The Japanese Journal of Antibiotics
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40 巻, 11 号
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  • 原 耕平
    1987 年 40 巻 11 号 p. 1851-1860
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Rokitamycin (RKM, TMS-19-Q) は東洋醸造株式会社において開発された新16員環Macrolide系抗生物質で1)(Fig. 1), Kitasamycin (Leucomycin, LM) の一成分であるLM A5の3 “位にPropionyl基を導入した半合成品である。3” 位にPropionyl基を導入することにより殺菌能や一部のMacrolide (MLs) 耐性菌に対する抗菌力を獲得するなど, 既存のMLsには認められない特長を持つている2-4)。更に一次代謝物が強い抗菌力を示すため, 生体内においても代謝による抗菌活性の低下が少なく, 既存のMLsに比べ, 高い血中濃度が得られている5)。
    又, RKM錠は製剤的にも工夫がなされ, 既存のMLsでは吸収が不確実である低酸ないしは無酸の症例においても確実に吸収されるよう改良がなされている6)。
    RKM錠の臨床治験は全国規模の研究会が組織され, 既存のMLsの半量600mg/日で評価がなされ, その有用性が高く評価されている。
  • 加部 吉男, 岡村 治明
    1987 年 40 巻 11 号 p. 1861-1868
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胆道手術例13例についてCefmenoxime (CMX) の胆汁及び胆嚢組織内移行について検索した。
    1.CMX 1g 30分点滴静注投与開始後103.4±22.3分 (75-141分) に手術的に胆嚢胆汁又は胆管胆汁を採取してCMX濃度を測定した。
    黄疸が無く, 胆嚢管閉塞の無い胆嚢胆汁中CMX濃度は326.6±432.3μg/mlと良好な移行を示した。胆嚢管閉塞時の胆嚢胆汁中では極めて低濃度であり, 閉塞性黄疸例では比較的低値であった。
    2.胆嚢組織内濃度は22.7±32.1μg/gであり, 投与開始からの時間の経過と共に指数関数的にCMX濃度が減少した。
    3.外胆汁瘻造設例8例について, CMX 1g 30分点滴静注法で12時間ごとに1日2回投与し, 術後第1, 3, 5, 7病日と隔日に4日間CMX投与後6時間の胆汁を経時的に採取してCMX濃度を測定した。
    経時的にみるとCMX濃度は投与開始後2時間で最高濃度に達する例が多く, 症例ごとの最高濃度は無黄疸例では641.2μg/ml (313.3-1,232.3μg/ml) と高値であった。又, 6時間目でも37.4μg/ml (4.0-76.6μg/ml) であった。
    経日的にみるとCMXは術後第1病日から良好に胆汁中に移行した。術後病日ごとの平均値をみると第5病日にCMX濃度の低い傾向がみられたが, 統計学的には有意の差ではなかつた。
  • 本廣 孝, 織田 慶子, 荒巻 雅史, 川上 晃, 田中 耕一, 古賀 達彦, 島田 康, 冨田 尚文, 阪田 保隆, 藤本 保, 西山 亨 ...
    1987 年 40 巻 11 号 p. 1869-1880
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    キノロンカルボン酸系の経口用合成抗菌剤であるNorfloxacin (NFLX) を23歳から29歳, 体重57~88kg, 平均64.7kgの健康男性6例に本剤100mgの錠剤を2個すなわち200mgを朝食後に1回投与し, 投与5日後までの糞便中及び尿中の濃度と回収率を測定し, 種々の条件下でNFLX, 場合によつてはCiprofloxacin (CPFX) の添加試験を実施し, その際の濃度と回収率を検討し, わずか1回だけの投与であったが, 副作用と臨床検査値への影響についてもチェックしたところ, 次のような結果が得られた。
