The Japanese Journal of Antibiotics
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48 巻, 7 号
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  • 池本 秀雄, 渡辺 一功, 森 健, 猪狩 淳, 小栗 豊子, 近藤 宇史, 小林 邦彦, 佐藤 清, 松宮 英視, 斎藤 玲, 寺井 継男 ...
    1995 年 48 巻 7 号 p. 887-920
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我々は1981年以来全国各地の病院・研究施設と共同で呼吸器感染症分離菌を収集し, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性, 患者背景と分離菌などを経年的に調査してきた1~8)。今回は, 1990年度の調査結果を報告する。
    1990年10月~1991年9月の間に全国20施設において, 呼吸器感染症患者507例から採取された検体を対象とした。それらの検体 (主として喀痰) から分離され, 起炎菌と推定された細菌は654株であった。このうち, staphylococcus aureus87株, Streptococcus pneumoniae 118株, Haemophilus influenzae 124株, Pseudomonas aeruginosa (Non-mucoid) 84株, Pseudomonas aeruginosa (Mucoid) 37株, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis60株, Klebsiella pneumoniae24株, Escherichia coli12株など617株に対する各種抗菌薬のMICを測定し, 細菌の薬剤感受性を調査した。
    主要菌株の抗菌薬に対する感受性は, 各薬剤とも前年とほぼ同様の成績を示した。S. aureusではOxacillinのMICが4μg/ml以上の株 (Methicillin-resistant S. aureus) が42.5%を占め, 前年に比べ耐性菌の発現頻度は同程度で急激な上昇は認められなかった。
    又, 患者背景と感染症と起炎菌の推移等についても検討した。
    患者背景については, 年齢別の分布では高年齢層の感染症が多く, 60歳以上が67.8%を占め, 高齢者の割合の増加が顕著であった。疾患別の頻度では, 細菌性肺炎, 慢性気管支炎がそれぞれ31.6%, 26.8%と多く, 以下気管支拡張症, 気管支喘息 (感染併発, 以下同様) の順であった。
    疾患別の起炎菌の頻度についてみると, 細菌性肺炎ではS. aureus 19.0%, H. influenzae16.7%, S. pneumoniae 15.4%, 慢性気管支炎ではS. pneumoniae 27.8%, H. influenzae27.2%, 気管支拡張症ではH. influenzae 13.8%, P. aeruginosa 41.3%, 気管支喘息ではH. influenzae18.6%, S. pneumoniae 28.8%, M.(B.) catarrhalis 16.9%が上位を占めた。
    抗菌薬の投与の有無, 日数ごとにみた分離菌についてみると, 投与前に分離頻度が多い菌はS. pneumoniae, H. influenzae, M.(B.) catarrhalisである。一方, S. aureus, P. aeruginosaでは逆に投与後に頻度が多い傾向を示した。又, 投与期間が15日間以上の例では, 前年同様P. aeruginosaの頻度が多かった。
    S. aureusについてみると, 細菌性肺炎においてMRSAの分離頻度は51.3% (20/39) であった。因子・手術の有無によるMRSAの分離頻度は, 「有り」で49.2% (29/59), 「無し」で28.6% (8/28) となり, 因子・手術の有りの例でMRSAの分離頻度が高い傾向を示した。抗菌薬の投与前・後におけるMRSAの分離頻度は「投与前」で19.6% (10/51), 「投与後」で75.0% (27/36) となり, 抗菌薬投与後で明らかに高値を示した。
  • S-1108小児科領域研究会
    藤井 良知, 阿部 敏明, 田島 剛, 寺嶋 周, 目黒 英典, 森 淳夫, 佐藤 肇, 新納 憲司, 砂川 慶介, 横田 隆夫, 秋田 博 ...
