床的な感受性, 耐性に相当する最小発育阻止濃度 (MIC) 値の基準は全く不明で, 暫定的には推定される体液中有効濃度との関連から一応の基準が論ぜられたとしても, 最終的には多くの起炎菌について得たMIC値と, 薬剤投与による臨床効果との集計の上に将来定められるべきものであり, 従つて現時点においては適当に規定された実験条件でのMIC値を推定することが臨床的感受性検査の目的と考えられる。この目的に沿うように, すでに金沢5~8) により設定されたMIC値の推定を目的とするSingle-disc法による各種化学療法剤の感受性測定法についてたびたび報告して来たが, CMZについても本法が適用されるかどうかを検討した。
  • 藤井 一彦, 藤田 公生, 塚田 隆, 中原 正男, 神林 知幸, 阿曽 佳郎
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2073-2076
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotaxime (Clafbran (R): CTX) はヘキスト社とルセル社によつて開発された新しいセファロスポリン系抗生物質で, β-Lactamaseに対して安定であり, グラム陰性桿菌, 特に最近問題になつているProteus, Serratia, Enterobacter, 緑膿菌に対して強い抗菌力を持つている1~3)。われわれは本物質について実験的研究を行つてきたが4, 5), 今回複雑性尿路感染症に対して使用して, その臨床効果を検討したので報告する。
  • 木藤 光彦, 古川 信, 小坂 進
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2077-2080
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    従来, 胆道感染症の治療における抗菌剤の役割については重視されてきたところであるが, 抗菌剤の胆汁への移行についての検討が主であつた。
    しかし, 胆汁への移行が最も優れているとされる抗菌剤のPiperacillin1) (以後PIPCと略) にしても, 胆嚢管が閉塞状態にある急性胆嚢炎等の場合, どの程度の効果が期待できるか疑問である。
    そこで, PIPCの胆嚢組織移行について胆嚢管閉塞状態の影響を検討してみた。
  • 今泉 宗久, 木村 次郎, 秋山 清二, 内田 達男, 市村 格, 平井 浩三, 川原 勝彦, 近藤 達平
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2081-2092
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 新しいCephem系抗生剤が次々と開発されている。特にOxacephem系抗生剤であるLatamoxef (LMOX, Shiomarin (R)) は従来のCephalosporin剤とは異なり, セファロスポリン骨格の母核のS原子がO原子に変つていることが特徴となつている。この薬剤は広域の抗菌スペクトルを有し, β-Lactamaseに安定で, Cephalosporin耐性菌にも抗菌性を有すると言われている1~3)。又, 全国集計による成績から呼吸器感染症に対する有効性が示され4), 臨床的に広く使われ始めているが, 本剤の胸腔内臓器への移行に関する臨床報告はほとんどみあたらない。
    今回, われわれはLMOXの体内動態, 特に肺組織内移行を測定して, 開胸手術患者の術後感染予防としての投与法並びに術後感染症についての使用経験を含めて検討を加えたので報告する。
  • 森 芳正, 平山 隆, 菊地 金男
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2093-2097
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    オキサセフェム系の新世代の抗生物質Latamoxef (略号: LMOX, 商品名: Shiomarin (R) は従来のセフェム骨格の1位の硫黄 (S) 原子を酸素 (O) 原子に置換したもので1), 特性としては他のセフェム系抗生物質に比ベグラム陰性菌及び嫌気性菌に対する抗菌力の増強が挙げられている2~4)。更に各種体液内あるいは組織内への移行が良好であると言われている5~11)。そこで我々は, 下部消化管手術直前にLMOXを投与し, 臓器切除時の血中LMOX濃度, 及び組織内LMOX濃度を測定し, 本剤の下部消化管手術時の予防的効果, 並びに炎症性大腸疾患に対する有効性を検討したので報告する。
  • 出口 浩一, 増田 幸子
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2098-2102
