Cefetamet pivoxil (CEMT-PI) の市中気道系感染症に対する臨床的, 細菌学的効果を検討して, 以下の結果を得た。
1. 臨床的検討は, 1994年2月~4月上旬に東京都, 神奈川県, 埼玉県, 千葉県内の42施設において同一プロトコールでCEMT-PIが投与された気道系感染症の420症例から, 臨床効果の判定が可能とされた359症例を対象とした。患者の性別は女性が56.3%とやや多く, 診断名は咽喉頭炎60.7%, 扁桃炎14.2%, 急性気管支炎13.6%等であり, 外来患者が94.4%を占めていた。
2. 細菌学的検討は, あらかじめ検体の採取と管理, 輸送方法を詳細に記載した印刷物を各施設に配布し, 推定起炎菌の分離・同定と最小発育阻止濃度の測定, β-ラクタマーゼの産生性の検討を一括して実施した。359症例中の238症例 (66.3%) からは推定起炎菌が検出されたが,
Haemophilus influenzae85株,
Streptococcus pneumoniae76株,
Streptococcus pvogenes20株,
Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis17株が主な菌種であった。
3. 臨床効果 (著明改善+改善) は, CEMT-PI錠 (194mg, 力価) 1日1錠2回投与76.5%, 1日2錠2回投与87.4%であり, 1日2錠2回投与例の改善率がP<0.05の有意差をもって高かった。
4. 推定起炎菌 (単独菌) 別臨床効果はM.(B.)
catarrhalis93.3%, β-
streptococci91.7%,
H. influenzae87.1%, S. pneumoniae78.4%等であった。
なお,
S. pneumoniae76株中の7株 (9.2%) はBenzylpenicillin (PCG)-insensitive
S. pneumoniae (PISP) であったが, PISPが検出された7症例のいずれも著明改善又は改善であり, 更にS
taphylococcus aureusが他菌種と共に少量の菌数で検出された13症例を含む複数菌検出例の臨床的改善率は100.0%であった。
Cefetamet pivoxil (CEMT-PI) は, ロシュ社で開発された経口用セフェム系抗生物質である。CEMT-PIの活性型であるCEMTは, 市中気道系感染症の主要起炎菌であるS
treptococcus pyogenes, Streptecoccus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalisに対して強い抗菌力を示し, 各種細菌が産生するβ-ラクタマーゼに安定である1~8)。
一方, CEMT-PIは, 経口投与後腸管壁のエステラーゼにより, 脱エステル化されCEMTとなって抗菌力を発揮し, その吸収性は良好で, 高い血中濃度が得られることが認められている1, 2, 8, 9)。そこで我々は, 市販後調査 (Phase IV) における市中気道系感染症に対するCEMT-PIの臨床的, 及び細菌学的効果を検討した。
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