新しく開発された経口用Cephem系抗生物質であるCefdinir (CFDN, FK482) の5%力価細粒について, 小児科領域における臨床評価を行った。
1.対象は1力月から13歳にわたる小児期感染症112例 (狸紅熱2例, 急性咽頭炎6例, 急性鼻咽頭炎6例, 急性化膿性扁桃腺炎52例, 急性気管支炎8例, 急性肺炎24例, 急性尿路感染症7例, 急性膣炎1例, 膿痂疹6例) で, 1回投与量は3.0~8.9mg/kg (平均5.1mg/kg), 1日投与回数は3回, 投与日数は3~14日間 (平均6.7口問), 総投与量は0.6~4.05gであった。なお, 臨床効果については111例, 安全性については全例が評価の対象となった。
2.臨床効果の評価対象となった111例における臨床効果は, 著効51例, 有効57例, やや有効3例で, 著効と有効を含めた有効率は97.3%と極めて高かった。又, 疾患別には, 狸紅熱, 急性咽頭炎, 急性化膿性扁桃腺炎, 急性気管支炎, 急性膣炎, 膿痂疹の有効率はいずれも100.0%, 急性鼻咽頭炎, 急性肺炎, 急性尿路感染症ではそれぞれ83.3%, 95.7%, 85.7%で, 疾患の区別なく一様に高かった。
3.原因菌判明例79例における分離菌別の臨床効果は, 単独菌感染例71例ではグラム陽性菌の
Staphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, A群及びB群以外の
β-Streptococcusの有効率はいずれも100.0%, 又, グラム陰性菌の
Haemophilus influenzae, Haemophilus parainfluenzae, Escherichia coliではそれぞれ89.5%, 100.0%, 100.0%で, 各菌種共に優れていた。なお, グラム陽性菌及びグラム陰性菌全体では各々100.0%, 90.3%の有効率であった。又, 複数菌感染例8例については全例が有効以上で, 有効率は100.0%であった。
4.原因菌判明例79例からの分離菌89菌株に対する細菌学的効果は, グラム陽性菌では菌株数の少なかつた
S.pneumoniaeの消失率は25.0%と低かったが,
S.aureus, S.pyogenes, β-Streptococcusではいずれも100.0%で, グラム陽性菌全体では94.1%と優れていた。又, グラム陰性菌では,
E. coli, H. influenzae, H. parainfluenzaeの消失率はそれぞれ66.7%, 50.0%, 71.4%で, 全体では55.3%とグラム陽性菌に比べ低かった。なお, 菌交代は13例に認められ, 交代後の出現菌はすべて
Haemophilus sp.であった。
5.副作用については, 下痢が4例, 軟便が2例にみられたが, いずれも軽度であり, 投与を継続することが可能であった。なお, 1例の下痢症例では便色がレンガ色で, 特異であつた。又, 臨床検査値異常については, 1例に好酸球増多が認められただけで, 他の異常は認められなかった。更に, 服用性に関しては, 服用拒否, 困難を訴えた症例は全くなく, 従来の小児用製剤と変わらないと答えた者が圧倒的に多かった。
以上の成績から, 本剤は小児期においても有効性並びに安全性の高い薬剤であると考えられた。
抄録全体を表示