    1995 年 48 巻 7 号 p. 921-941
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたエステル型経口セフェム剤S-1108の細粒剤について小児科領域における基礎的 (体内動態) および臨床的検討を共同研究として実施し, 以下の成績を得たので報告する。
    1. 体内動態
    小児における体内動態は2, 3, 4, 6mg (力価) /kg (以下投与量はすべて力価表示) 単回投与時の検討である。
    各投与量時のCmaxはそれぞれ0.79, 1.03, 1.39, 1.06μg/mlであり, Tmaxは2-3時間であった。またT1/2は1.28±0.40, 1.27±0.65, 1.10±0.29時間および1.83時間を示し, AUCは2.65±0.63, 3.99±2.77, 5.25±1.83, 5.15μg・hr/mlと±1.83, 5.15μg・hr/mlと用量相関が認められた。尿中排泄率は0-8 (6) 時間の平均値で各投与量において12.5-30.0%であった。
    2. 臨床試験成績
    総症例数617例の内, 161例の除外・脱落を除いた456例を有効性評価対象例とした。1回投与量は3-4mg/kgを中心に, 主として1日3回食後投与で, 投与日数は68.4%が8日 (実数7日間) 以内であった。
    臨床効果は起炎菌が分離出来た294例については96.9%の高い有効率が得られた。一方, 起炎菌が不明の162例の有効率は91.4%であり参考とした。合計して示すと456例全体の有効率は95.0%であった。細菌学的効果は89.0% (291/327) の菌消失率であった。3日以上使用した先行化学療法が無効であった57例の内, 有効以上の症例は53例で, 有効率は93.0%であり, 菌消失率は73.5% (25/34) であった。
    副作用は安全性評価対象558例中18例 (3.23%) に認められたが, その大部分は下痢であり, 本剤に特異なものおよび重篤なものはなかった。臨床検査値異常変動は好酸球増多, GOT, GPT上昇などが見られたが, 従来のセフェム剤と同程度であった。また, 服用性に関しても特別の問題はなかった。
    以上の成績より, 本細粒剤は1日6-12mg/kg (力価) を3回に分割経口投与, 症状により適宜増減 (但し成人1日量600mgを越えない), 3-14日間投与により, 中等症までの小児科適応感染症に対して有用な薬剤であると考えられる。
  • 高木 宏治, 梅野 守男, 田中 実, 原島 伸一, 武田 誉久, 岡田 薫, 澤江 義郎
    1995 年 48 巻 7 号 p. 942-948
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    65歳以上の高齢者の呼吸器感染症20例にSulbactam/Cefoperazone (SBT/CPZ) を投与し, その臨床効果及び安全性について検討した。
    早良病院内科に入院した, 65~84歳 (平均73.2歳) の高齢者の呼吸器感染症20例 (肺炎7例, 急性気管支炎7例, 慢性気管支炎の急性増悪5例, 肺気腫の感染1例) に, SBT/CPZをCPZとして0.5~1.09を1日朝, 夕2回, 4~14日間点滴静注した。基礎疾患として13例に糖尿病, 慢性関節リウマチ, 脳梗塞, 肺癌などを認めた。
    臨床効果は有効以上が80%で, 細菌学的効果は起炎菌の判明した10例で, 消失6例, 減少2例, 不変2例と除菌率60%であった。不変の2例はMRSAと緑膿菌であった。
    本剤による副作用はなんら認められず, 臨床検査値異常は, GOT, GPTの上昇を2例に認めたが, 特に処置せず正常化した。
    以上のことから, 高齢者の呼吸器感染症に対して, 本剤は有用であると思われた。
    β-lactamase inhibitorであるSulbactam (SBT) とセフェム系注射薬のCefoperazone (CPZ) の合剤であるスルペラゾン® (SBT/CPZ) は, CPZの有するグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して幅広い抗菌力を保持するとともに, 黄色ブドウ球菌をはじめとするβ-lactamase産生のCPZ耐性菌にも優れた抗菌力を有している1, 2)。しかも, 胆汁排泄型であり, 腎機能の低下した高齢者に対して比較的使用しやすい抗生物質と思われる3, 4)。今回我々は65歳以上の高齢者の呼吸器感染症20例に本剤を使用し, その臨床的効果を検討したので, その成績を報告する。
  • 嶋田 甚五郎, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 鈴木 由美子, 深山 成美, 石原 理加, 小田 清次, 出口 浩一
    1995 年 48 巻 7 号 p. 949-959
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefetamet pivoxil (CEMT-PI) の市中気道系感染症に対する臨床的, 細菌学的効果を検討して, 以下の結果を得た。