    1.6例の糞便中濃度は投与24時間後まで, すなわち1日後までの糞便で5例, 2日後の糞便で1例が最高濃度を示し, 平均では1日後が最高値で137.1μg/g, 以後漸減し, 5日後までの回収率は2.32~36.90%とばらつきがみられ, 平均13.83%であつた。
    2.同じ6例における尿中濃度はいずれも1日後までの尿がピーク値を示し, 平均51.46μg/mlで, 以後漸減し, 5日後までの回収率は11.15~46.44%で, 糞便と同様にばらついた。
    3.症例ごとに糞便中及び尿中回収率を加えてみると13.47~76.88%とばらつきがみられ, 平均回収率は42.24%であった。
    4.糞便中と尿中の回収率を加えても, 全例の回収率は低率であつたことから前述の糞便中及び尿中排泄を測定した1例にNFLXを無添加と同剤を125,500, 2,000μg/gになるように添加し, 混和による処理で回収率を測定したところ, 48.7~57.8%と低下がみられた。しかし, 処理条件として混和とホモジネートによる回収率について検討したが両者に差はなく, 同系薬剤のCPFXでも糞便添加時の回収率はNFLXと同様に低下した。そこで糞便中の菌種で最も多い菌数の一。つであるBacteroides fragilisをGAM broth 1.0ml中1010 cells存在下で, NFLXが50μg/mlになるように調整し, 35℃ で6時間後, 18時間後に残存率を測定したところ, それぞれ76.4, 66.2%とわずかながら低下し, GAM brothだけに本剤を添加して直後に測定した実測値を100として, 35℃ 中で6時間後及び18時間後の残存率をみると各々85.8, 74.4%と低下がみられ, B.fragilisは糞便中のNFLX濃度にメカニズムは不明であるが, ある程度の影響を与え, 温度も経時的にみた場合わずかながら影響することが推定された。
    5.糞便中及び尿中排泄を測定した6例から前述の添加回収試験を検討した2例を除き4例におけるNFLX投与前の糞便を対象として症例ごとの糞便につきNFLXの濃度が200,800μg/gになるように調整し, 処理条件は混和で, 各々の回収率を測定したところ, 設定濃度200μg/gでは50.0~56.5%, 800μg/gでは52.4~61.6%域を示し低率であつた。その原因は糞便自体の影響も推定されるが, 前述のとおりB.fragilisの関与, そして経時的なある程度の温度も影響していると考えられた。
    6.6例に200mgを1回だけの投与であったが副作用は1例に腹痛と下痢が出現し, 臨床検査値では検査した範囲内において異常値を示した例はなかつた。
  • 西村 忠史, 田吹 和雄, 本廣 孝, 島田 康, 高城 信彦, 永山 清高, 荒木 久昭, 岩井 直一, 宮津 光伸, 中村 はるひ
    1987 年 40 巻 11 号 p. 1881-1890
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotaxime (CTX) を小児感染症20例に使用し, Protein induced by vitamin K absence or antagonist II (PIVKA II), Prothrombin時間 (PT), 活性部分Thromboplastin時間 (APTT) 及びHepaplastin test (HPT) を測定し, CTXの血液凝固系に及ぼす影響を検討した。その結果, PIVKA IIは全例陰性, PT, APTT, HPTについても, 出血傾向を助長すると思われるような変動は認められなかつた。
  • 藤田 公生, 川村 実, 村山 猛男
    1987 年 40 巻 11 号 p. 1891-1894
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    単純性膀胱炎患者212例の尿中分離菌のFosfomycin (FOM) について感受性を検討し, 55例について治療効果を検討した。急性単純性膀胱炎の基準を満たす70歳未満の成人女性に対する臨床効果をみると, 無効例が1例あり, 95.0%の有効率であつた。この基準を満たさなかつた非典型例の有効率は低かつた。Klebsiella pneumoniaeは薬剤感受性も低く, 本剤の臨床効果も悪かつた。
  • 出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 深山 成美, 西村 由紀子, 小田 清次, 佐藤 久美子, 田中 節子, 加藤 三枝 ...