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    私たちは, 1981年に女子急性淋疾に対するSpectinomycin (SPCM, Trobicin (R)) とAmpicillin (ABPC) の併用に関する検討を行い, 主に臨床的検討成績について, Jap., J.Antibiotics1) 誌上で報告したが, 本検討では, 頸管分泌物内の淋菌以外の好気性菌, 嫌気性菌の検索, 各種分離菌のSPCM, ABPCに対する感受性 (MIC), そしてSPCMとABPCの試験管内抗菌協力作用について検討を行つた。
    検討の結果, 淋菌を検出した20症例の頸管分泌物からは, 好気性菌は, Streptococcus agalactiae (Group B Streptococcus, GBS), 嫌気性菌としては, Peptococcus spp., Peptostreptococcus spp.を高率に検出した。又, 検出した20株のNeisseria gonorrhoeaeのうち, 5株 (25%) は, β-Lactamase産生株だつた。そしてSPCMとABPCの試験管内抗菌協力作用は, 相加的な効果を推察できる結果が得られた。以上の検討成績について報告する。
  • 山田 穂積, 中西 弘, 山口 雅也, 永沢 善三
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2103-2108
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症では, 一部の重症例を除いて, まず経口抗生物質が治療薬として使用される。今日では, ペニシリン系, セフェム系, テトラサイクリン系内服剤が多用されている。一方, 著者ら1) の症例では, 呼吸器感染症の起炎菌はHaemophilus influenzae (インフルエンザ菌), Streptococcus pneumoniae (肺炎球菌), Klebsiella pneumoniae (クレブシェラ菌), Pseudomonas aeruginosa (緑膿菌), Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌), Escherichia coli (大腸菌) が90%以上を占めている。そこで, 現在, 経口抗生物質として最もよく用いられているCephalexin (CEX), Cefaclor (CCL), Ampicillin (ABPC), Minocycline (MINO) の4剤を選び, 喀痰分離菌162株に対する各薬剤の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, 呼吸器感染症における経口抗生物質の選択について考察した。
  • 山元 貴雄, 保田 仁介, 金尾 昌明, 岡田 弘二
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2109-2114
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fosfomycin sodium (FOM-Na) はアメリカMerck社, 及びスペインCEPA社により共同開発された抗生物質で, 分子量182と極めて小さく, 又従来の抗生物質とは全く異なつた構造式を有している。本剤は細胞壁合成の初期の段階を阻害することにより強い殺菌作用を示す。抗菌スペクトラムは非常に広範囲で, 緑膿菌, 変形菌をはじめセラチア, 更に多剤耐性のブドウ球菌, 大腸菌に対し有効性が認められており, 各科領域における各種感染症に広く使用され, その有効性が報告されている1)。
    今回我々は, 本剤を子宮内感染, 子宮付属器炎, 骨盤内感染, 外性器感染などの産婦人科領域における各種感染症に使用する機会を得たので報告する。
  • 山崎 知文, 小倉 敏充, 川村 光弘
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2115-2119
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗生物質が次々に開発され, 臨床に導入されるなかで, 広範囲スペクトラムが要求される一方, 同一薬物系に対しての耐性菌の増加が必然的に問題となり薬剤の選択に困惑を感ずることがある。こうしたなかで, 近年各科感染症に使用され始めているFosfomycin (以下FOM) はペニシリン系, セフェム系などの同一薬物系に対する耐性菌の問題を解決するものと期待される。
    今回著者らは, 産婦人科領域の感染症に本剤を使用し, 若干の臨床的データを得たので報告する。
  • 井本 隆
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2120-2128
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephapirin sodium (CEPR) は, すでに臨床上有用性を認められ, 口腔外科領域においても, 歯性感染症検出菌の感受性が高く1, 2), 使用される頻度の高い薬剤であり, 静脈への刺激が少ないなどの長所を持つた3) 薬剤である。近年になり, 各種モデルに, 薬剤の体内動態をあてはめ, Computerの普及で容易に解析することが可能となり, 薬動力学的解析として各種薬剤について報告されている。しかしCEPRについては, まだ報告はない。
