The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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59 巻, 6 号
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  • 品川 長夫, 水野 勇, 福井 拓治, 竹山 廣光, 安田 顕, 松本 幸三, 上田 修久, 毛利 紀章, 長崎 高也, 横山 隆, 新原 ...
    2006 年 59 巻 6 号 p. 417-427
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    手術後の感染予防を目的として周術期に抗菌薬の予防投与が行われているが, それらの有効性や安全性についての比較検討は未だ不十分である。そこで作用機序がユニークなホスホマイシン (FOM) に注目し, 術後感染予防の目的で使用された場合の臨床効果を, セフメタゾール (CMZ) とフロモキセフ (FMOX) を対照薬とし, prospectiveに比較検討した。
    今回の調査は, 抗菌薬が日常的に周術期に使用されている実態下において, それら抗菌薬の感染予防効果を比較する方法とした。すなわち, 消化器外科の待機手術のうち, FOMの抗菌スペクトルから上部消化管手術及び肝・胆道手術を対象とし, 術後感染症発症の有無を検討した。抗菌薬の投与は, 手術時と翌日朝の投与を含め最低24時間カバーは必須とし, 術後1日目 (手術実施翌日) からは, 施設の実情に合わせ1日2-3回投与とし, 原則手術当日を含めて4日間までとした。
    その結果, 解析対象症例162例 (FOM群68例, CMZ群52例, FMOX群42例) における臨床効果 (有効率) は各々86.8%, 73.1%, 83.3%で, 3群間に有意差はなく, FOMはCMZ及びFMOXと同等の術後感染予防効果を示した。また, 手術部位別有効率は, 上部消化管手術では各々70% (14/20例), 58.8% (10117例), 70% (14/20例), 肝・胆道手術では93.8% (45148例), 80.0% (28/35例), 95.5% (21/22例) で, いずれの手術部位においても3群間に有意差は認められなかった。一方, 副作用はFOM群, CMZ群では認められず, FMOX群で3例 (発現率7.0%, p=0.0151: Fisherの直接確率) に認められた。
    以上の結果より, FOMの術後感染予防薬としての有用性が確認された。現在, 術後感染予防薬としては, 第一世代, 第二世代のセフェム系薬が多用されているが, こうした薬剤の偏用による耐性菌の増加を防ぐためにも交叉耐性のない抗菌薬選択の幅を広げる必要があるが, FOMはその有力な候補となり得ると考えられる。
  • 山口 恵三, 大野 章, 石井 良和, 舘田 一博, 岩田 守弘, 神田 誠, 辻尾 芳子, 木元 宏弥, 西村 正治, 秋沢 宏次, 松田 ...
    2006 年 59 巻 6 号 p. 428-451
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    2004年に日本国内77施設から分離された臨床分離株19菌種18,639株の抗菌薬感受性サーベイランスを実施した。呼吸器感染症の主要原因菌種であるStreptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Moraxella catarrhalis, Haemophilus influenzae はフルオロキノロン系抗菌薬 (FQs) に対し高い感受性を保持していた。β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性H. influenzaeの分離率は欧米に比べおおよそ3倍高い結果が示された。腸内細菌科の菌種はFQsに対し高い感性率を示したが, Escherichia coliにおいてはおおよそ20%近くの菌株が耐性を示し, 過去の本サーベイの成績から経年的に増加している傾向を示した。メチシリン耐性Staphylococcus aureus (MRSA) におけるFQs耐性株の率はSitafloxacinに対する36%を除き, おおよそ90%と高く, それに対しメチシリン感性S. aureusにおいては約5%の耐性率であった。メチシリン耐性コアグラーゼ陰性StaphylococciにおけるFQs耐性は, メチシリン感性コアグラーゼ陰性Staphylococciよりも高かったが, MRSAに比べ低い成績であった。尿路感染症由来Pseudomous aeruginosa株におけるFQs耐性の割合は32-34%であり, 呼吸器由来株の15-19%に比べ高く過去のサーベイと同様の傾向が持続していた。Acinetobacter spp.はFQsに対し高い感性率を示した。Neisseria gonorrhoeaeのFQsに対する耐性率は約85%と高い値が示された。