    1987 年 40 巻 11 号 p. 1895-1905
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1986年後半に検出した臨床分離株に対するSisomicin (SISO) の抗菌力を, 他のアミノ配糖体系抗生物質 (AGs) 4剤 (Gentamicin (GM), Tobramycin (TOB), Dibekacin, Amikacin) 及びセフェム系抗生物質 (CEPs) 2剤, Cefotiam, Cefotaxime を加えて検討し, 主に1970年代後半, 1980年代前半における我が国の諸家の報告と比較し, SISOの経年的抗菌力を考察した。
    1. Staphylococcus aureus のSISO耐性菌は18%で, 顕在且つ定着の徴候, Pseudomonas aeruginosa は微増傾向だつた。
    2. Enterobacter spp., Serratia marcescence, Citrobacter freundii のSISO耐性菌は, 増加していない。
    3.Indole (+) Proteusは菌種によつてSISO耐性菌の割合が異なる。Proteus vulgaris, Morganella morganii のSISO耐性菌は各々4%と少ないが, Providencia rettgeri のSISO耐性菌は60%だつた。P.rettgeriすなわちP.rettgeriを含むGenus Providencia は, SISOに限らず, GM, TOBにも高率に耐性を示し, AGsの抗菌力はGenus Providencia を, 他のIndole (+) Proteusとは別個の対象として評価すべきであることを指摘した。
    4. Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis のSISOR耐性菌はなかつた。
    5.SISOの抗菌力は検討した大部分の菌種に対するMIC80及びMIC90レベルでの有効な抗菌力を保持していることから, 1980年代の後半に入った今日においても臨床的に有用なAGsの一つである。
  • ラタモキセフ昭和及びDifco 1濃度ディスク感受性結果の4カテゴリー 評価システムとその定量的利用の意義
    植手 鉄男, 松尾 清光
    1987 年 40 巻 11 号 p. 1906-1916
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1.ラタモキセフ (LMOX) ディスク感受性結果の定量的利用の吟味, 検討を各種細菌249菌株を用いて行つた。8mm直径-30μg含有 (昭和) 及び6mm直径-30μg含有 (Difco) ディスク阻止円の大きさの定量的評価, すなわち阻止円の大きさからMICの推定を, MIC実測値と比較し, その信頼性を究明した。
    2.1986年に北野病院 (大阪市) において臨床材料から分離された細菌249株に対するLMOXのMIC実測値からすると, 大腸菌, 変形菌 (Proteus mirabilis, Proteus vulgaris) などは3.13μg/ml以下でほとんどすべての菌株が発育を阻止された。エンテロバクター・アエロジェネスは分離株の85%が1.56μg/ml以下で, セラチア・マルセッセンスはBimodalの感受性パターンを示し, 6.25μg/ml以下の濃度で菌株の43%の発育が阻止されたが, その他の菌株はMICが25μg/ml以上にあった。緑膿菌は10%の菌株が12.5μg/ml以下で, 63%が50μg/ml以下で発育が阻止されたにすぎない。黄色ブドウ球菌は90%の菌株が25μg/ml以下で発育が阻止された。表皮ブドウ球菌は57%の菌株が25μg/ml以下で, 80%の菌株が50μg/ml以下で発育が阻止された。
    3.ディスク結果を阻止円の大きさから,(+++),(++),(+),(-) と分類した.(+++) はMIC3μg/ml以下,(++) は>3~15μg/ml,(十) は) 15~60μg/ml,(-) は>60μg/mlとBreakpointsを設定し, ディスク阻止円の大きさとMIC値との相関を吟味した場合, おおむねよい相関関係がみられた。昭和ディスクの場合, ブドウ球菌と緑膿菌の判定基準を他の細菌と別に設定していることの有用性を認めた。Difcoディスクの場合は, 緑膿菌の判定基準を別に設定する必要があると考えられる。
    4.以上のとおりLMOXディスクについての実験結果から,(帯) であれば大体3μg/ml以下にMICが,(++) であれば3μg/ml以上15μg/ml以下にMICのあることが推定し得る。
    5.血中薬動力学的知見とディスク感受性結果の定量的利用からLMOX血中濃度がMIC以上にあるかどうかの評価, 更に血中濃度/MIC比の推定が可能となる。すなわちLMOXの有効血中濃度を得るための投与量設定, 評価にLMOX 1濃度ディスク結果の定量的利用は有用である。
  • 武部 和夫, 田村 豊一, 遠藤 勝美, 入江 達朗, 関野 圭一, 上原 修, 相楽 衛男, 岡本 勝博
    1987 年 40 巻 11 号 p. 1917-1922
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Carumonam (CRMN, AMA-1080) はβ-Lactam抗菌剤の一つであるMonobactam系の抗菌剤である。本剤を内科領域の感染症10例に投与して本剤の有用性と安全性を検討した。