    今回, 著者はCEPRのヒトへの点滴静注時の血清中濃度を測定し, 薬動力学的解析を行い, 投与方法について検討を加えた。
  • 出口 浩一
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2129-2134
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児科領域の細菌性感染症に対するCefpiramide (SM-1652, 以下CPM) の臨床的有用性を検討するための研究会 (座長, 藤井良知・帝京大学教授) が1981年11月に発足し, 1982年7月にかけて各種の小児細菌性感染症を対象にして, 臨床的検討が行われた。
    本検討の細菌学的検討は, 細菌学的検査協力機関として参加した当センター研究部において, 各施設で分離, 同定された菌種の再同定, CPMと対照剤のMIC測定を行うとともに, 各種小児由来菌株のCPMに対する感受性を対照剤を含めて検討した。以下, 本検討で得られたCPMに対する感受性に関する成績を報告する。
  • 藤田 晃三, 坂田 宏, 室野 晃一, 向井 直樹, 吉岡 一, 丸山 静男, 早苗 信隆, 土田 晃, 鈴木 豊
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2135-2141
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は我が国で開発された新しいセフェム系抗生物質で, 幅広い抗菌スペクトラムを有し, 特に緑膿菌を含むブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌の多くにも優れた抗菌力を示す1)。又, 静注投与により, 既存のセフェム系抗生物質のどれよりも高く持続的な血中濃度が得られることが特徴である2)。
    私たちは小児感染症患者の治療に本剤を投与する機会を得, その臨床成績及び薬物動態につき検討を加えたので報告する。
  • 小原 敏生, 工藤 協志, 渡辺 章
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2142-2146
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は第3世代のセファロスポリン系抗生剤であり, 中でも胆汁排泄型として注目される抗生剤である1)。
    今回, 筆者らはCPMの小児科領域の各種感染症に使用しその臨床効果と安全性について検討したので報告する。
  • 永松 一明, 奥野 章裕
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2147-2152
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は住友化学と山之内製薬の共同開発による新しい抗生物質で, グラム陽性菌にも陰性菌にも抗菌力を有し, しかも緑膿菌属に対しても優れた効果を示すセファロスポリン系抗生物質である1~3)。
    CPMの特長は静脈内投与後の血中濃度が高く, 且つ半減期が長く, 尿中への排泄は他のセファロスポリン系抗生物質に比べて少なく, 胆汁への移行が多く, 従つて腸内に排泄される量が比較的に多いと考えられている1, 4, 5)。
    われわれは本剤を小児の感染症に使用する機会を得たので, その臨床成績について報告する。
  • 青山 隆蔵, 和賀 忍, 大西 彬, 泉 幸雄, 柿崎 良樹, 藤田 誠, 飛鳥 徳久, 工藤 真生, 千葉 力, 対馬 徳武, 岡本 忠篤 ...
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2153-2159
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は住友化学工業 (株) と山之内製薬 (株) とで共同開発したセフェム系抗生物質である。
    本剤の特徴はグラム陽性菌及び陰性菌に広い抗菌力を有し, Pseudomonas属にも優れた抗菌力を有している。又, 血中半減期が4~5時間と長く, 1日2回投与法が可能である1)。
    今回我々は本剤を小児感染症に使用する機会を得たので, 臨床成績につき報告する。
  • 中沢 進, 佐藤 肇, 新納 憲司, 平間 裕一, 成田 章, 鈴木 博之, 中沢 進一, 近岡 秀次郎, 田添 克衛, 岡 秀, 入野 泰 ...
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2160-2170
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は住友化学工業と山之内製薬が現在共同開発中の新邦製第3世代Cephem系抗生剤であり (Fig.1), 緑膿菌を含むグラム陰性菌の外この種製剤の欠点とされるグラム陽性球菌に対する抗菌性も他剤に比較して強く, 又静注した場合の生物学的半減期 (T1/2) が4~5時間と長い反面連続投与による蓄積性がなく, 尿中排泄率は低いが (20~30%) 胆汁中への移行は優れている点が特徴とされている。