    1. 臨床的検討は, 1994年2月~4月上旬に東京都, 神奈川県, 埼玉県, 千葉県内の42施設において同一プロトコールでCEMT-PIが投与された気道系感染症の420症例から, 臨床効果の判定が可能とされた359症例を対象とした。患者の性別は女性が56.3%とやや多く, 診断名は咽喉頭炎60.7%, 扁桃炎14.2%, 急性気管支炎13.6%等であり, 外来患者が94.4%を占めていた。
    2. 細菌学的検討は, あらかじめ検体の採取と管理, 輸送方法を詳細に記載した印刷物を各施設に配布し, 推定起炎菌の分離・同定と最小発育阻止濃度の測定, β-ラクタマーゼの産生性の検討を一括して実施した。359症例中の238症例 (66.3%) からは推定起炎菌が検出されたが, Haemophilus influenzae85株, Streptococcus pneumoniae76株, Streptococcus pvogenes20株, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis17株が主な菌種であった。
    3. 臨床効果 (著明改善+改善) は, CEMT-PI錠 (194mg, 力価) 1日1錠2回投与76.5%, 1日2錠2回投与87.4%であり, 1日2錠2回投与例の改善率がP<0.05の有意差をもって高かった。
    4. 推定起炎菌 (単独菌) 別臨床効果はM.(B.) catarrhalis93.3%, β-streptococci91.7%, H. influenzae87.1%, S. pneumoniae78.4%等であった。
    なお, S. pneumoniae76株中の7株 (9.2%) はBenzylpenicillin (PCG)-insensitive S. pneumoniae (PISP) であったが, PISPが検出された7症例のいずれも著明改善又は改善であり, 更にStaphylococcus aureusが他菌種と共に少量の菌数で検出された13症例を含む複数菌検出例の臨床的改善率は100.0%であった。
    Cefetamet pivoxil (CEMT-PI) は, ロシュ社で開発された経口用セフェム系抗生物質である。CEMT-PIの活性型であるCEMTは, 市中気道系感染症の主要起炎菌であるStreptococcus pyogenes, Streptecoccus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalisに対して強い抗菌力を示し, 各種細菌が産生するβ-ラクタマーゼに安定である1~8)。
    一方, CEMT-PIは, 経口投与後腸管壁のエステラーゼにより, 脱エステル化されCEMTとなって抗菌力を発揮し, その吸収性は良好で, 高い血中濃度が得られることが認められている1, 2, 8, 9)。そこで我々は, 市販後調査 (Phase IV) における市中気道系感染症に対するCEMT-PIの臨床的, 及び細菌学的効果を検討した。
  • TOSHIMICHI MIYA, SATORU HAMAKUBO, TOMOYUK GOYA, TATEO HANAOKA, KIMINOR ...
    1995 年 48 巻 7 号 p. 960-964
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    The ofloxacin (OFLX) concentration in serum, saliva and pleural effusion was measured in 12 patients with pleural effusion after oral administration at a dose of 200mg three times a day (600mg daily). Three patients had non-small cell lung cancer and the others had pulmonary tuberculosis. The mean OFLX levels in the serum, saliva and pleural effusion at 2 hours after the first administration on day 3 was 3.15±1.52, 3.36±2.23 and 2.86±1.77μg/ml respectively. There was a strong correlation among these concentrations. The OFLX concentration of pleural effusion was predictable from that of saliva. A 3-day oral administration is sufficient to achieve the OFLX level of pleural effusion similar to that of the serum. It is possible that OFLX is effective for pleuritis caused not only by common infectious pathogens but also by Mycobacterium tuberculosis.
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