  • 品川 長夫, 由良 二郎, 竹山 廣光, 谷口 正哲
    2006 年 59 巻 6 号 p. 452-458
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Bilopbila wadseqortbiaは無芽胞の嫌気性グラム陰性桿菌で, 1989年に分類承認された新しい菌種である。ここではB. wadswortbiaの分離状況および薬剤感受性を調査した。最近の5年間において細菌が分離された消化器外科領域感染症の884検体中46検体 (5.2%) からB. wadswortbiaが分離された。一次感染症である腹膜炎からの分離頻度が16.1%と最も高く, 次いで術後腹膜炎 (4.8%) であった。B. wadswortbiaが単独で分離された症例はなく, 総てが他の細菌との混合感染であった。混合分離の相手菌種としてはBacteroides spp.が32株 (24.8%) と最も多く, 次いでEscbericbia coliの15株 (116%), Enterococcus spp.の13株 (10.1%) などであった。本菌の薬剤盛受性をMIC90でみると, Clindamycin (CLDM) が1μg/mLと最も小さく, 次いでMinocycline (MINO) とCiprofioxacin (CPFX) のそれぞれ4μg/mL, Levofioxacin (LVFX) の8μg/mLであったが, 臨床で使用される多くのβ-ラクタム薬には高度耐性であった。
  • 三鴨 廣繁, 田中 香お里, 渡邉 邦友
    2006 年 59 巻 6 号 p. 459-467
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ロペネムは腎排泄型のカルバペネム系薬であるため, PK-PD理論に基づく適正な投与方法の検討をおこなう場合, 腎機能の影響を考慮したシミュレーションを用いればより精度が高く現実の臨床に近い検討結果が得られると考えられる。今回, 腎機能を考慮したメロペネムの体内動態 (pharmacokinetics: PK) パラメータを用いてシミュレーションを実施し腎機能がTime above MIC (T>MIC) にどの様な影響を与えるかについて検討した。血清クレアチニンを0.5, 1.0, 1.5, 2.0mg/dLに設定し菌のMICを4μg/mLに設定した場合, Time above MICを上回る割合 (%T>MIC) はそれぞれ18.9%, 35.0%, 49.4%, 61.1%と増大する結果が得られた。さらに, メロペネムで感染症治療を行なった3例の腹膜炎患者において, 腎機能および投与方法と臨床効果の関連について検討した。今回の結果よりPK/PD理論に基づく抗菌薬の適正使用を検討する際, 腎機能の影響を考慮したシミュレーションを用いればより現実の臨床に近い検討結果が得られる事が示唆された。
  • 三鴨 廣繁, 田中 香お里, 渡邉 邦友
    2006 年 59 巻 6 号 p. 468-473
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    岐阜県下において分離された肺炎球菌161株およびインフルエンザ菌309株を用いて, レボフロキサシン (LVFX) およびトスフロキサシン (TFLX) の抗菌活性を測定し, Monte Cario Simuiationを用いて, これらの菌による感染症に対する両薬の投与方法別の有効性を評価した。キノロン薬の薬物動態パラメータは健常成人の血中濃度推移から算出した。Monte Carlo Simulationは, Crystal Ball 7を用い, 1000回実施して, キノロン薬の投与方法 (LVFX: 100mg×3回, 200mg×2回, 500mg×1回, TFLX: 150mg×3回, 300mg×2回) ごとに, その投与方法でのAUC/MIC達成確率を算出した。肺炎球菌感染症におけるAUCIMIC30の達成確率は, LVFX: 100mg×3回で47.18%, LVFX: 200mg×2回で75.54%, LVFX: 500mg×1回で89.16%, TFLX: 150mg×3回で93.63%, TFLX: 300mg×2回で98.63%であった。インフルエンザ菌感染症におけるAUCIMICl25の達成確率は, LVFX: 100mg×3回で99.20%, LVFX: 200mg×2回で99.05%, LVFX: 500mg×1回で99.54%, TFLX: i50mg×3回で99.66%, TFLX: 300mg×2回で100%であった。肺炎球菌感染症の治療にあたっては, 経口キノロン薬の投与方法により治療効果に大きな差異が認められる可能性があることが明らかになり, PK1PDを考慮した薬剤投与方法の重要性が示唆された。
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