    本剤静注による成人各科領域における基礎的, 臨床的検討はすでに本邦において行われ, 約1,400症例についての詳細な成果がすでに昭和56年12月, 第29回日本化学療法学会西日本支部総会において報告されその有用性が認められている1)。
    今回小児科領域における本剤の検討を行い, みるべき成果が得られたので, 以下今日までの概況について報告する。
  • 寺嶋 周, 中村 明, 沖本 由理, 黒崎 知道, 氷見 京子, 上原 すゞ子
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2171-2176
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    グラム陽性球菌 (Streptococcus faecalisを除く), 腸内細菌群には, 最近開発された新しいCephem系抗生物質と同等の抗菌力を有するが, Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonas cepacia等のブドウ糖非醗酵菌には強い抗菌力があり1), 血中濃度は高く, T1/2は成人4.47時間2), 小児3.7時間3) で極めて長いと言う特徴を持つCefpiramide (CPM) の臨床的検討について報告する。昭和56年12月から昭和57年5月の間に, 千葉大学医学部附属病院小児科の外来及び入院患者6名に本剤を投与し, 除菌効果は全例に認められた。臨床的効果を考慮した有効・著効率は66.7% (6例中4例) であり, 重篤な副作用はなかつた。
  • 目黒 英典, 金 保洙, 益子 仁, 大成 滋, 中條 真美子, 有益 修, 平岩 幹男, 藤井 良知
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2177-2184
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は住友化学工業と山之内製薬とで共同開発したセファロスポリン系 (CEPs) 新抗生物質である。化学構造はFig.1のとおりで, 7位側鎖にHydroxymethylpyridine基を有し, 3位側鎖にはTetrazole環を持つ。分子量は634.62である。本剤はCEPsの第5群に分類され1), Pseudomonas属に優れた抗菌力を有するのが特徴である。その他のグラム陽性菌, グラム陰性菌にも広く抗菌力を有するが, これは既存の第5群CEPsの中ではやや劣つている。又成人の成績で4~5時間と血中半減期が非常に長く, 胆汁中移行がよく, 蛋白結合率が高いなどの特徴を有する。基礎的検討, 成人における臨床評価を終えて第29回日本化学療法学会西日本支部総会 (1981年12月4日, 広島市) で発表され, その安全性と有効性が認められた2)。この度, 我々は小児科領域CPM研究会の一員として本剤の小児における臨床的検討を行う機会を得たのでその成績を報告する。
  • 南谷 幹夫, 八森 啓, 金田 一孝
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2185-2194
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は住友化学工業と山之内製薬との共同研究により開発されたセフェム系の新抗生物質で, Fig.1に示す化学構造式, 分子式, 分子量である。本剤の特徴として, 抗菌スペクトラムはグラム陽性菌及び陰性菌に幅広く, 特に緑膿菌を含むブドウ糖非発酵性グラム陰性菌に強い抗菌力を認める1) ほか, ヒトの静脈内投与した場合の血中濃度は従来のセフェム系抗生物質のどれよりも高く, 且つ生物学的半減期は4~5時間と長く, しかも連続投与を行つても蓄積性がみられないと言う特徴がある2)。そして尿中排泄率はやや低いが, 胆汁中への移行が優れていると言う点もあげられよう。
    本剤の成人領域における臨床研究は, 1980年11月から全国的規模のもとに約1年間にわたつて行われた。本剤は約1,400例に使用され, 慎重な検討を加えられ, 評価に耐える全臨床領域1,329例での有効率は71.7%であり, 副作用解析対象1,436例における副作用発現率は3.5%であつたと発表されている3)。
    私達は小児科領域における中等症以上の感染症に対し使用する機会を得たので, その成績を報告する。
  • 城崎 慶治, 岩田 敏, 岩崎 由紀夫, 佐藤 吉壮, 佐野 はつの, 若林 良, 早野 紳哉, 井原 正博, 砂川 慶介, 小佐野 満
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2195-2200
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は住友化学工業 (株) と山之内製薬 (株) によつて開発されたセフェム系に属する注射用抗生物質である。この薬剤の特徴として既存のセフェム系抗生物質に比べ生物的半減期が長く, ヒトに静脈内投与した場合の血中濃度が高く, 又緑膿菌, 百日咳菌などにも抗菌力を認め, 抗菌スペクトルの拡大がみられる。今回我々は小児科領域における本剤の基礎的, 臨床的検討の機会を得たので, 多少の考察を加えて報告する1)。