    対象は急性化膿性扁桃炎1例, 肺炎4例, 慢性気管支炎の急性増悪1例, 慢性腎孟炎1例, 急性膀胱炎1例, その他に肺炎として本剤を投与したが, 後でマイコプラズマ肺炎, 原発性異型肺炎 (PAP) と判明したのが各々1例みられたが, これらは有効率から除外した。本剤を1g, 1日2回点滴静注した。本剤の臨床効果は著効1例, 有効7例であつた。本剤投与前にStreptococcus, pneumoniaeが肺炎例で認められ, 本剤投与後も持続したが, 本剤の臨床効果は有効であつた。尿路感染症で本剤投与前にEscherichia coli, Klebsiella pneumoniaeがみられ, 本剤投与後にStaphylococcus, Enterococcus faecalisがみられたが, 臨床効果は有効であつた。本剤の副作用はみられなかつたが, 臨床検査値異常が本剤投与後に1例で軽度の好酸球数増多, GOT, GPT上昇, 1例で白血球数の軽度減少が認められた。
  • 三浦 哲夫, 橋本 伊久雄, 沢田 康夫, 中村 孝, 中原 正城
    1987 年 40 巻 11 号 p. 1923-1936
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胆石症10例, 胃癌切除手術5例の術中にCefmetazole (CMZ) 2gを静注し, 血中濃度の推移をHigh performance liquid chromatography (HPLC) 法及びMicrococcus luteus ATCC9341を検定菌とするBioassay法にて検索し, 術後2~3日目に検索した血中濃度推移と比較検討した。症例は男5例, 女10例, 年齢38~73歳, 体重41~64kgであった。全例において, 術前の肝機能, 腎機能等に異常を認めなかった。手術時間は胆石症で平均約1時間, 胃癌で平均約3時間であつた。出血量は胆石症で平均120 ml, 胃癌で620 mlを認め, 補液量は胆石症610 ml, 胃癌1,200 mlであった。胃癌患者の一部では輸血を併用した。
    手術中と術後のCMZ血中濃度推移を比較すると, 術中の血中濃度はピーク値も高く, 減少も術後に比べてゆるやかであつた。HPLC法による検索では, 胆石症においては術中でT 1/2は2.11時間, 術後は1.42時間であり, 胃癌では術中1.31時間, 術後2.21時間を示した。濃度曲線下面積 (AUC) は胆石症術中469.39μg・hr/ml, 術後294.44μg・hr/ml, 胃癌術中339.83μg・hr/ml, 術後329.75μg・hr/mlであった。臨床的には, 全例において術後感染症の発現を認めなかった。
    消化管手術等の準無菌手術において, CMZを術中から投与することは, 術後感染症の予防に有用であると考えられる。術中投与時の血中濃度推移は術後におけるよりも高値を示すが, 大差はなく, 副作用等の危険も少ないものと考える。
  • 青山 久, 杉山 博子, 石井 徹, 河内 達樹, 粕谷 孝信, 西崎 昭, 奥田 潤
    1987 年 40 巻 11 号 p. 1937-1940
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ピリドンカルボン酸系抗菌剤オフロキサシン (OFLX) を300mg内服後の血清中, 吸引水疱液中OFLX濃度を調べた。1.血清中OFLX濃度は内服後2時間目にピーク値2.88±0.62μg/mlに達した。一方, 吸引水疱液中OFLX濃度は, 内服後4時間目にピーク値に達し, その値は1.74±0.88μg/mlとなった。2.吸引水疱液中OFLX濃度の薬動力学的解析値はCmax1.59μg/ml, Tmax4.49時間, Ka0.27 hr-1, AUC0-8hrs.は10.1μg・hr/mlと計算された。t1~t2は0.42時間から17.3時間でTherapeutic AUCは11.5 μg・hr/mlと計算された。
  • 出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 深山 成美, 西村 由紀子, 小田 清次, 田中 節子, 佐藤 久美子, 加藤 三枝 ...
    1987 年 40 巻 11 号 p. 1941-1945
    発行日: 1987年
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1986年に分離したMethicillin resistant Staphylococcus aureus (MRSA) に対するアミノ配糖体系抗生物質 (AGs) 6剤, β-Lactam系剤4剤の抗菌力を検討した。1.AGsの抗菌力はNetilmicin (NTL) が優れていて, そのMIC50は1.56μg/ml, MIC80は3.13μg/mlであった。その他のAGsはMIC50で, Amikacin (AMK) 12.5μg/ml, Sisomicin (SISO) 50μg/ml, Gentamicin (GM), Dibekacin (DKB) が各々100μg/ml, Tobramycin (TOB) >100μg/ml2.AGsのMIC値分布は) 100μg/mlを示す高度耐性値はTOBが極めて多く, ついでDKB, GM, SISOの順であったことから, AGs耐性株の産生するAGs不活化酵素 (AGs修飾酵素) はAAD (4), APH (2) 産生株が高率であることが推定できた。3.β-Lactam系剤の抗菌力はCefmetazoleが比較的良好なMIC値分布を示したが, Cefazolin, Methicillin, Cloxacillin はいずれも>100μg/mlのMIC値を示す高度耐性株が高率に認められ, MRSAはMethicillin cephems resistant Staphylococcus aureus (MCRSA) であることを確認した。
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