  • 柳沢 公二, 保科 弘毅, 三国 健一, 市橋 治雄
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2201-2206
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は, 化学構造上Fig.1のように7位側鎖にHydroxymethylpyridine基を有し, 3位側鎖にはTetrazole環を持つ, 新セフェム系抗生物質である。グラム陽性菌及び陰性菌に対しても抗菌活性を有し, 更にPseudomonasに対しても優れた抗菌力を示す1)。
    又細菌の産生するβ-Lactamaseに極めて安定である1)。吸収排泄では本剤はヒトに静脈内投与した場合の血中濃度が高く, 生物学的半減期は4~5時間で既存のセフェム系抗生物質のどれよりも長いのが特徴である。又尿中排泄率は20~30%とやや低いが, 胆汁中への移行が優れている。
    今回, 我々は6例の易感染傾向の基礎疾患例を含む10例の中等度以上の小児感染症患児にCPMを臨床使用する機会を得たので, その成績について報告する。
  • 豊永 義清, 黒須 義宇, 杉田 守正, 川村 悟朗, 井田 博幸, 望月 弘, 堀 誠
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2207-2227
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 特にβ-Lactam剤の研究開発の成果は目をみはるものであり, 多くの有用なPenicillin, Cephalosporin系薬剤が開発されている。この理由は, β-Lactam剤がヒトには存在しない細菌細胞特有の構造である細胞壁の合成を阻害し, そのためβ-Lactam剤は選択毒性が非常に高く, アレルギーを除けば副作用に対する心配がほとんどないことによると思われる。Cephalosporin系薬剤 (CEPs) では, 7-Aminocephalosporanic acid (7-ACA) の3位あるいは7位の側鎖を新しいものに置換することにより, 抗菌スペクトルの拡大, β-Lactamaseに対する安定性を持つことが判明し, 藤井の分類1) による第4, 第5群のCEPsが多く開発され, そのうちのいくつかが現在では臨床的に使用されている。Cefpiramide (CPM) は第5群のCEPsの1つで, 住友化学工業 (株) と山之内製薬 (株) とで共同開発したものであり, 3位側鎖にTetrazole環を持ち, 7位側鎖にはHydroxymethylpyridine基を持ち, その化学名は, Sodium (6R, 7R)-7 {(R)-2-(4-hydroxy-6-methyl-3-pyridylcarboxamido)-2-(p-hydroxyphenyl) aCetamido]-3-{[(1-methyl-1H-tetrazol-5-yl) thio] methyl}-8-oxo-5-thia-1-azabicyclo [4.2.0] oct-2-ene-2-carboxylateである。本剤はグラム陽性及び陰性菌に広く優れた抗菌力を示し, 特にPseudomonas属には, 他の第5群のCEPsよりも優れた抗菌力を持つていると言われる2, 3)。又, 本剤をヒトに静脈内投与した場合の血中濃度は既存のCEPsのどれよりも高く, 生物学的半減期は4~5時間と長く, しかも連続的投与による蓄積性も認められない特徴を有している。
    そして, 尿中排泄は20~30%と低く, 胆汁排泄型の薬剤であると言われている4~6)。
    今回, 我々はCPMを使用する機会を得たので, 本剤について, 抗菌力, 吸収, 排泄などの基礎的検討を行うと共に, 各種細菌感染症に使用したのでそれらの成績について報告する。
  • 中島 崇博, 麻生 幸三郎, 宮地 幸紀, 小川 昭正, 屋冨祖 正光, 久野 邦義
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2228-2241
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramido (CPM) は住友化学工業 (株) と山之内製薬 (株) とで共同開発中のセフェム系に属する新規抗生物質であり, 化学構造上7位側鎖にHydroxymothylpyridino基を有し, 3位側鎖にはTetrazole環を持つ。本剤はグラム陽性菌にも, グラム陰性菌にも抗菌力を有し, しかもPseudomonas属には優れた抗菌力を持つているとされている。又, 本剤はヒトに静脈内投与した場合の血中濃度の持続が既存のセフェム系抗生物質のどれよりも長く, 生物学的半減期は4~5時間であると言う特徴を有すると言われている1~5)。
    今回, 我々は小児における本剤の吸収・排泄を含む基礎的, 臨床的検討を行つたので報告する。
  • 岩井 直一, 溝口 文子, 佐々木 明, 種田 陽一, 中村 はるひ
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2242-2260
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は住友化学工業 (株) と山之内製薬 (株) の共同で開発された新しいCephem系抗生剤である。本剤の主な特徴は, グラム陽性菌並びに陰性菌に広範囲な抗菌スペクトラムを有し, とりわけPseudomonas属には優れた抗菌力を示すこと, 静注後の血中濃度が極めて高く, 半減期が長いためにその維持が良好なこと, 又尿中排泄はやや少ないが, 胆汁中への移行は優れていることである1)。このような特徴は臨床面にも反映され, 優れた効果をもたらすものと考える。すでに成人領域においては, 基礎的, 臨床的検討が終了し, その有効性と安全性が確認されている。
    今回, 我々は小児科領域での本剤の評価を行つたので, その成績を報告する。
  • 西村 忠史, 田吹 和雄, 広松 憲二, 高島 俊夫, 高木 道生
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2261-2268
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗生物質の開発, 進歩は細菌感染症治療に大きく貢献し, とりわけセファロスポリン系薬剤の出現は, 感染症治療の内容に充実性をもたらした。しかし, 近年細菌感染症も疾患によつては難治性の傾向が強くなり, とりわけ所謂Opportunistic infbctionにおける病因微生物には多彩な変化がみられ, セファロスポリン系薬剤に対する耐性菌も増加傾向にある1)。このような現況をふまえ, より強力な殺菌効果, 抗菌スペクトラムの拡大, β-Lactamaseに対する安定性を目的とした新たなセファロスポリン系薬剤の開発がすすめられ, すでにその一部は実際臨床使用の段階に至つている2, 3)。今度住友化学工業株式会社と山之内製薬株式会社で共同開発されたCefpiramide (CPM) 4) はグラム陽性及び陰性菌に対して広範囲の抗菌スペクトラムを持ち, 特にグラム陰性菌のうち緑膿菌を含むブドウ糖非発酵菌の多くにまで抗菌スペクトラムは拡大され, グラム陰性菌が産生するβ-Lactamaseに対して安定性が高く, 強い殺菌作用を示す。更に本剤は, ヒト静脈内に投与した場合の血清中濃度は既存のセファロスポリン系薬剤のどれよりも高く, 持続的であり, 尿中排泄率はやや低いが, 胆汁中移行は優れている。
    すでに, 本邦ではCPMに関する基礎的及び成人領域における臨床検討が行われ, 第29回日本化学療法学会西日本支部総会4) において, 本剤の評価が行われた。今回著者らは, そこで得られた本剤の有効性と安全性の成績に基づいて, 小児におけるCPMの基礎的及び臨床的検討を行つたのでその成績について述べる。
  • 小林 裕, 春田 恒和, 黒木 茂一, 山川 勝, 大倉 完悦
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2269-2274
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は住友化学工業株式会社と山之内製薬株式会社で開発された新注射用Cephem系抗生剤で, 非常に抗菌域が広く, Pseudomonas aeruginosaにも優れた抗菌力を示し, 血中濃度半減期 (T1/2) が極めて長いのが特徴と言える1)。本剤の基礎的, 臨床的研究成績は1981年12月の第29回日本化学療法学会西日本支部総会において新薬シンポジウムとして討議され, その成人における有効性, 安全性が認められた1)。その結果小児についても検討の価値ありと考えられ, 幼若動物に対する安全性も認めうれたので, 小児科領域研究会によつて検討が進められた。われわれもその一員として若干の知見を得たので報告する。
  • 谷村 弘, 小林 展章, 吉田 圭介, 斎藤 徹, 佐藤 友信, 高橋 裕, 日笠 頼則, 松本 浩生, 浜垣 仁, 小山 高宣
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2275-2282
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    いわゆる胆道感染症には, 急性胆嚢炎, 急性化膿性 (閉塞性) 胆管炎, 肝膿瘍, 胆汁性腹膜炎等が含まれる。その主たる原因は, 胆汁うつ滞とそれに加わる細菌感染である。従つて, その治療に際しては, まず胆汁うつ滞の原因を除去するのを原則とするが, それと同時に化学療法を直ちに開始せねばならない。その際, 起炎菌に対して抗菌力を十分に発揮できる抗生物質のうちから, 胆汁中移行のよい薬剤を選ぶことが原則である1)。
    しかし, その起炎菌に関しては種々の問題がある。すなわち, 胆管炎と言う診断は, 臨床的には発熱と疼痛と黄疸とによつてなされており2), 一方, 尿や喀痰と異なり, 病的状態では胆汁を得ることは極めて困難であり, しかも, 胆道癌による閉塞性黄疸では胆汁中に菌が検出されないことの方が多いなど, 得られた胆汁から常に起炎菌が検出されるとは限らない。とは言え, 胆管炎を発症してからの期間が胆道癌の予後を決定するなど3), 胆管炎の臨床診断と胆汁中細菌とのDiscrepancyが大きい。従つて, 胆汁中細菌は, 胆管炎の治療の指標になるけれども, その菌量を頻回に測定することは極めて困難であつた。
    又, 胆汁から得られた細菌も胆嚢組織内の菌とは異なることも少なくなく, 胆嚢炎の起炎菌必ずしも胆汁中検出菌ではないことも又臨床的事実であり, 急性胆嚢炎は手術的に治療するものであるから, 感染予防的な抗生物質が果して必要であるかと言う疑問さえ提出されている4)。結局, 胆道感染症に対する薬効判定は, 臨床的改善度の観察でなされており, 胆汁中細菌の消長とは必ずしも一致せず, 苦慮している処である。
    更に, 第3世代と呼ばれるものを含めて多数のCephem系抗生物質が市販され, 同系のもののなかからいずれを選択するか, その基準としては何があるかはいまだ明確なものがなく, 実地医家は困惑している訳である5)。
    Cefpiramide (CPM) の胆汁中移行は, すでに我々が発表したとおり6), かなりの黄疸時でも十分抗菌力を発揮できるほどよく移行することが証明されているが, 抗生物質含有胆汁中の細菌数測定はまだまだ問題がある。
    今回, 我々は, Membrane microfilter法や培地を塗布したディスポーザブルの容器などが市販され, 容易に利用できるようになつたので, 血中半減期がかなり長いCPMを用いて, 胆汁中細菌の菌数とCPM濃度の推移を測定し, 胆汁中細菌の測定の諸問題を検討した。
  • 中村 孝, 橋本 伊久雄, 沢田 康夫, 三上 二郎, 西代 博之, 中西 昌美, 葛西 洋一
    1983 年 36 巻 8 号 p. 2283-2292
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    最近の感染性疾患, 院内感染症の様相は, 化学療法の進歩, 普及に伴つて, 大きな変化を示している。かつて大部分を占ていたブドウ球菌などのグラム陽性菌群による感染症は減少し, 大腸菌などのグラム陰性桿菌群による感染症が増加し, 更に今日広く使用されているAmpicillin, Carbenicillin (CBPC), SulbenicillinなどのPenicillin系抗生剤及びCephalothin (CET), Cephaloridine, Cephalexin, CefazolinなどのCephem系抗生剤に対して耐性を有する菌による感染症の増加が指摘され, 臨床上の大きな問題となつて来た。この原因はPenicillinase及びCephalosporinaseであるβ-Lactamase産生菌の増加であるとされている3, 4)。
    従つて今日の抗生剤の開発の主力は, このβ-Lactamaseに抵抗性を有し, しかもグラム陰性桿菌群に有効な薬剤の開発におかれ, Cefamandole, Cefbxitin, Cefmetazole, Cefotiam, Cefuroximeなどに続いて, 抗菌力を飛躍的に高め, Bacteroudesなどの嫌気性菌にまで抗菌力を有する第3世代と呼ばれるCefotaxime, Ceftizoxime, Cefoperazone (CPZ), Latamoxef, CefmenoximeなどのCephem剤が合成され, これらの大部分は今日市販されPenicillin系のPiperacillinなどと共に広く使用され, 今日の化学療法の主力となりつつある。
    一方, 現在の抗生剤は, 特に最近開発された第3世代のCephem剤を含めて, Cefsulodin (CFS) を例外として, 緑膿菌に対する抗菌力はやや弱く, 大腸菌などと同様に緑膿菌にも有効な薬剤の開発が期待されていた。又現今の抗生剤の血中濃度持続時間は4~8時間のものが大部分であり, 従つて1日少くとも2~4回の投与を要し, 長時間有効血中濃度を維持できる薬剤の開発も期待されていたところである。
    Cefpiramide (CPM) は1978年, 住友化学工業株式会社中央研究所において合成されたCephem剤で, 緑膿菌に対してCFSと同程度の抗菌力を有し, 他のグラム陰性桿菌に対する抗菌力はCPZ程度であつて, 第3世代のなかでは中等度に属するが, グラム陽性菌に対してもよい抗菌力を示す広域のスペクトラムを有している。CPMは感染病巣への浸透性が高く, β-Lactamase抵抗性を持ち, しかも血中濃度持続時間が長い特長を有している薬剤である1, 2)。
    著者らはさきに本剤の静注による臨床効果の検討を試みたが7, 8), 本剤の特性から考えて, 500mgの筋注によつても, 軽度及び中等症の感染症に対しては充分なる効果が期待できると考えられるので, 筋注投与による検討を行い若干の成績を得たので報告する。
  • 1983 年 36 巻 8 号 p. 2293
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
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